国土交通省の保有する個人情報の
  適正な管理のための措置に関する
 指針及び開示請求等に係る審査基準(抄)
  
 
                平成17年4月


  第1章 定義 〜第10章 監査及 び点検の実施 (略)                           

 第11章 審査基準
 
(開 示請求の対象外)
第28 条 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成15年法律第61号)において、個人情報保護法が適 用除外されている次の各号に掲げる文書については、開示請求の対象とならない。
一 鉄道抵当原簿、鉄道財団目録、軌道抵当原簿、軌道 財団目録
二 自動車登録ファイル
三 航空機登録原簿
四 ダム使用権登録簿
五 小型船舶登録原簿
六 指定統計を作成するために集められた個人情報、届 出統計調査によって集められた個人情報及び総務大臣の承認を受けた統計報告の徴集によって得られた個人情報を記録した行政文書
七 個人情報の記録されている訴訟に関する書類及び押 収物
 
(開示決定等の審査基準)
第29条 法第18条の規定に基づく開示又は不開示の決定(以下「開示決定等」という。)は、次の各号により行う。
一 開示する旨の決定(法第18条第1項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。
イ 開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が記録されていない場合
ロ 開示請求に係る保有個人情報の一部に不開示情報が記録されている場合であって、当該不開示情報が記録されている部 分を容易に区分して除くことができるとき。ただし、この場合には、不開示情報が記録されている部分を除いて開示する。
ハ 法第16条に基づく場合
二 開示しない旨の決定(法第18条第2項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。
イ 開示請求に係る保有個人情報に含まれている情報がすべて不開示情報に該当する場合
ロ 開示請求に係る保有個人情報の一部に不開示情報が含まれている場合であって、当該不開示情報が記録されている部分 を他の部分と容易に区分して除くことができない場合
ハ 法第17条に基づく場合
ニ 開示請求に係る保有個人情報を国土交通省において保有していない場合(法第45条第2項において、保有個人情報が 保有されていないものとみなす場合を含む。)又は法第2条第3項に規定する保有個人情報に該当しない場合
ホ 開示請求の対象が法第45条第1項に該当する場合又は法以外の法律における適用除外規定により開示請求の対象外の もの(訴訟に関する書類等)である場合
へ 開示請求書に法第13条第1項各号に規定する事項の記載の不備がある場合若しくは同条第2項に規定する開示請求に 係る保有個人情報の本人(未成年又は成年被後見人にあっては、本人の法定代理人)であることを示す書類に不備がある場合又は開示請求手数料が納付されてい ない場合。ただし、法第13条第3項に基づき、当該不備を補正することができると認められる場合は、原則として、開示請求者に補正を求めるものとする。
ト 開示請求が権利濫用に当たる場合。この場合において、権利濫用に当たるか否かの判断は、開示請求の態様、開示請求 に応じた場合の行政機関の業務への支障等を勘案し、社会通念上妥当と認められる範囲を超えるものであるか否かを個別に判断して行う。国土交通省の事務を混 乱又は停滞させることを目的とする等開示請求権の本来の目的を著しく逸脱する開示請求は、権利の濫用に当たる。
三 前二号の判断に当たっては、保有個人情報に該当するかどうかの判断は次条に、開示請求に係る保有個人情報に記録さ れている情報が不開示情報に該当するかどうかの判断は第37条に、部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断は第38条に、保有個人情報の存否を明ら かにしないで開示請求を拒否すべき場合に該当するかどうかの判断は第39条に、それぞれよる。
 
