「21世紀の国土のグランドデザイン」 第2部 第5章 第1節 1

 

第5章 交通、情報通信体系の整備に関する施策


 交通、情報通信体系は、国内外の地域相互を結びつける基礎的基盤であり、地域間の連携を基礎に地域自立のための機会の均等化を進め、全国各地域の発展を求める国土づくりの戦略の下で、その役割が一層高まっている。また、産業など国内外の地域間競争が厳しさを増していく中で、各地域に国際的に魅力ある立地環境を整える上でもその重要性を増している。特に、高度情報化と地球時代の到来の中で、広域国際交流圏の形成と、増大する国際間の人、物、情報の円滑な流動を確保するための機能の強化が全国各地域において求められている。この観点から、公的部門と民間部門、国と地方との適切な役割分担の下で、安全、環境等を考慮した自然との調和の視点にも留意して、交通、情報通信体系の整備を次の基本方向に沿って進める。

交通、情報通信体系の国際競争力の強化を図るとともに、全国各地域と世界とのアクセス機会の均等化を実現するため、国際交通拠点の全国適正配置、これらへのアクセス性の向上及び高度な情報通信基盤の全国展開を図る。
雇用機会や高度な都市サービスの享受機会等地域自立のための各種機能へのアクセス機会の均等化を広域的観点に立って実現するため、低廉で、利便性の高い、また高齢者等にも使い易い交通、情報通信体系の形成を図る。
安定度の高い交通、情報通信の確保と自然と調和した国土の形成に資するため、自然災害等により完全に途絶することのない粘り強さを持ち、また情報通信による交通の代替等を含め環境への負荷の少ない交通、情報通信体系の形成を図る。
 なお、交通、情報通信体系は、国土構造及び地域構造を規定する主要な基盤であり、上記体系の整備は、長期的な国土軸の形成を展望しつつ進める。

第1節 交通体系の整備


1 交通体系整備の基本目標

 長期的な国土軸の形成を展望しその基礎として、地域が連携し自立的発展を図ることを可能とし、価値観に応じた暮らしの選択可能性を高める交通体系を築くことと、人と自然との安定的な関わりを求める国土軸形成に資する安全、環境等を考慮した自然との調和を図った交通体系の形成を目指し、次の事項を交通体系整備の長期的な基本目標とする。この体系の形成に当たっては、適切な競争と利用者の自由な選択を通じて、各交通機関が連携し、それぞれの特性が生かされた体系の実現を目指す。

 国際間の基幹的な航空路線、海上航路の我が国への就航を保障する国際級の規模と機能を有した国際交通施設の拠点的配置とともに、世界とりわけアジアへのアクセスの利便性を高める国際交通施設の全国適正配置を目指す。

 これまで進めてきた施策を踏まえ、基幹的交通体系と地域の交通体系が直結、融合化した利便性の高い、より高速な国内交通体系の形成を目指す。全国交通体系にあっては、高速性、利便性の向上により、全国主要都市間での日帰り可能性を一層高める全国1日交通圏の形成を推進し、地域の交通体系にあっては、諸機能の適正配置に併せ、人々の広域的な諸活動を支える利便性の高い交通体系を形成する。

 各交通機関の特性を発揮した適切な組合せや自然災害対策等により、系全体として自然災害に対し粘り強いしなやかさを持ち環境への負荷が少く、文化やゆとりにも配慮する、安全で自然と調和した交通体系の形成を目指す。

2 国際交通体系の整備

 (1) 国際交通体系整備の長期構想

 地球時代の到来により、商用、観光等我が国を発着する人や物の流動量が飛躍的に増大すると見込まれる。これに備え、各地域と世界とのアクセス性を向上させる国際交通体系、とりわけ交流の活発化が予想される全国各地域と東アジア各国間においては、人の移動にあっては出発したその日のうちに到達でき、一定の用務が行える「東アジア1日圏」とも呼べる、次の国際交通体系の整備を構想する。この構想の推進により形成される対アジアゲート、グローバルゲートとこれへのアクセスのための高速交通体系の整備を始めとした国内交通網の形成により、新しい国土軸から世界への交流の基礎が築かれる。

