1.計画の意義

(これまでの近畿圏基本整備計画)
近畿圏基本整備計画は、首都圏と並ぶ我が国の経済、文化等の中心としてふさわしい近畿圏の建設とその秩序ある発展を目的とする近畿圏整備法(昭和38年法律第129号)に基づき、これまで四次にわたり策定されてきた。

第一次計画(昭和40年5月)は、昭和40年代における大都市の過密の弊害の防止と地域格差の是正を図り、産業の発展と住民福祉の向上を両立させつつ近畿圏の秩序ある建設と均衡ある発展を目指し、第二次計画(昭和46年7月)は、都市部の公害や住宅難、地方部の生活環境整備の遅れの解決、地域特性を踏まえた均衡のとれた圏域の発展を目指した。さらに第三次計画(昭和53年11月)は、人間居住の総合的環境の形成、第四次計画(昭和63年2月)は、多極分散型国土の形成の先導、国際経済文化圏の形成、多核連携型圏域構造の形成、活力ある新社会の実現により新しい近畿圏の創生を目指してきた。

(第四次計画策定以降の近畿圏整備)
第四次計画の策定以降、関西文化学術研究都市の建設、関西国際空港の開港、明石海峡大橋の開通といった大規模プロジェクトが進捗した。関西文化学術研究都市や関西国際空港により近畿圏は文化学術研究や国際交流における全国的中枢機能の強化に向けての基盤が整いつつあり、明石海峡大橋により四国地域との間で交流が活発化し始めている。

一方、平成7年1月に阪神・淡路大震災が発生し、阪神・淡路地域を中心に甚大な被害がもたらされ、被災地復興の推進が課題となっている。

21世紀の国土のグランドデザイン−地域の自立の促進と美しい国土の創造−)
平成10年3月に決定された新しい全国総合開発計画である「21世紀の国土のグランドデザイン」では、国土計画の基本的考え方として、複数の国土軸が相互に連携する多軸型国土構造を目指し、「多自然居住地域の創造」、「大都市のリノベーション」、「地域連携軸の展開」及び「広域国際交流圏の形成」という4つの戦略を展開することとしている。

今後の近畿圏整備は、「21世紀の国土のグランドデザイン」で示された我が国の将来像、課題達成のための戦略等を踏まえて推進することが必要である。

(計画の意義)
近畿圏は、世界に誇れる歴史文化遺産、優れた自然環境、卓越した産業資源、学術研究資源等の諸資源を豊富に持つ圏域である。成熟社会に移行しつつある21世紀にかけてこれらの世界的にも優れた資源の有用性を再認識するとともに、これを垣根を越えて融合する等の高度な活用により、産業・文化・生活等が高度に調和・均衡・融合し、安全でゆとりとくつろぎのある暮らしを実現することが必要である。

また、グローバル化の進展の中で歴史、文化、学術研究、環境保全等の各分野による、世界に向けた積極的な情報発信によって、世界のあらゆる地域と活発な交流を行う、いわば「世界都市」とも呼ぶべき近畿圏の実現が必要である。

本計画は、「21世紀の国土のグランドデザイン」で示された我が国の将来像、課題達成のための戦略等を具現化しつつ、安全でゆとりとくつろぎのある、「世界都市」とも呼ぶべき近畿圏を実現することを目的として策定するものである。

2.計画の性格

この計画は、近畿圏整備法に基づいて、長期的かつ総合的な視点から今後の近畿圏整備の方向を示すものであり、民間の諸活動に対しては誘導的役割を果たすものであり、関係行政機関及び関係地方公共団体に対しては、近畿圏の整備に関する諸計画及び諸施策の指針となるものである。

3.計画の対象区域と期間

この計画は、福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県及び和歌山県の区域を対象とする。

計画の期間は、今後、おおむね15箇年間とする。

4.計画の実施

@ この計画は国や地方公共団体、関係事業者のみならず、地域住民、NPO[1]、民間企業等の多様な主体による地域づくりへの積極的な参加、協力が必要である。

これからの近畿圏整備に当たっては、公的主体と民間主体、国と地方との間の適切な役割分担が不可欠である。公的主体は、基盤の整備、制度の構築等民間主体の活動の場の整備を推進し、民間主体は、創意と工夫による多彩な活動により近畿圏整備に参加する。国は、国家的観点からの施策や基幹的な基盤整備等を推進するとともに、地方公共団体は、自らの責任と選択により地域づくりに努める。

さらに、多様な主体がこの計画に対する理解を深めていくために、公的主体は広報等に取り組む。

A これからの近畿圏整備に当たっては、既存の行政単位を越えた広域的な連携の推進が必要である。そのため、地方公共団体は、自ら積極的に他の地方公共団体と連携、協力する意識を持ち、交流事業の実施、共同利用施設の整備等を図るとともに、地域間の連携の主体となる協議組織等への支援方策を検討する。国においても既存の行政区域を越えた多様な地域間の連携を支援、促進する。

B この計画の実施に当たっての地方公共団体の役割の重要性にかんがみ、地方財源の確保と安定のため、今後とも適切な措置を講じることが必要である。

C 環境への配慮を十分に行う観点から、基盤の整備に当たっては、環境保全に関する各種計画との連携を図るとともに、環境影響評価[2]等を適切に実施する。

D この計画は、その進捗状況を点検していくとともに、この計画と関連する主要な計画が策定又は改定された場合や、首都機能移転に関する検討の結果が得られ、近畿圏に重大な影響を及ぼす等、社会経済情勢の変化があった場合においては、弾力的な運用又は見直しを行う。

第1部 近畿圏整備の基本方針

第1章 近畿圏をめぐる状況と課題

1.我が国をめぐる状況

(高度情報化時代)
情報通信技術の飛躍的な進展と情報通信網の整備によって地球規模での時間や距離による制約や地域の立地による較差は解消され、個人、企業の活動が世界と直結されつつある。それに伴い活動や交流を進める上での選択肢が増加し、業務、流通、取引等の効率化、情報の持つ価値の重視等の環境変化が生じている。その一方、個人情報の保護等の問題も生じている。

(グローバル化の進展)
地球規模での市場の拡大、金融、取引等の経済面でのグローバル化の進行とともに、文化、学術研究、スポーツ等様々な活動における交流の活発化が進んでいる。また、国境を越えた地域間の競争の一層の激化が予想される。

 

(地球環境問題)
オゾン層の破壊による有害紫外線の増加、二酸化炭素等の温室効果ガスの増加による地球の温暖化等地球規模での環境の悪化の進行のおそれ、人口爆発等による地球規模での食料、資源やエネルギーの供給制約の表面化の可能性が高まっている。一方、気候変動枠組条約に基づく京都議定書[3]等にみられるように、環境に対する国際的な枠組みは強化されつつある

(少子・高齢化時代)
我が国の総人口は、少子化を主因に急速に伸びが鈍化してきており、21世紀初頭にピークを迎えた後人口減少局面に入ることが確実であり、同時に高齢化が一層進行するものと見込まれる。また、夫婦世帯、単身世帯の増加や少子化等によって世帯人員の減少が一層進行している。

(国民意識の変化)
人々の価値観は、量より質の風潮や、物の豊かさよりも人と人とのふれあい等心の豊かさ重視への方向に変化し、また、ボランティア、NPO活動、生涯学習への積極的な参加にみられるようにライフスタイルも多様化しつつある。

また、自然をかけがえのないものとして再認識し、その価値に重きを置くとともに、清浄な空気を求める等生存基盤としての自然の必要性も強く意識されつつある。

さらに、男女間の固定的な役割分担によるのではなく、男女がともに社会に参画し責任を担おうとする考え方が浸透しつつある。

2.近畿圏をめぐる状況と課題

(産業をとりまく環境の変化)
近年、経済のボーダレス化[4]に伴う国際的な競争の激化や産業の空洞化、情報化の進展、産業構造の変化等が進む一方、バブル経済の崩壊以降、国内経済低迷の長期化等産業をとりまく環境は急速に変化しつつある。近畿圏は、我が国の工業の中枢的な圏域として発展してきたが、このような産業をとりまく環境変化の中にあって、製造品出荷額の全国的なシェアの減少傾向、大規模低未利用地の発生等産業における活力の低下がみられつつある。

(大都市問題と中枢性の低下)
大都市では、通勤通学時間の長時間化と都心の空洞化、交通混雑、環境改善の遅れ、廃棄物処理の問題、ヒートアイランド現象[5]、防災上の脆弱性等の大都市問題に加えて、業務管理機能、卸売機能等の全国的中枢機能の低下が生じている。また、工場跡地等では効率的な土地利用が求められている。

(南北近畿の活力の低下)
北近畿、南近畿では、農林水産業を始めとする地域産業の不振、人口減少、高齢化の進展により、農業の多面的機能、森林の有する公益的機能の維持、地域経済の維持、さらには地域の自立が危惧されている。

(様々な連携の取組)
近畿圏では、従来から様々な連携が行われ、平成11年には各経済団体と地方公共団体が共同で関西広域連携協議会を設立し広域連携に取り組んでいる。また、地域連携軸のように地方公共団体、地域住民、企業等様々な主体が広域連携を積極的に推進している。

(阪神・淡路大震災の教訓と防災への意識の高まり)
阪神・淡路大震災は、神戸・阪神・淡路地域を中心とする近畿圏に甚大な被害をもたらしたが、この大震災を通じて、日本の都市の災害に対する脆弱性、防災性向上の必要性が再認識されるとともに、人々の防災意識が高まった。

第2章 近畿圏の将来像

第1節 目標とする社会や生活の姿

1.強くてしなやかな産業経済圏域の形成

近畿圏は、近世から我が国の産業発展の重要な地域としての役割を担ってきた。現在でも、京阪神という我が国有数の大都市集積を誇るとともに、日本有数の大企業群、高度かつ独自の技術を有する中小企業集積、産業技術、技術開発力等の優れた産業資源を持っており、高次の生産能力を保持している。また、大阪、京都等を中心に、その立地優位性をいかした情報関係のベンチャー企業集積の動きがあるなど次代を担う産業の胎動がみられるとともに、地方では情報通信体系の整備により産業振興の潜在力が高まっている。

一方、21世紀における近畿圏をとりまく状況は、グローバル化や高度情報化の進展、地域間競争の激化等によりますます厳しくなるものと予想される。

今後、近畿圏は、京阪神の高次都市機能の充実と連携による競争力の強化、高度な産業技術、学術研究の蓄積等をいかした新産業創出や既存産業の高度化を図る。これによって、情報中枢性や起業力の低下等の諸課題を克服するとともに、今後の地域間競争や世界経済の激動に耐え、柔軟に対応し、人々に経済的な豊かさをもたらすことのできる「強さ」と「しなやかさ」を持った「産業経済圏域」の形成を目指す。また、これを通じて我が国全体の経済の活性化にも大きく寄与する。

2.内外から人々が集う交流・情報発信圏域の形成

近畿圏は、我が国の経済、文化の中心の1つであり、京都や奈良を中心とする歴史文化資源、吉野熊野地域や若狭湾沿岸等の自然資源のように、各地域は様々な地域資源を豊富に持っており、古くから海外や我が国全域との人、もの、情報の交流が活発な圏域として発展してきた。また、関西国際空港等の国際的な交通体系、道路、鉄道等の全国的な交通体系や国際会議場等国際交流の拠点の整備の進展がみられている。

一方、グローバル化の進展や地域間競争の激化の中で、圏域全体または圏域内の各地域が発展するためには、内外の異なる地域と様々な交流を活発化させることが必要である。

今後、近畿圏は、多様で個性的な資源をいかし、圏域が一体となって国内や世界に向けて積極的に情報発信するとともに、個人と個人・地域が出会う集客交流、国際交流を推進する。これによって海外や国内の多くの人々が訪れ、にぎやかで活気にあふれる「交流・情報発信圏域」の形成を目指す。また、我が国における世界との交流の中心の一つとしての役割を担う。

3.文化・学術の中枢圏域の形成

近畿圏は、飛鳥、奈良、京都等に都がおかれ、長い間、政治、経済、文化の中心であったことから、我が国随一の貴重な歴史文化遺産の蓄積を誇っている。学術研究の分野においても、関西文化学術研究都市、我が国有数の大学等の卓越した学術研究集積、独創性にあふれた研究者等の資源を数多く有し、独創的な学術研究を推進する力を保持している。

一方、グローバル化や国民の価値観の多様化が一層進行する21世紀においては、国際人としての教養、また自国・自地域へのアイデンティティを確立するものとして、歴史や文化、学術への関心が一層高まってくるものと予想される。

今後、近畿圏は、学術研究資源をいかし新たな学術研究を推進するとともに、世界的な価値を有する文化財を始めとする歴史文化遺産を適切に保全・再生する。これによって、歴史文化の香りと学術の創造性にあふれ、人々に心の豊かさをもたらすことのできる「文化・学術の中枢圏域」の形成を目指す。さらに、我が国において、新たな学術研究を先駆けて創造する役割や歴史文化の教育の場を提供し、さらには将来へと継承する役割を担う。

4.歴史文化や自然と調和した安全で快適な生活空間の形成

近畿圏では、京都、奈良にみられるように、多くの歴史的建造物、文化財が身近な地域に数多く存在し、また、古くからの伝統文化、多彩な地域固有の文化が日常生活に深く根付いている。さらに六甲・生駒・和泉山系の緑地、琵琶湖にみられるように、人々の日常生活の身近なところに豊かな自然がある。そして、これらの歴史的風土、文化、自然が生活環境と良好な調和を保っている。

一方、21世紀では、物の豊かさよりも心の豊かさを重視する価値観の変化、また、自然の価値に重きをおくという人々の意識の変化等が生じ、経済的発展を目指しつつも環境保全によって持続的な発展が可能な社会を築くことが必要とされている。

今後、近畿圏は、歴史的風土、文化、自然と調和し安全で良好な居住環境を形成するとともに、自然の適切な保全と再生を図る。これによって歴史、自然が日常生活に溶け込み、「安全で快適な生活空間」の形成を目指す。

第2節 目指すべき圏域構造

1.多核格子構造

近畿圏では、高次都市機能、産業、文化、学術研究、自然等の個性を持つ都市・地域が圏域各地に散在している。

しかしながら、近畿圏は、京都、大阪、神戸を中心とした播磨地域から琵琶湖東部にかけての地域に都市・産業機能が集中する、いわば三極一軸の構造となっている。また、京阪神大都市地域では産業における活力や全国的中枢機能の低下、南北近畿では地域産業の低迷、人口減少、高齢化により地域活力が低下している。

これらの諸課題は、各地域それぞれが取り組むだけではなく、圏域全体で解決を図ることが必要である。すなわち、近畿圏の産業活力や全国的中枢機能を高めるためには、京都、大阪、神戸という大都市の諸機能の強化だけではなく、圏域全体にわたる広域連携によって圏域の一体化や諸機能の共有を図ることが必要である。

近畿圏は、それぞれの都市・地域が個性を磨きつつも水平的なネットワークで結ばれた一体的な圏域を形成する「多核格子構造」の形成を目指す。すなわち、

@ 各都市・地域は個性を育てるとともに、切磋琢磨し競い合い、「核」となることを目指し、さらに、これらの「核」が散りばめられた「多核」である近畿圏を形成する。

A 都市・地域間の重層的な連携により、圏域の各地域で「連携軸」を形成する。

B 各地域で形成されたこれらの「連携軸」の状況を圏域全体で見ると、あたかも東西方向、南北方向に広がる「格子状」となる。このようにして、「多核格子構造」と呼ぶべき圏域構造を形成する。

(「核」の形成)
各都市・地域は、歴史、文化、多彩な自然環境、都市集積、産業集積、学術研究集積等の恵まれた資源の活用等により「個性」を伸張させ、さらに、それぞれが互いに切磋琢磨し競い合うことによって、生き生きとした個性が輝く「核」となることを目指す。

(「連携軸」の形成)
各都市・地域間における重層的な連携によって「連携軸」を形成する。「連携軸」は、各都市・地域の「個性」を共有化し、相互の機能分担、相互補完を進める。

「連携軸」では、人、もの、情報の活発な交流が行われ、また、生活、産業、文化等の諸活動が広域的に営まれ、選択性の高い暮らしが可能となる。また、各都市・地域間の連携により、諸機能の効率的な配置と効果的な利用や、産業、学術研究、国際交流、集客交流等の諸機能の強化が図られる。

(圏域外や海外との連携・交流)
「多核格子構造」を隣接する中部圏、中国地方、四国地方へ発展させ、これらの地域との交流、機能連携を強化する。

また、古くからの中国、朝鮮半島、沿海州、東南アジア等との交流の蓄積をいかしつつ、関西国際空港、神戸港、大阪港、敦賀港等を通じたアジア太平洋地域、環日本海沿岸諸国との交流を強化することによって「多核格子構造」を海外へと発展させる。

2.多核格子構造の意義

(圏域の一体化)
「多核格子構造」は、圏域全体にわたるネットワーク化により各都市・地域の諸機能の圏域全体での共有、圏域の一体化を可能とする。このような圏域の一体化の中で、より広域的な連携を図り諸機能を強化することによって、あるいは新たな連携の構築を図り諸機能を創出することによって、人々の生活と産業の活力の再生、さらには近畿圏全体の再活性化を実現する。

例えば、大阪湾岸に高次の中枢業務機能や国際交流の集積のネットワークが形成され、新たなビジネスの創出が見込まれる。また、関西文化学術研究都市を中心とする各学術研究集積や産業集積間の連携による新産業の創出とともに、歴史文化資源を持つ北近畿、南近畿における広域連携によって集客交流の拡大が可能となる。

あわせて災害時の機能の代替性の確保を可能とする。 

 

(水平的ネットワークの構築)
「多核格子構造」は、その形状から中心となる極の牽引力に依存せず、地域間の関係を京都、神戸、大阪を中心とした階層関係から水平的なネットワークへと転換する。このような水平的なネットワークの中で各都市・地域は、高次都市機能、産業、集客交流、歴史文化、学術研究等の個性をいかした地域づくりが可能となり、多様性を持った、多核である近畿圏が実現する。

さらに、このような地域間の関係の中で、京都、大阪、神戸という3大都市それぞれの諸機能が再活性化に向かうことが期待される。

(他圏域や海外へのネットワークの広がり)
「多核格子構造」は、圏域外へのネットワークの広がり、また、近畿圏各地から海外へのネットワークを可能とする。「多核格子構造」の形成によって、近畿圏は一体となって他圏域、さらには国際的な連携・交流の活発化が実現する。

他圏域との連携・交流の強化は、ひいては、日本海国土軸、西日本国土軸、太平洋新国土軸の形成に寄与し、さらには我が国を「多軸型の国土構造」へと導く。すなわち、山陰方向、北陸方向の連携は日本海国土軸、山陽方向、東海道方向の連携は西日本国土軸、紀淡を経て四国方向、伊勢湾方向の連携は太平洋新国土軸を将来的に形成する。

また、アジア太平洋地域、環日本海沿岸諸国を始めとする海外との連携・交流の強化は、ロシア、韓国等の日本海沿岸諸国との環日本海交流や「東アジア1日圏」[6]を実現する。

3.多核格子構造の実現に向けた戦略的な連携軸の形成

「多核格子構造」の形成に当たっては、播磨地域から神戸、大阪、京都を経て、琵琶湖東部、さらには名古屋大都市地域に至る、従来から諸機能が集積し結びつきの強い連携軸を始めとして、各連携軸の形成を図っていくが、近畿圏全体の一体的な発展のために、次の連携軸を戦略的に形成する。

すなわち、新産業創出、学術研究、国際交流等の高度な機能や卓越した地域資源を持つ都市・地域、または異なる資源や機能を持つ都市・地域における諸機能の充実とそれぞれの機能における連携の強化により、6つの戦略的な連携軸を形成する。

(大阪湾環状軸及び関西内陸環状軸の形成)
@ 大阪から関空・泉州、和歌山、さらに紀淡海峡、淡路島、明石海峡を経て、神戸、大阪にかけて、集客交流、中枢業務、国際交流、物流、産業、学術研究等高次都市機能の充実とそれぞれの機能における連携の強化によって大阪湾環状軸を形成する。

A 播磨科学公園都市、姫路から、北神・三田、京都、関西文化学術研究都市、奈良、五條、和歌山にかけて、産業、学術研究等の諸機能の充実とそれぞれの機能における連携の強化によって関西内陸環状軸を形成する。

(若狭海道軸及び吉野熊野歴史自然軸の形成)
@ 敦賀から小浜、宮津・舞鶴にかけて、自然資源や歴史文化資源、環日本海交流をいかした集客交流、マルチハビテーション[7](複数地域居住)の推進等に係る連携の強化によって若狭海道軸を形成する。

A 和歌山から田辺、新宮、松阪を経て伊勢にかけて、及び伊勢から五條を経て和歌山にかけて、歴史文化資源や自然資源をいかした集客交流の推進等に係る連携の強化によって吉野熊野歴史自然軸を形成する。

(T・TAT連携軸及び福井・滋賀・三重連携軸の形成)
@ 丹後・但馬から阿波、土佐にかけて、諸機能の充実とそれぞれの連携の強化によって地域の活性化、日本海から太平洋にかけての様々な交流の活発化を図りT・TAT連携軸を形成する。

A 福井から滋賀を経て三重にかけて、諸機能の充実とそれぞれの連携の強化によって地域の活性化、中部圏との連携の強化を図り福井・滋賀・三重連携軸を形成する。

第3節 将来の人口像

(近畿圏の人口)
我が国の人口が2007年をピークに減少に転じると予想される中で、近畿圏の人口については、東京圏[8]への転出が抑制されることを前提に1995年の約2,330万人から2007年に 約2,367万人に達したのち、人口減少局面に入り、2015年には約2,344万人(1995年と比べて約14万人増)になると見込む。

(年齢別構成)
近畿圏における生産年齢人口(15〜64歳)は、1995年の約1,639万人から2015年には約1,420万人に減少し、年少人口(0〜14歳)は、1995年の約368万人から2015年には約339万人にやや減少すると見込む。老年人口(65歳以上)は、1995年の約322万人から2015年には約584万人に急増すると見込む。

(一般世帯数)
近畿圏における一般世帯数は、1995年の約815万世帯から2015年には約948万世帯に増加し、1世帯当たりの人員は1995年の2.86から2015年の2.47へと減少して世帯の小規模化が進むと見込む。特に高齢化の進展とあいまって、高齢単独世帯(世帯主が65歳以上の単独世帯)は、1995年の約45万世帯から2015年には約116万世帯に急増すると見込む。

(近畿圏の就業者数)
近畿圏における1995年の就業者数[9]は約1,150万人(うち女性450万人)であるが、2015年においては約1,130万人と、高齢化の進行により約20万人減少すると見込まれる。これに対し、高齢者の就業増加とともに、特にこれまで就業機会に恵まれなかった女性の積極的な社会参加により、男女それぞれ減少分を補い、2015年において、少なくとも1995年と同程度が維持されると見込む。

第3章 近畿圏整備の主要施策

第1節 大都市のリノベーション

京阪神大都市地域には、産業、業務、交流、文化等の高次都市機能が集積しており、古くから近畿圏のみならず我が国における諸活動の枢要な位置を占めてきたが、近年経済面等相対的な地位が低下している。また、大規模地震等による災害に対する脆弱性、長時間通勤や都心部における人口の空洞化等の都市構造のゆがみ、交通渋滞、廃棄物処理問題等の大都市問題は、依然として解決には至っていない。

今後、近畿圏全体を多核格子構造として再生しようとするとき、京阪神大都市地域には、自らの新生の中で圏域全体に経済・社会的波及を及ぼすという、深く新たな役割が課せられている。京阪神大都市地域が引き続き近畿圏の活力源、我が国の中枢の一つとしての役割を担うとともに、大都市問題を解決し安全でゆとりのある生活空間を再生するため、大都市空間を修復・更新し有効に活用する「大都市のリノベーション」を推進する。

特に、大都市のリノベーションの推進に当たっては、西日本の中心としての都市機能の集積を誇る大阪、我が国を代表する文化の中心地である京都、国際貿易港として発展し異国文化がまちにとけこむ神戸という、個性と魅力ある三つの大都市がそれぞれ自立している近畿圏特有の大都市地域の構造をいかし、成熟社会にふさわしい、我が国の大都市整備のあり方を先導する地域の形成を目指す。

また、三大都市の豊富な蓄積を有効に活用するため、相互間の連携を強化し、大阪湾環状軸、関西内陸環状軸を形成する。さらには、近畿圏全体及び中部圏、中国・四国地域との連携を強化する。

これらの取組により活力を取り戻した京阪神大都市地域は、太平洋ベルト地帯とその周辺地域の西日本国土軸への再生の一翼を担い、多軸型国土構造の先導役を果たす。

 