(保有 個人情報該当性に関する判断基準)
第30条 開示請求の対象が法第2条第3項に規定する保有個人情報に該当するかどうかの判断は、次の各号の基準により 行う。
一 「個人情報」とは、個人に関連する情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限ら ず、個人の知的創作物に関する情報及び組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。
なお、死亡した個人に関する情報であっても、その情報が同時に遺族等の生存する個人に関する情報である場合には含まれ る。
二 「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した」とは、行政機関の職員が当該職員に割り当てられた仕事を遂行する 立場で、すなわち公的立場において作成し、又は取得したことをいう。 
三 当 該文書が「組織的に利用するもの」に該当するか否かについては、以下の事項等を総合的に考慮して判断を行うものとする。
イ  行政文書の作成又は取得の状況
 (1)職員が便宜のためにのみ作成又は取得したものか
 (2)直接的又は間接的に局等の長等の指示等の関与があったか
ロ  行政文書の利用の状況
 複数の職員がその職務上利用しているものであるかどうか
ハ  保存又は廃棄の状況
 (1)専ら職員の判断で処理できる性質の文書であるかどうか
  (2)組織として管理している職員共用の保存場所で保存されているものであるかどうか
以下のものは「組織的に利用しているもの」に該当しない。
イ  職員が単独で作成し、又は取得した文書であって、専ら自己の職務の遂行の便宜ために利用し、組織としての利用を予定していないもの
 (1)自己研鑽のための資料
 (2)備忘録等
ロ  職員が自己の職務の遂行の便宜のために利用する行政文書の写し
ハ  職員の個人的な検討段階に留まるもの
 決裁 文書の起案前の職員の検討段階の文書等。ただし、起案前の文書であっても、組織において業務上必要なものとして保存されているのものは除く。
四 ど の段階から「組織的に利用しているもの」になるかについては、文書の利用又は保存の実態により判断されることとなるが、以下の時点が目安として考えられ る。
イ 決裁を要するものについては、起案文書が作成さ れ、稟議に付された時点
ロ 会議資料については会議に提出した時点
ハ 申請書等については申請書等が開示等を行う局等の 事務所に到達した時点
ニ 組織として管理している職員共用の保存場所に保存 した時点
五 「行政機関が保有している」とは、局等が当該個人情報について事実上支配している状態(当該個人情報の利用、提 供、廃棄等の取扱いについて判断する権限を有している状態を意味する。)をいう。したがって、例えば、倉庫業者等に保管させている場合も含まれる。
六 「行政文書に記録されているものに限る」とは、保有個人情報が文書、図画、電磁的記録等何らかの媒体に記録されて いるものでなければならないことをいう。したがって、職員が単に記憶しているにすぎないものは、保有個人情報には該当しない。
また、官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの及び国土地理院地 図と測量の科学館において保管されている地理資料に記録されているものも、これらが行政文書に該当しないため保有個人情報に該当しない。
 
