第 6回国土利用計画研究会 議事概要

  1.日時

   平成16年12月13日(月)18:00〜20:00

 2.場所

   中央合同庁舎2号館高層棟B1階 国土交通省第2会議室

 3.出席委員(敬称略)

   小林委員長、武内委員長代理、有田委員、片田委員、小池委員、佐々木委員、中井委員、日置委員

 4.議事(概要)

   1) 開会
   2) 議事(1) 個別テーマの検討(その5) 都市的土地利用の整序・集約化と自然環境の再生等(その2)
     事務局より資料説明後、質疑応答。
   3) 議事(2) 今後の国土利用における中心的課題、国の役割(その2)
     事務局より資料説明後、質疑応答。
   4) 閉会

 5.主な発言内容

【 都市的土地利用の整序・集約化と自然環 境の再生等 】
 ・  集約化の必要性として、高齢者のモビリティ の低下や郊外での犯罪増加等、ミクロな社会的問題、生活の問題点が生じていることと、排出されたCO2対 策費などのスプロールの社会的コストが増加していることを前提として記述するべき。
 ・  計画的手法として土地利用計画の見直しを強 調すべきではないか。
 ・  事業的手法として空き家の集約化と敷地規 模の拡大、再自然化の負の開発利益を正の利益と一体化して捻出といったことも重要。都市的利用側からだけでなく、自然側からの事業的手法もあり得るのでは ないか。
 ・  人口減少を環境容量の適正化の好機として積 極的に捉える視点も必要ではないか。我が国における適正な環境容量について考えてもいいのではないか。
 ・  行政自体が土地利用計画を重視せず、市街化 調整区域等に公共施設を配置してきたことが都市的土地利用の拡散に寄与してきた面がある。行政がまず公共施設を市街地内に戻すべきである。
 ・  都市化の圧力によって災害の危険性のあると ころに居住している地域を、今後リスクの観点からどのように適正化、誘導するべきか。人口減少と危険度の地域分布を見比べて、公共施設配置等を検討すべ き。
 ・  今後、土地の周辺環境の情報を市民へリアル な形で提供することが公の責務となるのではないか。
 ・  日本では、先祖からの土地に対する非常に強 い執着と、災害のリスク情報が過小評価されることが相まって、安全な土地利用を実現する上で大きな弊害となっている。そのため、この人口減少のタイミング にあわせ行政が思い切った規制を行う必要性がある。
 ・  かつては治水は住民自ら行うものであった が、戦後、利水と治水が国の仕事となってから、住民が被災を公の責任と考えるようになったため、住民自ら安全を確保するという意識が希薄になった。こうし た意識は、安全な土地利用を実現する上で大きな障害となっている。治水の主体を今後、どのように分権化し、住民レベルへ移行させていくかも問題である。
 ・  都市と郊外間の移動手段としては、グリーン ウェイやフットパスを整備して、徒歩や自転車の移動を増やすことが効果的である。
 ・  地方都市では、かつての田んぼの真ん中に新 設された駅の周辺において、近年徐々に市街化が進んでいるが、アクセス道路が狭くバスで駅前にアクセスできない場所があるなど都市計画的な配慮が欠けてい る。都市の拡大過程に対する計画的な措置が必要である。


【 今後の国土利用 における中心的課題、国の役割 】
 ・ 「基礎条件の変化」として、これまでの林地 から農地へ、農地から宅地へという一方向の土地利用変化ではない「国土利用の可逆性」を考え方として盛り込むべき。
 可逆性に関し、人口減少に伴い利用されなくなった土地につ いて、従来の都市的土地利用から自然的土地利用へという変化とは逆の変化が必要である。しかし、こうした変化は利益が生じないため、何らかの方策を講じな ければ土地利用が十分になされずに荒廃、スラム化してしまう。また、事業という形で住民や地方公共団体に任せることはできないため、国が音頭をとって解決 しなければならない。再自然化が最も金がかからず実現可能性が高い方策であろう。
 自然空間を拡大していくために、選択的管理について「再自 然化」を積極的に言うべき。
 環境省・林野庁での現在の議論を踏まえた上で、CO2対策 を盛り込むべき。
「水と緑のネットワーク」は生活空間との有機的な結びつきを通して、今 までとは違う人の住み方や生活の豊かさのあり方として記述がなされるべき。
 国土における人間と自然の望ましい関わりのあり方として、 ランドスケープ、風土という言葉を盛り込むべき。
 災害に関しては、コミュニティーのあり方、災害文化的なも のを踏まえて記述すべき。
 国土利用計画としての国土論がない。地域社会や生活のあり 方がどうあるべきかという合意がなされるべき。
 地方分権と言われているが、実際の問題となると実現し得な い部分も多い。国家の役割は明確にあるはずなので、役割分担をきっちり議論すべき。明治以降、防災や土地利用の面で国と地方の関係がどうであったのか検討 が必要。
 人口減少、財政逼迫は特定分野だけでなく全体の状況として 記述されるべき。
 再自然化や選択的管理がどういう目的でなされるのかという 目標の概念が明確でない。
 再自然化については、戦後の拡大造林を再評価した上で、森 林の治山機能や木材需給の動向を含めてその必要性を考えるべきである。
 災害の面では、今後、合意形成のために住民参加型であるこ とが非常に重要である。都市化の逆の過程によって負の利益がでる状況での合意はたいへん困難だが重要であり、その方法を検討していくべきである。
 防災のようなマイナス面の事象については合意が得にくく、 住民に近い地方政府では規制等の措置が困難である。このような面は、国が規制・指導を行わなければ安全な土地利用の実現は困難と考える。
 電力などの各地方の資源はかつて全国的な観点から大都市圏 へまわされていたが、今後はそれぞれの地方のイニアチブで考えられることが重要である。
 中国地方のある市町村の台風の被害を受けた森林所有者の7割 がもはや針葉樹ではなく広葉林に転換したいという調査結果があり、現実的に天然林化に向かっている。このような最近の具体的な問題を例に(国土利用計画 の)必要性を提示したほうが、理解を得やすいと考えられる。

(速報のため、事後修正の可能性があります。)


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