○多極分散型国土形成促進法(抄)
(昭和六十三年六月十四日法律第八十三号)
  第一章 総則
 (目的)
第一条
 この法律は、人口及び行政、経済、文化等に関する機能が過度に集中している地域からこれらの機能の分散を図り、地方の振興開発と大都市地域の秩序ある整備を推進し、並びに住宅等の供給と地域間の交流を促進することにより、人口及びこれらの機能が特定の地域に過度に集中することなくその全域にわたり適正に配置され、それぞれの地域が有機的に連携しつつその特性を生かして発展している国土(以下「多極分散型国土」という。)の形成を促進し、もつて住民が誇りと愛着を持つことのできる豊かで住みよい地域社会の実現に寄与することを目的とする。
 (施策における配慮)
第二条
 国及び地方公共団体は、この法律に規定する多極分散型国土の形成の促進に関する施策の策定及び実施に当たつては、地域における創意工夫を尊重し、並びに適正かつ合理的な土地利用の確保、環境の保全、国土の保全及び災害の防止に配慮するとともに、民間事業者、地域住民等の理解と協力を得るよう努めなければならない。
  第三章 地方の振興開発
   第二節 振興拠点地域の開発整備
 (振興拠点地域基本構想の作成)
第七条
 都道府県は、当該都道府県内の特定の地域について、当該地域の特性に即した産業、文化、学術、研究、交流等に関する特色ある機能を集積させるための事業の総合的かつ計画的な実施を促進することにより、当該地域をその周辺の相当程度広範囲の地域の振興の拠点として開発整備するため、当該開発整備に関する基本的な構想(以下「振興拠点地域基本構想」という。)を作成し、主務大臣に協議し、その同意を求めることができる。
 振興拠点地域基本構想においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
   前項に規定する開発整備を行おうとする地域(以下「振興拠点地域」という。)の区域
   前項に規定する開発整備の方針に関する事項
   振興拠点地域のうち、次号に規定する施設の整備を特に促進することが適当と認められる地区(以下「重点整備地区」という。)の区域
   前項の特色ある機能を集積させる上で中核となる民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法(昭和六十一年法律第七十七号。以下「特定施設整備法」という。)第二条第一項各号に掲げる施設その他政令で定める施設(以下この節において「中核的施設」という。)であつて民間事業者が設置及び運営をするもの(以下この節において「中核的民間施設」という。)のうち当該重点整備地区において整備されるべきものの種類、位置、規模、機能及び運営に関する基本的な事項
   当該重点整備地区において整備されるべき中核的民間施設以外の中核的施設の設置に関する基本的な事項
   前項に規定する開発整備のために特に必要と認められる公共施設その他の施設(中核的施設であるものを除く。以下この節において「公共施設等」という。)の整備の方針に関する事項
   環境の保全、地価の安定その他前項に規定する開発整備に際し配慮すべき事項
 振興拠点地域基本構想は、国土総合開発計画その他法律の規定による地域振興に関する計画との調和が保たれたものでなければならない。
 都道府県は、振興拠点地域基本構想を作成しようとするときは、関係市町村に協議しなければならない。
 (振興拠点地域基本構想の同意)
第八条
 主務大臣は、前条第一項の協議に係る振興拠点地域基本構想が同条第三項に規定する計画との調和が保たれたものであり、かつ、次の各号に該当するものであると認めるときは、その同意をするものとする。
   当該振興拠点地域基本構想に係る地域が次に掲げる要件に該当するものであること。
     人口及び行政、経済、文化等に関する機能が過度に集中している地域及びその周辺の地域であつて政令で定めるもの以外の地域であること。
     自然的経済的社会的条件からみて一体として前条第一項に規定する開発整備を図ることが相当と認められる地域であること。
     中核的施設及び公共施設等の用に供する土地の確保が容易であり、かつ、立地条件等からみて相当程度のそれらの施設の整備が確実と見込まれる地域であること。
   当該振興拠点地域基本構想に係る前条第一項に規定する開発整備が当該振興拠点地域及びその周辺の相当程度広範囲の地域に対して適切な効果を及ぼすものであること。
   その他国土交通大臣が同意に当たつての基準として次条の規定により定める事項(以下「同意基準」という。)に適合するものであること。
 主務大臣は、振興拠点地域基本構想につき前項の規定による同意をしようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。
 都道府県は、振興拠点地域基本構想が第一項の規定による同意を得たときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
 (同意基準)
第九条
 同意基準においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
   第七条第一項に規定する開発整備に関する基本的な事項
   振興拠点地域及び重点整備地区の設定に関する基本的な事項
   中核的施設の設置、中核的民間施設の運営及び公共施設等の整備の方針に関する基本的な事項
   環境の保全、地価の安定その他第七条第一項に規定する開発整備に際し配慮すべき重要事項