  (対アジアゲート)

 全国各地域からのアジアへのアクセスに関し、利便性の高いサービスを提供するため、地方圏において、既存ストックを活用して、おおむね中核都市を中心に、需要の高い特定のアジア諸国との交流の玄関となる空港、港湾の配置を構想する。これら空港、港湾を対アジアゲートとすることにより、次のグローバルゲートとともに、各地域からアジアへの至近な直接交流の基盤を確保する。

  (グローバルゲート)

 世界各国と多方面多頻度の航空路線で結ぶいわゆる国際ハブ機能を持つ中枢拠点として、国際的な規模と機能を有した競争力の高い国際空港を東京圏、関西圏、中部圏に配置する。さらに、全国各地域と世界各国との国際航空需要に対し利便性の高いサービスを提供するため、既存ストックを活用して北海道、東北、中四国、九州、沖縄等の各ブロックに国内航空ネットワーク、アジアとのネットワークとの連携のとれた、グローバルなネットワークも視野に入れた地域のゲートとなる国際空港の配置を構想する。同じく、多方面多頻度の海上航路が寄港する国際ハブ機能を持つ中枢拠点として、国際的な規模と機能を有した競争力の高い国際港湾を東京湾、大阪湾、伊勢湾及び北部九州の4大域に配置する。さらに、東アジア航路に加えて、欧米等と結ぶ航路も視野に入れ、北海道、東東北、日本海中部、北関東、駿河湾沿岸、中国、南九州、沖縄の各地に地域のゲートとなる国際港湾の配置を構想する。


 (2) 国際交通体系整備のための計画期間中の施策

 長期構想に沿って、物流の効率化に資する施策に当面の重点を置きつつ、次の諸施策を進め、広域国際交流圏の形成と長期的な国土軸の形成に資する。

 グローバルな中枢拠点について、重点的な整備を推進する。空港については、新東京国際空港、関西国際空港の2期事業、中部国際空港について、所要の環境条件を整えた上、国際級の規模と機能を有した滑走路等の整備を推進する。港湾については、東京湾、大阪湾を始め4大域に大水深で高規格な国際海上コンテナターミナルを整備する。これら中枢拠点の国際競争力を強化するため、適正な料金体系の下地球規模の利用を可能とする24時間サービスの提供や、自動化、情報化の推進による効率的な運営等、世界水準のサービスの提供、CIQ(税関、出入国管理、検疫)機能の整備等に総合的に取り組む。地域のグローバルゲートとして、東北、中四国等各ブロックの中心となる空港において、アジアを始め、近中距離を中心とする国際ネットワークを形成するため、滑走路の延長等所要の整備を推進するが、九州等のブロックにおいては需要の動向を勘案し、グローバルゲート機能の強化方策についても検討する。港湾については、需要を見極めつつ北海道、東東北、北関東等の港湾について所要の整備を進める。

 対アジアゲートについては、長期構想に沿って需要動向を勘案し、既存ストックを有効に活用して、順次、CIQ等所要の機能を整備する。この際、ポートセールス、チャーター便就航等の需要集約の努力や、広域国際交流圏形成のための諸施策等を地域が連携して進める。さらに、北海道、沖縄における地域の条件を生かした国際交流拠点の形成のあり方について長期的視点から検討する。

 これら空港、港湾が地域からの世界との交流の玄関として機能するよう、輸入促進地域整備との連携、空港、港湾等の交通拠点と連結する高規格幹線道路、地域高規格道路、高速鉄道等のアクセスの強化を進めるとともに、必要に応じコンテナの国際規格に対応した道路整備を進め、また、玄関にふさわしい景観を確保し、来訪者を含めバリアフリーな利用しやすい空間となるよう整備する。また、海外からの資源、エネルギーの安定的確保に資する港湾整備を進める。

 アジア諸国との旅客船航路や地方空港へのチャーター便等を活用したアジアからの新たな観光需要に対する地方圏の空港、港湾のあり方について検討する。


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