 (不開示情 報該当性に関する判断基準)
第31条 開示請求に係る保有個人情報に記録されている情報が不開示情報に該当するかどうかの判断は、次の各号の基準 により行う。
なお、当該判断は、開示決定等を行う時点における状況に基づき行う。
一 開示請求者に関する情報(法第14条第1号)についての判断基準
法第14条第1号が適用される場合は、開示することが深刻な問題を引き起こす可能性がある場合であり、その運用に当 たっては、具体的ケースに即して慎重に判断するものとする。
二 開示請求者以外の個人に関する情報(法第14条第2号)についての判断基準
イ 開 示請求者以外の個人に関する情報(法第14条第2号本文)について
(1) 「開示請求者以外の個人に関する情報」には、生存する個人に関する情報のほか、死亡した個人に関する情報も含 まれる。ただし、「開示請求者以外」の「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、法第14条第3号及び次号の規定により判断する。
(2) 「その他の記述等」とは、氏名及び生年月日以外の記述(住所、電話番号、役職名等)又は個人別に付された記 号、番号(振込口座番号、試験の受験番号、保険証の記号番号等)その他の符号等をいい、映像や音声も、それによって特定の個人を識別することができる限り において含まれる。
(3) 照合の対象となる「他の情報」には、その保有者が他の機関である場合のほか、公知の情報や、図書館等の公共施 設で一般に入手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると 通常考えられる情報も含まれる。他方、特別の調査をすれば入手し得るかもしれないような情報については、通例は「他の情報」に含まれない。しかし、事案に よっては、個人の権利利益を保護する観点からは、個人情報の取扱いに当たって、より慎重な判断が求められる場合があり、当該個人を識別するために実施可能 と考えられる手段について、その手段を実施するものと考えられる人物が誰であるか等をも視野に入れつつ、合理的な範囲で判断する。
(4) 「開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは、匿名の作文、無 記名の個人の著作物等、個人の人格と密接に関連したり、開示すれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものをいう。
ロ 法令の規定により開示請求者が知ることができる情報等(法第14条第2号イ)について
(1) 「法令の規定」には、何人に対しても等しく当該情報を開示すること又は公にすることを定めている規定のほか、 特定の範囲の者に限り当該情報を開示することを定めている規定が含まれる。
(2) 「慣行として」とは、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として知ることがで き、又は知ることが予定されていることで足りる。ただし、当該保有個人情報と同種の情報について、本人が知ることができた事例があったとしても、それが個 別的な事例にとどまる限り、「慣行として」には当たらない。
(3) 「知ることが予定されている」とは、実際には知らされていないが、将来的に知らされることが予定されている場 合をいう。
なお、「予定」とは将来知らされることが具体的に決定していることは要しないが、当該情報の性質、利用目的等に照らし て通例知らされるべきものと考えられることをいう。
ハ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報(法第14条第2号ロ) について
開示請求者以外の個人に関する情報について、不開示にすることにより保護される開示請求者以外の個人の権利利益より も、開示請求者を含む人の生命、健康等の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合には、当該情報は開示する。現実に、人の生命、健康等に被害 が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。
この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活又は財産の保護にも、保 護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討を行うものとする。
ニ 公務員等の職務の遂行に関する情報(法第14条第2号ハ)について
(1)   「公務員等」とは、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員、裁判官等を含む。また、過去に公務 員であった者は「公務員等」に含まれるものではないが、公務員であった当時の情報については、不開示とはならない。さらに、「独立行政法人等の保有する個 人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第59号)の対象法人(以下「独立行政法人等」という。)の役員及び職員を含む。
 「公務員等」である個人の職務遂行に係る情報が、当 該「公務員等」以外の個人情報である場合など、一つの情報が複数の個人情報である場合には、各個人ごとに不開示情報該当性を判断する必要がある。すなわ ち、「公務員等」である個人にとっての不開示情報該当性と当該「公務員等」である個人以外の個人にとっての不開示情報該当性とが別個に検討され、そのいず れかに該当すれば、当該部分は不開示となる。
(2) 「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関その他の国の機関、独立行政法人、地方公共団体又は地方独 立行政法人の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、 職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に関する情報などがこれに含まれる。
(3) 公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名については、開示した場合、公務員等の私生活等に 影響を及ぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保護に値すると位置付けた上で、法第14条第2号イに該当する場合には開示す る。
例えば、人事異動の官報への掲載その他行政機関等により職名と氏名とを公表する慣行がある場合、行政機関等により作成 され、又は行政機関等が公にする意思をもって(あるいは公にされることを前提に)提供した情報を基に作成され、現に一般に販売されている職員録に職と氏名 とが掲載されている場合等は、「慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている」場合に該当する。
三 法人その他の団体に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報(法第14条第3号)に ついての判断基準
イ 法人その他の団体に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報(法第14条第3号本 文)について
(1) 「法人その他の団体」(以下「法人等」という。)には、株式会社等の商法上の会社、財団法人、社団法人、学校 法人、宗教法人等の民間の法人のほか、政治団体、外国法人や権利能力なき社団等も含まれる。ただし、国、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法 人は、法第14条第3号の対象から除かれており、その事務又は事業に係る情報は、同条第7号の規定に基づき判断する。
(2) 「法人その他の団体に関する情報」とは、法人等の組織及び事業に関する情報のほか、法人等の権利利益に関する 情報等法人等と関連性を有する情報を意味する。
なお、法人等の構成員に関する情報は、法人等に関する情報であると同時に、構成員各個人に関する情報でもあり、法第 14条第2号の不開示情報に当たるかどうかも検討する必要がある。
(3) 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、事業に関する情報であるので、法人等に関する情報と同様の要件 により、事業を営む上での正当な利益等について不開示情報該当性を判断する。
ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報(法第14条第3号ただ し書)について
当該情報を不開示にすることによって保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益と、これを開示することにより保護 される人の生命、健康等の利益とを比較衡量し、後者の利益を保護することの必要性が上回ると認められる場合は、当該情報は法第14条第3号の不開示情報に 該当しない。現実に人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。
なお、法人等又は事業を営む個人の事業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、 現実に人の生命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得ることに留意する。
ハ 当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ(法第14条第3号イ)について
(1) 「権利」とは、信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等法的保護に値する権利一切をいい、「競争 上の地位」とは、法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における地位をいう。また、「その他正当な利益」には、ノウハウ、信用等法人等又は事業を営む 個人の運営上の地位が広く含まれる。
(2) 「害するおそれ」があるかどうかの判断に当たっては、法人等又は事業を営む個人には様々な種類及び性格のもの があり、その権利利益にも様々のものがあるので、法人等又は事業を営む個人の性格、権利利益の内容及び性質等に応じ、当該法人等又は事業を営む個人の権利 の保護の必要性、当該法人等又は事業を営む個人と行政との関係等を十分考慮して適切に判断するものとする。
なお、この「おそれ」の判断に当たっては、単なる可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が求められる。
ニ 任意に提供された情報(法第14条第3号ロ)について
(1) 「行政機関の要請を受けて、開示しないとの条件で任意に提供された情報」には、行政機関の要請を受けずに法人 等又は事業を営む個人から提供された情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業を営む個人の側から開示しないとの条件が提示され、行政機関が合理的理 由があるとしてこれを受諾した上で提供を受けた場合には、含まれる。
(2) 「行政機関の要請」には、法令に基づく報告又は提出の命令は含まれないが、法令に基づく報告徴収権限を有する 場合でも、当該権限を行使することなく、任意に報告又は提出を求めた場合は含まれる。