(国際的な魅力を備えた事業環境の形成)
国際化、情報化が急速に進展し、企業が世界的な視野の下で立地する国・地域を選択する中で、京阪神大都市地域における経済活力の維持と雇用の安定を確保するため、利便性・効率性が高く、国際的にも魅力のある事業環境の整備を推進する。外資系企業等の参入は、我が国産業の生産性向上や技術水準の向上等をもたらす場合もあることから、各地域それぞれの特徴をいかした立地環境の整備や支援制度の充実を図るとともに、国内外を問わずグローバル企業やベンチャー企業等の誘致や支援等を推進する。あわせて、国際金融機能の強化を図る。

また、大学院等の高次な学術研究機関の整備による世界的な水準の学術研究の推進、国際交流拠点の整備や国際的コンベンション等の誘致の推進、経済活動を支える関西国際空港、国際港湾や大容量・高速の情報通信に対応した施設の整備、快適かつ効率的に就業できるようオフィス環境の整備等を推進する。

(都市構造の再編)
京阪神大都市地域が有する高次な都市機能の円滑な発揮を促すため、これまでに集積した既存の都市基盤施設の有効利用を図りながら諸機能の再配置を進めるとともに、公共交通機関の活用を図りつつ、生活に密着した諸機能を徒歩圏に配置したまちづくりを推進する。

大都市の都心部や臨海部の低・未利用地について、必要に応じて土地利用規制の見直しを行いつつ、居住機能、商業機能、業務機能等の土地利用と工業生産機能等の土地利用の調整を図り、大都市の中枢機能の回復に資するよう広域的な視点から計画的な土地利用転換を推進する。また、既存の基盤施設を改善、活用しながら、面整備事業等により道路等の新たに必要となる基盤施設の整備を重点的に行い、その有効高度利用を促進する。

さらに、都市の地下空間を積極的に活用し、基盤整備における権利調整の円滑化、理想に近い立地・ルートの選択、計画的な事業の実施のため、大深度地下[10]利用に係る制度化を図る。

(防災性の向上)
老朽木造密集市街地は、大規模地震等の災害に対して脆弱であることから、道路等の基盤施設の整備と併せて老朽木造建築物の除却や敷地の統合等による建築物の共同建て替え等を促進する。さらに、防災性の向上と居住環境の改善に向けた住民の自主的なまちづくり活動等を推進する。

また、住宅を始め建築物や公共施設の耐震性の向上、不燃化の促進、面整備事業等によるオープンスペース及び避難地・避難路の確保等を総合的に推進する。さらに、被災後の応急対策を円滑に進めるため、緊急輸送路の確保や、防災センターや備蓄倉庫、防災用ヘリポート等を備えた防災拠点等の体系的な整備を推進する。

あわせて、地域と連携した情報収集・連絡体制の構築、自主防災組織の育成、防災ボランティアの活動環境の整備等を推進する。

(大都市の居住機能の回復)
長時間通勤等の大都市問題の解決を図るとともに、職住近接の利便や都市的サービスの享受によるゆとりと豊かさが実感できる都市生活を実現するため、都心部の低・未利用地等の土地の有効利用を図りつつ、都心居住を推進する。

このため、必要な都市基盤施設の整備を行いながら、都市ストックとして将来に引き継ぐことのできる良質な共同住宅の供給を促進するとともに、人口の空洞化に伴って失われた日常の買い物、医療等の生活関連施設の再整備、育児環境の整備等を推進する。あわせて、公園や緑地、水辺空間等の身近な自然環境の整備により、都心居住者や大都市における就業者、大都市を訪れる人々にゆとりとやすらぎの場を提供する。

 

(大阪湾ベイエリアの整備)

大阪湾ベイエリアは、高次な都市機能、生産機能、物流機能が集積された地域として発展し、近畿圏の中枢的役割を果たしてきた。しかし、産業の国際分業化等の流れの中、大阪湾ベイエリアは産業構造等の転換期にあり、新たな産業の創出の必要性と、旧来の重厚長大型産業の工場跡地等の活用が重要な課題となっている。

このため、大阪湾臨海地域開発整備法に基づく整備計画の円滑な実施を推進することにより、アミューズメント産業、情報通信・映像関連サービス等の新たな産業の創出のための拠点を形成し、これらの拠点を核として研究開発型企業の誘致・育成等を進め大阪湾ベイエリアの産業構造の転換等を推進する。さらに、これらの個性ある拠点が大阪湾ベイエリアに連なることにより、ベイエリア全体として多方面の分野において総合力を発揮させる。

また、大阪湾ベイエリアは、我が国を代表する国際ゲートウェイ機能を有する関西国際空港や中枢国際港湾等を擁しており、ポートセールス[11]活動等により、これら施設を積極的に活用した国際交流・連携、交易を促進していく。

これらにより魅力ある大阪湾環状軸を形成し、関西内陸環状軸上の関西文化学術研究都市等、更には近畿圏全体との広域連携により、近畿圏全域の総合力を発揮させる。

加えて、「なぎさ海道」[12]等の、市民生活と大阪湾ベイエリア地域における都市と海との関係を回復し、産業に特化されてきた大阪湾ベイエリアにおいて、再び人々の憩いの場、ふれあいの場としての機能を復活させ、ベイエリア固有の文化的営みの再生を図るための基盤づくり等を推進する。これらにより、安全で快適な職住空間の確保等、次世代の都市への再編整備を戦略的に進め、近畿圏のみならず我が国を支える中枢的役割を果たす地域としての大阪湾ベイエリアを創造する。

(大都市のリノベーションと併せた京阪神大都市地域に近接する地域の整備)
京阪神大都市地域に近接する播磨・淡路地域、琵琶湖地域、北勢・中勢・伊賀地域は、比較的なだらかな平地を持つとともに、古くから交通の要衝であったことから経済的に恵まれた地域であり、都市集積や独特の歴史遺産、文化遺産等をもつ一方、琵琶湖等の豊かな自然環境も有し、都市的サービスと豊かな居住環境・自然を併せて享受できる地域として発展してきた。

今後は、従来の大都市地域との連携・交流に加えて、これらの地域が新たな起点となり、中部圏、中国・四国地域等他の圏域との連携・交流を活発化させ、ゆとりある居住環境の形成と豊かな自然環境の保全、熟度の高い都市的な文化と生活様式の創造、産業構造の適切な転換等を進めることを通じて、より魅力的な地域の創造を目指す。

そのため、これらの他地域との連携・交流を強化する交通体系、情報通信体系等の整備を推進することはもとより、豊かな自然環境の適切な保全・管理を行いつつ、中核となる都市においては京阪神大都市地域との機能の相互補完を行いながら都市機能の一層の充実を図り地域の自立性を高める。また、京阪神大都市地域・名古屋大都市地域の産業集積との連携や優れた研究開発機能等をいかすことによって、環境関連産業、観光産業等の新たな産業を振興する。

こうして、独自の魅力と活力を有する京阪神大都市地域に近接する地域は、京阪神大都市地域における大都市のリノベーション等の取組と併せて、太平洋ベルト地帯とその周辺地域の西日本国土軸への再生の先導役を果たす。

第2節 近畿新生のための産業の新たな展開

近畿圏においては、グローバル化による国際競争の激化や産業の空洞化がみられる一方、企業活動や立地に大きな影響を与える情報化が進展するなど産業を取り巻く環境が急激に変化しつつある。

そのため、今後、近畿圏の各地域が有する産業インフラや産業技術、文化、学術・研究開発機能の蓄積等をいかして、このような環境の変化に対応した産業振興を図り、強靱でしなやかな経済社会を構築していく必要がある。

1.各地の産業集積の活性化

近畿圏の産業の新たな展開を図る上で、産業技術や研究開発機能の高度化等を進める拠点として、国、地方公共団体、企業等が一体となって産業や学術研究機関の集積の維持・活性化を図るとともに、それらの集積間の連携の強化が重要である。

(大都市の産業の活力の維持)
近年、近畿圏の大都市においては、基礎素材型産業が多く立地する大阪湾臨海部における遊休地の発生等にみられるように、産業構造の変化の中で、経済の活力の低下が懸念されているところである。その一方で、鉄鋼、金属、化学、機械、医薬品等の大企業群や、部品、金型等の製造・加工等の生産工程で、高度かつ専門的な生産技術を有する中小企業の集積等を中心に、きわめて高度な産業技術が蓄積されているとともに、高度な研究・技術水準を有する研究機関や大学等の集積、大消費地への近接性、情報サービス業等の集積がみられる等多くの立地優位性を有している。今後も、近畿圏の経済の発展や雇用の確保の上で、このような有利な条件を備える大都市の産業が重要な役割を担うことが考えられることから、その活力の維持を図っていく必要がある。

そのため、産業及び人口の過度の集中防止に留意しつつ、立地優位性をいかし産学官の連携の推進や、企業・個人に対する創業支援、道路等交通体系や情報通信体系の整備等を通じて、大都市が有する産業集積の維持・活性化を図り、既存産業の高度化と新規産業の創出を促進する。

特に鉄鋼、金属、化学等の基礎素材型産業については、新製造技術を活用した新素材関連事業等への取組を進めることにより事業の高度化・多角化を促進し、また、東大阪等における中堅・中小企業の集積地については、人材の育成や、企業間及び大学等との連携・交流の促進等により、企業間の有機的なネットワークの維持・活性化を促進する。

また、大都市が有する情報・人・産業の集積等を活用し、ソフトウェア開発や通信等の情報通信・映像関連サービス業、アミューズメント産業等の新たな産業を大阪、神戸等の都心部に近接する臨海部や京都南部等を拠点として振興を図る。

(地域における産業の自立的発展の促進)
大都市以外の各地域においては、地方公共団体等による工業団地の造成や企業、研究機関の誘致、育成等により、電気・電子機器、一般機械や繊維等の多様な産業集積や、高度な研究施設と高質な人材を備える特色のある学術研究機関の集積が形成されつつある。

また、情報化の進展により、生産地、消費地である大都市から遠隔地にある不利な状況が解消され、さらに世界をマーケットとする企業活動の可能性が高まるなど、地域の産業振興の潜在力は大きなものとなることが考えられる。

これらを踏まえ、今後、地域間競争の一層の激化が予想される中で、産業集積地の事業環境を整備することにより、先端技術関連の企業や研究開発機能を備える工場の誘致や育成を図るとともに、環境関連や産業の高度化の上でも重要な情報サービス業等の今後成長の見込まれる分野において新規事業の創出を促進することにより、地域の自立的、内発的発展を図る必要がある。

そのため、各地の学術研究機関の集積の整備を図り、これらと産業集積との幅広い連携を図り産業集積における研究開発機能を強化するとともに、企業の更なる情報化等を支援する。あわせて、産業集積間や産業集積地から空港、港湾へのアクセス性を高める道路等の交通体系やアクセスが容易で安定的かつ高度な情報通信体系の整備等により、事業展開の円滑化を図り、既存の企業や誘致企業にとって魅力のある事業環境の整備を図る。さらには、各地の産業集積、学術研究機関の集積等における技術、人材等の産業資源の蓄積をいかし、企業・個人の創業や新製品の開発に対する支援等を強化することにより、新規事業の創出を促進する。

また、歴史文化遺産等をいかしたまちづくりと連携した商店街や地場産業の活性化等による観光型商工業の振興等により地域の産業の活性化を図る。

2.新規、成長産業の振興

大都市の産業の活力の維持、地域の自立的発展を図る上で、将来成長の期待される分野の産業の振興が重要である。

近畿圏においては、高度かつ多様な産業集積や学術研究機関等におけるバイオ、光量子等に関する豊富な研究成果の蓄積等をいかし、医療・福祉関連分野、環境関連分野、新製造技術関連分野、情報通信関連分野、デザイン業等のビジネス支援関連分野等の成長が期待される。今後、これら成長が期待される分野を始め新規性のある多様な事業活動を促進する必要がある。

このため、大学等から企業への技術移転等により、企業の新分野への進出を支援するとともに、創業の担い手となる企業・個人を支援するため、産業支援機関の統合・ネットワーク化や、創業者に対する円滑な資金の供給、カウンセリングや情報の提供等の事業支援、インキュベータ施設の整備等を進める。さらには、ベンチャー企業へのインターンシップの促進等による起業家精神のかん養等を図る。

3.研究開発機能の強化

各地の産業集積の活性化、新規産業の創出を促進する上で、研究開発機能の強化が極めて重要である。近畿圏では、関西文化学術研究都市を始め、大型放射光施設(SPring−8)を備える播磨科学公園都市等の高度な研究施設を備えた学術研究機関の集積が形成されつつあるとともに、産学の共同研究・受託研究の大幅な増加や京都に複数の大学がかかわる技術移転機関(TLO)[13]が創設される等、大学等を中心に蓄積された研究成果を産業界へいかそうとする動きがみられる。

これらを踏まえ、今後、一層の研究開発機能の強化を図るため、それらの集積等の整備を引き続き進めるとともに、ネットワーク化を図る近畿リサーチ・コンプレックス構想を推進する。さらに、企業のニーズを的確に把握し大学等の研究機能と円滑に結びつける際の窓口となるリエゾン機能[14]の強化や、技術移転機関(TLO)の創設・活用を通じた産学官連携の一層の推進により、大学等の学術研究成果の産業への移転を促進する。

(中枢的な新産業創出促進拠点としての関西文化学術研究都市の重点的整備)
関西文化学術研究都市においては、既に情報通信、物質・光量子、バイオ、環境等の分野において相当に高度な学術・研究開発機関の集積が進みつつあり、近畿圏で中枢的な産業シーズの集積地となっている。

そこで、本都市において、こうした分野を主体に、産学官の連携の下、京阪神等の産業集積や近畿圏各地の学術・研究開発機能との連携、様々な分野間の交流を図りつつ、シーズとなる基盤技術の開発促進、起業家等への効率的技術移転、実証・実験フィールドの整備・提供等を総合的に進める。あわせて、こうした事業の担い手として、様々な新産業創出支援機能とのネットワークを有する中核的機能の整備を図る。

また、研究支援環境の整備・拡充、誘致対象の拡大、幅広い需要に対応した用地等の供給体制の整備、さらに研究開発環境情報の発信強化等によって、立地優位性を高め多様な企業や機関等の充実・立地促進を図る。

4.地場産業の活性化

地場産業については、地方、大都市の各地において織物、陶磁器、木工品等の熟練技術や伝統工芸による産品の産地が見られ、地域の個性の一つとなっている。これらの産地においては、経営者の経営能力の向上や後継者の育成を促進するとともに、産学官連携の強化、産地内外の企業との技術交流等により技術力、デザイン力を強化することを通じて、技術の高度化、製品の高付加価値化、さらには新製品の開発・新分野への進出を促進する。

5.農林水産業の持続的な発展

(農業の持続的な発展)
農業の有する食料その他農産物の供給機能と多面的機能の発揮のためには、農業の持続的発展が不可欠であり、地域特性に応じた生産性の高い農業経営の展開を図るとともに、自然循環機能をいかした持続的な農業生産を推進する必要がある。このため、京都や大阪を始めとした独特の食文化や地域特性に根ざした多彩な農業生産が行われている近畿圏農業の特色や先進的な技術の蓄積及び大消費地への近接性をいかし、新たなブランドの育成や高鮮度、高品質な農産物を提供する等、農業経営の安定化を図る。また、農地の流動化[15]による規模拡大の推進、多様な担い手の育成・確保及び優良農地・農業用水の確保、地力の維持増進、土地改良施設の適切な整備・更新等農業生産基盤の充実等により、食料供給基地としての機能を強化する。さらに、土づくり等を基本として化学肥料・農薬の使用の低減等により環境負荷の低減に配慮した持続性の高い農業生産方式の導入の促進や有機性資源の循環利用システムの構築等を図る。都市及びその周辺で営まれる農業は、生鮮野菜等の供給のほか、レクリエーションの場、防災空間の提供等様々な役割を果たしており、都市住民のニーズに対応した適切な振興策を図る。

中山間地域等において、農業生産活動等の維持を通じて、耕作放棄地の発生を防止し多面的機能を確保する観点から、農業生産条件の不利性を補正するための公的支援を図る。

(林業の活性化)
森林の管理・経営が安定的に持続できる体制の整備を図ることが重要である。森林所有者、林業経営者等については、林業技術の普及に努めるとともに、流域を基本単位として、上下流関係者の連携の下での森林の流域管理システム[16]を推進し、担い手の確保・育成を図る等、林業の活性化を図る。さらに、木材利用を促進するため、木材の環境への優しさ等について積極的な情報発信を行う等、新たな消費者ニーズの創出を図る

(水産資源の維持・向上)
水産資源の持続的かつ高度な利用に資するため、生産性の高い沿岸漁場の確保や漁場環境の維持・向上、つくり育てる漁業[17]の推進等を図り、国際的な新海洋秩序化の下での水産資源管理に対する取組を積極的に推進する。また、担い手を確保するため、労働環境の改善、新規参入を促す就職情報の提供等の施策を展開する。さらに、主要な漁港において、陸揚げ・流通機能の高度化、漁獲・資源・衛生管理機能の強化、水産資源の生息環境の保全に資する施設の整備を推進する。

(食料流通基盤等の整備)
食品に対する消費者ニーズの多様化、外食産業等の大型実需者ニーズの増大、農協合併等による産地の大型化の進展等に対応し得る卸売市場等流通体制の計画的整備を推進する。  

第3節 内外との様々な交流の推進

1.集客交流の推進

様々な需要の喚起、世界への情報発信、さらには新たな文化や価値観の創出をもたらす観光、レクリエーション、アミューズメント、ショッピング、イベント、コンベンション、見本市、芸術芸能、祭事参加等を集客交流ととらえ、その拡大を図る。その際、ホテル・旅館業、イベント関連産業、飲食・土産物販売業等の観光産業や関連産業の高度化に向けた取り組みを行う。

(観光、レクリエーションの推進)
観光、レクリエーションの推進のため、自然資源や歴史文化資源等の地域資源の保全とその活用、グリーン・ツーリズム[18]、エコ・ツーリズム[19]等の滞在・体験型観光の振興、観光イベントの開催、あわせてレクリエーション施設の整備と保養地域の整備を図る。

また、歴史街道計画[20]を推進するとともに、他地域への積極的なPRと観光イメージづくり、観光振興計画の策定、新たな観光ルートの形成、宿泊施設等に関する情報のネットワーク化等を図る。その際、行政、地域住民、企業等様々な主体間の連携、様々な地域間の連携を図る。

(都市における集客交流の推進)
都市における集客交流を推進するために、アミューズメントについては高次の都市型アミューズメント施設、ショッピング等の複合的な機能をもつ施設の整備等を推進する。ショッピングについては高級化、ワンストップショッピング等の消費者の多様なニーズに対応した専門店街や大規模商業施設等の個性的な商業集積の整備、イメージづくりやイベントの開催を推進する。イベント、コンベンション、見本市については国際会議場・見本市会場の整備と活用を図るとともに積極的な誘致活動を推進する。

(集客交流を推進する上での環境整備)
集客交流の拡大のために、接遇やサービスの改善、ボランティアによるガイドの配置、案内所や案内標識の充実等来訪者への積極的な情報提供、宿泊施設、公共交通機関、道路等のバリアフリー[21]化等により、質の高いホスピタリティの提供を図る。また、道路、鉄道、空港等の国際的もしくは圏域内外の交流を支える交通体系について、その整備を推進する。

その際、圏域内での周遊性を高める等圏域全体の交流を推進するため、ネットワークとして機能することが重要である。あわせて、その整備に当たって、多様なニーズに対応し、快適で利便性の高い交通体系の形成を図る。

 

2.国際交流の推進

(産業資源をいかした国際交流)
国際競争力の強化、世界への情報発信力の強化、海外からの交流ニーズへの対応のため、高度な技術開発力、優れた人材等の産業資源をいかし、経済分野における技術協力や人材育成等の国際貢献を推進する。その際、研修機関の受け入れ余力の拡大、コーディネート機関の機能の強化と機関間の連携を図る。

また、圏域が一体となった積極的なPR、居住環境も含めた立地環境の整備等によって外資系企業の誘致を積極的に行う。

(歴史文化資源、学術研究資源等をいかした国際交流)
スポーツやイベントを通じた交流を始め、音楽やデザイン、芸術等の分野においても交流を推進する。この場合、行政のみならず、企業、地域住民、NPO等の様々な主体が交流を推進する。また、近畿圏の優れた学術研究機能をいかし積極的に研究交流も推進する。

国際貢献についても、世界的水準の文化財修復技術、環境技術等の技術協力、学術研究機関への研究者の受け入れ、さらには、緊急援助活動、技術協力等の国際防災協力等を積極的に推進する。

 

(外国人の来訪の促進)
外国人の来訪を促進するため、外国語標記の拡大、案内所の機能拡充等による情報提供の充実により利便性の向上を図る。さらに交通機関を含めた外国人向け各種割引制度の拡充、宿泊料金の低廉化を行う。

また、サービス・接遇の改善、ボランティアによるガイド・通訳の配置等を行い、外国人を温かく受け入れる気風や環境を醸成する。

(外国人にとって暮らしやすい居住環境の整備)
外国人にとって暮らしやすい居住環境を実現するため、外国人子弟向けの初等・中等教育機関、医療施設、居住施設の整備とともに、外国語による情報提供サービスの充実等を図る。

3.豊かな地域資源をかした交流の推進と地域の整備

(1)地域資源をいかした南北近畿の活性化

丹波・丹後・但馬地域の多雪気候やなだらかな山地、若狭湾の風光明媚な海岸線や豊富な味覚、紀伊半島地域の温暖な気候や豊かな森林等の自然資源、高野山や熊野の歴史文化資源にみられるように、南北近畿の各地域はそれぞれ優れた地域資源を持っている。

地域資源の活用等による諸機能の強化とともに、各地域間の連携・交流、さらに大都市との連携・交流等の推進によって、中小都市や農山漁村も含めた各地域の活性化を図る。

具体的には、景観も含め自然資源や歴史文化資源等の地域資源の適切な保全、これら地域資源をいかした観光地づくり、グリーン・ツーリズム等の推進を図るとともに、歴史街道計画、大都市への共同のPR等の広域連携の推進により集客交流を拡大する。また、京阪神大都市地域の都市との緊密な交流(カップルタウン)を推進する。

さらに、地域資源をいかした地域産業の振興やSOHO[22]・テレワーク[23]の推進、人材育成等によりUJIターン[24]の促進や地域の就業機会の確保を図るとともに、生活環境の整備や情報通信体系の整備等の推進によりマルチハビテーション(複数地域居住)を促進する。

各地域間の連携・交流を可能とするよう交通体系、情報通信体系の整備を推進する。

(2)中小都市の整備

中小都市においては、自然環境や農業的土地利用との調和を図りながら、道路、下水道等の基礎的な都市・生活基盤の整備とともに、高齢化の進展にも配慮した医療・福祉施設、商業・業務施設、文化施設等の更新、整備の計画的、効率的な推進によって、都市機能の充実とゆとりある生活環境を実現する。

高度で専門的な教育施設、文化施設、医療施設等については、施設の共同整備・運営、相互利用といった都市間の連携、情報通信体系の活用等により、投資の効率化を図りながら多様なサービスの提供を行う。また、中小都市は地域の拠点として周辺の農山漁村にも都市的サービスを供給する役割を担っており、周辺地域からの円滑なアクセスを確保できるよう交通体系の整備を推進する。

(3)中心市街地の活性化

モータリゼーションの進展等を背景に、近年空洞化がみられる中心市街地においては、「街の顔」としての個性ある地域の再生を図るため、歴史文化資源や地場産業等も利活用しつつ、商業そのものの魅力の向上による商店街等の再生を行うとともに、商業、業務、居住等の集積・再配置を進めるための面整備事業や道路、公園、駐車場の整備、公共交通機関の利便性の増進等を推進する。また、空き店舗や既存の公共施設の活用等による文化、交流、福祉、情報等に関する機能の強化、バリアフリーを考慮した快適な歩行空間やポケットパークの確保等に留意するとともに、アーケードの掛け替えや街並みの統一、電線類の地中化等による美しい景観の形成への配慮等を総合的に推進する。

また、徒歩圏に生活利便施設が整う中心市街地の良さをいかし、居住機能の回復に資する住宅の供給や新たな居住ニーズに沿った施設・サービスの供給等により、中心市街地の商業等の振興や賑わいづくり、地域コミュニティの維持・回復等を行う。

(4)農山漁村の整備

農山漁村において、地域資源をいかした農林水産業等の産業の振興等活性化を図るとともに、都市的サービスの充実や立ち後れている生活環境の整備、さらに高度な情報通信体系の整備とその積極的な活用を推進する。これら整備に関しては、交通条件の改善等により、生活圏域が広がりつつあることを考慮して、中小都市と周辺の農山漁村の機能分担、連携を図りながら、圏域全体として発展していくことが重要である。また、農村は農業者を含めた地域住民の生活の場で農業が営まれていることから、優良農地の確保に留意した計画的土地利用を図りつつ、生産基盤と生活環境の総合的な整備が必要である。

