国土交通 No.149
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17つなげたときに違和感がないようにしなければならないので、画像処理の工程は特に気を使います。画像処理でもっとも大変なのは、天候状況により同日に2回に分けて撮影したり、同じコースを別日に撮影したりするときです。その場合、同じコースなのにまったく違う色合いの写真ができ上がるので、これを調整するのは、なかなか大変で時間もかかります。手作業による地道な色調整色調整するときに目安にしているのは、道路や木の緑の色です。不自然に見えないかどうか、一つひとつ確認しながら色調を決め、全体を見渡しながら整合性をとってVol.12空中写真を仕上げる※ くにかぜⅢでの撮影時にシャッターを切った瞬間の「飛行機の位置」と「姿勢情報」、写真に写った場所を地上で測量した「水平位置」と「高さ」のデータ。フィルムで撮影していた時の空中写真です。色合いが一番自然なのは、階調が豊かなフィルムで撮影された写真です。❶空中写真撮影測量用航空機「くにかぜⅢ」で、空から真下を撮影します。隣接する写真と重なるように撮影すると図化作業の際に地上を立体的に見ることができるようになります。❷現地調査空中写真だけでは読み取ることが難しいもの(建物の種類、塀や石垣などの構造物や植生など)は現地に行って調査します。国土地理院が作っている地図には「基本図」と、基本図の上に断層や地形分類、土地利用などの情報を上乗せした「主題図」があります。ここでは「基本図」が生まれるまでの流れについて紹介します。❸図化地図に表記する必要な情報を取得するため、重なり合うように撮影した空中写真、あるいはオルソ画像を用いて図化を行います。隣り合った2枚の空中写真を使用する場合には、「デジタルステレオ図化機」という特殊なコンピュータにセットし、写真上の道路や建物の形状を立体的に見ながら、なぞるようにしてデータを描きます。また、高さの計測も可能となるので、道路や建物と同じように等高線を描くことができます。❹編集図化したデータに道路・鉄道種別などの情報や地図記号や注記(〇〇市など)を加えて、分かりやすい地図に編集していきます。❺点検作成した地図を印刷し、表現に誤りがないか、一枚一枚人の目で確認します。修正が必要な地図は正しい表現に直し、再度点検します。❻公表2万5千分1地形図や20万分1地勢図など、さまざまな縮尺の地図として公表されます。新鮮な地図をより早く提供するため、道路などの整備者・管理者から提供される工事図面などを基により効率的な地図作成も行っています。いく、まさに手作業です。また、出来上がりの写真は、より自然な状態を再現するよう心掛けています。そのとき参考になるのが過去にフィルムで撮影したアナログ写真で、常に手元において参考にします。画像処理専用のソフトはくにかぜⅢに搭載しているデジタル航空カメラに連動しているものを使うので、カメラが替わると作業に必要なソフトも変わります。カメラは5年ごとに更新されるので、機種が替わった場合は、ソフトの勉強も一からやり直すことになります。撮影条件やコースにもよりますが、撮影データが到着してから画像処理を完了するまで、1地区あたり1週間程度かかります。担当者が作成した画像は係員同士で確認後、係長がさらに点検します。その後、品質管理の担当者が検査し、課長の最終確認を経て、空中写真の最終成果として完成し、作業は完了となります。「写真」から、正確な位置を持った「画像情報」へ完成した写真は、この時点では単に空から撮影した写真の集まりでしかありません。また、地形の起伏によるゆがみや建物の倒れこみなどもあります。地図と正確に重ねるために、地形補正や画像のゆがみを除く処理を行い、位置の情報※を与えて、撮影地区全体を継ぎ目なく1枚につなげます。この過程を経てつくられた画像は「オルソ画像」と呼ばれ、地図の更新に用いられるほか、国土地理院ホームページの「地理院地図」で提供しており、一般に広く利用されているさまざまな位置情報と重ね合わせることができます。地図ができるまでココを詳しく!

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