(3) 「開示しないとの条件」とは、第三者に対して当該情報を提供しないとの条件を意味する。また、特定の行政目的 以外の目的には使用しないとの条件も含まれる。
(4) 「条件」については、行政機関の側から開示しないとの条件で情報の提供を申し入れた場合も、法人等又は事業を 営む個人の側から開示しないとの条件を付すことを申し出た場合も含まれるが、いずれの場合も双方の合意により成立するものである。また、条件を設ける方法 としては、黙示的なものも含まれる。
(5) 「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該法人等又は個人が 属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等又は個人において開示しないこととしていることだけでは足りない。
(6) 開示しないとの条件を付することの合理性の判断に当たっては、情報の性質に応じ、当該情報の提供当時の諸般の 事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の事情の変化も考慮する。開示しないとの条件が付されていても、現に当該情報が公になっていたり、同種の情 報が既に開示されているなどの事情がある場合には、法第14条第3号ロには該当しない。
四 国の安全等に関する情報(法第14条第4号)についての判断基準
イ 「国の安全」とは、国家の構成要素である国土、国民及び統治体制が害されることなく平和で平穏な状態に保たれてい ること、すなわち、国としての基本的な秩序が平穏に維持されている状態をいう。具体的には、直接侵略及び間接侵略に対し、独立と平和が守られていること、 国民の生命が国外からの脅威等から保護されていること、国の存立基盤としての基本的な政治方式及び経済・社会秩序の安定が保たれていることなどが考えられ る。
 「国 の安全が害されるおそれ」とは、これらの国の重大な利益に対する侵害のおそれ(当該重大な利益を維持するための手段の有効性を阻害され、国の安全が害され るおそれがあると考えられる場合を含む。)をいう。
ロ 「他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ」とは、「他国若しくは国際機関」(我が国が承認していな い地域、政府機関その他これらに準ずるもの(各国の中央銀行等)、外国の地方政府又は国際会議その他国際協調の枠組みに係る組織(アジア太平洋経済協力 等)の事務局等を含む。以下「他国等」という。)との間で、相互の信頼に基づき保たれている正常な関係に支障を及ぼすおそれをいう。例えば、開示すること により、他国等との取決め又は国際慣行に反することとなる、他国等の意思に一方的に反することとなる、他国等に不当に不利益を与えることとなるなど、我が 国との関係に悪影響を及ぼすおそれがある情報は、法第14条第4号に該当する。
ハ 「他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ」とは、他国等との現在進行中の又は将来予想される交渉にお いて、我が国が望む交渉成果が得られなくなる、我が国の交渉上の地位が低下する等のおそれをいう。例えば、交渉(過去のものを含む。)に関する情報であっ て、開示することにより、現在進行中の又は将来予想される交渉に関して我が国が採ろうとしている立場が明らかにされ、又は具体的に推測されることになり、 交渉上の不利益を被るおそれがある情報は、法第14条第4号に該当する。
二 本 号に該当する可能性のあるものは次のとおりである。
(1) 航空交渉、建設交渉等の対処方針等であって、 事前に開示することにより、我が国の交渉上の地位が不利になるような情報
(2) 核物質の運送等についての情報であって、核物 質の安全性及び防護上、開示するとわが国の安全が担保できなくなるおそれがあるもの
五 公共の安全等に関する情報(法第14条第5号)についての判断基準
イ 「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。
なお国民の防犯意識の啓発、防犯資機材の普及等、一般に開示しても犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれが ない防犯活動に関する情報は、不開示とはならない。
 「犯 罪の鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防止し、又は犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、又は終息させることをいう。
 「犯 罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内 容とする訴訟行為をいう。)等のために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。
ロ 「公訴の維持」とは、提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張 及び立証、公判準備等の活動を指す。
ハ 「刑の執行」とは、刑法(明治40年法律第45号)第2章に規定されている刑又は処分を具体的に実施することをい う。保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行、監置の執行、過料、訴訟費用、費用賠償及び仮納付の各裁判の執行、恩赦につ いても、刑の執行に密接に関連するものでもあることから、開示することによりこれら保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそ れがある情報は、法第14条第5号に該当する。
ニ 「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を 中心としたものを意味する。刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)以外の特別法により、臨検、捜索、差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関 連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)違反の調査等や、 犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、 強制退去手続に関する情報であって、開示することにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、法第14条第5号に該当する。
 ま た、開示することにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムに対する不法な侵入・破壊を招くおそれがあるなど、 犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報及び被疑者又は被告人の留置又は勾留に関する施設保安に支障を生ずるおそれのある情報も、法第 14条第5号に該当する。
一方、建築規制、災害警備等一般に公にしても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生じるおそれのない行政警察活動に関する情報 については、法第14条第7号の規定により判断する。
ホ 本 号に該当する可能性のあるものは次のとおりである。
(1)  ハイジャック・テロ防止のための対応方針等であって、開示することにより犯罪の実行を容易にするおそれのある情報
(2)  電子情報システムへの侵入を阻止するためのセキュリティに関する情報であって、開示することよりシステムへの侵入を容易にするおそれがあるもの
(3)  道路施設や公共交通機関の安全確保や防犯を目的とするシステムに関する情報であって、開示することにより犯罪の実行を容易にし、安全を侵害するおそれが あるもの
(4)  共同溝の平面図や建築物の設計図等であって、開示することにより、当該施設への不法な侵入破壊を招くおそれがあるもの
六 審議、検討等に関する情報(法第14条第6号)についての判断基準
イ 「国の機関」とは、国会、内閣、裁判所及び会計検査院並びにこれらに属する機関を指し、「内部又は相互間における 審議、検討又は協議に関する情報」とは、これらの国の機関、独立行政法人等、地方公共団体及び地方独立行政法人(以下「国の機関等」という。)の事務及び 事業について意思決定が行われる場合に、その決定に至るまでの過程の各段階において行われている、例えば、具体的な意思決定の前段階としての政策等の選択 肢に関する自由討議のようなものから、一定の責任者の段階での意思統一を図るための協議や打合せ、決裁を前提とした説明や検討、審議会等又は行政機関が開 催する有識者等を交えた研究会等における審議や検討など、様々な審議、検討及び協議に関連して作成され、又は取得された情報を指す。
ロ 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」とは、開示することにより、外部からの圧 力、干渉等の影響を受けることなどにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれをいい、適正な意思決定手続の確保を保護利 益とするものである。
ハ 「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」とは、未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報等を開示すること により、誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれをいう。適正な意思決定を行うことそのものを保護するのではなく、情報が開示されるこ とによる国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。
ニ 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」とは、尚早な時期に、あるいは事実関係の確認が不十 分なままで情報を開示することにより、不正な投機を助長するなどして、特定の者に不当に利益を与え又は不利益を及ぼすおそれをいい、事務及び事業の公正な 遂行を図るとともに、国民への不当な影響が生じないようにする趣旨である。
ホ 「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を開示することの必要性を考慮してもなお、適正な意思決定の確保等 への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、開示することによる利益と不開 示にすることによる利益とを比較衡量した上で判断する。
ヘ 審議、検討等に関する情報については、国の機関等としての意思決定が行われた後は、一般的には、当該意思決定その ものに影響が及ぶことはなくなることから、法第14条第6号の不開示情報に該当する場合は少なくなるものと考えられる。ただし、当該意思決定が政策決定の 一部の構成要素である場合、当該意思決定を前提として次の意思決定が行われる場合等審議、検討等の過程が重層的又は連続的な場合には、当該意思決定が行わ れた後であっても、政策全体の意思決定又は次の意思決定に関して法第14条第6号に該当するかどうか判断する必要がある。