また、ゆとりややすらぎの場としての農山漁村や、教育的役割を有する農林漁業体験等に対する都市住民の関心の高まり等を踏まえ、地域資源の積極的な活用により、グリーン・ツーリズム、ブルー・ツーリズム[25]等の推進による滞在型の農林漁業体験活動や環境教育等多様な都市と農山漁村の交流活動の展開を図る。その際、都市住民が農山漁村の生活、文化に接する多様な機会の確保、情報提供の充実・強化等の環境整備を図る。あわせて都市住民のニーズや農地の多面的利用の促進の観点から、市民農園[26]の広範な整備・普及を図る。

4.交流を支える物流機能の高度化

近畿圏は、近世江戸期より我が国の商業・物流の中心であり、特に港湾等の物流施設、都市の商業集積は、国民生活や産業活動を支える基盤として大きな役割を果たしてきた。今後も我が国の商業・物流拠点の一つとしての役割を担っていくためには、商業・物流機能の高度化、効率化を図ることが必要である。

(商業機能の強化)
流通システムの効率化のため、業者間の取引慣行の是正、コードやプログラムの標準化等の情報化や異業種との連携の推進、消費者ニーズに対応した業態や商業集積の形成等を図る。

卸売については、情報化の推進に加えて、業者間の協業化・共同化、取引情報の蓄積、リテールサポートの展開等により機能の高度化を図る。

また、新たな産業展開や海外企業の誘致等を通じて新たな卸売需要を喚起するとともに、国際的な見本市の誘致のための環境整備、世界に向けての積極的なPR等を図る。あわせて、国際水準の商品先物市場の形成を目指す。

(物流機能の強化)
国際的な大競争時代、物流に対するニーズの高度化・多様化等に対応するとともに、物流効率化、コスト縮減等に資するよう物流機能の高度化を図ることが必要である。

このため、高規格幹線道路[27]等多核格子構造を支える交通体系、交通結節点を中心とする物流拠点、増大する輸入貨物に対応した国際海上コンテナターミナル[28]等の社会資本等の整備を推進するとともに、各種輸送機関が相互に連携した交通体系を確立するマルチモーダル施策[29]を推進する。さらに、物流分野の電子商取引や国際物流諸手続のワンストップサービス化、物流機器や情報コード等の国際標準化等、物流システムの高度化に関する施策を講じる。

国際物流については、手続の簡素化・情報化、輸入促進地域[30]における総合輸入ターミナル等の物流拠点の整備等により、コストの低減及び所要時間の減少等を図る。

地域間物流については、船舶の近代化等による内航海運の一層の効率化、海陸輸送を結節する物流拠点の整備、主要幹線鉄道の貨物輸送力の増強、高規格幹線道路のインターチェンジ周辺等における広域物流拠点と道路の一体的整備、幹線におけるトラックの共同運行、車両の大型化に対応した道路整備を推進する。

都市内物流については、物流拠点の整備、自家用から営業用トラックへの利用の転換、市街地における荷捌きのための駐車施設の整備や共同集配、鉄道貨物及び河川舟運の活用等を図る。

第4節 懐の深い文化・学術の創造

1.歴史文化資源の保全とその価値の再発見

近畿圏は、政治、経済、文化の中心として先進的な地域であったことから、世界的にも貴重な文化財や旧跡、歴史的街並み、美しい農村景観、多彩な故事や民話、伝統芸能や伝統技術等の歴史文化遺産を数多く有し、また、各地域が各時代に発展したことから、京都、奈良を始め個性豊かな歴史文化遺産をそれぞれが持っている。

歴史文化遺産を適切に保全するとともに、地域資源としての価値を再発見し、これをいかして地域の活性化を図る(以下「歴史文化資源の賢明な利活用(ワイズユース)[31]」という。)。これにより地域住民の地域への愛着、誇りが醸成されるとともに、歴史文化への国民全体の造詣の深化、さらに我が国全体の魅力の増進が図られる。

(1)歴史文化資源の適切な保全

(有形の歴史文化資源の保全)
文化財、歴史・文化的価値を有する建造物、美術工芸品等を適切に保全するとともに、保存・修復技術、表装技術等世界的水準の文化財修復技術の蓄積を継承し発展させるため、保存・修復、遺跡発掘等に関する技術者養成や研修機関の充実、研究交流の拡大、文化財や研究内容等のデータバンク化等を行う。

また、火災や震災等から守るための施設・設備の設置、耐震性の向上を図るとともに、建造物、美術工芸品等のそれぞれ修理に必要な周期等に応じた計画的な修理を促進する。

 

(歴史的景観の保全)
歴史的な街並みや集落景観を保全するために、伝統的建造物群や史跡等の保存に加えて、歴史的街並みに配慮した公共施設の整備、地区計画[32]、建築協定[33]制度の活用による民間建築物の規制・誘導、電線類の地中化、屋外広告規制等を行う。その際、地域の実情に合わせた、きめの細かい対応を図る。

田園風景や里山林を保全するため、森林、農地等の適切な管理と整備、土地利用、家並み、花の植栽等の住民協定等を行う。また、地元の積極的な取組だけではなく、棚田オーナー制度や森林ボランティア等の多様な人々の参加を促進する。

特に、京都市、奈良市、明日香村等の古都においては、わが国固有の文化的遺産としての歴史的風土の保存を図る。

(無形の歴史文化資源の保全)
故事、民話、伝統芸能、伝統技術、伝統的木造建築技術等の保全のため、その継承者の発掘、育成、支援とともに、その発表や公開の場の提供により人々の理解と認識を深める。また、保全の困難なものについては、デジタルアーカイブ[34]といったデジタルベース化等により、その保存を行う。

さらに、伝統技術に必要な材料の持続的な供給についても検討する。

(多様な人々の参加)
多様な人々による積極的な参加を促すため、勉強会や幅広い意見交換や積極的なPRによる歴史文化遺産の保全の気運の醸成、観光産業との連携、ナショナルトラストやボランティア、他の地域の人々と地元が一体となった保全の取組等を支援する。

(2)歴史文化資源を活用した地域の活性化

(集客交流の推進)
歴史文化資源のワイズユースにより集客交流を推進し地域の活性化を行う。具体的には、平城宮跡等の遺跡・史跡の復原、国営飛鳥歴史公園等の歴史公園、博物館、体験ミュージアム等の整備、古い民家や歴史的建造物等の再利用やライトアップ等見せ方の工夫等を行う。

また、サービス・接遇の改善、情報提供の充実、バリアフリー化等により来訪者のホスピタリティの向上を図る。

さらに、地域が連携して、歴史街道計画の推進、地域にまつわる歴史物語性の構築、イベントの開催、積極的な内外へのPR等を行う。

(歴史文化教育の場の提供)
歴史文化資源のワイズユースにより我が国の歴史文化教育を推進する。具体的には、歴史文化の体験学習の場として、歴史公園、博物館、体験ミュージアム等の積極的な提供とともに、地域住民のボランティアの活用、わかりやすい解説の工夫等を行う。また、故事、民話、伝統芸能等の無形の歴史文化資源については、このような教育を通じ担い手を育成する。歴史教育の場の提供に当たっても各地域は連携して取り組む。

(製品の高付加価値化)
歴史文化資源を賢明に利活用して製品の高付加価値化を進める。具体的にはデジタルアーカイブの形成と利用、伝統技術の応用等によって、新たなデザイン、産業技術等を創出する。

2.文化・学術研究の推進

(1)学術研究拠点・ネットワークの整備

(近畿リサーチ・コンプレックスの形成)
文化・学術の中枢圏域の形成のため、関西文化学術研究都市を中核として播磨科学公園都市等各地の学術研究集積や大学等の高度な学術研究機関を有機的にネットワーク化する「近畿リサーチ・コンプレックス構想」を推進する。

すなわち、重点的な施設整備による機能の高度化、研究分野の重点化等により特定分野において卓越した学術研究集積を整備するとともに、これら学術研究集積、大学、産業集積間の複合的な連携・交流の推進により特定の分野に秀でた研究複合体を形成する。これによって、ライフサイエンス、物質・材料、光量子、資源・エネルギー、環境等の分野において優れた学術研究の成果を生み出す。さらに、研究複合体における連携・交流の強化により、世界にも通用する創造性豊かなネットワーク型のCOE(センター・オブ・エクセレンス:卓越した学術研究拠点)を形成し、国際的な学術研究成果を創出する。

(学術研究集積の連携強化に向けた環境整備)
関西文化学術研究都市や各学術研究集積における連携を強化するため、関西文化学術研究都市内の交通体系、関西文化学術研究都市、各学術研究集積及び関西国際空港の相互連絡に資する交通体系や、高度情報通信網の整備、学術研究情報のデータベース化、地域の情報化等情報通信体系の整備を推進する。また、学術研究に関するコーディネート、マッチング等を実施する学術研究支援体制の整備を推進する。

(文化学術研究の中核としての関西文化学術研究都市)
関西文化学術研究都市については、文化・学術・研究、まちづくりの各分野が融合した新たな展開の拠点づくりを目指している。このため、本都市及び周辺地域の高度な文化・学術・研究集積を最大限にいかし、近畿圏各地を始め国内外の学術研究集積等との連携・交流の下に、研究施設の整備促進はもとより、新しい芸術文化の創造、文化遺産の保存・活用の中枢形成を図るとともに、自然科学と人文・社会科学さらには芸術領域までを統合した新たな学問の創造の促進による学術研究システムの構築、研究・市民交流の推進と文化学術研究交流施設の機能強化、学術研究の国際的情報拠点形成等を進める。

あわせて、文化の薫るまちづくり等21世紀の都市のあり方を先導するパイロット・モデル都市[35]に相応しい都市建設を推進するとともに、まちづくりや研究活動等に関する情報発信を一層強化する。

(2)大学等高等教育機関の機能強化

今後、社会・経済の高度化・複雑化、国際競争の激化が一層進むと予想される中で、近畿圏の大学等高等教育機関(以下、大学等)においては、地域配置の適正化に配慮しつつ、時代の要請へ対応した整備を推進し、教育研究機能の一層の強化を図るとともに、地域社会や産業界等との連携を促進することが必要である。

(教育研究機能の強化)
大学等においては、課題探求能力の育成を重視し、教育研究の質の高度化を図るとともに、人材養成に対する要請等の多様化への適切な対応を図る。特に大学院については、研究者養成だけではなく高度専門職業人の養成も重視しつつ、その教育研究の高度化、多様化を推進する。

また、大学等の特性を踏まえつつ、研究施設・設備の充実を図るとともに、連合大学院・大学コンソーシアムの設立[36]等による大学等や研究者間の連携・交流等により研究機能の高度化を図り、COE(卓越した学術研究拠点)としての役割を果たす。

さらに、大学等における教育研究活動の持続的な活性化を図るために、各大学等による自己点検・評価の充実や第三者による客観的な評価を推進するとともに、研究機関のマネジメントを高度化する上で必要な人材の育成・強化等を図る。

(産業界、地域社会との連携)
大学等が有する高度な技術や研究成果を民間事業者等へ移転する技術移転機関(TLO)の創設・活用等や、産学共同研究等を通じて企業、起業家等への支援を推進する。

また、学生を企業やベンチャー企業あるいは地方公共団体等へ派遣し、実践的学問の修得を図るインターンシップ制度、社会人に対するリカレント教育[37](再学習・研究)、生涯学習に対応した公開講座等を積極的に推進する。

第5節 環境と調和した地域の形成

1.緑の保全・創出

(調和のとれた土地利用の実現)
京都、大阪、神戸等の都市圏が広域的な緑地や水系により区切られ、分散的に成立している地域構造をいかして、環境と調和した地域構造と土地利用を実現していく必要がある。

このため、土地利用関係制度の一層の活用等により、都市的土地利用と農業的、自然的土地利用の適切な配置、組合せを図るとともに、開発に当たっては、自然環境の保全に努める等環境への影響の最小化を図る。また、都市部においては、計画的開発への誘導を図り、農地も含めた緑地の適切な保全・創出を図るとともに、既存の市街地の合理的な土地利用を進め、都市の無秩序な外延的拡大を抑制する。

(自然環境の保全・再生)
自然環境は、生物多様性の保全や人と自然とのふれあいの空間等として大きな機能を有しており、都市的土地利用が拡大した近畿圏においては重要な存在であることから、様々なレベルの生態系のまとまりを考慮した生態系ネットワーク[38]の形成等を目指すことが求められる。

このため、自然環境保全地域や自然公園地域等により優れた自然環境・景観の保全を図る。健全で持続的な環境を形成するため、自然との共生の視点、地域住民や民間団体の主体的な活動との協調に配慮しつつ、環境教育・環境学習の取組や生物の生息場所であるビオトープ[39]の整備等による幅広い自然環境の保全・再生を推進する。保全・再生された自然環境については、ワイズユースの視点も踏まえ、地域の特性に配慮しつつ、自然とのふれあい、自然への理解を深める場として活用する。

また、地域整備に係る事業の実施に際して、自然環境の保全を図るには、環境影響評価の実施等を通じて、保全すべき場所の改変を避け、あるいは、これを最小にする等の対策を優先しつつ、適切な対策を講ずる必要がある。

(緑の保全・創出)
大都市地域における緑地は、六甲山地、近江盆地、淀川等に代表される多様な地形や地質の変化に応じた態様を示し、市街地を区切っているが、市街地外縁部の丘陵地における大規模な開発等によりほぼ全域で減少している。また、近畿圏は、特有の景観を形成し、生物相の豊富な熊野地域に代表される豊かな森林を有している。

これらの緑は、地球環境問題への対応や国土保全、都市環境の改善等に大きな役割を果たしている。また、自然とのふれあいの空間等として、人と自然が共生した健康で快適な環境づくりにおいてかけがえのない存在である。

このため、京阪神の周辺地域において地形とあいまって環状をなす緑地、里山林や都市近郊林等の保全・整備、都市内農用地の保全や都市公園の整備、道路の緑化、近郊緑地特別保全地区、緑地保全地区の指定等、地域の特性に応じた緑の量的確保、質的向上を計画的に推進する。この場合、琵琶湖や淀川等の河川や道路空間等との連携による広域レベルでの緑の骨格・回廊づくり、多様な生物の生息空間であるビオトープの形成に配慮した水と緑のネットワーク[40]の形成、都市間における緑地の確保と効果的な配置、市民緑地制度[41]等による民有緑地の保全、NPOや企業との連携等に配慮する。

また、保護林の拡充等による自然環境の維持・保全、間伐の促進、複層林施業や長伐期施業の推進、保安林の整備、漁業関係者による森林の保全・整備等を総合的かつ計画的に推進する。さらに、上下流連携の下での水源林造成、交流を通じた森林づくりボランティアへ参加できる場の整備等を推進する等、森林の保全・整備が都市住民や地域住民の参加と連携の下に社会全体で支える必要があるとの国民的理解を醸成していくための取組を強化する。

2.流域圏の保全と整備

(健全な水循環系の構築)
淀川、大和川を始めとする河川等は古くから近畿圏の社会・経済・文化を支える生活基盤としての役割を果たしてきた。また、貴重なオープンスペースとして潤いとやすらぎを提供するだけでなく、イタセンパラ(タナゴの一種)を始めとする多様な生物種の生息空間となっている。一方で、近畿圏では、降水量の年々変動の拡大や都市化の進展等による水循環系の変化により、通常時の河川流量の減少や渇水、水質汚濁など様々な問題が発生している。このため、河川の流域及び関連する水利用地域や氾濫原を一体とした流域圏[42]において、上下流の地域間交流や行政・住民・事業者等の各主体の連携、水循環系の機構把握、評価及び関連情報の共有を推進しつつ、健全な水循環系[43]の構築に向けた総合的な取組を推進する。

流域の貯留浸透・かん養能力を保全・回復・増進するため、森林の適正管理による水源かん養機能の維持・向上や農地の適切な保全・整備・利用による自然循環機能の維持増進、都市域における緑地の保全・整備、河川護岸の再自然化による浸透能力増進、雨水貯留浸透施設の整備等を推進する。また、水の効率的利活用のため、節水意識の向上や節水機器の普及により水需要の抑制を図り、雨水利用や下水処理水等の再利用等により水資源の有効利用を推進するとともに、自然・社会事情の変化に対応した水資源開発、既存施設の有効活用、下水処理水等の河川還元、地下水利用の適正化と代替水源の確保等を推進する。

大阪湾等の閉鎖性水域及び河川等の水質保全・向上のため、水質汚濁負荷の発生源対策や汚水処理施設の整備、高度処理の推進、上下水道等の取排水地点の再編、公共用水域及び地下水の直接浄化対策、雨水貯留施設の設置等の非特定汚染源対策[44]、有害化学物質の監視等を推進する。また、水辺環境の向上のため、まちづくりと連携しつつ、都市内の水面確保、河川・水路等の維持流量、環境用水の確保、河川沿いの緑地空間確保等の水辺の保全、多自然型の水辺空間整備を推進する。さらに、水辺の持つ気候緩和、生態系保全等の機能を効果的に発揮させるため、上下流地域が、緑地、水路、河川等の整備を連携して行い、それらのネットワーク化を推進する。また、由緒ある景観や川を舞台にした祭り等の歴史的・文化的側面をいかし、地域に根ざした文化の香り高い水辺づくりを進める。

(琵琶湖の総合的な保全)
世界でも有数の古代湖である琵琶湖は、固有種を含む豊かな生態系を有し、また、湖水や山並みが一体となった優れた景観を形成する一方、圏域における自然とのふれあいの空間として、また、生活、都市活動等を支える我が国最大の水資源として、圏域の貴重な財産である琵琶湖を健全な姿で次世代に引き継ぐことが重要となっている。

しかし、近年の社会経済の発展がもたらした生活様式や土地利用の変化にともない、琵琶湖をとりまく環境も大きな変貌を見せ、固有種の減少、アオコの発生等の現象が生じており、環境に配慮した地域づくりを行うことが求められている。

このため、琵琶湖の総合的な保全のための調査・計画を踏まえ、環境負荷の原因等の調査研究を進めるとともに、下水道事業、農業集落排水事業等の発生源対策、底泥のしゅんせつ等湖内対策、排出規制等水質の保全のための対策を進める。また、森林等の面的確保等水源のかん養のための対策及び多様な生物の生息空間であるビオトープのネットワークの形成等自然的環境等の保全のための対策を進める。その際、関係行政機関の連携を図るとともに、行政、住民、企業、学識経験者等の主体間の連携・調整をとりつつ、施策を着実に実施し、総合的な保全のための取組を進める。

3.環境負荷の少ない社会の構築

(省エネルギー等)
今後、二酸化炭素の排出抑制等、環境負荷の低減に資するためにも、省エネルギーへの取組が必要である。

産業部門のエネルギー消費量については、製品の高品質化、多品種少量生産の進展等により近年増加基調にある。このため、エネルギー消費量の大きい工場を中心に経済的、技術的に可能な最高水準の省エネルギー設備の導入、省エネルギーに資する廃棄物の再生利用及び廃棄物のエネルギー源としての利用、太陽電池生産の集積等をいかした高性能の省エネルギー機器の技術開発等を積極的に促進する。

民生部門のエネルギー消費量については、国民生活の利便性・快適性の追求、OA化の進展等の要因により一貫して増大傾向にある。このため、家電・OA機器等のエネルギー消費効率の向上、住宅・建築物の省エネルギー化等を促進するとともに、国民一人ひとりの深い理解の下、省エネルギーに資する行動が実践できるよう広報活動の強化を図る。また、新エネルギー[45]の積極的な導入、コージェネレーションの活用等を推進する。

また、電力負荷平準化対策を推進するとともに、都市構造や地域構造の改編、就業形態の多様化等によるヒートアイランド化の抑制や通勤交通の削減を図る。

(交通分野における環境負荷の低減)
近畿圏は、京阪神大都市地域を始め、比較的狭い平野部に主要な交通網が集中していることから、交通分野における環境負荷の低減を図ることが重要である。

このため、各交通部門における省エネルギー、低公害化と、適正な競争と利用者の自由な選択を通じて、エネルギー効率に優れ、環境への負荷の少ない交通機関の利用拡大を基本とし、交通機関相互の連携強化を図り、環境全般への負荷が少なく、各交通機関の特性がいかされた交通体系を形成する。また、地球環境の保全への対応のため運輸部門における二酸化炭素の排出を抑制するとともに、窒素酸化物、浮遊粒子状物質等による大気汚染、騒音防止等生活環境の改善に努める。

また、渋滞の解消・緩和に資する道路整備、自動車利用の適正化や平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)施策[46]や高度道路交通システム(ITS)[47]の推進等交通対策の推進、低燃費車、電気自動車等低公害車の普及、自転車の安全かつ適正な利用の促進に向けた環境整備、道路緑化、鉄道・バス等公共交通機関の整備と利用促進を図る。さらに共同集配システム[48]の構築、荷捌きのための駐車施設の整備、道路と広域物流拠点の一体的整備、コンテナ船等に対応したターミナル等の港湾整備や貨物鉄道の利用促進等複合一貫輸送[49]に対応した施策等物流の効率化を推進するとともに、環境にやさしい運転方法、短距離自動車交通の徒歩や自転車への転換等について国民の努力を促す等の幅広い対応を図る。

一方、施設の計画、整備に当たっては、自然環境の保全・回復への十分な配慮、周辺地域の良好な生活環境を確保するための環境施設帯等構造面での対応に加え、都市圏全体での環境負荷の低減に配慮し、交通施設周辺にふさわしい土地利用の誘導に努める。

(廃棄物等の発生抑制、リサイクル等の推進)
事業者、消費者、地方公共団体及び国において、それぞれの責務を踏まえつつ、それら各主体の連携により、廃棄物等の発生抑制、再使用、リサイクル、適正処理を推進する必要がある。 

資源の節約等により廃棄物の発生を抑制しつつ、使用済み製品・部品の再使用、再生品等の利用の促進や効率的な分別収集体制の確立等によるリサイクルの推進により最終処分量を削減するとともに、一般廃棄物についてはごみ焼却施設、最終処分場及びごみ燃料化施設等の整備を推進し、産業廃棄物については公的関与を含めた適切な処理体制の整備を推進する。焼却施設については、ダイオキシン類排出抑制や熱エネルギー利用を推進し、これらを効率的に行うため施設の集約化を推進する。

また、大阪湾に設置されている広域的な最終処分場は、広域処理対象区域内において発生する一般廃棄物の最終処分量の約3割、産業廃棄物のうち上下水汚泥の最終処分量の約6割、その他の産業廃棄物の最終処分量の約1割を受け入れる等、近畿圏における廃棄物の処分の上で重要な機能を果たしており、今後ともその整備を推進する。

建設発生土については、発生量の削減に努めつつ、その円滑かつ適正な利用を図るため、有効利用の促進、受入地の確保等の対策を推進する。

さらに、積替拠点の整備、舟運の利用等の廃棄物輸送システムの効率化を推進する。

4.沿岸域の総合的な利用と保全

沿岸域は、産業、交通、物流、エネルギー供給、レクリエーション、漁業等の多様な活動の場として、また一方では、豊かな自然環境を有し、生物の生息の場や人々にやすらぎと潤いを提供する場としての役割を果たしている。こうした沿岸域については、圏域の貴重な資源として、それぞれの沿岸域の特性を十分に踏まえ、その総合的な利用と保全を図りつつ、望ましい姿で次世代に継承していく。

(1)大阪湾と周辺沿岸域

(大阪湾沿岸域の総合的な管理)
大阪湾沿岸域を持続的に発展させていくため、安全の確保及び環境の保全と創造を図りつつ、海域又は水際線の有効かつ適切な活用につながり、広域的・公益的な課題に対応した総合的な利用を推進することとし、関係者間の調整を図りつつ、沿岸域の総合的な管理を推進する。

(良好な環境の保全と創造)
閉鎖性の海域で、稠密な利用がなされている大阪湾は環境負荷の影響を受けやすい海域である。このため、海域への流入負荷を低減するとともに、残された貴重な自然環境を保全しつつ、質の高い環境の創造を図る。

大阪湾沿岸域における新たな空間需要に対しては、基本的には臨海部の遊休地等の利用や再開発を計画的に進めることによって対応するとともに、新たな埋立地の造成については、その必要性を慎重に検討し、瀬戸内海環境保全基本計画等に基づき、環境保全に十分配慮し、適切に対応する。また、開発に係る事業の実施に際して、自然環境の保全を図るには、環境影響評価の実施等を通じて、保全すべき場所の改変を避け、あるいは、環境への影響を最小にする等の対策を優先しつつ、適切な対策を講ずる必要がある。 

大阪湾の環境を改善し、良好な沿岸域を形成するため、海底に堆積している汚泥のしゅんせつや覆砂、干潟や浅場の造成、浮遊ごみ・油の回収等の海域における環境改善を図る。また、人々が水辺に自由に安心して行き来でき、その魅力を楽しむこと(パブリックアクセス)[50]ができる親水緑地や人工海浜等の整備を行うとともに、スポーツ・レクリエーション施設やマリーナ等の整備を行い、これらを連携させることにより、人と海とが豊かに触れ合う「なぎさ海道」の形成を図る。大阪湾地域の諸活動に伴い発生する廃棄物、建設発生土については、発生抑制、減量・減容化、再使用、リサイクルの努力を前提としつつ、適切な処分を推進する。