 国土交通大臣は、同意基準を定めるに当たつては、第七条第一項に規定する開発整備に関し地方公共団体の自主性が生かされるよう配慮しなければならない。
 国土交通大臣は、同意基準を定めようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。
 国土交通大臣は、同意基準を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
 前二項の規定は、同意基準の変更について準用する。
 (振興拠点地域基本構想の変更)
第十条
 都道府県は、第八条第一項の規定による同意を得た振興拠点地域基本構想を変更しようとするときは、主務大臣に協議し、その同意を得なければならない。
 第七条第四項及び第八条の規定は、前項の場合について準用する。
 (振興拠点地域基本構想の実施等)
第十一条
 都道府県は、振興拠点地域基本構想が第八条第一項の規定による同意を得たときは、関係民間事業者の能力を活用しつつ、第七条第一項に規定する開発整備を当該同意を得た振興拠点地域基本構想(前条第一項の規定による変更の同意があつたときは、その変更後のもの。以下この節において「同意基本構想」という。)に基づいて計画的に行うよう努めなければならない。
 主務大臣、関係行政機関の長、関係地方公共団体及び関係事業者は、同意基本構想の円滑な実施が促進されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
 (促進協議会)
第十二条
 同意基本構想に係る第七条第一項に規定する開発整備の内容が著しく広範にわたる等の場合において、主務大臣、関係行政機関の長及び当該同意基本構想を作成した都道府県の知事(以下この条において「主務大臣等」という。)が必要があると認めるときは、同意基本構想ごとに、当該開発整備の促進に関し必要な協議を行うための協議会(以下「促進協議会」という。)を組織することができる。
 前項の協議を行うための会議(次項において「会議」という。)は、主務大臣等又はその指名する職員をもつて構成する。
 会議において協議が調つた事項については、主務大臣等は、その協議の結果を尊重しなければならない。
 促進協議会の庶務は、国土交通省において処理する。ただし、当該促進協議会が沖縄県の区域内の地域について作成された同意基本構想に係るものであるときは、国土交通省及び内閣府において、共同してこれを処理する。
 前項に定めるもののほか、促進協議会の運営に関し必要な事項は、促進協議会が定める。
 (地方税の不均一課税に伴う措置)
第十四条
 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第六条第二項の規定により、総務省令で定める地方公共団体が、重点整備地区内において中核的民間施設のうち総務省令で定めるものを同意基本構想に従つて設置した者について、当該中核的民間施設の用に供する家屋若しくはその敷地である土地の取得に対する不動産取得税又は当該中核的民間施設の用に供する家屋若しくは構築物若しくはこれらの敷地である土地に対する固定資産税に係る不均一の課税をした場合において、これらの措置が総務省令で定める場合に該当するものと認められるときは、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第十四条の規定による当該地方公共団体の各年度における基準財政収入額は、同条の規定にかかわらず、当該地方公共団体の当該各年度分の減収額(固定資産税に関するこれらの措置による減収額にあつては、これらの措置がなされた最初の年度以降三箇年度におけるものに限る。)のうち総務省令で定めるところにより算定した額を同条の規定による当該地方公共団体の当該各年度(これらの措置が総務省令で定める日以後において行われたときは、当該減収額について当該各年度の翌年度)における基準財政収入額となるべき額から控除した額とする。
 (資金の確保)
第十五条
 国及び地方公共団体(港務局を含む。次条、第十七条及び第十八条第二項において同じ。)は、同意基本構想に定める中核的民間施設の設置に要する経費に充てるために必要な資金の確保に努めなければならない。
 (公共施設の整備)
第十六条
 国及び地方公共団体は、同意基本構想に定める公共施設の整備の促進に努めなければならない。
 (国等の援助)
第十七条
 国及び地方公共団体は、同意基本構想の達成に資するため、同意基本構想に基づき中核的民間施設の設置及び運営を行う者に対し必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めなければならない。
 (地方債の特例等)
第十八条
 地方公共団体が、民間事業者に貸し付け、又は出資の目的とするために、同意基本構想に定める重点整備地区において整備されるべき中核的施設及び第七条第一項に規定する開発整備のために特に必要と認められる施設であつて、公共施設以外のものの整備を行おうとする場合においては、当該整備に要する経費(当該地方公共団体の財政状況、当該事業の性質等を勘案して総務大臣が指定する経費に限る。)であつて地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第五条各号に規定する経費に該当しないものは、同条第五号に規定する経費とみなす。
 地方公共団体が、同意基本構想を達成するために行う事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。