また、意思決定が行われた後であっても、審議、検討等に関する情報が開示されることにより、国民の間に混乱を生じさせ るおそれがある場合、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある場合は、法第14条第6号に該当する。
なお、審 議、検討等に関する情報の中に調査データ等で特定の事実を記録した情報があった場合、例えば、当該情報が専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的 事実やこれに基づく分析等を記録したものであれば、一般的に本号に該当する可能性が低い。
ト 本 号に該当する可能性のある主なものは次のとおりである。
(1)  閣議決定、閣議了解、閣議報告、関係閣僚会議申合せ及び事務次官等会議申合せのうち、一定期間不開示扱いとされたもの(解除後は開示)
(2)  予算成立前の予算に関する情報であって、開示することにより、予算作成事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれのあるもの又は予算の適正な執行に支障を及 ぼすおそれがあるもの
(3)  施設等の建設計画の検討に関する情報であって、開示することにより、土地の買占めを招いたり、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがあるもの
(4)  審議会や会議において発言者を特定する情報や審議途中の検討段階における情報等、開示することにより、審議会や会議における公正かつ中立な審議に著しい 支障を及ぼすおそれがあるもの
(5)  中間段階の研究成果等発表前に十分な専門的検討が必要な情報であって、検討前に開示することにより、国民に誤解を与えるおそれがあるもの
(6)  事故等(航空事故等又は鉄道事故等)調査における報告書の草案及び調査官の解析内容
七 事務又は事業に関する情報(法第14条第7号)についての判断基準
イ 「次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるも の」(法第14条第7号本文)
(1) 「当該事務又は事業の性質上」とは、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、 その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断するとの趣旨である。
(2) 「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」とは、恣意的判断を許容する趣旨ではなく、各規定の要件の該当性は客観的 に判断される必要があり、また、事務又は事業の根拠となる規定・趣旨に照らし、個人の権利利益を保護する観点からの開示の必要性等の種々の利益を衡量した 上での「適正な遂行」といえるものであることが求められる。
(3) 「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる可能性ではなく、 法的保護に値する蓋然性があると認められるかどうかにより判断する。
ロ 「監査、検査、取締り、試験、又は租税の賦課若しくは徴収に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ 又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」(法第14条第7号イ)
(1) 「監査」(主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べること。)、「検査」(法 令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べること。)、「取締り」(行政上の目的による一定の行 為の禁止又は制限について適法又は適正な状態を確保すること。)、「試験」(人の知識、能力等又は物の性能等を試すこと。)及び「租税の賦課若しくは徴 収」(国又は地方公共団体が、公租公課を特定の人に割り当てて負担させること又は租税その他の収入金を取ること。)に係る事務は、いずれも事実を正確に把 握し、その事実に基づいて評価又は判断を加えて、一定の決定を伴うことがあるものである。
(2) これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報、試験問題等の ように、事前に開示すると、適正かつ公正な評価又は判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないま でも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽をするなどのおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。また、事後であって も、例えば、監査内容等の詳細についてこれを開示すると今後の法規制を免れる方法を示唆することになるようなものは、法第14条第7号イに該当する。
ハ 「契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人の財産上の利益又 は当事者としての地位を不当に害するおそれ」(法第14条第7号ロ)
(1) 「契約、交渉又は争訟」
 「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律 行為を成立させることをいう。
 「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の 利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整などの折衝を行うことをいう。
 「争訟」とは、訴えを起こして争うことをいう。訴 訟、行政不服審査法に基づく不服申立てその他の法令に基づく不服申立てがある。
(2)  「国、独立行政法人等又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」
国の機関等が一方の当事者となる契約、交渉又は争訟に係る事務に関する情報の中には、例えば、@用地取得等の交渉方針 や用地買収計画案を開示することにより、適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれたり、A交渉、争訟等の対処方針等を開示することにより、当 事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。
ニ 「調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」(法第14条第7号ハ)
国の機関等が行う調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、@知的所有権に関する情報、調査研究の途中段階の 情報等であって、一定の期日以前に開示することにより成果を適正に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがあるも の、A試行錯誤の段階の情報について開示することにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害する おそれがあるものがあり、このような情報は不開示とする。
ホ 「人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」(法第14条第7号ニ)
国の機関等が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分、能力等の管理に関すること。)に係る事務 は、当該機関の組織としての維持の観点から行われ、一定の範囲で当該組織の自律性を有するものである。人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、 勤務評価や、人事異動、昇格等の人事構想等を開示することにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報は不開示 とする。
ヘ 「国若しくは地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等又は地方独立行政法人に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ」(法第14 条第7号ホ)
国若しくは地方公共団体が経営する企業(国有林野事業及び地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第2条の適用を 受ける企業をいう。)、独立行政法人等又は地方独立行政法人に係る事業に関連する情報については、企業経営という事業の性質上、企業経営上の正当な利益を 保護する必要があり、これを害するおそれがあるものは不開示とする。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する 必要があり、不開示の範囲は、法第14条第3号の法人等の場合とは当然異なり、より狭いものとなる場合があり得ることに留意する。
ト 本 号に該当する主なものは次のとおりである。
(1)  職員の人事に関する調査結果等のうち、開示することにより、任免、給与等の人事管理の適正な運営に支障を及ぼすおそれがあるもの
(2)  工事の契約に係る予定価格、予定価格が類推されるおそれがある積算単価等の情報であって、開示することにより、入札又は見積り実施の目的を達成すること ができなくなる等、契約事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの(契約締結後は開示)
(3)  工事発注案件の詳細情報であって入札前に開示することにより、特定の者に利益を与えたり談合を誘発する等入札の適正な遂行に支障を及ぼすもの(入札執行 後は開示)
(4)  物品管理に関する予定単価、購入予定単価が推測できる情報であって、開示することにより、物品管理事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
(5)  建築物の設計図等施設設備の管理に関する情報であって、開示することにより、施設設備の警備等に支障を生ずるおそれがあるもの
(6)  用地取得等の交渉方針、交渉状況又は予定地等の情報であって、開示することにより、交渉の不調、遅延、経費の不合理な増大を招く等、当該又は将来の交渉 事務の適正な遂行に支障を及ぼすもの
(7)  監査、立入検査等の範囲、手法、時期、場所等が記載されているものであって、開示することにより、当該監査、立入検査等の目的及び実行を損なうおそれの あるもの
(8)  資格試験の試験問題及びその作成の要領、試験の採点・合否の基準等であって、開示することにより、試験実施機関の試験の適正な実施又は判定・評価に支障 を及ぼすおそれがあるもの
(9)  非公開で行われるあっせん、調停又は仲裁による紛争処理に関する情報であって、開示することにより、適正な紛争処理に支障を及ぼすおそれがあるもの
(10)  行政手続法に基づく聴聞審理に関する情報であって、開示することにより、聴聞の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあるもの
(11)  稀少野生動植物種等に指定されている生物の生息場所等が具体的に特定できる情報であって、開示することにより、盗掘・乱獲のおそれがあり、当該生物の保 護に支障を及ぼすおそれがあるもの