(地域活力の創出) 
大阪湾臨海地域開発整備法に基づく整備計画を推進し、遊休地等も活用しつつ、新しい都市型産業の展開、臨海部の産業や港湾物流機能等の既存集積の活用・高度化等を図る。

国際的な大競争の時代に対応しつつ、国際交流機能を強化するとともに、全国との交流を支えるため、関西国際空港の整備を推進するとともに、国際海上コンテナターミナル等の整備を推進する。特に物流機能の強化に際しては、交通施設間の連携を強化するとともに、沿岸域全体が一体的かつ効率的に機能を発揮し得るように、各港湾の特性に応じて役割を分担しかつ補完する一つの広域港湾として機能するよう整備を推進する。

沿岸域の諸機能を効率的に発揮させるとともに、一体的な利用の促進を図るため、沿岸域における環状方向に結ぶ路線や周辺地域と結ぶ路線等の道路、鉄道等の整備を推進する

(安全の確保)
大阪湾沿岸域の防災性の向上のため、利用や自然環境の保全に配慮しつつ、高潮対策のための海岸保全施設の整備等を推進する。また、震災時の緊急物資等の輸送や一時的避難、がれき処理のための輸送路及び防災拠点等の空間を確保するとともに、経済社会活動の停滞を招くことがないよう耐震強化岸壁[51]、緊急輸送道路等の体系的整備を図る。

大阪湾沿岸域は、近畿圏の活動を支える電力、ガス、石油等のエネルギーの供給基地でもあり、その安定的供給を図るため、環境との調和及び輸送の安全性を確保するとともに、防災対策を推進する。また、近畿圏の物流等を支える海上交通の要である大阪湾海域の安全な利用のため、航行安全施設等の整備、海洋情報の充実を図る。

(大阪湾の周辺沿岸域)
大阪湾の周辺に位置する播磨灘沿岸域及び紀伊水道沿岸域については、大阪湾沿岸域と連携を図りつつ、その利用と保全を図る。

播磨灘沿岸域については、港湾機能の強化を図るとともに、瀬戸内海の優れた自然をいかした観光・レクリエーション拠点の形成を図る。

紀伊水道沿岸域については、港湾機能の強化や電源開発を推進するとともに、恵まれた自然をいかした観光・レクリエーション拠点の形成を図る。

(2)日本海、太平洋、伊勢湾沿岸域

日本海、太平洋及び伊勢湾の沿岸域は、地域の発展を先導する可能性を有し、地域振興の拠点としてその整備が期待されており、環境の保全、海上交通の安全確保、防災性の向上等を図りつつ、それぞれの沿岸域の特性、資源に応じて産業や物流の拠点、快適な海洋性レクリエーション空間や生産性の高い漁業空間等として多様な利用を図る。

日本海沿岸域においては、環日本海交流の拠点を形成するため、港湾機能の強化等を図るとともに、恵まれた自然をいかした観光・レクリエーション拠点の形成を図る。

太平洋沿岸域においては、紀伊半島の恵まれた自然をいかした観光・レクリエーション拠点の形成を図る。

伊勢湾沿岸域においては、閉鎖性海域という特性を踏まえ、安全の確保及び環境の保全と創造を図りつつ、総合的な利用を推進する。

これらの沿岸域においては、水産物の安定的供給や地域の振興等を図るため、漁港を整備するとともに、豊かな資源をいかした漁場の開発等を進める。また、沿岸域の防災性の向上のため、利用や自然環境の保全に配慮しつつ、高潮対策のための海岸保全施設の整備等を推進するとともに、震災時における対策として、耐震強化岸壁、緊急輸送道路等の体系的な整備や防災拠点等の確保を図る。

第6節 地域特性を踏まえた安全で快適な生活空間の形成

1.安全で安心な生活空間の形成

(1)災害に強い地域づくりの基本的な考え方

阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、巨大都市圏ゆえの危険を取り除いて、安全な都市圏の実現を図るためには、代替性・多重性が高く、被災時の早期復興が可能となる等危機管理能力が高いほか、環境と調和し、広域連携の図られた圏域構造の構築を目指すことが求められる。

また、自然との調和がとれた、日常的に暮らしやすいまちをつくることが、安全な地域づくりにも資するという観点の下、人命及び財産の安全確保とともに、中枢管理機能、都市機能の確保及び広域的物流・人流の確保をも目的として、災害に強い地域づくりを進めることが重要である。

このため、災害危険を回避するという観点、災害危険を分散するという観点、災害危険やその被害を局限するという観点及び災害危険やその対策コストを様々な形で転嫁していくという観点から、総合的に施策を講ずる。

(2)地震に強い地域づくり

人口、諸機能等の集中による被害の深刻化及び都心部の中枢機能の被災による影響の拡大を抑制するため、京都、大阪、神戸の三都市間の機能分担を図りつつ、分散型の構造の形成を推進するとともに、相互にネットワーク化することにより広域的な防災体制の確立を図る。あわせて、市街地の連坦を防ぐため、都市間の緑地を保全するとともに、地域の災害危険度を評価・公表し、これを地域開発や土地利用に反映させるよう努める。また、都心居住の推進、テレワークの促進等により、職住の近接化を図り、地域の災害対応力の向上を図る。

(都市・地区の防災構造化)
近畿圏では、老朽木造家屋が密集した市街地が広範囲に形成されている地域が見られ、そこでは地震時には老朽木造住宅の大量倒壊はもとより、都市大火の発生により多数の人命の喪失等重大な被害を受ける危険性が高い。そのため、人流・物流の動線機能やオープンスペース機能を果たす避難地、避難路、緊急輸送路、延焼遮断帯、農地を含む緑地の計画的な確保、市街地の不燃化・難燃化等を推進する。住宅を始め既存の建築物の耐震性向上を促進する。

老朽木造密集市街地については、整備目標等を都市計画等に位置付け、地区の特性に応じた市街地の面的な整備又は段階的な修復を進める。この際、美しい景観の形成にも配慮するとともに、貴重な文化財や歴史的街並みを有する地区については、文化財等を守ることにも配慮したきめ細かな震災対策を講ずる。

また、民間施設の活用、ヘリコプターの運用、食料、水及び生活必需品等の備蓄・調達体制等に留意しつつ、身近な施設の防災拠点化を進めるとともに、官公庁等の災害時の中枢機能や情報機能の強化、災害拠点病院の整備、大規模オープンスペースの確保等を図り、都市の危機管理能力を高める。災害対策活動の拠点となる建築物等については、耐震性能に余裕を持たせるほか、非常用自家発電設備の設置を推進するとともに適切な保守管理を図る。

(基盤施設の耐震性向上と代替性・多重性の確保)
阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、基盤施設の耐震性向上、系全体としてのリダンダンシー[52]の確保を図ることが重要である。

交通基盤については、国際海上コンテナターミナルや幹線道路、幹線鉄道を始め、施設の重要度に応じて耐震強化を図る。さらに、リダンダンシーの確保を図るため、機能を代替し得るルートの整備、異なる交通機関の相互補完が可能なネットワークを形成する。また、震災のみならず風水害等の自然災害に対しても粘り強いしなやかさを持つ交通体系を形成するため、危険個所の点検及び所要の施設整備等を推進する。

情報通信基盤については、拠点施設の耐震化を図るとともに、有線系施設の地中化等の推進による耐震性確保を図る。また、固定、移動、衛星の各通信系の連携や通信手段のバックアップ機能整備により、リダンダンシーを確保する。

さらに、避難、救急・消防、緊急輸送、延焼防止、応急復旧のための道路網の整備や防災拠点となる公園、港湾施設等の整備、防災拠点や関係機関を連絡する交通、情報通信網、災害時の道路交通管理体制等の整備を推進する。

河川及び海岸については、堤防、護岸の耐震性向上等を推進するとともに、河川舟運路[53]の整備等により人員・物資輸送のバックアップシステムを確保する。

電力・ガス・上下水道等のライフラインについては、設備ごとの耐震性の向上やリダンダンシーの確保、対応・復旧活動の迅速化、利用者の立場に立った広報活動の強化等を推進する。また、関係機関と密接な連携を取りつつ、地域の特性に応じて共同溝[54]・電線共同溝[55]の整備を推進する。

災害時の雑用水、消火用水等の確保のため、耐震性貯水槽の整備を推進するとともに、下水高度処理水等の利用の方策や河川取水に資する護岸等の設置について検討する。

(府県の広域連携、市民活動の連携)
複数の府県にまたがる地域を一つの都市圏ととらえた被害想定の実施等に基づき、情報と目標を関係機関が共有しながら、広域的・実践的な連携体制の構築、共同訓練の実施等により、大都市圏として一体的に災害に対処できる体制を確立する。

さらに、国、府県等の連携体制の下、圏域レベルの広域防災拠点機能を確保する。災害拠点病院等における府県を越えた広域的な情報ネットワークや搬送体制、救援物資等の広域的な輸送体制を確立する。仮設住宅の建設可能地、がれきの運搬ルートや処理・処分用地等の課題への対応方法についても事前に検討・計画する。

災害時において、住民自らが行う防災活動、避難所での活動等は、災害の拡大防止の上で重要であるため、平常時から、それぞれの地域において自主防災組織等を育成、強化し、併せて防災訓練の実施等により防災意識の普及、啓蒙を推進する。

また、阪神・淡路大震災では多くのボランティアが、避難所等における食料の配付、通訳等被災地の様々なニーズに対応した多くの活動を行い、この活躍によりボランティアへの関心が高まりを見せた。災害時における避難所等での被災者一人ひとりに密着したきめ細かな活動のためには、柔軟かつ機動的な防災ボランティアの役割が極めて重要であるため、防災ボランティアの自主性等に配慮しつつ行政との連携を推進し、その活動環境の整備を図る。

(3)治山治水等

近畿圏においては、国内有数の多雨地域から積雪地域まで、河川の流域特性は多岐にわたっている。また、淀川や大和川等の河川の氾濫区域や、六甲山等の急傾斜地の近傍に人口・資産・中枢管理機能が集中しているため、水害や土砂災害の被害が深刻化する状況にある。このため、これらの河川の流域圏において、生態系等貴重な環境の保全に配慮しつつ、流域特性に応じた河川事業、ダム事業、砂防事業、治山事業、保安林整備等を計画的に推進する。特に、計画規模以上の洪水等に対して壊滅的な被害を回避する減災の観点から、まちづくりと一体として幅が広く決壊しないスーパー堤防[56]等の整備を推進し、また、樹林帯等の整備、洪水・土砂災害危険区域図の作成・公表等の氾濫原等における対策を推進する。また、大阪湾岸の低平地を始めとする沿岸域では、高潮等による被害防止のため、環境の保全に配慮しつつ、防潮堤の整備等の海岸事業を推進する。また、農用地等が適切に保全管理されるための基礎的条件を整備する。

一方、地下利用の進展、電子機器の普及、舗装面積の増加等に伴い、水害に対する都市の脆弱性が増しているため、寝屋川における地下河川[57]の建設等都市河川の改修を推進するとともに、下水道施設の建設、適正な保水・遊水機能の維持・確保、地下施設への浸水防止対策等を推進する。

これらに加え、水防、警戒避難等の防災体制を充実・強化するため、情報通信の高度化や住民との協力等による情報の収集・提供体制の強化を推進しつつ、水防団、消防団等との平時からの連携を促進し、広域防災拠点の設置等の避難・物資輸送支援体制の整備を推進する。

また、これらの施策を行う際、災害弱者が安全に暮らせるように配慮する。

(4)雪害対策

雪崩等による災害を防止するため、防災施設の整備を推進する。災害の予知・予測技術の研究・開発を推進するとともに、気象、交通等に関する情報を適切かつ迅速に収集、提供する雪情報システムの構築を図る。

また、自然環境の保全や景観に配慮しつつ、除排雪体制の強化、防雪施設や消融雪施設の整備、路面凍結対策の充実等により、冬期間の降積雪時等における都市間交通から歩行空間に至る安全で円滑な交通を確保するとともに、高齢者世帯等の住宅の除排雪等への支援等きめ細かな雪害対策を推進する。

2.快適な居住環境の整備

(1)多様なニーズに応える住宅・宅地ストックの形成

(宅地のストックの再生と供給)
今後、計画期間中に圏域人口が減少に転じ、2015年における市街地面積(人口集中地区面積)及び市街地人口(人口集中地区人口)は、微増程度にとどまるものと見込まれる。

また、世帯数の増加が今後、鈍化しつつも、引き続き見込まれることを踏まえ、新たに必要となる住宅戸数、宅地面積も減少傾向で推移し、近畿圏において1996年度から2015年度までの20年間に必要となる住宅戸数は、建て替えを含め約430万戸、同じ期間に必要となる宅地面積は、戸当たり敷地面積等の推移を基に、約2.9万haと見込む。この間、建て替え・再開発に係る住宅戸数の住宅戸数全体に占める割合は、次第に増加するものと見込む。

このように市街化圧力が低下していくことから、市街地整備の重点を既存の市街地の再編整備に移す。既存の市街地においては、都心居住、低・未利用地の有効活用、老朽木造密集市街地の解消等の課題に対応するため、地域の歴史、文化をいかした景観形成にも配慮しつつ積極的に再開発を推進する。特に、都心居住の推進に当たっては、良質な都市型住宅の供給及び必要な都市基盤施設の整備と併せて、生活関連施設の整備を図る。新市街地の整備については、低・未利用地や市街化区域内農地を活用した宅地供給の推進と併せて、高次の諸機能の集積の受け皿として、交通利便性、各種サービスへの近接性、自然との共生、良好な景観の形成、バリアフリー化等の多様なニーズに対応できる良質な宅地の供給を促進する。

(良質な住宅ストックの形成)
成熟社会の到来を踏まえ、ゆとりある生活を実現するため、広くて良質な住宅ストックの形成を推進する。ライフサイクルコスト[58]の低減、環境負荷低減の観点から、耐用年数が長く維持管理やリフォームのしやすい住宅ストックの形成を図るとともに、既存ストックを有効に活用しつつ居住水準の向上を図るため、住み替えの円滑化及びリフォームを促進する。

今後、建て替え時期を迎える分譲マンション等の増加が見込まれることから、適切な維持管理及びリフォームを促進するとともに、大規模修繕、建て替えを円滑に行うための仕組みを検討する。

また、設備、規模等の点で水準が低い木造賃貸住宅の密集した地域については、住環境の改善の必要性が高いだけでなく、防災性の向上にも資することから、地域の実情に応じてその一体的又は段階的な更新を積極的に推進する。

さらに、環境との調和を図るため、自然エネルギーの活用等により環境への負荷を低減した住宅の普及を促進する。

テレワークによる在宅勤務等の住まいに対する新たなニーズを踏まえ、住宅の情報化等を推進する。

(2)成熟社会に対応した居住環境の整備

(地域特性を踏まえた良好な居住環境の実現)
ライフスタイルやライフステージに応じて居住環境を幅広く選択できるよう、地域特性を踏まえ、住宅単体のみでなく、周辺の自然環境や都市景観、交通利便性、生活関連サービスへの近接性等も含めて、暮らしやすい居住環境の整備を促進する。

このため、都心部においては低・未利用地の有効利用を図り、都心居住を推進するとともに、郊外部においては身近な自然に囲まれ、計画的な施設配置により日常的生活利便性の高い住宅・宅地の整備を推進する。自然的土地利用の卓越した地域においてはマルチハビテーション(複数地域居住)、田園居住等のニーズにも応えつつ、豊かな自然を享受できる優良な住宅・宅地の整備等を推進する。

また、地区の特性に応じて、適切な道路、公園等や生活関連施設を備えた良好な住環境の整備を推進する。地域資源、地域の住文化をいかした個性豊かな住宅・住環境の整備を支援する。京都等の町家が残る地域においては、町家が美しい街並みを形成するとともに、地域独自の優れた住まい方のシステムを提供しており、その特徴をいかした住宅や市街地の整備を促進する。老朽木造密集市街地については、住環境の改善の必要性が高いだけでなく、防災性の向上にも資することから、住環境の整備を積極的に推進する。

さらに、地域住民の住環境に対するニーズに的確に応えて、良好な住環境を整備するため、地区計画、建築協定等の活用、都市計画や建築等の専門家の派遣、NPO活動の活発化等により、地域住民の自発的活動を支援するとともに、地域住民との連携を促進する。

(身近な生活圏づくりの推進)
安全・安心でゆとりのある暮らしの実現のためには、日常生活における移動等が、安全かつ短時間に済ませられるとともに、安全に歩いて行ける身近なところに、魅力的な賑わいと憩いの場があることが重要である。

このため、鉄道やバス等の公共交通機関の活用を図りつつ、生活に密着した諸機能を徒歩圏に配置するとともに、それらを連絡する歩行空間のネットワークを整備し、安心して歩ける空間を身近に配したまちづくりを、地域住民の主体的な参加の下で推進する必要がある。

(ゆとりのある生活空間の整備)
ゆとりが感じられる生活を実現するため、潤いのある快適な都市環境の形成、健康、福祉の増進、地域コミュニティの醸成、防災性の向上等に資する都市公園、水辺空間、道路等の整備を推進するとともに、商業地、住宅地を中心に、電線類の地中化を推進する。

さらに、余暇意識の高まりや多様化する余暇需要、余暇時間の拡大への対応、地域間交流の拡大等に資するため、レクリエーション施設の有する地域活性化への波及効果等も踏まえ、奥越高原、伊勢志摩、琵琶湖、丹後、淡路島、南紀州等の自然をいかした総合保養地域等において、地域特性をいかしたレクリエーション施設等の整備を推進する。

(歴史、文化、自然等をいかした良好な景観の創出)
近畿圏は、京都、奈良を中心として多くの歴史的街並みを有している。また、国民の関心が、ものの豊かさだけではなく心の豊かさへと変化し、景観に対する認識が高まっており、良好な景観の創出が課題となっている。歴史的建造物・街並みの保全・活用や地域の歴史、文化、自然との調和に配慮した美しくゆとりある景観の形成を推進するため、地区計画、美観地区、風致地区、建築協定、屋外広告物条例等の活用を推進するとともに、景観条例等の地方公共団体独自の取組を推進する。あわせて、地域住民の取組を支援する。また、景観に配慮した公園、水辺空間、道路等の整備を推進する。

(女性、高齢者等に配慮した居住環境等の整備)
今後、女性の社会進出、高齢化等が一層進展する中で、女性、高齢者等が社会的活動のしやすいようなまちづくりを推進する必要がある。

そのため、就業等の社会生活と育児、介護等の家庭生活を両立することができるよう、保育施設の弾力的運営、介護サービスの充実、さらには職場、家庭等における男女の固定的役割分担の是正等を推進する。

また、高齢者、障害者、健常者等の区別なく、だれもが使えるように配慮されたデザイン(ユニバーサルデザイン)による、住宅、公共施設、市街地、公共交通機関の整備を推進する。高齢者のみ世帯の増加を踏まえ、高齢者向け公共賃貸住宅の供給を推進するとともに、生活支援機能が付加された高齢者向け公共賃貸住宅の供給等、福祉施策と住宅施策との連携促進を図る。また、就業意欲のある高齢者、障害者等が就業しやすい環境整備と就業機会の確保を図ることが必要である。

さらに、一部のニュータウン等で生じている一斉高齢化と住宅の老朽化に対応するため、小学校等を高齢者福祉施設にも利用するなど施設の弾力的活用を進めるとともに、地域コミュニティの持続性に配慮しつつ、集合住宅の計画的かつ段階的な建て替えや修繕等を図る。

(保健・医療・福祉施設の整備)
近畿圏は、我が国でも有数の医療技術・施設を有しており、今後も医療・福祉ニーズの多様化、医療技術の高度化等に対応し、地域の特性に十分配慮しつつ、保健・医療・福祉サービス供給体制の一体的整備を図る。特に、高齢化の進展に対応するため、特別養護老人ホーム[59]、老人保健施設[60]等の整備、訪問介護サービス[61]、通所利用型・入所型介護サービス[62]等の充実を図る。また、今後多くの需要が見込まれる福祉にかかわる人材の育成については、現場実習等の充実、専門職種間の連携の促進等専門的資質の充実を進め、質・量ともに充実した人材の育成を図る。

3.教育・文化の充実

(育児環境の充実)
少子化の進展は、経済活力や社会保障への影響のほか、子供同士のふれあいの機会の減少等により子供の社会性の育成阻害等の問題にも係わっている。今後、子供を安心して産み育てることのできる環境づくりのため、子育て支援について社会全体で、ハード・ソフト両面にわたり総合的に取り組む必要がある。

そのため、保育所における延長保育や低年齢児保育、保育所と幼稚園の施設・運営の共用化等、多様な保育ニーズに対応した施設の運営や整備、また、地域における子育て等に関する相談・情報提供体制の充実を図る。さらには、育児を考慮した雇用環境の整備、SOHO・テレワーク等による就業形態の多様化を図るとともに、安全な道路交通環境や遊び場、子供連れにとって利用しやすい公共施設の整備等により、育児のしやすい生活環境の形成を図る。

(教育環境の充実)
初等中等教育については、自ら学び、考える教育、また、国際化や情報化等の社会の変化に適切に対応する教育やボランティア教育等を推進するとともに、学校、家庭、地域社会が連携・協力しつつ、他者への思いやりや社会性、独創性を育む心の教育の充実を図る。また、このような教育内容・方法の多様化に対応した施設づくり、ゆとりと潤いのある施設づくり等、学校施設の質的充実のための整備を推進する。さらに、完全学校週5日制の実施のための施設整備や、生涯学習ニーズの高まり、高齢化社会への対応等の観点から、学校施設の地域への開放、余裕教室の高齢者福祉施設等への転用や施設の複合化を推進する。

大学等高等教育については、その教育研究の質の向上を図るとともに、産学官連携や社会人のリカレント教育等により社会的サービス[63]機能の向上を推進する。

(文化活動等の場の整備)
住民に質の高い芸術文化を提供するとともに、住民による新たな芸術文化の創造を支援する美術館、博物館等の文化施設については、その活動を支える人材の育成等のソフト面を重視し、また、地域連携、既存施設の活用等に留意しつつ、地域住民が誇りうる施設として、その整備・運営を図る。

また、スポーツニーズの量的・質的高まりに応え、学校体育施設の地域住民への積極的な開放や公共スポーツ施設の整備とサービスの充実等を図る。

4.水・エネルギー供給体系の整備

(1)水資源の開発・保全

(水供給体系)
近畿圏では、一人当たりの水資源賦存量(理論上利用できる水資源の最大量)は全国平均の約半分程度と少ない。また、生活様式の変化等により水需要量が増大しているとともに、ひとたび渇水が起きた場合の社会的影響が増大している。

このため、淀川を始めとする各河川の流域圏において、節水意識の向上や節水機器の普及等による水需要の抑制、下水・産業排水の再生利用等による水資源の有効利用を推進するとともに、社会経済状態の変化等を踏まえ事業評価を行いつつ、水源地域対策、環境保全に対し十分に配慮した水資源開発、既存施設の有効活用を計画的に進める。また、利水者間相互の水の融通や渇水対策容量を持つダムの建設等による渇水対策、雨水浸透等による地下水かん養や表流水への水源の転換等による地下水源の保全を推進する。水源かん養機能の維持・向上のため、重要な水源地域においては、森林の保全・整備を推進する。

さらに、安全でおいしい水の確保のために、水源地域における森林の保全・整備や汚水処理施設の整備等により、琵琶湖等の水源となる水域の水質の保全・改善を推進するとともに、浄水処理の高度化等の水道水質管理の充実を推進する。

 

(汚水処理体系)
生活環境の向上を図り、公共用水域の水質汚濁防止に資するために、汚水処理施設の整備、老朽化した施設の改築・更新を推進する。特に、大阪湾、琵琶湖等の閉鎖性水域、淀川等の上水道水源となっている河川の水質を保全するため、高度処理を積極的に推進するとともに、降雨時の汚濁軽減のために、雨水貯留施設の設置等の非特定汚染源対策や雨水と汚水を同一管きょで排除する合流式下水道の改善を推進する。

また、処理水の雑用水等への再利用、汚泥の緑地や農地への還元利用や建設資材としての利用等を推進するとともに、処理場の上部利用や管きょを光ファイバ[64]網の敷設可能な空間として開放する等の資源・施設の有効利用を推進する。

(2)エネルギー供給体系の整備

増大するエネルギー需要に対し、各種の省エネルギー施策、新エネルギーの積極的な導入や電力負荷平準化施策等を最大限かつ強力に推進しつつ、原子力発電を始めとした安定的、効率的な供給に資する電源の立地、送変電施設の増強等必要なエネルギー供給体系の整備を推進する。

