【 安全で安心な国土の形成に資する国土利用 】 | |
・ | 今回の新潟県中越地震や阪神・淡路大震災では、歴史的に災害が多い地 区ではそれに応じた土地利用がされており被害が小さかった例がある一方で、地盤が悪く昔は居住していなかった地域や地形の所では震度がそれほど大きくない にも係らず被害が大きかった。防災面での土地利用の計画、規制の必要性として学ぶべきである。 |
・ | ハザードマップの公表が防災面の土地利用調整の機能を担うと考えられ ているが、住民にとってマップの情報は現実感が少なく、住宅の市場価格に反映されている例がない。防災の面からは市場メカニズムや住民の自発性に期待する だけではなく、規制や土地利用誘導も必要である。 |
・ | 災害のリスクはあるが地価が安い所に住むという選択もあり得るが、日 本では危険な場所にあえて住んだ人の自己責任が明確でないことが問題である。被災した場合、住民は行政の責任と考える意識が強いのが現状である。 |
・ | 住宅購入時には安全だった地域が都市化によって災害のリスクが大きく なった場合、自己責任として都市化による外部不経済を個人に負わせることは難しいのではないか。 |
・ | 震災を対象としたハザードマップはわが国では震度5以上の恐れのある 地域が広域に渡り全国的に危険地域になってしまう。 |
・ | ワークショップによるハザードマップ作成が最も効果的と言われている が、興味のある住民しか参加しないという問題点がある。ドイツでは、防災を含めた計画に無作為抽出された住民が参加するシステムとなっている。 |
・ | 住宅の構造が水害被害を拡大させる原因にもなっている。水害の恐れの ある地域では、地震だけでなく水害に強い住宅開発が必要ではないか。 |
・ | 今後は高齢者対策が重要となる。高齢者が多い地域では、常時高齢者が どこにいるかという情報を収集することも重要である。 |
・ | 今回の災害を調査することによって、中山間地域での災害についてわか ることが多いはずである。特に、森林や農地の多面的機能があったのかどうかの調査が必要である。 |
・ | 災害の恐れが日常的にある地域の住民の団結力の強さ、水害と共存する 生活様式、水防の歴史など、災害文化を調べる必要がある。 |
・ | 今回の災害では、過疎化の進んだ山村では莫大な復興コストをかけるよ りは、都市部に移住するべきだと考えていたが、現地調査を通じて強固なコミュニティについても考慮に入れる必要性を切実に感じた。 |
・ | 被災した地域に被害が集中しないよう、例えば流域の遊水機能など、そ れぞれの地域がリスクを負担し、全体として災害リスクを低減する都市形成の発想が必要である。 |
【 美しい国土の形成に資する国土利用 】 |
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・ | 地域から親しみを持たれた全国各地の○○富士といった、国土として重 要なランドマークをどう保全していくかという視点が重要である。 |
・ | 国土レベルで景観を考える場合の対象地域としては、都市と農村の中間 の郊外のバイパス沿道や陸と海の中間点として海岸線など、土地利用が変化する場所が各用途のすき間となって景観が乱れている。 |
・ | 二次的自然景観を考えるべきではないか。伝統的な景観の維持と観光の ために地域コミュニティやボランティアで火入れをし、草地景観を保全しようとする動きがある。 |
・ | 自然再生は原生自然の再生ではなく、昭和30年代くらいの自然を地域 のアイデンティティとし、美しさの背後にある人間と自然の関係を取り戻そうという動きである。 |
・ | 人々の価値観が文化的な方へ向いている現在、歴史・文化的な景観や外 観をもつ都心を再生するべきである。 |
・ | コミュニティサイズの「中景観」の悪化を住民が意識しはじめることが 重要である。 |
・ | 屋根の重い在来建築が地震で被害を受けて、美しい漆喰や木の住宅がデ ザインに地域性のないプレハブ住宅に建て替えられようとしている。これは地域のアイデンティティを損なう。 |
・ | 棚田等、危機に瀕している景観を体系的に整理した土地利用のレッド データブックがあっても良いのではないか。 |
・ | 国土全体の話であっても、個々の地域景観の積み重ねであることから、 自治体とタイアップしてモデル地域をつくってはどうか。 |
・ | これまで自治体間の調整が課題であったが、市町村合併で一つの自治体 となって景観調整の可能性が高まっている。 |
・ | せっかく景観法ができたのだから、当面は景観法の活用という方向で努 力すべきである。 |
・ | 「美しさ」は水と緑のネットワークとも密接な関係があり、また、他の テーマとも極めて関連が深い。 |