(部分 開示に関する判断基準)
第32条 開示請求に係る保有個人情報について、法第15条に基づき部分開示をすべき場合に該当するかどうかの判断 は、次の各号の基準により行う。
一 「開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合」とは、開示請求について審査した結果、開示請求に 係る個人情報に、不開示情報に該当する情報が含まれている場合をいう。
 法第 14条本文では、保有個人情報に全く不開示情報が含まれていない場合の開示義務が定められているが、法第15条第1項の規定により、開示請求に係る保有個 人情報に不開示情報が含まれている場合に、部分的に開示できるか否かの判断を行わなければならない。
二 「容易に区分して除くことができるとき」
イ 当該保有個人情報のどの部分が不開示情報に該当するかという区分けが困難な場合だけでなく、区分けは容易であるが その部分の分離が技術的に困難な場合も部分開示を行う義務はない。  
「区分」とは、不開示情報に該当する部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを意味し、「除く」とは、不開示情 報に該当する部分を、当該部分の内容が分からないように墨塗り、被覆等を行うなど、加工することにより、情報の内容を物理的に除去させることをいう。
容易に区 分して除くことができない場合として以下の例が想定される。
・文章として記録されている内容そのものには不開示情 報は含まれないが、特徴のある筆跡により特定の個人を識別することができる場合
・録音されている発言内容自体には不開示情報が含まれ ていないが、声により特定の個人を識別できる場合
ロ 保有個人情報に含まれる不開示情報を除くことは、当該保有個人情報が文書に記録されている場合、文書の複写物に墨 を塗り再複写するなどして行うことができ、一般的には容易であると考えられる。
一方、録音テープ、ビデオテープ、磁気ディスク等に記録された保有個人情報については、区分して除くことの容易性が問 題となる。例えば、複数の人の発言が同時に録音されているがそのうちの一人から開示請求があった場合や、録画されている映像中に開示請求者以外の者が映っ ている場合などがあり得る。このような場合には、不開示情報を容易に区分して除くことができる範囲で、開示すべき部分を決定する。
なお、電磁的記録に記録された保有個人情報については、紙に出力した上で、不開示情報を区分して除いて開示することも 考えられる。電磁的記録をそのまま開示することを求められた場合は、不開示情報の部分のみを削除することの技術的可能性等を総合的に判断する必要がある。 既存のプログラムでは行えない場合は、「容易に区分して除くことができるとき」に該当しない。
三 「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない」とは、義務的に開示すべき範囲を定める趣旨である。
なお、部分開示の実施に当たり、具体的な記述をどのように削除するかについては、本法の目的に沿った合目的的な裁量に 委ねられている。すなわち、不開示情報の記録部分の全体を完全に黒く塗るか、文字が判読できない程度に被覆するか、当該記録中の主要な部分だけ塗り潰すか などの方法の選択は、不開示情報を開示した結果とならない範囲内において、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して判断することとなる。その結果、観念 的には一まとまりの不開示情報を構成する一部が開示されることになるとしても、実質的に不開示情報が開示されたと認められないのであれば、不開示義務に反 するものではない。
四 開示請求者以外の特定の個人を識別することができる情報が記録されている場合について(法第15条第2項)
イ 開示請求者以外の特定の個人を識別することができる情報について、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別するこ とができることとなる記述等の部分を除くことにより、残りの部分を開示しても開示請求者以外の個人の権利利益の保護の観点から支障が生じないと認められる ときは、当該残りの部分については、法第14条第2号に規定する不開示情報には該当しないものとして取り扱う。したがって、当該部分は、他の不開示情報の 規定に該当しない限り、法第15条第1項の規定により開示することになる。ただし、法第15条第1項の規定を適用するに当たっては、容易に区分して除くこ とができるかどうかが要件となるので、個人を識別させる要素とそれ以外の部分とを容易に区分して除くことができない場合は、当該個人に関する情報は全体と して不開示とする。
ロ 開 示請求者以外の特定の個人を識別させる要素を除去し誰の情報であるかが分からなくなっても、開示することが不適 当であると認められる場合もあることに留意する。例えば、作文などの個人の人格と密接に関連する情報や、個人の未公表の論文等を開示すると個人の権利利益 を害するおそれのあるものは不開示とする。

