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参考資料4

 

  総合開発を通じた国土の均衡ある発展

○全国総合開発計画における記述

1.「第四次全国総合開発計画」における記述

(全国総合開発計画)

 昭和30年代前半、我が国は世界にもまれにみる高度成長の緒についた。この高度成長の過程で、東京、大阪へ若年層が大量に流入し、人口等の集中による密集の弊害、地域間格差などの諸問題が深刻化した。こうした状況を背景に昭和37年に全国総合開発計画が策定された。全国総合開発計画では、都市の過大化の防止と地域間の格差是正を図ることを目的として、東京、大阪、名古屋の既成の集積の効果を活用し難い地域を開発地域と位置付け、ここに工業開発拠点を整備すべきこと等を明らかにした。これは、新産業都市として実施に移され、工業の地方展開に大きな役割を演じた。

(新全国総合開発計画)

 予想を上回る高度成長は大都市への人口等の集中を更に助長し、過密・過疎問題が一層深刻化した。昭和44年に策定された新全国総合開発計画は、これらの問題の解決を図るため全国土に開発可能性を拡大することによる国土利用の均衡化を目指した。首都東京をはじめ、札幌から福岡の7大集積地を交通、通信網で結び国土の主軸を形成するとともに、これと各地域を縦横に連結することを主な内容とする新ネットワークの整備などの大規模開発プロジェクトの計画を明らかにした。この全国的なネットワークの整備も順次実施に移され、国土の主軸が形成されようとしている。

(第3次全国総合開発計画)

 昭和40年代後半に入り、我が国経済は第一次石油危機等を契機に安定成長軌道へと移行した。こうした中で、昭和52年に策定された第三次全国総合開発計画は、総合的な生活圏整備の立ち遅れを強く認識し、定住構想を計画方式として採用した。そして、大都市への人口と産業の集中を抑制し、一方、地方を振興し、過密過疎問題に対処しながら、全国土の利用の均衡を図りつつ、人間居住の総合的環境の形成を図ることとした。昭和50年代に入り、三大都市圏への人口集中は沈静化し、人口の地方定住が進展し、地域においては自らの創意工夫を生かしつつ地域づくりを進めようとする機運が高まり、地方における居住環境も向上するなど、定住構想は進展をみた。

(第4次全国総合開発計画)

 21世紀を展望すれば・・・技術革新・情報化の進展や急速な産業構造の変化が予想されること、・・・国民生活の質的向上と安全性への志向が強まること、・・・我が国が本格的に国際化することなど、経済社会の大きな変化が予想される。
  (中略)
 新たな国土計画を策定するに当たっては、・・・地域活性化のため工業の開発ばかりでなく、多様な産業振興施策の展開が必要なこと、・・・地方主要都市を連絡する全国的なネットワークを早期に完成させる必要があること、・・・などを今日的に認識する必要がある。さらに近年の東京を中心とした世界都市機能の集中や本格的な国際化の進展に適切に対処していく必要がある。このような諸点を踏まえ、引き続き国土の均衡ある発展を図ることを基本として、新たな国土計画を策定する。
  (中略)
 21世紀への国土づくりの指針として、・・・特色ある機能を有する多くの極が成立し、特定の地域への人口や経済機能、行政機能等諸機能の過度の集中がなく、地域間、国際間で相互に補完、触発しあいながら交流している多極分散型の国土を形成することを目標とする。

 

2.「21世紀の国土のグランドデザイン」における記述

(21世紀の国土づくりの考え方)

 国土構造形成の流れを望ましい方向に導くため、まず、東京を頂点に「中枢」とそれへの「依存」という関係を作り出してきた都市間の階層構造を「自立」と「相互補完」に基づくより水平的なネットワーク構造へと転換する。すなわち、「集中」と「巨大化」により集積効果を上げるのではなく、広い圏域において、それぞれに個性的な地域間の「連携」と「交流」により集積に替わる効果を発揮させる。
 つぎに、生産、流通、消費を支える機能を効率的なものにしていくことが豊かな生活の基礎であるが、それにとどまることなく、自然環境を保全、回復する機能、新しい文化と生活様式を創造する機能を兼ね備えた多様性のある地域づくりを志向する。・・・

 

(国土軸形成の方向)

 ・・・これからの国土構造を規定していく要素として、20世紀の国土構造の形成を主導してきた人口と工業の集積の比重が下がり、文化と生活様式創造の基礎的条件である気候や風土等、そして、生態系のネットワーク、海域や水系を通じた自然環境の一体性、さらには、交流の歴史的蓄積と文化遺産、アジア・太平洋地域に占める地理的特性等が重要性を増していくこととなる。21世紀を通じて、この国土づくりの方向を維持するならば、これらの要素における共通性に根ざしたそれぞれに特色のある地域の連なりが、国土を構成する大括りな圏域としての輪郭を次第に明瞭にしていくとともに、相互補完によりそれぞれの特色を生かした連携を通じて国土空間を多様性のあるものにしていくこととなろう。・・・太平洋ベルト地帯は明治以降100年を超す時間の経過の中で形成されてきたものである。同じように長期的な視野に立って新しい国土軸の形成に取り組み、一極一軸型の国土構造を多軸型のものに転換することによって、多様な地域特性を十全に展開させた国土の均衡ある発展を実現し、人々に多様な暮らしの選択可能性を提供することが21世紀における国土政策の基本方向である。

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