「21世紀の国土のグランドデザイン」 第2部 第1章 第3節 1

第3節 流域圏に着目した国土の保全と管理


 1 流域圏に着目した国土の総合的な整備

 都市的土地利用の進展、生活様式の変化等にともない、人間社会とのかかわりの中で流域の姿は大きく変貌し、あるべき健全な水循環系の姿が失われつつあるとともに、特に中山間地域等において、過疎化、高齢化が進展する中、森林・農用地の適正な管理が困難となってきている。21世紀において、国土の持続的な利用と健全な水循環系の回復を可能とするため、流域及び関連する水利用地域や氾濫原を流域圏としてとらえ、その歴史的な風土性を認識し、河川、森林、農用地等の国土管理上の各々の役割に留意しつつ、総合的に施策を展開する。

 (1) 流域圏における施策の総合化

 水質保全、治山・治水対策、土砂管理等、水循環を介して流域圏と密接に関連する水や土砂に関する諸問題や、国土の土地利用の大宗を占め、公益的機能の発揮が期待される森林、農用地の適正な管理に関する問題は、行政上の区分を越えて広域的、複層的であり、多分野にわたる課題をかかえている。このため、自然の系である水系と、これに関連する森林、農用地、都市等により構成される流域圏を基本的な単位とし、これらの諸問題に対応する横断的な調整、連携を行うための協議会等の組織化について検討し、その具体化を図る。また、流域の水循環機構の総合的な調査検討を進めるとともに、水循環を介して密接に関連している河川水、地下水等を総合的に管理、保全する方策の必要性及びそのあり方について検討する。

 (2) 健全な水循環の保全・回復

 上流の水源地域の問題は、水源地域だけではなく、受益を享受する下流地域等と一体となって解決すべき問題である。このため、流域の水源かん養機能の保全と回復を目指し森林整備を進めるとともに、両地域の連携により、水源地域保全のための基金の活用、公的主体の水源林保有の推進等、水源地域対策の充実を図ることを通じて水源地域における国土管理を充実する。また、下流域・丘陵地においては、様々な主体により雨水浸透等による地下水のかん養を進めるとともに、下水道高度処理水を河川へ還元するなど、水循環の健全性を回復する方策を検討する。

 (3) 流域意識、上下流意識の醸成

 水の問題に対する国民の意識の高揚、自然への関心の高まり等から、流域サミット、森林、農用地、河川等を活用したイベント、文化・自然の研究、水質保全等への取組等、流域に関して様々な市民活動、自治体活動が行われている。これらの諸活動への支援を通じて、地域の風土性として培われてきた流域意識や上下流意識の再構築を目指す。このため、森林や水辺の交流拠点の整備、都市部の施設の上流域への立地等について、関係機関の連携による支援を行うとともに、市民活動のネットワーク化、川づくりや森づくりへの住民等の参加等を促進する。

 (4) きれいな水、おいしい水の保全と回復

 きれいな水、おいしい水への国民の希求の高い中、汚水処理施設の整備、農業用用排水施設、河川、ダム貯水池等における水質浄化等を推進し、河川、湖沼等の水質保全を図る。また、これらの事業を、流域圏全体で効率的かつ効果的に展開するため、事業間の連携や施策の調整を行う。その際、市街地、農地等の非特定汚染源への対策、地域住民、企業、NPO等の参加と連携について配慮する。また、水道水の供給に当たっては、浄水処理の高度化を重点的に推進するとともに、感染性微生物対策等の水道水質管理を強化する。

 さらに、汚水処理施設の設置だけでは不十分な地域や湖沼等閉鎖性水域等の水質改善のために、自然の浄化能力等を活用した水質浄化技術の開発を促進する。また、水質事故への対応等、水質に関する危機管理の充実を図る。


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