「21世紀の国土のグランドデザイン」 第2部 第3章 第1節 2


2 豊かで活力ある都市づくり

 (1) 望ましい国土構造に向けての都市整備のあり方

 東京一極集中の状況の一部に変化の兆しがみられる一方、地方中枢都市圏やこれらに準ずる地方中核都市圏は人口、高次都市機能の集積を高めるとともに、その効果を広域的に波及させつつあり、地域の自立的発展の拠点としての役割が高まってきている。このような都市をめぐる動向は、国土の均衡ある発展を図る観点から今後とも継続すべきものであり、長期的観点から複数の国土軸から成る望ましい国土構造の実現に向けて、都市間の階層構造をより水平的なネットワーク型に転換する方向で都市整備を積極的に推進する必要がある。

 このため、東京圏、関西圏、名古屋圏の三大都市圏、札幌、仙台、広島、福岡・北九州の地方中枢都市圏及びこれらに準ずる規模と機能を有する新潟、金沢・富山、静岡・浜松、岡山・高松、松山、熊本、鹿児島、那覇等の地方中核都市圏を、高次都市機能の集積の拠点、広域国際交流圏の拠点としての中枢拠点都市圏と位置付け、機能の分担と連携を図りつつ、全国土に及ぶ中枢拠点都市圏のネットワークを重層的に形成する。各中枢拠点都市圏においては、規模、特性に応じた機能の整備を重点的に推進するとともに、周辺の県庁所在市程度の都市を中心とする地方中核都市圏や人口が概ね30万人未満の都市を中心とする地方中心・中小都市圏との間に相互に複合的なネットワークを形成し、集積された機能の広域的な波及を図る。

 (2) 都市整備の基本的方向

 以上のような観点を踏まえつつ、東京圏においては、東京都区部等における人口、諸機能の過度の集中の是正、業務核都市等の育成、整備を引き続き推進しながら、高次都市機能の高質化とその広域的活用を図り、関西圏及び名古屋圏においては、東京圏との機能分担と連携を進めながら、各圏域の特性を踏まえ、特色ある高次都市機能の充実を図る。このため、大都市空間を修復、更新し、有効に活用する「大都市のリノベーション」を積極的に推進し、これにより、巨大都市化と過密にともなう諸問題を解消し、東京圏を始めとする三大都市圏を安全で豊かな生活空間として再生する。

 地方圏においては、地方ブロック、県レベルでの地域の自立的発展の拠点の形成を図る観点から中枢拠点都市圏や地方中核都市圏を整備するとともに、地方中心・中小都市において、多自然居住地域の拠点として地域の自立の基礎を形成する。このため、各都市においては、それぞれの規模や立地条件等に応じ、都市間の多様な地域連携を通じて都市機能の充実を図るとともに、地方都市の特色を生かしたゆとりとうるおいのある居住環境の形成を目指し、「地方都市の戦略的整備」を推進する。

 三大都市圏、地方圏を通じて、空洞化の進んでいる中心市街地の活性化を始めとする都市の再構築を図る。

 この場合、「参加と連携」による国土づくりの考え方に沿って、地域はそれぞれの個性、多様性を生かしながら、豊かで活力ある都市づくりを進め、国はそれを支援、推進するなど、多様な主体間の適切な役割分担と連携を図りながら、都市の整備を進める。


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