なお、エネルギー供給体系の整備に当たって、エネルギー供給事業者は、効率的かつ効果的な設備形成、既存設備の高度化、事業者間の広域的な連携等に努めることとする。

また、原子力発電所等に対する国民の理解と協力を得るため、定期的な検査の実施等により安全の確保に万全を期すよう努める。さらに、生活、産業活動に不可欠な電力供給を行う原子力発電所等の立地地域の重要性にかんがみ、その自立的かつ持続的な発展が可能となるよう関係機関が連携を図りながら、産業振興、住民福祉の向上等における地域の主体的な取組をソフト・ハード両面にわたり支援する。また、エネルギー需給に関する現状と課題を自らの問題として考え、判断する契機を提供するため、都市部等の電力消費地を始めとする国民一般に対する幅広い広報活動の強化等を推進する。

さらに、近畿圏においては、民生用、産業用ともに天然ガスコージェネレーションが積極的に導入されているほか、特に、太陽光発電に関して、地方公共団体の施設での積極的な導入、震災時の経験を踏まえた兵庫県における住宅用太陽光発電システムの導入件数の着実な伸び、さらには太陽電池生産の集積等がみられる等、新エネルギーの活用等が先進的に取り組まれている。今後も太陽光発電、風力発電、廃棄物発電[65]、温度差エネルギー[66]等の新エネルギーの積極的な導入、コージェネレーションの活用、廃熱の効果的な利用等エネルギーの多段階利用の推進等により、エネルギーの有効利用を図る。

第7節 圏域を支える交通、情報通信体系の整備と今後の社会資本整備

1.連携・交流を支える交通体系の整備

近畿圏においては、各都市、地域のつながりを強化し、一体的な圏域を構築することが重要であり、国際交流や圏域内外との連携・交流を支える交通体系についても一体的に整備し、ネットワークとして機能することが重要である。また、環境への負荷の低減を図るとともに、複数の交通機関の連携、既存ストックの有効活用、ネットワークとしての代替性・多重性の確保等を進めつつ、多様なニーズに対応した安全で利便性や快適性の高い交通体系の形成を図る。

(国際交流の拡大を支える交通体系)
国際的な大競争に対応しつつ、近畿圏の国際交流機能を強化するため、東アジアの各国との間では出発したその日のうちに到達でき、一定の用務が行える「東アジア1日圏」とも呼べる圏域を形成する等圏域が一体として世界との直接的な交流を容易に行えることを目指し、人流、物流両面にわたり、国際的な交通体系を整備する。

このため、関西国際空港の整備を推進するとともに、神戸港、大阪港等において国際海上コンテナターミナル等の整備を推進する。また、これら空港、港湾と連結する道路や鉄道等の整備を推進するとともに、圏域全体とのアクセス性を高めるための交通体系等圏域全体の国際交流の拡大を支える交通体系の整備を推進する。

(全国的な交流を支える交通体系)
日本海国土軸、太平洋新国土軸、西日本国土軸の形成等による多軸型国土構造の実現等を支援するとともに、近畿圏が担う全国的交通拠点、特に西日本の交通拠点としての機能を強化するため、全国的な交通体系として圏域間の多様な連携・交流を可能とする交通体系等の整備を推進する。

道路については、他圏域と結ぶ第二名神高速道路、中国横断自動車道、中部縦貫自動車道、東海環状自動車道等高規格幹線道路、地域高規格道路[67]の整備を推進するとともに、空港、港湾と連結する道路等の整備を推進する。また、紀淡連絡道路、伊勢湾口道路の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえ調査を進めることとし、その進展に応じ、周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進める。

鉄道については、新幹線の輸送力増強等を図るとともに、北陸新幹線については、政府・与党検討委員会検討結果に基づき、所要の事業を進める。さらに、中央新幹線について調査を進めるほか、科学技術創造立国にふさわしく、超電導磁気浮上式鉄道[68]の実用化に向けた技術開発を推進し、21世紀の革新的高速鉄道システムの早期実現を目指す。

空港については、全国的な交流を支えるため、航空ネットワークの拠点空港として関西国際空港の整備を推進する。また、神戸空港の整備を推進する。

港湾については、堺泉北港において複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備を推進する。

紀伊半島の東岸から西岸に至る東海、南海を結ぶ地域での連携推進を図るための交通体系の強化について検討する。また、長期的視点から四国との広域的な連携を図るための交通体系について検討する。

(圏域内の多様な連携を支える交通体系)
圏域内の多様な連携を支え、多核格子構造の実現を支援するため、近畿圏内の交通体系の整備を推進する。また、京阪神大都市地域における特色的な都市・地域が機能を分担する地域構造の強化、大阪湾ベイエリアの再編整備、関西国際空港、関西文化学術研究都市へのアクセス性向上等に資する交通体系の整備を図る。さらに、京阪神大都市地域と北近畿、南近畿との間の双方向の交流に資する交通体系等の整備を図る。

このため、道路については、多核格子構造の形成に資するため、高規格幹線道路、地域高規格道路等の整備を推進する。このため、京阪神大都市地域や大阪湾ベイエリアにおける連携を支え、利便性及び代替性・多重性を有する環状方向と放射方向からなる道路網の形成に資する京奈和自動車道、阪神高速道路、京都高速道路等の整備を推進するとともに、京阪神大都市地域と北近畿、南近畿との双方向の交流等を支える中央自動車道、近畿自動車道、京都縦貫自動車道、北近畿豊岡自動車道等多様な圏域内の連携・交流を支える高規格幹線道路、鳥取豊岡宮津自動車道等の地域高規格道路等の整備を推進する。一方、近畿の貴重な歴史文化資源や風土を利活用するため、歴史街道等の取組を進め、地域や道路の歴史、文化的な価値に着目した整備を行う。

また、最先端の情報通信技術等を活用し、道路交通の安全性、輸送効率、快適性を飛躍的に向上させるため、道路交通情報通信システム(VICS)[69]整備、有料道路におけるノンストップ自動料金収受システム(ETC)導入、ドライバーの安全運転の支援に資する自動運転実用化、交通管理最適化等を目指す高度道路交通システム(ITS)について研究開発・導入を推進するとともに、道路管理用の光ファイバ及びその収容空間の整備を推進し、さらにこれらの機能を統合的に備えた道路(スマートウェイ)の導入を図る。地域レベルにおいても、その地域の特性やニーズを踏まえ、駐車場案内システム等の高度道路交通システム(ITS)の導入を積極的に推進する。

さらには、交通事故の抑止を図るため、事故多発地点における事故削減策の集中的実施を図るとともに、利用者の安全性、利便性向上等を図るため、道の駅の整備、地域活性化のための高速道路インターチェンジの追加整備、高速道路やその休憩施設への民間の集客施設等の連結等を推進する。

鉄軌道については、戦前から事業者間の競争・連携や私鉄を始めとする沿線開発等により、特色ある交通体系を形成するとともに、地域整備の面等でも大きな役割を果たしてきた。今後は、このような特性を踏まえつつ、地域における公共交通サービスの向上や混雑緩和、利便性向上等に資する効率的な鉄軌道網の形成を図るため、大阪外環状線等環状方向の路線、京都市東西線等都市中心部へのアクセス性向上に資する路線、北港テクノポート線等大阪湾ベイエリアにおける路線等の整備を推進するとともに、複線化や電化等により輸送力の増強、サービスの向上を図る。

また、既存ストック活用等を図るため、路線整備に当たり貨物線を活用して旅客利用を図るとともに、オフピーク通勤[70]を促進し、さらに、相互直通運転や地域として共通の乗車券の整備等による乗り換え円滑化等を推進し、異なる交通機関相互を含めた事業者間の連携を図り、利用者にとっていわばシームレスな交通網として機能する交通体系を形成する。

一方、鉄軌道の運転事故は、一旦事故が発生すると、甚大な被害を生じるおそれ等があることから、運転保安設備の整備等による一層の安全性向上、緊急時に備えた安全対策を推進する。

また、中小都市、中山間地域等においては、住民の活動等を支える交通体系として、自動車の利便性向上等に資する交通基盤施設の整備を推進するとともに、地域の特性を踏まえて公共交通等生活交通のサービスの確保を図る。

(都市内における利便で快適な交通体系)
都市内では、都市の規模や特性に応じて、鉄道、都市モノレール、新交通システム[71]、LRT[72]を始めとする路面電車、コミュニティバスを含むバス等公共交通機関の整備・充実を図る。

また、都市内道路整備や歩行者、自転車のためのネットワーク形成、自転車駐車場整備を推進する。この際、都市内の道路については、トランジットモール[73]導入や駅、目抜き通りを中心としたまちづくり等により中心市街地のにぎわいや美しい街並み等の形成に寄与すること、公共空間、防災上の延焼遮断帯や避難路、ライフラインの収容空間等都市の貴重な空間としての機能も有することに配慮し、整備を推進する。交通基盤施設の整備と土地の有効活用等を効果的に推進するため、建築物と道路等の一体的整備や土地区画整理、市街地再開発による整備等を推進する。公共交通については、地域を支える交通機関として、利用促進のための広報、利用しやすい乗車券の導入等利便性の向上によりその利用を促進する。また、幅の広い歩道の整備やノンステップバスの導入等により道路空間や公共交通機関のバリアフリー化を推進する。特に鉄道駅等については、その機能の多様化を図るとともに、高齢者、障害者等の移動円滑化を始めとする利便性の向上や交通結節機能の強化等を図るため、エレベーター等の設置、駅前広場、自由通路、歩道、情報提供システム、アクセス道路の整備等、駅と道路等の一体かつ総合的な整備等を推進する。さらに、歩車共存道路の整備等により、住居系地区等における通過交通の進入を抑え、暮らしの安全を確保する良好なコミュニティ・ゾーンの形成等を図り、重点的かつ効率的な交通安全施策を推進する。

都市内における円滑な交通等を実現するため、バイパス・環状道路の整備等交通容量拡大施策、自動車駐車場の整備を推進するとともに、時差通勤、フレックスタイム制[74]導入やパーク・アンド・ライド[75]推進等を行う交通需要マネジメント(TDM)施策、交通結節点整備等複数の交通機関の連携により利便性向上を図るマルチモーダル施策を推進する。また、交通の円滑化やまちづくりの促進に資する連続立体交差等による踏切道対策を推進するとともに、高度道路交通システム(ITS)の導入を進める。さらに、これらを組み合わせて総合的かつ重点的に対策を推進する。

2.情報通信体系の積極的な活用と整備

高度情報通信社会においては、情報通信体系が持つ、国際・国内、遠近を問わず個人間を直結にする機能をいかし、世界への情報発信、国内外の連携・交流を推進することが重要である。近畿圏は、産業、文化等様々な面で伝統を下地に持つ社会が形成されているが、伝統の良さは大切にしつつも、積極的にこのような取組を推進する必要がある。

(各分野における情報通信の積極的な活用)
産業分野では、地域間の条件較差の縮小、中小企業や伝統産業等も含めた多様な業種、業態での活用等により、産業の中枢機能の維持・発展を図るとともに、情報化の進展や情報や知識の価値に着目した新時代のリーディング産業を創出する。

地域では、歴史文化資源や自然環境のワイズユースへの活用、保健・医療・福祉、防災、教育、行政サービス等生活関連分野への活用、テレワークの推進等を図る。また、身近な場所等で各種の行政サービスを受けることができるようにするワンストップサービスについては、制度的・技術的課題を解決しつつ段階的に実施する。

また、これらの基礎となる学術研究・技術開発の面でも、グローバルな交流環境の下で、研究開発活動並びにその成果の活用、普及を図る。

(総合的な情報通信体系の整備)
だれもがいつでもどこからでも十分に活用可能な、安定的で高度なネットワークインフラ[76]整備を図るため、ハード面、ソフト面、人材面の全ての分野で総合的に情報通信体系の整備を推進する。これらの整備に当たっては、民間主導で行うことを基本として、公的部門は情報化を推進するための制度的枠組みの整備、民間投資への支援等環境整備を推進する。

ハード面では、光ファイバ網等の整備推進、より高速・高品質な移動通信システム等の導入と普及等、高速、大容量で高度な情報通信ネットワークの整備を推進する。また、地域独自のネットワークについて構築を進める。これらを活用した先導的な取組を推進するとともに、都市部以外の需要の低い地域を含めた圏域内の利用条件均等化への配慮、衛星通信の活用等により系全体の代替性や補完性を確保しつつ、固定及び移動系、有線及び無線系といった各種ネットワーク相互の接続性に優れ、全体としてあたかも一体のように機能するシームレスな情報通信体系[77]の整備、ネットワークの代替性、多重性の確保に努める。さらに、施設整備に当たっては、道路、河川空間等公共空間の一層の活用及び下水道等公的施設管理用等の光ファイバ網の民間事業者による活用のための環境整備を推進する。また、国民生活における情報通信の利活用を図るため、役場、郵便局等既存の公共施設を活用する。

ソフト面では、高度情報化に向けた制度面の環境整備として、電子商取引に向けた制度面の整備や実験、通信費用の低減や多様なニーズに応じた料金体系実現等を目指した競争促進等通信事業に係る環境整備等を引き続き推進するとともに、個人情報保護、セキュリティ確保、知的財産権保護等に配慮した措置を図る。また、地域住民の生活圏域の拡大を考慮し、既存の行政区域を越えた広域的な情報化を推進する。

人的な面では、情報産業分野の技術者等の育成、学校におけるインターネット[78]等を活用した情報教育の推進等住民の情報リテラシー(情報活用能力)[79]の向上を図るとともに、高齢者や障害者、外国人等だれもが利用しやすいように、音声、言語等情報伝達方法の工夫、使いやすい端末機器の開発・普及等を図る。

放送については、地上放送、衛星放送等のデジタル化[80]を促進するとともに、光ファイバ網等各種通信ネットワークがシームレスに接続する「トータルデジタルネットワーク」の構築等により、より高画質で多様な放送の実現を目指す。また、地域の生活・文化面での利便性向上やコミュニティ活動に資するCATV[81]等の普及・充実を図る。さらに、コンテンツ[82]の制作・流通環境の整備を図る。

(近畿圏の情報発信力強化)
近畿圏では、産学官やNPO等からなる組織等圏域を挙げた情報発信の取組が進められており、これらの成果をいかしながら、一層の情報発信力の強化に努める。

このため、圏域や地域が一体となった圏域独自の情報発信及びそのための環境整備を進めるほか、各機関のネットワーク化等による情報、アプリケーション[83]の共有や蓄積、データベース化、情報分野の人材育成、ソフトウェア・コンテンツの充実を図る。また、イベントの情報発信効果に着目し、積極的に活用する。

さらに、世界へ向けた情報発信を推進するため、インターネットや放送等を活用した外国に向けた多国語による情報提供、外国人や圏域住民の語学学習機会の提供等に努める。

3.効率的、効果的な社会資本整備の推進

(今後の社会資本整備の考え方)
近畿圏整備の推進上、社会資本は重要な役割を果たし、その整備を着実に推進する必要がある。しかし、今後の成熟の時代を迎え、少子化・高齢化の進展が見込まれる一方、高い水準での経済成長は見込み難い状況にあり、社会資本整備をめぐる環境は厳しい状況にある。このため、今後の社会資本整備は効果的な整備を効率的に推進する必要がある。

今後の社会資本整備としては、地域の自立の条件となる基盤や地域間の多重な連携・交流に資する基盤の整備を重点的に行う。また、各地域では、個性をいかした地域づくりに資する施設の整備を主体的に推進する。一方、広域的に効果のある施設については、本計画等の広域的な計画を活用し、地域相互の調整、協力等の下効率的に整備を推進する。

(効果的、効率的な社会資本整備の推進)
効果的かつ効率的な社会資本整備を図るため、PFI[84]や受益者負担の手法の導入等官民の適切な役割分担の下での整備を推進する。整備に当たっては、費用と効果の関係等を含めた総合的な評価を実施するとともに、新しい施策の導入に当たり効果の見極めや関係者の理解と協力を得るため、社会実験の活用を図る。また、地域間相互で利用する施設等の整備、多目的利用や弾力的運用等施設の有効利用を推進する。施設整備に当たって、適切かつ合理的な土地利用を図るため、必要に応じて基盤施設等の公共施設と建築物等の民間施設との一体的、複合的な整備を図る。さらに、建設コスト及びこれに維持管理や更新の費用を含めたライフサイクルコストの縮減、老朽化する社会資本ストックの増大を踏まえた社会資本やそのサービスの安全性、信頼性確保等の観点も含めて計画的な維持管理・更新を図るとともに、地域レベルでのマネジメント等に関する技術やノウハウの蓄積・体系化等により、社会的サービスに関するコスト縮減や運営の効率化に努める。

また、住民や施設利用者等幅広い人々の参加と協力による社会資本整備を推進するため、整備に当たっては、情報を広く開示、提供するとともに、これらの人々が計画段階からより一層の参加が可能となるようにする。特に身近なまちづくりについては、仕組みづくり等も含め、住民による主体的取組を促す。その際、幅広い人々の参加の下、円滑に整備やまちづくりを推進するため、コーディネート役を果たす専門家の活用、育成等を図る。

第4章 戦略的な連携軸の形成

1.大阪湾環状軸の形成

(大阪湾環状軸の形成)
大阪湾を囲む地域は、近畿圏における業務、工業、物流、出版・放送、行政等の高次都市機能を持ち、我が国経済、文化の中心の1つとしての役割を担っている。また、淡路島等自然環境に恵まれ、新たな発展の可能性をもった地域もある。しかし、社会経済環境の急激な変化等に伴って、産業活力や中枢機能の低下、工場跡地等の低・未利用地等の問題が生じている。

今後、近畿圏が、我が国を代表する国際的な経済、文化、交流等の中枢圏域として発展するためには、大都市のリノベーション、大阪湾ベイエリアの開発整備等により国際的な中枢機能、都市生活機能を始めとする諸機能を充実するとともに、その連携を強化することによって、大阪から関空・泉州、和歌山、さらに紀淡海峡、淡路島、明石海峡を経て、神戸、大阪へとつながる大阪湾環状軸を形成する。これによって国際交流や集客交流の拡大、既存産業の高度化と新産業の創出を目指す。

 

(高次な機能を持つ諸拠点の形成)
高次都市機能の強化のため、ポートアイランド(第2期)、神戸東部新都心、尼崎臨海西部拠点、テクノポート大阪、りんくうタウンの整備等を推進するとともに、中之島西部、阿倍野の整備、大阪駅北、湊町、京橋、竜華、尼崎等における鉄道駅周辺の旧国鉄跡地等の低・未利用地の有効活用を推進する。また、国際交流機能を強化するため、歴史街道計画の推進等歴史文化資源のワイズユースを図るとともに、此花西部臨海地域の再開発、中国・アジア交流ゾーン構想、世界に開かれた賑わいのある多彩な交流空間を目指す淡路公園島構想等を推進する。あわせて、産業構造の転換等に伴って生じている臨海部に点在する工場跡地等の大規模低・未利用地について、計画的な土地利用転換等を進める。

臨海部における鉄鋼、金属、化学等の基礎素材型産業や東大阪市等における特色ある中小企業の集積地等の活性化を促進するとともに、情報通信・映像関連サービス業や神戸市の臨海部を中心として医療関連産業の集積等を目指した取組の推進等による医療福祉関連産業等の振興を図る。

職住近接の利便や都市的サービスの享受によるゆとりと豊かさを実感できる良好な居住環境を形成するため、生野区南部等の老朽木造密集市街地の整備や都心部における都市型住宅の供給等を推進する。あわせて、南芦屋浜等の臨海部における住宅の整備、阪南丘陵における豊かな自然と地形をいかした住宅・宅地の供給、和泉中央丘陵における居住・都市・研究開発機能を複合した街づくり等を推進する。

また、広域的な利用に供する公園・緑地の整備、市街地において身近に楽しめる公園等の整備を推進するとともに、余暇活動に対する幅広いニーズに応えるため、大阪港舞洲において、スポーツ・レクリエーション拠点の形成を図る。

阪神・淡路大震災の被災地域において、被災市街地の復興のため、市街地整備を着実に推進する。阪神・淡路大震災の経験や教訓を後世に継承するため、国内外の地震災害の関連資料の収集・展示、震災対策に関する調査研究や人材育成等の機能を有する施設の整備を推進する。また、地震災害に対する広域支援体制の充実を図る。さらに、非常時に画像等高度な情報の伝達が可能な無線系情報通信ネットワークの実験、開発を推進する。

(様々な地域との連携の強化)
地域における既存の交通体系と適切に組み合わせつつ、効率的な交通網形成に資する交通体系等の整備を推進する。

国際的な交流を支えるゲート機能の強化を図るため、関西国際空港の整備を推進するとともに、神戸港、大阪港、堺泉北港において国際海上コンテナターミナル等の整備を推進する。また、尼崎西宮芦屋港、阪南港、和歌山下津港において多目的国際ターミナルの整備を推進する。

このため、道路では、大阪湾環状軸に沿った方向の連携に資する路線である大阪湾岸道路、第二阪和国道、大阪内陸都市環状線、神戸西バイパス等の整備を推進するとともに、紀淡連絡道路の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえ調査を進めることとし、その進展に応じ、周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進める。また、京阪神大都市地域を始めとする都市圏間の連携強化に資する第二京阪道路、大阪橋本道路、南阪奈道路、阪神高速道路等の整備を推進するとともに、臨海部へのアクセス性向上等に資する神戸中央線、東神戸線、名神湾岸連絡線等の整備を推進するほか、阪神高速道路等の整備による効率的な道路網形成を推進する。

鉄軌道では、環状方向の路線である大阪外環状線、臨海部へのアクセス性向上等に資する北港テクノポート線、神戸市海岸線、効率的な鉄軌道網の形成等を図るため、大阪市8号線、国際文化公園都市モノレール等の整備を推進するとともに、なにわ筋線、中之島線、阪神西大阪延伸線等の検討を進める。

全国的な交流を推進し、近畿圏の全国的交通拠点としての機能を強化するために、第二名神高速道路、これに連絡する新御堂筋・延伸等の整備を推進する。中央新幹線については、その調査を進めるほか、超電導磁気浮上式鉄道の実用化に向けた技術開発を推進し、21世紀の革新的高速鉄道システムの早期実現を目指す。また、国際・国内航空ネットワークを結節する拠点空港として関西国際空港の整備を推進するほか、地域の国内航空需要に対応するため神戸空港の整備を推進し、国内基幹空港の役割を担う大阪国際空港を含めた三空港で機能分担するとともに、神戸空港と連絡する交通体系を始め、これら空港の機能を活用するための交通体系について地域が主体となって検討を進める。さらに、堺泉北港において複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備を推進する。

2.関西内陸環状軸の形成

(関西内陸環状軸の形成)
播磨から六甲山地の北側を経て、亀岡・京都盆地、奈良盆地、和歌山平野に至る地域は、高度な学術研究集積や成長著しい内陸部の電気・電子機器等を始めとした多様な産業集積が形成されている一方で、六甲山地や生駒・金剛山地、和泉山脈等の大都市に近接した豊かな自然、また伝統産業の技術の蓄積や豊富な歴史文化遺産を誇る地域でもある。

今後、近畿圏が発展するためには、これらの地域において、文化・学術研究機能の強化と産業の活性化、それらとバランスのとれた良好な居住環境の実現、さらには、歴史文化資源のワイズユースを図ることが必要である。

このため、関西文化学術研究都市を始めとする各学術研究集積等の整備を図るとともに、山陽自動車道、中国自動車道、第二名神高速道路、京奈和自動車道等の交通体系に沿った産業集積、学術研究集積等の拠点相互の連携を強化することによって、播磨科学公園都市、姫路から北神・三田、北大阪、亀岡、京都、関西文化学術研究都市、奈良、橿原、五條、和歌山にかけて関西内陸環状軸を形成する。これによって、卓越した学術研究の推進、既存産業の高度化と新産業の創出、歴史文化遺産の適切な継承を目指す。

(諸機能の強化に向けた拠点の形成)
学術研究機能、産業機能の強化と良好な居住環境の実現のため、関西文化学術研究都市を始めとして、播磨科学公園都市、東播磨情報公園都市、神戸三田国際公園都市、彩都(国際文化公園都市)、南麓サイエンスパーク等の産・学・住のバランスの取れた学術研究集積の整備とともに、先端技術企業等の集積を図る京都リサーチパーク、海南インテリジェントパーク等の整備、伝統産業と近代産業の融合を図る京都新光悦村の整備を推進する。特に、中核となる関西文化学術研究都市においては、世界水準の学術・研究施設や中小・ベンチャー企業集積等多様な施設の整備、環境共生、高度情報化や国際化への対応、文化の薫る住みよいまちづくり等21世紀の都市の在り方を先導するパイロット・モデル都市としてのまちづくりを推進する。

良好な居住環境を実現するため、宝塚や箕面北部、橋本等において、豊かな自然環境をいかした住宅、宅地の供給を推進する。六甲山系や生駒山系等の緑地の保全・整備を推進する。

良好な市街地の形成を図るため、姫路駅、奈良駅の周辺において、鉄道の高架化に併せた市街地の整備を推進する。

歴史文化資源のワイズユースとして、京都、奈良、明日香や姫路等において、良好な歴史的風土や貴重な文化財の適切な保全、平城宮跡の復原等の歴史を体験できる施設の整備、京都デジタルアーカイブ構想の推進等を図る。