(保有 個人情報の存否に関する情報に関する判断基準)
第33条 開示請求に対し、保有個人情報の存否を明らかにしないで当該開示請求を拒否すべき場合(法第17条)に該当 するかどうかの判断は、次の各号の基準により行う。
一 「開示請求に係る保有個人情報が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」とは、 開示請求に係る保有個人情報が実際にあるかないかにかかわらず、開示請求された保有個人情報の存否について回答すれば、開示請求に含まれる情報が結合する ことにより、実質的に不開示情報を開示することとなる場合をいう。例えば、法令等の違反に関する特定の個人を対象とした調査に係る情報について、本人から 開示請求があった場合等が考えられる。
また、存 否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らかにしないで拒否しなければならない。
二 当該保有個人情報の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否する場合に行政手続法第8条に基づき示さなければ ならない処分の理由については、当該情報の性質、内容、開示請求書の記載内容等を踏まえ、請求のあった保有個人情報の存否を答えることにより、どのような 不開示情報を開示することになるかどうかをできる限り具体的に提示する。

(訂正 決定等の審査基準)
第34条 法第30条の規定に基づく訂正をする旨又は訂正をしない旨の決定(以下「訂正決定等」という。)は、次の各 号により行う。
一 訂正請求の対象は、「事実」とし、評価又は判断には及ばないものとする。ただし、評価した行為の有無、評価に用い られたデータ等は事実に該当する。
二 訂正をする旨の決定(法第30条第1項)は、調査等の結果、訂正請求に係る保有個人情報が事実でないことが判明 し、当該請求に理由があると認める場合に行う。
この場合の訂正は、当該訂正請求に係る保有個人情報の利用目的の達成に必要な範囲内で行う。
なお、請求内容に理由があるかどうかを判断するために行う調査は、保有個人情報の利用目的の達成の範囲内で行えば足 り、訂正をすることが利用目的の達成に必要でないことが明らかな場合は、特段の調査を行う必要はない。具体例としては、過去の事実を記録することが利用目 的であるものについて現在の事実に基づいて訂正することを請求するような場合が考えられる。
三 訂正しない旨の決定(法第30条第2項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。
イ 保有個人情報の訂正に関して法以外の法律又は当該法律に基づく命令の規定により特別の手続が定められている場合
ロ 法第27条第1項各号に規定する保有個人情報に係る訂正請求でない場合
ハ 保有個人情報の開示を受けた日から90日以内に行われた訂正請求でない場合
ニ 訂正請求書に法28条第1項各号に規定する事項の記載の不備がある場合又は同条第2項に規定する訂正請求に係る保 有個人情報の本人であること(未成年又は成年被後見人にあっては、本人の法定代理人であること。)を示す書類に不備がある場合。ただし、当該不備を補正す ることができると認められる場合は、原則として、訂正請求者に補正を求めるものとする。
ホ 調査等の結果、訂正請求に係る保有個人情報が事実でないことが判明しない場合又は事実関係が明らかにならなかった 場合
ヘ 訂正をすることが、当該保有個人情報の利用目的の範囲を超える場合
ト 調査の結果判明した事実が、請求時点において実際に記録されていた内容とも、請求の内容とも異なることが判明した 場合。ただし、必要な場合は、判明した事実に即して、職権により訂正を行うものとする。
 