 (農地法等による処分についての配慮)
第十九条
 国の行政機関の長又は都道府県知事は、重点整備地区内の土地を同意基本構想に定める中核的施設の用に供するため、農地法(昭和二十七年法律第二百二十九号)その他の法律の規定による許可その他の処分を求められたときは、当該施設の設置の促進が図られるよう適切な配慮をするものとする。
 (監視区域の指定)
第二十条
 都道府県知事又は地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)の長は、振興拠点地域及びその周辺の地域のうち、地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあり、これによつて適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域を国土利用計画法(昭和四十九年法律第九十二号)第二十七条の六第一項の規定により監視区域として指定するよう努めるものとする。
 (大都市等の特例)
第三十四条
 第七条、第八条及び第十条から第十二条までの規定により都道府県が処理することとされている事務は、振興拠点地域の全部が指定都市又は地方自治法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下この条において「指定都市等」という。)の区域に含まれる場合においては、当該指定都市等が処理する。
 前項の場合においては、第七条、第八条、第十条及び第十一条の規定中都道府県に関する規定は、指定都市等に関する規定として指定都市等に適用があるものとする。
 第一項の場合においては、第十二条第一項中「及び当該同意基本構想を作成した都道府県の知事」とあるのは、「並びに当該同意基本構想を作成した指定都市等の長及び当該指定都市等を包括する都道府県の知事」とする。
 (主務大臣)
第三十五条
 この法律における主務大臣は、次のとおりとする。
   振興拠点地域基本構想の協議に関する事項及び同意を得た振興拠点地域基本構想の円滑な実施の促進に関する事項については、国土交通大臣、内閣総理大臣、総務大臣、農林水産大臣及び経済産業大臣並びに当該振興拠点地域基本構想に定める第七条第二項第四号の中核的民間施設に係る次の区分に応じて次の大臣
     特定施設整備法第二条第一項各号に掲げる施設 当該施設ごとに同法第五十九条各号の区分に応じて当該各号に定める大臣
     第七条第二項第四号の政令で定める施設 当該施設ごとに政令で定める大臣
 
○多極分散型国土形成促進法施行令(抄)
(昭和六十三年六月十四日政令第百九十四号)
 (振興拠点地域に係る中核的施設)
第四条
 法第七条第二項第四号の政令で定める施設は、次に掲げる施設(民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法(昭和六十一年法律第七十七号)第二条第一項各号に掲げる施設を除く。第七条において同じ。)とする。
   研究施設
   実験施設又は観測施設
   情報処理施設
   電気通信施設又は放送施設(有線テレビジョン放送施設を含む。)
   展示施設又は見本市場施設
   研修施設又は会議場施設
   交通施設(道路及び飛行場にあつては、民間事業者が設置及び運営するものに限る。)
   事業場として相当数の企業等に利用させるための施設であつて、当該企業等の業務の円滑な実施を図るため、情報処理又は電気通信を高度に行うための機能並びに建築設備の制御及び作動状態の監視を高度に行うための機能を有するもの
   流通業務施設
   教育施設
  十一  教養文化施設
  十二  スポーツ又はレクリエーション施設
  十三  休養施設
  十四  医療施設
  十五  前各号に該当しない施設であつて、スポーツ、音楽、展示等の用に供するための多様な機能を有するもの
 (人口及び行政、経済、文化等に関する機能が過度に集中している地域及びその周辺の地域)
第五条
 法第八条第一項第一号イの政令で定める地域は、平成四年三月一日における次に掲げる区域とする。
   首都圏整備法(昭和三十一年法律第八十三号)第二条第三項に規定する既成市街地及び同条第四項に規定する近郊整備地帯並びに同条第五項に規定する都市開発区域であつて次に掲げる区域
     土浦市、茨城県稲敷郡阿見町、同県新治郡出島村、同県同郡千代田町及び同県同郡新治村の区域
     つくば市及び茨城県稲敷郡茎崎町の区域
     熊谷市及び深谷市の区域
   近畿圏整備法(昭和三十八年法律第百二十九号)第二条第三項に規定する既成都市区域
   首都圏、近畿圏及び中部圏の近郊整備地帯等の整備のための国の財政上の特別措置に関する法律施行令(昭和四十一年政令第三百十八号)第一条に規定する区域
 (施設ごとに定める主務大臣)
第八条
 法第三十五条第一号ロの政令で定める大臣は、第四条各号の施設ごとに、当該施設の設置の目的、その運営の態様等を勘案して国土交通省令で定める当該施設に関する細分に応じて、それぞれ当該細分に係る施設の設置及び運営に関する行政を所管する大臣とする。
 法第三十五条第二号ロの政令で定める大臣は、前条に規定する施設ごとに、当該施設の設置の目的、その運営の態様等を勘案して国土交通省令で定める当該施設に関する細分に応じて、それぞれ当該細分に係る施設の設置及び運営に関する行政を所管する大臣とする。
 国土交通大臣は、前二項の国土交通省令を定めようとするときは、関係行政機関の長に協議しなければならない。