迎賓・コンベンション機能の強化のため、日本の文化・歴史を感じられる京都和風迎賓施設の建設や国立京都国際会館の機能拡充等を推進する。

(様々な地域との連携の強化)
学術研究機能の強化のための関西文化学術研究都市を中核とした近畿リサーチ・コンプレックス構想の推進、集客交流の拡大のための歴史街道計画の推進、大規模災害に対する防災性の向上等のため、広域的な連携を推進する。

地域内外の連携を強化するため、環状軸方向に沿った交通体系、関西文化学術研究都市のアクセス性向上に資する交通体系、京都等都市圏における交通体系等の整備を推進するとともに、京阪神大都市地域を始め、従来より強いつながりのある大阪湾環状軸に沿った地域との連携に資する交通体系、全国始め広域的な連携に資する交通体系等の整備を推進する。

環状軸方向に沿った連携に資する交通体系として京奈和自動車道等の整備を推進するとともに、関西文化学術研究都市へのアクセス性向上に資する学研都市連絡道路、京阪奈新線の整備や西日本旅客鉄道奈良線及び片町線の複線化等を推進する。京都都市圏における交通体系として、京都高速道路、洛南連絡道路、京都市東西線の整備や西日本旅客鉄道山陰線の複線化等を推進する。また、大阪湾環状軸に沿った地域との連携等地域の活動を支える交通体系として、道路では中和東幹線等の整備、鉄道では神戸電鉄三田線の複線化等を推進する。さらに、全国始め広域的な交流に資する交通体系として、中国横断自動車道姫路鳥取線、中央自動車道西宮線、京滋バイパス等の整備を推進する。

国際的な交流を支えるため、姫路港において多目的国際ターミナルの整備を推進する。

3.若狭海道軸の形成

(若狭海道軸の形成)
若狭湾沿岸の地域は、歴史文化遺産に富んだ都市と風光明媚な海岸線等の多様な自然環境を持ち、四季折々のレクリエーションの場、さらに、近畿圏のエネルギーの一大供給地としての役割も担っているが、若年層を中心とした人口流出、高齢化、地域産業の不振等により地域活力が低下しつつある。

このため、豊かな自然資源や歴史資源をいかした集客交流、マルチハビテーション(複数地域居住)の推進等に係る連携の強化によって、敦賀から小浜、宮津・舞鶴にいたる若狭海道軸を形成する。さらに、若狭海道軸と山陰地域や北陸地域との連携を強化することによって、日本海国土軸の形成を目指していく。

 

(集客交流の拡大等のための地域整備)
集客交流の拡大等のため、天橋立、三方五湖、気比の松原等の自然環境や歴史文化資源を適切に保全する。また、グリーン・ツーリズム等滞在・体験型観光やマリンレジャーの振興とともにキャンプ場、スキー場等のレクリエーション施設、大都市住民が交流・活動できる場等の整備を推進する。

敦賀、小浜、舞鶴、宮津等の地域の中心となる都市においては、地域住民の生活・活動の拠点となるため、基礎的な都市・生活基盤の整備を推進する。

産学官連携の推進等による繊維、電気機械、化学等の地域の産業の活性化とともに、豊かな海産資源を活用した水産物の加工・販売、マリンレジャー等の海に関連した産業の複合化等によって、各地域を活性化させる。また、小浜漁港等の整備の推進により漁業を振興する。

(様々な地域との連携の強化)
集客交流の拡大のため、若狭の豊かな食材等をいかした共同イベントの開催、各地域が具体的な方策を共同で検討・実施する体制の形成、積極的な大都市地域へのPRの実施等を推進する。

対岸の朝鮮半島、中国北東部及びロシアの沿岸地域との環日本海交流等を推進するため、敦賀港、舞鶴港において多目的国際ターミナルの整備を推進する。

若狭海道軸に沿った地域の連携や京阪神大都市地域を始めとした他地域との交流に資する交通体系として、近畿自動車道敦賀線、鳥取豊岡宮津自動車道の整備や西日本旅客鉄道小浜線の電化等を推進する。

4.吉野熊野歴史自然軸の形成

(吉野熊野歴史自然軸の形成)
紀伊半島地域は、個性ある歴史文化資源と黒潮がもたらす温暖な気候、豊かな森林資源等の自然環境等をもち、熊野詣にみられるように、いにしえより「癒し」「蘇り」の地として、多くの人々の信仰を集め、また湯治等の訪問客をとぎれることなく誘ってきた。しかし、若年層を中心とした人口流出、高齢化、地域産業の不振等による地域活力の低下がみられる。

このため、豊かな歴史資源、自然資源をいかした集客交流の推進等に係る連携を強化することによって、和歌山から田辺、新宮、松阪を経て伊勢にかけて、及び伊勢から五條を経て和歌山にかけて、吉野熊野歴史自然軸を形成する。

さらに、吉野熊野歴史自然軸と四国地域や伊勢湾岸地域との連携を強化することによって、太平洋新国土軸の形成を目指していく。

(集客交流の拡大等のための地域整備)
集客交流の拡大等のため、高野山、熊野三山、熊野古道、大峰山、大峰道等における歴史文化遺産や吉野・熊野の森林、大台ヶ原、瀞峡等の自然環境を適切に保全する。また、グリーン・ツーリズム等の滞在・体験型観光、温暖な海洋を活用したマリンレジャー等の振興とともに、キャンプ場等のレクリエーション施設、大都市住民が交流・活動できる場等の整備を推進する。

五條、御坊、田辺、新宮、尾鷲、伊勢、松阪等の地域の中心となる都市においては、地域住民の生活・活動の拠点となるため、基礎的な都市・生活基盤を整備する。

豊かな海産資源、我が国有数の森林資源をいかし、産学官連携による農林水産品の高付加価値化や、農林漁業と観光・レクリエーションとの複合化等により地域を活性化させる。付加価値の高い農業、豊かな漁場をいかした漁業、吉野を拠点とした林業事業体[85]の育成強化や松阪木材コンビナート等の総合的木材流通加工拠点の整備等による林業・木材産業の振興を図る。また、宮川にまつわる歴史・文化の承継や環境保全等流域における総合的な取組を推進する。

(様々な地域との連携の強化)
軸全体の広域的な連携を可能とする体制の形成により、教育や医療等の地域サービスの共同化、防災対策、農林水産業の振興策への共同取組とともに、集客交流の拡大のための共同計画の策定、イベント等の開催、積極的なPRを推進する。あわせて、歴史街道計画を推進する。

吉野熊野歴史自然軸に沿った地域内の連携、周辺地域さらには中部圏や四国地域との連携等に資する交通体系として、近畿自動車道紀勢線及び伊勢線、五條新宮道路、伊勢志摩連絡道路等の整備を推進する。伊勢湾口道路の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえ調査を進めることとし、その進展に応じ、周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進める。紀伊半島の東岸から西岸に至る東海、南海を結ぶ地域での連携推進を図るための交通体系の強化について検討する。

地域の産業を支えるとともに国際的な物流機能を強化するため、日高港において多目的国際ターミナルの整備を推進する。

地域内に先導的な情報通信ネットワークを構築し、多様な連携を推進するとともに、行政を始めとする多様な社会的サービスの高度化を目指す。

5.T・TAT連携軸の形成

(T・TAT連携軸の形成)
丹後、但馬、丹波地域から、淡路島を経て四国に至る地域は、日本海側の風光明媚な山陰海岸と多雪な気候から瀬戸内、太平洋側の温暖な気候に至るまで多様な自然環境がみられる地域である。そして、これらの地域では明石海峡大橋等交通体系の整備の着実な進捗を背景として、新たな連携・交流が生まれつつある。

このため、大都市との交通利便性、大都市や地域の特色ある産業集積、多様な自然環境等をいかし、都市機能、産業機能、集客交流機能等の諸機能を充実するとともに、その連携を強化することによって、豊岡、宮津、舞鶴、福知山、綾部等から神戸、洲本を経て四国に至るT・TAT(丹後、但馬、阿波、土佐)連携軸を形成する。ひいては、四国、山陰地方との連携の拠点として圏域の活動を牽引する役割を担うことが期待される。

(多様な多自然居住を創造する拠点の整備)
豊岡、宮津・舞鶴、福知山・綾部、洲本等の地域の中心となる都市については、自然環境や農業的土地利用との調和を図りながら、地域住民の生活・活動の拠点となるため、基礎的な都市・生活基盤の整備を推進する。また、中心市街地においては、地域の個性をいかしながら商店街等の再生等により活性化を図る。

皮革、織物、機械金属及び医薬品等の産業の高度化や、地域特性をいかした畜産農業、漁業の振興を図る。

集客交流の推進のため、淡路公園島構想の推進とともに大都市との近接性、海洋や高原、温泉、多雪等の地域特性をいかして、キャンプ場、スキー場等のレクリエーション施設、スポーツ施設等の整備を推進する。また、グリーン・ツーリズム等の滞在・体験型観光等の振興を図る。

 

(様々な地域との連携の強化)
丹後、但馬、丹波地域では、古くから三たん地方開発促進協議会等の広域観光事業を始めとする様々な取組を通じて一体感が醸成されてきた。今後ともこれらの取組を進めつつ、環境保全、防災対策における連携、歴史街道計画、祭り等をテーマとした交流イベントの開催、地域共同の観光PR活動等を推進する。また、丹波から播磨地域にかけて、豊かな自然をいかし、集客交流の拡大と良好な生活環境の形成をめざした地域における連携を推進する。

T・TAT連携軸に沿った地域内の連携・交流、京阪神大都市地域等との連携・交流を強化するため、京都縦貫自動車道、北近畿豊岡自動車道、播但連絡道路、東播丹波連絡道路、東播磨南北道路等の整備を推進する。

6.福井・滋賀・三重連携軸の形成

(福井・滋賀・三重連携軸の形成)
福井平野から琵琶湖周辺を経て伊勢湾(太平洋)に至る地域は、古くから交通の要衝であり、交通の利便性をいかした産業集積を有するとともに、日本海、琵琶湖、太平洋の「3つのうみ」に代表される豊かな自然環境を有している。

これらの交通利便性、産業集積、自然環境等をいかし、都市機能、産業機能、学術研究機能等の諸機能を充実するとともに、その連携を強化することによって、福井から敦賀、彦根、大津を経て、四日市、津、伊勢さらに東紀州に至る福井・滋賀・三重連携軸を形成する。ひいては、中部圏との連携の拠点として圏域の活動を牽引する役割を担うことが期待される。

(既存の集積をいかした活力の創出と拠点整備)
福井、江や武生における繊維や電気機器、江を中心とした眼鏡産業等、湖東・湖南における家電を中心とした電気機械、北勢における石油化学や輸送機械等の特色ある工業集積に蓄積された産業技術等をいかすとともに、びわこサイエンスパーク、鈴鹿山麓研究学園都市、ソフトパーク福井等の学術研究、産業振興の拠点の整備等を通じて、既存産業の高度化と新産業の創出を図る。

環境問題への取組の実績や福井県若狭湾エネルギー研究センターや滋賀県のUNEP国際環境技術センター、三重県の国際環境技術移転研究センター等環境関連機関をいかし、環境の保全、環境に関する学術研究、国際交流を推進する。

集客交流の推進のため、越前海岸、琵琶湖八景、伊勢志摩のリアス式海岸等風光明媚な風景や、永平寺、比叡山、伊勢神宮等の多数の社寺・仏閣等の適切な保全と、それらを活用した共同イベントの開催、滞在・体験型観光の振興等を図る。また、キャンプ場等のレクリエーション施設を整備する。

福井、大野、武生・江、敦賀、長浜・彦根、大津、上野、四日市、鈴鹿、津、松阪、伊勢等の地域の中心となる都市については、基礎的な都市・生活基盤の整備を推進する。

(様々な地域との連携の強化)
集客交流の拡大のため、歴史街道計画の推進、自然資源や歴史文化資源等を活用した観光テーマルートの設定、共同PR、商品の高付加価値化等の共同の取組を推進する。

環境関連研究機関間の研究上の連携や環境保全の取組における各自治体の連携を通じて環境先進圏を目指すとともに、防災情報の共有化や災害発生時の相互応援体制の強化を推進する。

また、県境を越えた広域的な取組として、京都、滋賀、奈良、三重の4府県にまたがる我が国有数の歴史文化や豊かな自然等の持ち味をいかし、新たな文化を創造するエリアの形成を目指した広域的な取組や、環境や観光をテーマとした福井、岐阜、三重、滋賀の広域的な取組を推進する。

福井・滋賀・三重連携軸に沿った地域は、東海道新幹線、名神高速道路等の東西方向の交通体系に加え、軸に沿った方向の連携に資する交通体系として、伊賀甲賀連絡道路、甲賀湖南道路、びわこ空港自動車道、琵琶湖西縦貫道路、福井外環状道路、福井港丸岡インター連絡道路等の整備を推進する。また、隣接する中部圏等との広域的な連携に資する交通体系として、近畿自動車道名古屋大阪線、東海環状自動車道、中部縦貫自動車道、鈴鹿亀山道路、四日市インターアクセス道路等の整備を推進するとともに、北陸新幹線については、政府・与党検討委員会検討結果に基づき、所要の事業を進める。東海道新幹線の新駅設置の構想については、引き続き地域において検討を進める。

国際的な交流を支えるため、四日市港において国際海上コンテナターミナル等の整備を推進する。

第2部 施設計画及び区域の指定

第1章 施設計画

1.道路

(1)全国的な交流を支える道路
多軸型国土構造の実現等を支援し、他圏域との多様な交流を支える道路の整備を推進する。

このため、第二名神高速道路、中国横断自動車道姫路鳥取線、中央自動車道西宮線、中部縦貫自動車道、東海環状自動車道等の高規格幹線道路の整備を推進する。

紀淡連絡道路、伊勢湾口道路の構想については、長大橋等に係る技術開発、地域の交流、連携に向けた取組等を踏まえ調査を進めることとし、その進展に応じ、周辺環境への影響、費用対効果、費用負担のあり方等を検討することにより、構想を進める。

(2)圏域内の多様な連携を支える道路
多核格子構造の実現を支援し、圏域内の多様な連携を支える道路の整備を推進する。

@ 高規格幹線道路については、京阪神大都市地域や大阪湾ベイエリアにおける連携に資する環状方向の道路として、京奈和自動車道の整備を推進する。また、若狭海道軸に沿った地域における連携や、当該地域と京阪神大都市地域等との交流に資する道路として、近畿自動車道敦賀線の整備を推進する。吉野熊野歴史自然軸に沿った地域における連携や、当該地域と京阪神大都市地域等との交流に資する道路として、近畿自動車道紀勢線及び同伊勢線の整備を推進する。T・TAT連携軸に沿った地域における連携や、当該地域と京阪神大都市地域等との交流等に資する道路として、京都縦貫自動車道、北近畿豊岡自動車道の整備を推進する。福井・滋賀・三重連携軸に沿った地域における連携や、東西方向等の交流に資する道路として、近畿自動車道名古屋大阪線の整備を推進する。

A 高規格幹線道路を補完し、地域の自立的発展や地域間の連携の支援、空港・港湾等の広域的交流拠点や地域開発拠点等の連結に資する地域高規格道路の整備を推進する。

このため、阪神高速道路、京都高速道路の整備を推進し、伊賀甲賀連絡道路、鈴鹿亀山道路、福井外環状道路、琵琶湖西縦貫道路、甲賀湖南道路、京滋バイパス、第二京阪道路、鳥取豊岡宮津自動車道、洛南連絡道路、学研都市連絡道路、大阪内陸都市環状線、大阪橋本道路、新御堂筋・延伸、南阪奈道路、第二阪和国道、播但連絡道路、東播磨南北道路、東播丹波連絡道路、神戸西バイパス、大阪湾岸道路西伸部、五條新宮道路、中和東幹線、名神湾岸連絡線、神戸中央線、東神戸線、伊勢志摩連絡道路、四日市インターアクセス道路、福井港丸岡インター連絡道路、びわこ空港自動車道等について、事業中の区間の整備を推進するとともに、その他の区間の調査を推進する。

B 高規格幹線道路や地域高規格道路網の整備とあわせ、これらと一体的に機能する広域的な幹線道路については、一般国道1号、2号、8号、9号、19号、21号、22号、23号、24号、25号、26号、27号、28号、29号、41号、42号、43号、156号、158号、161号、163号、165号、169号、170号、171号、175号、176号、178号、250号、258号、307号、370号、477号等の一般国道の整備、及び主要地方道坂本高浜線、湾岸桑名インター線、大津能登川長浜線、京都守口線、京都広河原美山線、泉佐野岩出線、浪速鶴町線、宗佐土山線、神戸三木線、枚方大和郡山線、吉備金屋線等の整備を進める。

(3)その他
@ 都市部等を中心に、道路交通の円滑化と良好な市街地形成のため、市街地整備の一体性にも配慮して、都市内の道路を始め、連続立体交差、モノレール道、駅前広場、駐車場等の総合的整備を図る。

都市内の道路については、福井縦貫線(福井県)、富田山城線(三重県)、南大萱月輪線(滋賀県)、鴨川東岸線(京都市)、今里長法寺線(京都府)、本庄西天満線(大阪市)、十三高槻線(大阪府)、中央幹線(神戸市)、山手幹線(兵庫県)、大和中央道(奈良県)、西脇山口線(和歌山県)等の整備を推進する。

連続立体交差事業については、近畿日本鉄道京都線、西日本旅客鉄道阪和線、大阪外環状鉄道大阪外環状線、阪急電鉄千里線、西日本旅客鉄道片町線、阪急電鉄宝塚線、京阪電気鉄道京阪本線、近畿日本鉄道奈良線、南海電気鉄道南海本線、阪神電気鉄道本線、西日本旅客鉄道関西線、同山陽本線、同山陰本線、同北陸線、山陽電気鉄道本線等の整備を推進する。

都市モノレール等については、国際文化公園都市モノレールの整備を推進するとともに、神戸空港等と連絡する交通体系について検討を進める。

A 道路交通の安全性の確保や交通の円滑化を推進するため、環状道路、バイパス、交通安全施設、自転車道等の整備や防災対策等を進める。

渋滞の解消・緩和に資する道路整備、自動車利用の適正化や平準化を図る交通需要マネジメント(TDM)施策を推進する。

高度道路交通システム(ITS)については、「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」に基づき、研究開発・導入を推進する。ノンストップ自動料金収受システム(ETC)については、阪神高速道路、名神高速道路、山陽自動車道等、整備効果の高い路線の料金所に導入する。道路交通情報通信システム(VICS)については、圏域内の主要なエリアで情報提供サービスを展開する。また、駐車場案内システムや公共交通情報提供システムなど地域レベルでのITS導入を積極的に推進する。さらに、ドライバーの安全運転の支援に資する自動運転実用化、道路管理用の光ファイバ及びその収用空間の整備を推進し、これらの機能を統合的に備えた道路(スマートウェイ)の導入を図る。

都市における日常的な交通手段として、自転車が快適かつ安全に走行できるための自転車利用空間ネットワークの形成を推進する。

大規模自転車道については、田井大垣自転車道、若狭自転車道、北河内自転車道、播磨中央自転車道、飛鳥城自転車道等の整備を進める。

都市景観の向上や基盤施設の耐震性向上等のため、地域の特性に応じて共同溝・電線共同溝の整備を推進する。

沿道環境への対策として、遮音壁等の道路構造対策を進めるとともに、緩衝建築物の誘導などの沿道整備を推進する。

2.鉄軌道

(1)幹線鉄道
圏域内外の多様な連携等を支える広域的な鉄道網の整備を推進する。

このため、北陸新幹線について、政府・与党検討委員会検討結果に基づき、所要の事業を進めるとともに、中央新幹線について調査を進めるほか、科学技術創造立国にふさわしく、超電導磁気浮上式鉄道の実用化に向けた技術開発を推進し、21世紀の革新的高速鉄道システムの早期実現を目指す。

また、西日本旅客鉄道・東海旅客鉄道東海道線、同関西線、同紀勢線、西日本旅客鉄道山陽線、同山陰線、同北陸線、同福知山線、同草津線等において、輸送需要に応じて線増、電化、列車運行の高頻度化、長編成化等により輸送力の増強、サービスの向上を図る。

西日本旅客鉄道関西線、同山陽線、同山陰線、同北陸線において連続立体交差事業を推進する。

(2)京阪神大都市地域の鉄軌道
京阪神大都市地域における都市間の連携や都市内の活動を支えるとともに、混雑緩和や利便性向上等のため、事業者間の連携のもと、相互直通運転や乗り継ぎ利便性の向上等を図りつつ、以下のとおり効率的な鉄軌道網の整備を進める。

大阪市及びその周辺においては、大阪市8号線、北港テクノポート線の整備を推進するとともに、既存ストックである貨物線を活用し、大阪外環状鉄道大阪外環状線の整備を推進する。また、なにわ筋線、中之島線、阪神西大阪線の延伸線の整備について検討を進める。さらに、関西文化学術研究都市のアクセス性向上に資する奈良生駒高速鉄道京阪奈新線の整備、西日本旅客鉄道奈良線及び片町線の複線化を推進する。都市モノレールとして、国際文化公園都市モノレールの整備を推進する。

京都市及びその周辺においては、京都市東西線の整備を推進するとともに、西日本旅客鉄道山陰線の複線化を推進する。

神戸市及びその周辺においては、神戸市海岸線の整備を推進するとともに、神戸電鉄三田線及び粟生線の複線化を推進する。また、神戸空港等と連絡する交通体系について検討を進める。

その他の路線についても、輸送需要に応じ、信号施設等の施設整備や列車運行の高頻度化、長編成化等により、輸送力の増強、サービスの向上を図る。

近畿日本鉄道京都線、西日本旅客鉄道阪和線、大阪外環状鉄道大阪外環状線、阪急電鉄千里線、西日本旅客鉄道片町線、阪急電鉄宝塚線、京阪電気鉄道京阪本線、近畿日本鉄道奈良線、南海電気鉄道南海本線、阪神電気鉄道本線等において連続立体交差事業を推進する。

(3)その他の地域の鉄軌道
大都市地域を始めとする様々な地域との連携を進めるとともに、地域におけるサービス水準の向上を図るため、西日本旅客鉄道小浜線の電化を推進する。

また、その他の路線についても、輸送需要に応じ、信号施設等の施設整備や列車運行の高頻度化、長編成化等により、輸送力の増強、サービスの向上を図る。

山陽電気鉄道本線等において連続立体交差事業を推進する。

3.港湾

国際交流拠点としての機能強化や物流の効率化等を図るとともに、良好な環境等を形成するための整備を推進する。

このため、国際海上コンテナターミナル、多目的国際ターミナル、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナル等の整備を推進するとともに、緑地、廃棄物海面処分場、耐震強化岸壁等の整備を推進する。

(1)大阪湾と周辺海域の港湾
国際交流拠点としての機能強化等を図るための整備を推進する。特に大阪湾の港湾については、一体的な広域港湾として機能するよう各港湾の特性に応じて整備を推進する。

@ 神戸港については、国際競争力の強化等を図るため、ポートアイランド(第2期)地区における国際海上コンテナターミナル、多目的国際ターミナル、臨港道路、緑地等の整備を推進するとともに、六甲アイランド南地区における廃棄物の広域海面処分場等の整備を推進する。また、東部臨海部地区等における港湾再開発を推進する。

A 大阪港については、国際競争力の強化等を図るため、北港南地区における国際海上コンテナターミナル、緑地等の整備、南港地区における多目的国際ターミナル等の整備を推進するとともに、北港南地区と南港地区を結ぶ臨港道路、臨港鉄道北港テクノポート線の整備を推進する。また、新島地区における廃棄物の広域海面処分場等の整備を推進する。さらに、此花地区における耐震強化岸壁等の整備や港湾再開発を推進するとともに、北港北地区におけるスポーツ・レクリエーション緑地等の整備を推進する。

B 堺泉北港については、物流機能の強化等を図るため、助松地区における国際海上コンテナターミナル、複合一貫輸送に対応した内貿ターミナル等の整備を推進するとともに、堺2区における海域環境の改善事業等を推進する。

C 阪南港については、南大阪地域の物流拠点としての機能強化等を図るため、多目的国際ターミナル、緑地等の整備を推進する。

D 尼崎西宮芦屋港については、産業、物流、生活、レクリエーション等の諸活動を支えるとともに、地域の活性化を図るため、多目的国際ターミナル、廃棄物の広域海面処分場、マリーナ等の整備を推進するとともに、港湾再開発を推進する。

E 姫路港については、産業の活性化や物流機能の強化等を図るため、広畑地区における多目的国際ターミナル等の整備や港湾再開発を推進する。

F 東播磨港については、物流機能の強化等を図るため、臨港道路や小型船を適切に収容するための整備等を推進する。

G 和歌山下津港については、紀北地域の物流拠点としての機能強化等を図るため、西浜地区における多目的国際ターミナル、臨港道路、緑地等の整備を推進するとともに、北港沖地区における電源開発を推進する。

H 日高港については、地域の産業、物流を支える拠点としての機能強化や電力需要の増大への対応等を図るため、多目的国際ターミナル等の整備を推進するとともに、電源開発を推進する。