(利用 停止決定等の審査基準)
第35条 法第39条の規定に基づく利用停止をする旨又は利用停止をしない旨の決定(以下「利用停止決定等」とい う。)は、次の各号により行う。
一 利用停止をする旨の決定(法第39条第1項)は、請求に係る保有個人情報が次のいずれかに該当し、当該請求に理由 があると認める場合に行う。
イ 適法に取得されたものでない場合
暴行、脅迫等の手段により取得した場合、個人情報の取得について定めた個別法規に違反して取得した場合等をいう。
ロ 法第3条第2項の規定に違反して保有されている場合
特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を保有している場合をいう。また、法第3条第3項に違反して、 当初の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて利用目的の変更を行っている場合も含まれる。
ハ 法第8条第1項及び第2項の規定に違反して利用されている場合
法が許容する限度を超えて利用目的以外の目的で保有個人情報を利用している場合をいう。
ニ 保有個人情報が法第8条第1項及び第2項の規定に違反して提供されている場合
法が許容する限度を超えて利用目的以外の目的で保有個人情報を提供している場合をいう。
ホ 利用停止は、利用停止請求に係る保有個人情報の適正な取扱いを確保するために必要な限度で行うものとし、例えば、 当該保有個人情報について、そのすべての利用が違反していればすべての利用停止を、一部の利用が違反していれば一部の利用停止を行うものとする。
また、例えば、利用目的外の利用を理由として、本人から保有個人情報の消去を求められた場合には、個人情報の適正な取 扱いを確保する観点から、当該利用目的外の利用を停止すれば足り、当該保有個人情報を消去するまでの必要はない。
二 利用停止しない旨の決定(法第39条第2項)は、次のいずれかに該当する場合に行う。
イ 保有個人情報の利用停止に関して法以外の法律又は当該法律に基づく命令の規定により特別の手続が定められている場 合
ロ 法第36条第1項各号に規定する保有個人情報に係る利用停止請求でない場合
ハ 保有個人情報の開示を受けた日から90日以内に行われた利用停止請求でない場合
ニ 利用停止請求書に法第37条第1項各号に規定する事項の記載の不備がある場合又は同条第2項に規定する利用停止請 求に係る保有個人情報の本人であること(未成年又は成年被後見人にあっては、本人の法定代理人であること。)を示す書類に不備がある場合。ただし、当該不 備を補正することができると認められる場合は、原則として、利用停止請求者に補正を求めるものとする。
ホ 利用停止請求に理由があると認められない場合
ヘ 利用停止することにより当該保有個人情報の利用目的に係る事務の性質上、当該事務の適正な遂行に著しい支障を及ぼ すおそれがあると認められる場合
 
 第12章 開示に関す る補則
 
(手数 料
第36条 手数料は、開示請求に係る保有個人情報が記載されている行政文書一件につき、「行政機関の保有する個人情報 の保護に関する法律施行令」(平成15年政令第548号)第18条第1項に定める額の収入印紙を開示請求書に貼って納付しなければならない。
 
 第13章 雑則  (略)
 

 (施 行期日)  
 この指針及び審査基準は平成17年4月1日から施行する。
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