I 淡路交流の翼港については、淡路公園島構想を支える海上交通拠点としての整備を推進する。

J 泉州港については、海空一貫輸送に対応するための整備を推進する。

(2)日本海沿岸の港湾
環日本海交流の拠点としての機能や地域の産業、物流等の拠点としての機能を強化するとともに、良好な環境の形成、観光・レクリエーション拠点の形成等を図るための整備を推進する。

@ 舞鶴港については、環日本海交流の拠点としての機能強化等を図るため、多目的国際ターミナル、臨港道路、緑地等の整備を推進する。

A 敦賀港については、環日本海交流の拠点としての機能強化等を図るため、多目的国際ターミナル、臨港道路、緑地等の整備を推進する。

B 福井港については、国家石油備蓄基地としての機能や嶺北地域の産業、物流基盤としての機能の活用を図るとともに、良好な環境を形成するため、緑地等の整備を推進する。

C 宮津港については、恵まれた自然をいかした観光・レクリエーション拠点の形成を図るための整備や海域環境の改善事業を推進する。

D 和田港については、若狭湾の恵まれた自然をいかした海洋性レクリエーション基地を形成するため、マリーナ、緑地等の整備を推進する。

(3)伊勢湾、太平洋沿岸の港湾
伊勢湾の港湾については、国際交流拠点としての機能強化等を図るための整備を推進する。太平洋沿岸の港湾については、地域の産業、物流、レクリエーション等の諸活動を支えるため整備を推進する。

@ 四日市港については、物流機能の強化等を図るため、霞ヶ浦地区における国際海上コンテナターミナル、多目的国際ターミナル、臨港道路等の整備を推進するとともに、富双地区における緑地の整備を推進する。

A 津松阪港については、地域の物流を支えるための整備を推進する。

B 尾鷲港については、地域の産業を支えるための整備を推進する。

C 鳥羽港については、観光及び海上交通の拠点として魅力的な空間を形成するため、小型旅客船ふ頭、緑地等の整備を推進する。

D 新宮港については、紀南地域の物流拠点としての機能強化等を図るため、多目的国際ターミナル、緑地等の整備を推進する。

(4)琵琶湖沿岸の港湾
長浜港については、良好な環境を形成するため、海域環境の改善事業を推進する。

4.漁港

漁業、水産物の流通加工及び生活の拠点としての漁港機能の増進を図るため、陸揚げ・流通機能の高度化、漁獲・資源・衛生管理機能、水産資源の生息環境の保全の強化等に資する整備を推進する。このため、日本海沿岸の越前、小浜、香住等及び太平洋沿岸の波切、和具、田辺、串本、有田等において、防波堤、岸壁、遊漁船等を分離・収容するための施設等の整備を進める。

5.空港

近畿圏における空港の整備については、航空による国際交流の増大と国内航空ネットワークの充実に対する要請等に対応した整備を推進する。

関西国際空港については、我が国の航空輸送の増大に対応するため、平行滑走路等の整備を行う2期事業を推進するとともに、貨物エプロンの増設等既存施設の能力増強等を推進する。

神戸空港については、国内航空ネットワークの充実を図るため、整備を推進する。

福井空港のジェット化整備及びびわこ空港の整備については、計画、地元条件等が整ったものについて必要に応じその整備を図る。

近畿圏における小型航空機による多様な航空需要に対応するため、播磨飛行場等の整備について調査検討し、必要に応じその整備を図る。また、災害時の緊急輸送手段としてのヘリコプターの役割等を踏まえたヘリポートの整備等についての検討を進める。

6.自動車ターミナル

トラック等による広域的な都市間の輸送効率を向上させるとともに、あわせて都市内における物流の効率化や中心市街地の活性化を推進するため、集配拠点として機能するターミナル施設等の整備についての検討を進める。

7.情報通信施設

情報通信の国際・国内、遠近を問わず個人間を直結にする機能をいかし、外国や圏域内外との連携、交流の促進を図る。だれもがいつでもどこからでも十分に活用可能な、安定的で高度なネットワークインフラ整備を図るため、ハード面、ソフト面、人材面の全ての分野で総合的に情報通信体系の整備を推進する。これらの整備に当たっては、民間主導で行うことを基本として、公的部門は情報化を推進するための制度的枠組みの整備、民間投資への支援等環境整備を推進する。

@ 民間主導原則の下で、光ファイバ網等の整備、より高速、高品質な移動通信システムの導入と普及等を進め、高速、大容量の通信が可能なネットワークインフラの整備を推進し、それらの利活用を図る。特に、研究開発用ギガビットネットワークについては、共同利用型研究開発施設、接続装置設置場所の活用等を推進する。また、地域において、高度な情報通信の利活用環境を整え、各地域がこれにより個性的な地域づくりを進めるため、黒潮ネットワーク構想等県内各地域を結ぶ先導的な情報通信ネットワークの整備を推進する。施設整備に当たっては、道路、河川空間等公共空間の一層の活用及び下水道等公的施設管理用等の光ファイバ網の民間事業者による活用のための環境整備を推進する。

A 情報通信の活用や、これを通じて一層の技術開発を図るために、関西文化学術研究都市等研究開発拠点において、高度な情報通信機能の整備、情報通信関連産業や研究機関等の集積の促進、専門技術者の育成を図る。また、生活における多様な社会的サービスや産業活動の高度化を目指すため、公共施設の予約等双方向性をいかした行政サービスや、遠隔医療、福祉、商取引等の各種の分野において情報通信を活用したシステム整備を推進する。また、圏域住民の情報リテラシー(情報活用能力)の向上を図るため、学校におけるインターネット等マルチメディアを活用した情報に関する教育を推進する。

B 放送については、中山間地域における情報化や、地域の生活・文化面での利便性向上、コミュニティの活動に資するCATVの普及・充実や、異なるCATV間の接続を推進するとともに、全放送メディアのデジタル化を積極的に推進する。特に、地上放送については、早期にデジタル放送を開始できるよう所要の取組を推進する。

C 地震時等の安全性、信頼性の向上を図るため、拠点施設の耐震化を図るとともに、有線系施設の地中化等の推進による耐震性確保を図る。また、各通信系の連携や通信手段のバックアップ機能整備により、リダンダンシーを確保する。また、兵庫県における無線通信を活用した地域非常通信ネットワークの研究開発等の防災通信網の高度化のための研究開発を推進するとともに、その成果の導入・普及を図る。

D 近畿圏が有する世界的にも貴重な歴史文化資源の保存・継承や、これらの地域資源を活用した地域の情報発信力の強化及び新産業創出を図るため、京都デジタルアーカイブ等のデジタルコンテンツの制作や流通に関する情報提供や共同利用施設の充実及びこれらによる情報の収集、蓄積、活用のための研究開発等を推進する。

E 郵便については、送達の迅速化等多様なニーズに対応して、郵便物処理及び輸送の効率化、局舎の改善等を図る。

8.河川

各河川の流域及び関連する水利用地域や氾濫原を一体とした流域圏において、水害の防止、水資源開発及び渇水対策、健全な水循環の確保、環境の整備と保全を図るため、以下の事業等を計画的に推進する。

@ 九頭竜川、北川、木曽川、鈴鹿川、雲出川、櫛田川、宮川、新宮川、淀川、由良川、大和川、円山川、加古川、揖保川、紀の川の大河川においては、流域の特性に応じて、概100年から200年に1度発生する規模の降雨に対する治水施設整備を計画目標に置き、当面の河川整備計画の目標を定め、流域内の洪水調整施設の建設や、堤防、護岸の整備等を推進する。

また、浅水川、三滝川、日野川、桂川、春木川、武庫川、寺川、亀の川等の中小河川においては、流域の特性に応じ、概ね30年から100 年に1度発生する規模の降雨に対する整備を計画目標に置き、当面の河川整備計画の目標を定め、流域内の洪水調整施設の建設や、堤防、護岸の整備等を推進する。

A 流域の都市化の著しい河川については、淀川、大和川、安治川、堂島川等において超過洪水対策を推進するとともに、猪名川、寝屋川、大和川北部河川等において地下河川の建設等の河川改修を推進しつつ、森林、水田等の保全、貯留、浸透施設の設置等により、保水・遊水機能の維持・確保を図る等総合的な治水対策を推進する。

B 桑名地区、大阪地区の河川においては、排水機場の設置等の地盤沈下対策を、海抜0m以下の地域においては堤防等の耐震対策を、伊勢湾地区、大阪地区、播磨地区、紀伊水道地区の河川においては、防潮水門、排水機場の設置等の高潮対策を推進する。

C 水資源開発及び渇水対策を進めるため、水資源開発基本計画に基づき、淀川水系において、猪名川総合開発、大和高原北部、川上ダム、大戸川ダム、丹生ダム、天ヶ瀬ダム再開発、安威川ダム、愛知川、大宇陀西部(以上淀川)、木曽川水系において、木曽川用水施設緊急改築(木曽川)の建設等を推進する。さらに、畑川ダム(由良川)、新愛知川、南丹ダム(以上淀川)、大滝ダム、紀の川大堰、五条吉野、紀伊丹生川ダム(以上紀の川)、九頭竜川鳴鹿大堰、足羽川ダム、日野川総合開発、浄土寺川ダム(以上九頭竜川)、河内川ダム(北川)、伊勢路川ダム(伊勢路川)、金出地ダム(千種川)等の多目的ダムの建設等を推進する。

また、各河川の河川整備計画に従い、多目的ダム等の建設及び姉川ダム等の治水ダムの建設を推進する。

D 河川環境の整備と保全を図るため、木曽川、雲出川、宮川、新宮川、淀川、由良川、大和川、加古川、揖保川、紀の川、三方湖、琵琶湖、堂の川、篠山川、高田川、和歌川等において、河川浄化、河道整備等を推進する。淀川において流水保全水路の整備を推進する。

9.海岸保全施設

津波、高潮等による被害からの防護、海岸環境の整備と保全及び適正な利用の調和した海岸事業を推進する。

津松阪港海岸、伊勢湾西南海岸、東播海岸等においては、海岸堤防、養浜等の整備による津波対策、高潮対策、侵食対策を推進する。これらの整備に当たっては、砂浜による消波機能等をいかした面的な防護を推進する。

和田港海岸、多賀海岸、島勝海岸、田辺漁港海岸等において、海岸環境の整備と保全及び適正な利用を図るため、人工海浜、養浜、突堤等の整備を推進する。

10.砂防設備

ぜい弱な山地を中心に、土砂災害の未然防止を図り、地域の安全性を高めるため、砂防事業を推進する。さらに、流域圏全体を考慮した総合的な土砂管理を推進する。

六甲山系、淀川、九頭竜川等の荒廃地域において環境の保全に配慮しつつ、砂防ダム、床固工群等による流出土砂抑制・調節、山腹工による土砂生産抑制等の砂防事業を推進する。

11.地すべり防止施設等

地すべり災害の未然防止を図るため、亀の瀬地区、北神戸地区等において、深礎工、排水工等の地すべり対策等事業を推進する。また、がけ崩れ及び雪崩災害の未然防止を図るため、急傾斜地崩壊対策等事業を推進する。

12.森林の保安施設

荒廃地、荒廃危険地等の整備を実施するとともに、災害時の警戒避難態勢強化のための山地災害予知施設の設置を推進する。加えて、山地災害のおそれのある地域やダム上流等の水資源確保上重要な地域において、森林の防災機能の強化や水源かん養機能の高度発揮を図るための植栽、本数調整伐等の森林整備等を実施する。

このため、淀川、熊野川、富田川等の各流域の特性に応じて、山地治山、保安林整備、水源地域整備、環境保全保安林整備等の治山事業を推進する。

13.かんがい排水施設

農業を取り巻く状況の変化に対応し、効率的かつ安定的な農業経営を実現するため、農業用水の確保と適切な供給、適期に必要な排水が可能な水利条件の確保及び農地防災等に資するかんがい排水施設等の農業生産基盤の整備を、地域の特性に応じて、環境との調和に配慮しつつ総合的、効率的に推進する。

このため、日野川用水、九頭竜川下流、宮川用水第二期、新愛知川、新湖北、第二十津川紀の川、木曽川用水緊急改築等の地区において整備を推進する。また、農地防災にも資するため、巨椋池、大和平野、野洲川沿岸の地区において国営総合農地防災事業を推進する。

また、調査計画中の第二大和紀伊平野等の地区について調査を進め、その結果に基づいて逐次整備する。

14.水道

需要の増大への対処、安全な水質の確保、渇水対策、災害対策のため、以下の事業を推進する。

福井県日野川地区水道、三重県北中勢水道、滋賀県南部水道、京都府水道、大阪府水道、兵庫県水道、奈良県水道等の水道用水供給事業及び水道事業等の整備を推進する。

15.工業用水道

@ 工業用水については、需要者における回収利用等合理的な利用を促進しつつ、工業開発等に伴う新たな需要への対応、地盤沈下防止のための地下水利用から工業用水への転換等を踏まえ、安定的な供給を確保するため、水資源開発を推進するとともに、計画的に工業用水道の整備を行う。

A 中伊勢、加古川等の工業用水道の整備を推進する。

16.工業用地

@ 工業用地については、地域産業を振興し地域の活性化を図るための産業拠点として、その適正配置を推進する。工業用地の整備に当たっては、高速交通体系へのアクセスの容易性や高度研究施設の近接性等ハード面に加え、事業活動を支援する産業支援機関との連携、さらには快適な都市的環境や美しい景観の存在等ソフト面に配慮しつつ、計画的に行う。

A ニューファクトリーひさい工業団地、近江水口第2テクノパーク、京都北部中核工業団地、播磨科学公園都市産業用地等の工業用地の整備を推進する。

17.住宅、住宅用地及び市街地

@ 居住ニーズの多様化への対応、低・未利用地の有効活用、防災性の向上等に配慮しつつ、良質な住宅及び住宅用地の供給を推進するとともに、必要な都市機能の充実を図るために良好な市街地の整備を推進することが必要である。このため、地域の実情に応じ、市街地開発事業や住宅建設事業等によって、整備を進める。

A 既成市街地においては、長岡京駅西口、阿倍野、新長田駅南、王寺駅前久度等における市街地再開発事業、此花西部臨海、神戸東部新都心、尼崎臨海西部、姫路駅周辺、奈良駅周辺等における土地区画整理事業、高見、生野区南部等における住宅市街地の総合的な整備、公営住宅建設事業、住宅地区改良事業や門真市北部等における密集住宅市街地の整備等を推進し、良好な市街地の形成と住宅の供給を進める。

大阪駅北等の鉄道施設跡地、国公有地、工場、倉庫等の移転跡地等について、都市再開発への活用を図る。

B 新市街地においては、和泉中央丘陵、西神ニュータウン、神戸三田国際公園都市等における新住宅市街地開発事業、森田北東部、国際文化公園都市、橋本林間田園都市等における土地区画整理事業等を推進し、良好な市街地の整備を進めるとともに、多様化するニーズに応える住宅の供給を進める。

関西文化学術研究都市において、土地区画整理事業や民間の宅地開発事業等を推進す

る。

C 埋立地においては、ポートアイランド(第2期)、テクノポート大阪及びりんくうタウンにおいて、国際交流施設、業務施設、住宅等の多様な施設からなる総合的な空間の整備を図る。

18.下水道

生活環境の改善、公共用水域の水質保全のため、普及の遅れている中小市町村の下水道整備、閉鎖性水域等における高度処理を推進するとともに、安全で安心できるまちづくりのため、総合的な下水道雨水対策施設の整備を推進する。また、下水処理水・下水汚泥や施設の上部空間等、下水道資源・施設の有効利用を推進するとともに、地震対策、再構築等の下水道施設の高度化を推進する。

このため、圏内の九頭竜川、北勢沿岸、琵琶湖、木津川、寝屋川、武庫川、大和川上流、紀の川等の流域下水道及び、圏内各市町村等の公共下水道、特定環境保全公共下水道等の整備を推進する。

19.廃棄物処理施設

多量の廃棄物等の発生に対処し、循環型の社会を構築するため、地域の生活環境へ配慮しつつ、以下の処理施設等の整備を推進する。

一般廃棄物のうち、ごみ処理については焼却施設等を、ダイオキシン類排出抑制、熱エネルギー利用等を推進しつつ整備するとともに、最終処分場の確保を図る。し尿処理については、下水道整備との調整を図りつつ、処理施設の整備を推進する。浄化槽の維持管理についても一層の適正化を図る。さらに、下水道の整備が当面困難な地域において、合併処理浄化槽等の整備を推進する。

産業廃棄物については、その再生利用等の促進により、最終処分対象量の減少を図り、公的関与を含めた適正な処理体制の整備を図る。建設系廃棄物については、計画・設計段階から施工段階までの各段階において、発生抑制、再生利用、適正処理を推進するとともに、減量化、リサイクルを行う拠点施設の整備について検討する。

建設発生土の円滑かつ適正な処理を図るため、発生量の削減、有効利用の促進等を推進する。

近畿圏における廃棄物の処分の上で重要な役割を果たしている大阪湾における広域的な最終処分場の整備を推進する。

20.都市公園

@ 都市公園は、都市の緑の中核として、活力ある長寿・福祉社会の形成、都市のうるおい創出、都市の防災構造の強化に資するとともに、自然とのふれあい、コミュニティの形成、広域レクリエーション活動等国民の多様なニーズに対応する国民生活に密着した都市の根幹的施設であり、緑の基本計画等に基づき、計画的整備を進める。

A 国営公園については、一の府県の範囲を超えるような広域の見地から設置する公園として、淀川河川公園、国営木曽三川公園、国営明石海峡公園、我が国固有の優れた文化的資産の保存及び活用を図るため閣議の決定を経て設置する公園として、国営飛鳥歴史公園の整備を進める。

B 広域的なレクリエーション需要の増大及び多様化に対処し、災害時における広域防災拠点となる等の機能を有する大規模公園(広域公園、レクリエーション都市)の整備を進める。このうち、広域公園として、北勢中央公園(三重県)、湖岸緑地(滋賀県)、宝が池公園(京都府)、寝屋川公園、山田池公園、大泉緑地、錦織公園、石川河川公園、蜻蛉池公園、せんなん里海公園、鶴見緑地(以上大阪府)、有馬富士公園、播磨中央公園、一庫公園、丹波並木道中央公園、三木総合防災公園、淡路島公園、神戸文明博物館群公園(以上兵庫県)、馬見丘陵広域公園(奈良県)等、また、レクリエーション都市として、熊野灘レクリエーション都市(三重県)の整備を進める。

C 歩いていける範囲の公園ネットワークを構成し、災害時の一次避難地となる等の機能を有する住区基幹公園(街区公園、近隣公園、地区公園)及び都市住民全般の休息、鑑賞、散歩、遊戯、運動等の利用に供し、災害時の広域避難地となる等の機能を有する都市基幹公園(総合公園、運動公園)の整備を推進する。このうち、総合公園として、丹南地域総合公園(仮称)(福井県)、大仏山公園(三重県)、春日山公園、びわこ文化公園(以上滋賀県)、深北緑地、毛馬桜之宮公園(以上大阪府)、北神戸田園スポーツ公園、神戸震災復興記念公園(以上兵庫県)、また、運動公園として、木津川右岸運動公園(仮称)、西京極運動公園、桂川緑地(以上京都府)等の整備を進める。

D 地域の特性に応じて、特殊公園(風致公園、動植物公園、歴史公園、墓園)や大気汚染、騒音等の公害の防止及び石油コンビナート地帯等における災害の防止等を図る緩衝緑地、都市の自然環境の保全及び都市景観の向上等を図る都市緑地、動植物の生息地等の保護を目的とし、都市の良好な自然的環境の形成を図る都市林、市街地における良好な居住環境の確保、災害時における避難路の確保等を図る緑道、商業・業務系の地域において都市景観の向上、周辺施設利用者の休息等の利用に供する広場公園の整備を進める。

21.病院

住民の健康保持・増進から疾病予防、治療、リハビリテーションまでの包括的、継続的なサービスの供給体制の整備を進める。

人口の高齢化、疾病構造の変化等による医療ニーズの多様化、医療技術の高度化等に対応し、地域の特性に十分配慮しつつ、保健・医療施設の整備・充実を図るため、福井県総合医療センター(仮称)、兵庫県立災害医療センター(仮称)、兵庫県立粒子線治療センター(仮称)、和歌山県立五稜病院等の整備を推進する。

22.大学等高等教育機関、研究施設等

@ 大学については、教育研究の質の高度化等を図るため、地域配置の適正化にも配慮しつつ、京都大学、滋賀県立大学、京都府立大学、大阪市立大学等においての整備を推進する。

A 大学院については、卓越した学術研究の拠点の形成や高度専門職業人の養成の観点から、大都市部における社会人を中心とした需要等にも配慮しつつ、新増設や研究科の増設等を進める。

B 我が国の学術、研究の中枢圏域の形成の上で先導的な役割を果たすべく、関西文化学術研究都市における通信総合研究所けいはんな研究センターの新設や日本原子力研究所光量子科学研究センターにおける研究の充実、また、実大三次元震動破壊実験施設(三木市)の新設や総合地球環境学研究所(仮称)(京都市)の構想等を始めとして、国公立、民間の大学、研究施設等の立地誘導・新設、機能高度化を進める。

23.教育・文化施設

生涯学習時代における人々の学習活動の拠点、美術作品や音楽、演劇等の鑑賞機会及び文化活動の成果の発表の場などを充実させ、地域における教育的及び文化的環境の向上を図るため、国立国会図書館関西館(仮称)、福井県立図書館・公文書館(仮称)、兵庫県芸術文化センター(仮称)、奈良県新県立図書館(総合情報センター)等を始めとして、地域の自然、歴史、風土等を背景にした特色ある教育・文化施設の整備を図る。また、日本の外交・国際交流を文化的側面から推進するため、京都和風迎賓施設の整備を図る。

24.職業訓練施設等

産業構造の変化、技術革新の進展、高度情報化、国際化、労働力人口の高齢化・高学歴化等に伴う労働市場の需給変化に対応し、地域の産業特性等に対応した訓練内容の充実、労働者の生涯を通じた職業能力の開発、民間支援機能の充実等、職業能力開発体制の整備・充実を図るため、福井県立敦賀産業技術専門学院等の整備を推進する。

また、全国の若年者等を対象に、職業意識の啓発、的確な職業選択への支援、技能を中心とした職業能力開発関連情報の提供を行うため、職業に関する様々な体験機会や情報を提供する職業総合情報拠点として、関西文化学術研究都市に勤労体験プラザ(仮称)の整備を推進する。

25.自然公園等

@ 自然とのふれあいを求めるニーズの高まりと多様化に適切に対応し、自然公園がもつ機能を多元的に発揮させるため、すぐれた自然環境の保全の強化を図るとともに、野外レクリエーションの場の確保を図る。

このため、白山、伊勢志摩、吉野熊野、山陰海岸及び瀬戸内海の各国立公園、越前加賀海岸、若狭湾、鈴鹿、琵琶湖、室生赤目青山、明治の森箕面、金剛生駒紀泉、氷ノ山後山那岐山、大和青垣及び高野竜神の各国定公園、奥越高原(福井県)、朽木・葛川、三上・田上・信楽(以上滋賀県)、笠形山千ヶ峰(兵庫県)等の各府県立自然公園において、それぞれの特性を踏まえた保全と利用の方策を計画的に実施する。

A また、国民が自らの足で自然や史跡などを訪ねることにより、健全な心身を育成し自然保護に対する理解を深めることを目的とし、近畿自然歩道(三重県ほか)を長距離自然歩道として整備を進める。

26.レクリエーション施設

国民の多様なレクリエーションに関する需要に対応するため、近畿圏の歴史・文化・自然等地域の特徴をいかしながらキャンプ場、マリーナ等のレクリエーション施設の整備を推進する。

また、良好な自然環境の中で滞在しながらレクリエーション等を楽しむことができるよう、民間活力の活用に重点を置きつつ、総合保養地域の整備を自然環境の保全等に配慮しながら着実に推進する。

27.文化財保存のための施設

一乗谷朝倉氏遺跡、斎宮跡、安土城跡、難波宮跡、黒塚古墳、和歌山城等の史跡の復元や史跡公園等としての整備を図る。また、上中町熊川宿、五個荘町金堂等の伝統的建造物群について修理、修景等を図る。

さらに、歴史文化教育の場や集客交流の推進に資するため、大阪市立新博物館・考古資料センター、万葉ミュージアム(仮称)等の歴史博物館や歴史街道等の整備を図る。

28.社会福祉施設

高齢化の進展、福祉ニーズの多様化に対応するため、特別養護老人ホーム、老人保健施設等在宅では十分介護できない老人のための施設の整備、デイサービス[86]センター、老人訪問看護ステーション[87]等の在宅介護支援施設の整備、障害者福祉施設や児童福祉施設等の各種社会福祉施設の整備・充実を図るため、大阪市立弘済院等の整備を推進する。

29.中央卸売市場

生鮮食料品等の流通の合理化を図るため、中央卸売市場の計画的な整備を進める。大都市の老朽過密化市場については、道路等関連公共施設の整備、周辺土地利用との調整等に配慮しつつ、再整備を推進する。その他の既設市場については、取扱品目の適正化及び施設の改善を進める。

30.流通業務施設

国内外の広域的かつ効率的な流通、物流ネットワークの形成を図るとともに、都市における道路交通の円滑化、都市機能の維持および増進等に寄与するため、空港、港湾等の国際的な交通施設、高規格幹線道路のインターチェンジ付近等において、流通、物流施設及び関連する業務施設等の計画的な配置による流通、物流等の拠点機能としての整備を推進する。

このため、神戸流通業務団地および西神流通業務団地等の整備を推進する。

第2章 区域の指定に関する事項

1.近郊整備区域

京阪神都市圏の中心部からおおむね50キロメートルの圏域内にある次の各号に該当する相当規模の面積を有する地域で、計画的に市街地として整備する必要があるものを近郊整備区域として指定するものとする。

(1)既成都市区域と経済的、社会的に密接な関連を有する地域であること。

(2)既成都市区域に容易に交通することができる地域であること。

(3)相当程度の人口が集中している地域又はその可能性である地域であること。

(4)相当程度の第二次産業又は第三次産業の集積があり、かつ、これらの産業の比重が高い地域若しくはその可能性のある地域であること又は人口及び産業の集中に伴う市街化が著しい地域若しくはその可能性のある地域であること。

2.都市開発区域

京阪神都市圏の中心部からおおむね50キロメートルの圏域外にある次の各号に該当する相当規模の面積を有する地域で、既成都市区域に集中する人口及び産業を分散定着させるため、都市として開発する必要があるものを都市開発区域として指定するものとする。

(1)相当程度の外部経済の集積があり、該当地域の周辺地域に対して都市的便益を及ぼし、かつ、その開発の拠点となる地域であること。

(2)幹線交通施設が整備されている地域又はその可能性のある地域であること。

(3)労働力、用地、用水等の工業立地条件が優れた相当規模の工場用地を有し、かつ、工業の立地が進行している地域又はその可能性のある地域であること。

(4)工業等の生産機能及び流通、文化等の都市機能を備えた都市の形成が可能な地域であること。

(5)自然的、経済的、社会的に一体としてまとまっている地域であること。

3.保全区域

次の各号の一に該当する地域を保全区域として指定するものとする。

(1)重要な文化財である建造物、伝統的建造物群、遺跡等を、それらを取り巻く自然環境と一体として保全する必要があると認められる地域であること。

(2)既成都市区域又は近郊整備区域の周辺であって、大都市の無秩序な拡大の防止、生活環境の保全又は住民のレクリエーションのために緑地を確保する必要があると認められる地域であること。

(3)国立公園、国定公園、府県立自然公園その他の自然景観、動植物等を保護し、又は観光レクリエーションに供する地域であって、計画的に保全し又は整備する必要があると認められる地域であること。



[1]NPO:Non Profit Organizationの略。 民間非営利団体。営利を目的とせずに様々な活動を自主的・自発的に行う団体・組織。
[2]環境影響評価:開発事業による環境悪化を未然に防止する観点から、開発事業の実施に先だって、予め、その事業がもたらす環境への影響について調査・予測又は評価を行い、その結果に基づき、環境保全措置を講じようとするもの。我が国では、閣議決定要綱、個別法、地方公共団体の条例、要綱等に基づき実施されてきたが、1997年6月に「環境影響評価法」が成立・公布され、1999年6月に全面施行された。
[3]京都議定書:1997年12月に京都で開催された気候変動に関する国際連合枠組条約第3回締約国会議で、我が国が議長国として採択した議定書。先進国の温室効果ガスの排出削減目標を定める法的文書として位置づけられ、対象ガスの排出について、わが国の割当量として、2008年から2012年の目標期間中に、基準年(二酸化炭素については1990年)に比べ6%の削減が求められている。
[4]ボーダレス化:個人、企業、NPO等の活動が世界的規模で行われ、国境の概念がなくなりつつある傾向のこと。
[5]ヒートアイランド現象:自然の気候とは異なった都市独特の局地気候で、郊外に比べ都心部ほど気温が高く、等温線が島のような形になるのでこの名がついた。都市での高密度のエネルギー消費により大量の熱エネルギーを放出すること、都市の地面の大部分がコンクリートやアスファルト等に覆われているため水分蒸発による温度の低下がなく、日中蓄えた日射熱を夜間に放出するため夜間気温が下がらなくなることなどによる。
[6]東アジア1日圏:日本の各地域と東アジア各国との間で、出発したその日のうちに到達でき、一定の用務が行えるなど日本と東アジア地域との行き来が手軽になることをイメージした国際交通体系。対アジアゲート、グローバルゲート、国内アクセス交通等により形成される。
[7]マルチハビテーション:都市部において常時居住する住宅に加え、週末利用のために郊外に住宅を取得したり、郊外に常時居住の住居を持っている人が、職住近接の住宅を都心部に持つこと。一世帯で複数地域に住居を持ち、曜日、季節等によって居住場所が変化する居住形態。
[8]東京圏:東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県。
[9]就業者数:就業者(賃金、給料、内職収入など収入になる仕事を少しでもした人)を常住地による地域区分で計った人数。
[10]大深度地下:土地所有者によって通常使用されることのない深い地下(少なくとも地下40m以深)のこと。
[11]ポートセールス:航路誘致等を目的とした、港湾・空港管理者等による荷主、船(・航空)会社等港湾・空港利用者の開拓、そのための広報、宣伝等企業経営的観点に立った活動全般。
[12]なぎさ海道:大阪湾ベイエリアにおける水際線の一般開放(パブリックアクセス)の取組。地域の特徴をいかした拠点と、それらを結ぶ海辺の道で構成。人と海との豊かな関わりを目指す。「大阪湾ベイエリア開発整備のグランドデザイン」(平成3年4月、大阪湾ベイエリア開発推進協議会策定)により提唱。
[13]技術移転機関(TLO):大学等の研究成果の特許化とその企業化を図る技術移転を促進するための機関であり、技術移転を通じ大学等と産業界を結び付ける役割を果たす。(大学等技術移転促進法平成10年8月1日施行)
[14]リエゾン機能:新規産業の創出や既存産業の新規分野への事業展開を促進するため、大学等が有する高度な技術や研究成果を民間事業者などへ移転する機能のこと。
[15]農地の流動化:経営規模を拡大する農業者に農地に関する権利を移すことであり、ねらいは規模拡大と同時に、農地の有効利用にある。また、各農家が利用する農地が分散している場合、農業委員会などが農地の権利調整を行って各農家の農地を集団化して所有・利用できるようにすること。我が国の農家の所有耕地面積は狭小で、しかも農地が多数の箇所に分散している場合が多い。分散している農地の集団化を図る有効な手法として、ほ場整備等に伴う換地処分及び交換分合がある。
[16]森林の流域管理システム:流域を単位として、その流域内の市町村、林業、木材産業等の様々な関係者による合意の下で、木材の生産から加工、流通にわたる川上から川下の連携を進め、民有林と国有林とが一体となった森林整備と林業、木材産業の活性化を総合的に展開。
[17]つくり育てる漁業:資源の維持培養や漁業生産の安定を図るため、増養殖場の造成・漁礁の設置等「海の畑づくり」である沿岸漁場の整備開発事業、魚介類の種苗生産・放流等「海の種づくり」である栽培漁業、さけ・ますふ化放流事業といった増殖事業、一定の区画の中で企業的に魚介類を養成する養殖業等を取り込んだ新しい漁業の在り方をいう。
[18]グリーン・ツーリズム:緑豊かな農山村地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動のことで、具体的には、都市住民等が農山村の民宿等に滞在し、森林や河川等の自然を舞台にしたレクリエーションやスポーツ、農林業体験、農山村の生活体験、伝統芸能や伝統工芸の体験等を楽しむ旅行をいう。
[19]エコ・ツーリズム:地域の文化的特色やそこで見ることのできる景観や野生の動植物を観察、学習、楽しむことを目的とする、自然地域への旅行。
[20]歴史街道計画:経済団体、民間企業、行政等の団体から構成される歴史街道推進協議会(1991年発足)が推進。5つの時代別ゾーンを結ぶメインルート(伊勢-飛鳥-奈良-京都-大阪-神戸)と近畿2府6県の歴史文化を活かしたテーマルートを設定、地域の広域的な連携による「日本文化の発信基地づくり」「新しい余暇ゾーンづくり」「歴史文化を活かした地域づくり」を目指す。
[21]バリアフリー:障害者や高齢者が行う諸活動に不便な障害(バリアー)を取り除くことの総称。例として、階段の代わりに緩やかなスロープをつけたりすることが挙げられる。
[22]SOHO:Small Office Home Office の略。小規模オフィスや自宅オフィスでの勤務形態。個人起業家や自営業者が小規模オフィス等でビジネスに取り組むことを称する場合が多い。
[23]テレワーク:情報通信を活用した遠隔勤務。情報通信で仕事の成果、連絡等をやりとりすることにより、場所にとらわれず仕事を行えるような勤務形態。
[24]UJIターン:進学あるいは就職で地方から大都市圏に出た後、再び地方に就業・移住すること。Uターンは出身地に、Jターンは出身地の経路にある地域に、Iターンは出身地と全く異なる地域に移ることをいう。
[25]ブルー・ツーリズム:漁村における豊かな自然環境、漁村生活、漁村文化等のストックをいかした、漁業活動や漁村の生活と調和した余暇活動のこと。近年、漁村や海辺で憩い滞在することやスポーツ活動を行うこと等の海洋性レクリエーションに対する国民の志向も高まっており、漁村地域の活性化の新たな展開として期待されている。
[26]市民農園:一般には、都市の住民等農業者以外の人々が農地を利用して農作業を行うことを通して、レクリエーションや児童の教育等の多彩な目的に利用される農園。 市民農園整備促進法では、特定農地貸付けの用に供される農地又は、相当数の者を対象として定型的な条件で、営利以外の目的で継続して行われる農作業の用に供される農地とそれらに付帯して設置される施設の総体。
[27]高規格幹線道路:全国的な自動車交通網を構成する自動車専用道路であり、高速サービスの全国的な普及、主要拠点間の連絡強化を目標とする。高速自動車国道及び一般国道の自動車専用道路で構成される。
[28]国際海上コンテナターミナル:国際的な規模、機能を有する海上コンテナ輸送のための港湾施設。大型岸壁、コンテナクレーン、コンテナヤードなどで構成される。
[29]マルチモーダル施策:複数の交通機関の連携による交通施策を推進し、利便性を向上することにより、都市全体の交通を円滑にする手法。空港、港湾、駅等の交通拠点へのアクセス強化、鉄道と高速バスの結節強化などもその例。
[30]輸入促進地域:「輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法」に基づき、輸入促進を目的として指定される地域で輸入品の荷捌き、保管施設展示場、情報通信センター等の輸入インフラを集積した外国貿易港湾や国際空港及びその周辺の地域。近畿圏においては、関西国際空港、神戸港、大阪港、舞鶴港の4地域が承認されている。
[31]ワイズユース:世界的に重要な湿地、水鳥等そこに暮らす動植物の保全を目指す「ラムサール条約(1971年)に関する第3回締約国会議」で提唱された概念。定義は、「生態系の自然的特性を維持させつつ、人類の利益のために湿地を持続的に利活用すること」である。
[32]地区計画:良好な環境の市街地を整備し又保全するため、地区の特性に応じて建築物や身近な道路、公園等に関する計画を定め、建築行為や開発行為をきめ細かくコントロールする制度。
[33]建築協定:住みよい環境づくりや個性あるまちづくりを行うために、土地や建物の所有者が敷地や建築物に関する基準についての協定を締結して、お互いが守り合うことを約束する制度。
[34]デジタルアーカイブ:伝統産業における意匠(デザイン)等をデジタル化し、それらを陶器産業や家具産業等において活用する仕組みのことで、新商品の開発、生産、販売を目指す。近畿圏においては、平成10年8月に京都デジタルアーカイブ推進機構が設立された。
[35]パイロット・モデル都市:セカンド・ステージ・プラン答申(平成8年4月)では、以下の5類型で整理し、関係者の共通目標としている。『生きがいを感じるまちづくり』『環境と共生、調和するまちづくり』『文化創造の中枢にふさわしい環境の整備』『高度情報化を先導するまちづくり』『国際交流モデル都市』
[36]大学コンソーシアムの設立:1998年3月に設立認可を受けた「(財)大学コンソーシアム京都」では、大学、地域社会及び産業界との協力により調査研究、情報発信交流、教育交流等に関する企画調整事業等を行い、これらを通じて大学と地域社会及び産業界の連携を強めるとともに大学相互の結びつきを深めることとしている。
[37]リカレント教育:技術革新の著しい進展や産業構造の変化等に対応して行われる教育のこと。ここでは、社会人や職業人が必要な知識・技術を修得するために、大学等に再入学して学習・研究等を行うことをいう。
[38]生態系ネットワーク:生態系のバランスや安定性の維持・向上という観点から、国土に系統的に配置された野生生物の生息・生育空間全体を指す。孤立した形で残る自然性の高い森林についてその連続性を確保すること、異なる地域に位置する湿地を連携して一体的に保全すること、などにより形成される。
[39]ビオトープ:特定の生物群集が生存できるような、特定の環境条件を備えた均質なある限られた生物生息空間のこと。具体的には池沼、湿地、草地、里山林等さまざまなタイプのビオトープがある。
[40]水と緑のネットワーク:都市化の進展等に伴い健全な水循環が損なわれている都市近郊地域において、既存の河川、都市下水路等のネットワーク化を図り流水を相互に融通するとともに、隣接する都市公園とも一体的な整備を行うことにより、都市内河川・水路の水質浄化、流況改善、良好な緑地環境の創出を図る。
[41]市民緑地制度:良好な都市環境を確保するため、地方公共団体等が、都市計画区域内における緑地の所有者と市民緑地契約を締結して、当該土地に住民の利用に供する緑地(市民緑地)を設置し、これを管理することができる制度。
[42]流域圏:流域圏は、その圏域の対象とする範囲が「流域および関連する水利用地域や氾濫原」で示される地域において、水質保全、治山・治水対策、土砂管理や、森林、農用地等の管理などの、地域が共有する問題について、地域が共同して取り組む際の枠組みとして形成される圏域。「21世紀の国土のグランドデザイン」(平成10年3月)で提示された概念。
[43]健全な水循環系:流域を中心とした一連の水の流れの過程において、人間社会の営みと環境の保全に果たす水の機能が、適切なバランスの下に、ともに確保されている状態。
[44]非特定汚染源対策:特定の汚染源から排出される工場排水や生活排水と異なり、面としての広がりを持つ市街地、土地造成現場、農地等から、降雨等により流出する汚濁に対する対策のこと。
[45]新エネルギー:自然エネルギー等の再生可能エネルギー、リサイクル型のエネルギー等。例えば、太陽光発電、廃棄物発電、風力発電、波力エネルギー等。
[46]交通需要マネジメント(TDM)施策:Traffic Demand Managementの略称。道路交通混雑の解消・緩和を図ることを目的に、自動車を含む各種交通機関の輸送効率の向上や交通量の時間的平準化等需要の調整を図る施策の総称。パーク・アンド・ライド、自動車の相乗りの促進、時差出勤、フレックスタイムの導入促進等もその例。
[47]高度道路交通システム(ITS):Intelligent Transport Systemsの略称。最先端の情報通信技術等を用いて人と道路と車両とを一体のシステムとして構築することにより、ナビゲーションシステムの高度化、有料道路等の自動料金収受システムの確立、安全運転の支援、交通管理の最適化、道路管理の効率化等を図るもの。安全、快適で効率的な移動に必要な情報を迅速、正確かつわかりやすく利用者に提供するとともに、情報、制御技術の活用による運転操作の自動化等を可能とするシステム。
[48]共同集配システム:個別に行われていた物資の集配を共同集配センターで行い、また、共同集配用のトラックが各店舗等を回ることにより、貨物車の積載効率を高め、効率化を図るシステム。
[49]複合一貫輸送:トラックの持つ戸口までの機能と鉄道、海運の大量性、低廉性という特性を組み合わせ、ドア・ツー・ドアでの輸送を完結するもので、輸送の効率化、低廉化を図る一貫輸送方式。
[50]パブリックアクセス:人々が海辺へたどりつくための道路等の手段と、たどりついてからそこで憩い、遊ぶことができるような海辺環境を包括した概念。
[51]耐震強化岸壁:大規模な地震にも本来機能を失わずに活用できるよう、特別に設計・建設された岸壁。
[52]リダンダンシー:自然災害等による障害発生時に、一部の区間の途絶や一部施設の破壊が全体の機能不全につながらないように、予め交通ネットワークやライフライン施設を多重化したり、予備の手段が用意されているような性質を示す。
[53]河川舟運路:海域と内陸を結ぶ河川舟運路を整備することにより、河川を経由する水上バスの就航や小型タンカーによるガソリン輸送等が可能となり、物流の効率化や陸上輸送の代替による環境負荷の低減に資するとともに、大規模災害時においては緊急物資の輸送手段として活用されることにより、都市の防災性の向上に資する。
[54]共同溝:昭和38年に制定された共同溝の整備等に関する特別措置法に基づく施設で、占用工事に伴う交通渋滞や道路の不経済な損傷を防ぐため、電話線、電力線、ガス管、水道管、下水道管等の公益事業のための物件を道路の地下に共同で収容するもの。
[55]電線共同溝:安全かつ円滑な交通の確保と景観の整備を図ることを目的として、道路地下に光ファイバ、電力ケーブル等をまとめて収容する空間。
[56]スーパー堤防:河川の計画規模を越える洪水による越水や長時間にわたる浸透が生じても破堤しない幅の広い緩傾斜の堤防をいう。堤内側(堤防によって守られる住居や耕地の側)の堤防上での土地は通常の土地利用ができるため、親水性豊かな良好な住宅宅地基盤整備の形成に資することにもなる。
[57]地下河川:都市部において治水安全度の向上を図る際、洪水の一部を流下させるため地下に設けられる放水路。下流部の改修に多額の費用と時間を要する場合、また、大河川の支川等で内水(本川水位が高いため自然排水が困難となり堤内側にたまる水のこと)処理対策が困難な場合等に用いられる。
[58]ライフサイクルコスト:初期投資にあたる建設コストに、維持管理コスト、廃棄及び更新にかかるコストを加えた、構造物のいわば一生にかかるコスト。
[59]特別養護老人ホーム:常時介護が必要で家庭での生活が困難な高齢者を入所させる施設。
[60]老人保健施設:入院治療は必要ではないが、家庭に復帰するために機能訓練や看護・介護が必要な高齢者のための施設。
[61]訪問介護サービス:日常生活に支障のある高齢者がいる家庭を訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問して提供する、介護・家事サービス。
[62]通所利用型・入所型介護サービス:送迎用バス等で日帰り介護施設に通う高齢者に、入浴、食事、日常動作訓練等のサービスを行う日帰り介護サービスや、寝たきり老人等の介護者に代わって、特別養護老人ホーム等で短期間高齢者を預かるショートステイサービス等の各種サービス。
[63]社会的サービス:電力、ガス、上下水道、公共交通、医療・福祉、教育・文化等の社会生活、日常生活上必要となる分野のサービス。公共等によって提供されることが多い。
[64]光ファイバ:光信号により情報を伝えるための伝送路に用いられる高純度のガラス繊維。光ファイバケーブルは長い距離を伝送しても信号(光信号)の減衰が小さい(低損失性)、周波数帯域が広い(広帯域性)、外部からの雑音妨害を受けにくいという特性を持っている。
[65]廃棄物発電:廃棄物を燃焼させることにより得た熱エネルギーを用いて発電を行うシステムをいう。最近は、炉壁を強化して高温燃焼を可能としたもの、ガスタービン廃熱により蒸気温度を高めるもの(スーパーごみ発電)、広域の廃棄物を固形燃料化して発電するもの(RDF発電)等、高効率発電が可能なシステムの建設も進展している。
[66]温度差エネルギー:海水、河川水等の持つ熱を熱源として利用し、冷暖房、給湯等の熱利用を行うことをいう。
[67]地域高規格道路:高規格幹線道路を補完し、地域相互の交流、促進等の役割を担う規格の高い道路。具体的には、4車線以上の車線で、60〜80km以上の速度サービスを提供できる自動車専用道路またはこれと同等の機能を有する道路。阪神高速道路等もこれに含まれる。
[68]超電導磁気浮上式鉄道:極低温(−269度)で電気抵抗が0になる超電導現象による強力な電磁石の磁力を利用して車両を浮上走行させる鉄道のこと。超高速・低公害等の特性を有し、新しい時代にふさわしい輸送手段として期待されている。なお車両の推進力は、リニアモーターと呼ばれる車両側と地上側に分かれた動力装置によって得られる。現在、実用化に向けて、東海旅客鉄道(株)、(財)鉄道総合技術研究所及び日本鉄道建設公団が山梨実験線で走行試験を行っている。
[69]道路交通情報通信システム(VICS):Vehicle Information and Communication Systemの略称。ドライバーが移動中、リアルタイムな道路交通情報を取得し、適切な経路の選択等を可能とするビーコン、FM多重放送を使った情報通信システム。情報として、各経路の渋滞情報、所要時間、交通規制情報、駐車場の満空情報等が提供される。近畿圏では平成12年3月現在、高速道路及び京都府、大阪府、兵庫県の主要な一般道路において情報提供を行っている。
[70]オフピーク通勤:勤務時間を通常とずらすこと等により、通勤のピークとなっている時間帯の前後である比較的乗降客の多くない時間に通勤すること。いわゆる時差通勤。
[71]新交通システム:中量輸送軌道システムともいわれ、鉄道とバスの中間の輸送力を有する公共交通機関。神戸新交通ポートアイランド線等に用いられており、主に専用ガイドウェイ上をコンピュータ制御された車両が走行する。
[72]LRT:Light Rail Transitの略称。従来の路面電車の走行環境、車両等をグレードアップさせた、人や環境に優しく経済性に優れた公共交通システム。
[73]トランジットモール:商店街への自動車の乗り入れを制限し、歩行者専用空間としたショッピングモール等に、路面電車、バス等路面を走行する公共交通機関を導入した空間。
[74]フレックスタイム制:勤務時間を自主的に決定できる制度。種々の形態があるが、一定時間帯を核時間(コアタイム)として含め、出退勤を自由とするのが一般的である。
[75]パーク・アンド・ライド:都心部等の自動車交通混雑の緩和を図るため、都心部へ乗り入れる鉄道の郊外駅、バスターミナル等の周辺に駐車場を整備し、自動車を駐車(パーク)させ、鉄道、バス等の公共交通機関への乗り換え(ライド)を促すシステム。
[76]ネットワークインフラ:光ファイバや衛星通信を始めとする情報の物的伝送装置。
[77]シームレスな情報通信体系:携帯・自動車電話とPHSが相互に通話可能になったように、独立している個々のネットワーク相互が接続されることによって、あたかも一つのネットワークであるかのように利用できるいわば継ぎ目のない情報通信体系。
[78]インターネット:世界的に統一されたルールに基づいてコンピュータ同士等が相互に接続されているネットワークの集合体。電子商取引、研究開発情報の交換、電子メール、遠隔教育等幅広く用いられている。
[79]情報リテラシー(情報活用能力):情報化社会の特質の理解やコンピュータ等を活用した情報の入手、加工、発信等に関する能力。
[80]デジタル化:情報を決められた2つの値しかとらない情報(信号)に変換すること。デジタル化によって情報を効率的に伝送することができるようになる。
[81]CATV:Cable Televisionの略称。有線テレビジョン放送施設。
[82]コンテンツ:情報ネットワーク上を流通する映像、音声、文字等の情報の内容のこと。
[83]アプリケーション:従来は、一般的にアプリケーションソフトウェアを指し、利用者が具体的に特定の仕事を処理できるように作られたソフトウェアをいうが、ここでいうアプリケーションは、その意味をより広くとらえ、利用場面に応じた情報通信の有効な利用方法のことを言う。
[84]PFI:Private Finance Initiativeの略。民間の資金、経営能力、技術的能力を活用するため、これまで公的部門が行ってきたサービスやプロジェクトの建設や運営を民間主体に委ねること。
[85]林業事業体:林業経営体からの委託等により、森林整備、木材の伐採等を行う森林組合、造林業者、木材生産業者等をいう。これらの林業事業体では、複合化や協業化等を図り、経営基盤を強化し、担い手を確保することが重要な課題となっているが、近年、これらの事業体や市町村等が出資した第三セクターの事業体の設立もみられている。
[86]デイサービス:日常生活に支障のある高齢者がいる家庭を訪問介護員(ホームヘルパー)が訪問して提供する、介護・家事サービス。
[87]老人訪問看護ステーション:看護婦等が在宅の寝たきりの高齢者などを訪問し、介護に重点をおいた看護サービスを提供する訪問看護事業を行う事業所。