「21世紀の国土のグランドデザイン」 第3部 1

 

1 北海道地域 


−新たな北方型文明を創造するフロンティア−



 (1) 地域整備の基本方向

 広大な空間、豊かな自然を始め多様な国土資源や冷涼な気候に恵まれた北海道地域は、北方圏とアジア・太平洋地域との結節点に位置し、アイヌ文化を始め、北国らしい特色ある文化、生活様式を育んできた。今後は、こうした特色ある自然的、地理的特性や文化的蓄積に加えて、開拓の歴史が育んだ開拓者精神や開放的な気質等を生かし、我が国を始めアジア地域の21世紀の新しいライフスタイルに多様性を与える「新たな北方型文明を創造するフロンティア」として、個性豊かな地域づくりを展開する。

 このため、我が国に食料や木材を供給する基地等様々な役割を担う多自然居住地域の創造を図るとともに、道内各地域において、各々の特性、条件を生かした特色ある産業を展開する。また、多様な地域連携を通じ、道内各地域の核となる都市と多自然居住地域との連携を強化すること等により、それぞれが自立した特色ある地域を形成する。あわせて、情報通信機能の積極的な活用等により、各地域相互間の連携の強化を図る。さらに、北方圏やアジア・太平洋地域を中心に世界に開かれた広域国際交流圏の形成に向けて、経済や技術面等における一層の国際交流機能の拡充等を図る。特に、個性的で魅力ある雄大な自然や景観、雪等を生かした、世界、とりわけアジアの人々にも憩いとやすらぎを与える世界の観光・保養基地として積極的な役割を担うことも期待されている。これらの取組を通じて、長期的には北東国土軸及び日本海国土軸の形成を展望しつつ、魅力的で多様性に満ちた北海道の形成を図る。


 (2) 施策の展開方向

 北国らしい特色ある自然や気候を生かした多自然居住地域の創造を図るため、高度な情報通信基盤、域内交通基盤や生活基盤の整備を進めるとともに、圏域の拠点となる中小都市における都市機能の集積を図る。あわせて、我が国の食料供給基地、木材供給基地としての重要な役割を果たすため、生産・加工・流通基盤の整備や高質化を進めながら、生産性の高い大規模土地利用型農業の展開、北の海産物の宝庫であるオホーツク海等の3つの海域を生かした資源管理型漁業、つくり育てる漁業の推進、木材の供給体制、天然生林等多様な森林の整備等を推進し、付加価値の高い農林水産業の展開を図るとともに、マーケティングの活用等によるブランド化や多産業複合経営を進める。また、原生的な森林やラムサール条約登録湿地を始めとする豊かな自然環境の保全、回復を図るとともに、自然とのかかわりの中で育まれたアイヌ文化の振興等を推進することを始め、歴史的に形成されてきた特色ある伝統文化の継承、発展や、天塩川、鵡川・沙流川等の流域を中心とする新しい文化の創造等を通じ、個性豊かな地域文化の創造、発信を図る。さらに、北国の風土に根ざした安全で快適な地域づくりを進める観点から、雪や寒さに強いまちづくりや高齢者に優しいまちづくり等を進めるとともに、積雪寒冷な気候、広大な面積や火山性の地形を考慮しつつ、地震や洪水、雪崩や土砂流出等による自然災害に対応した防災対策の充実や海岸の保全を図る。

 広域分散型の地域構造の北海道においては、各地域が核となる都市を中心として各々の特色を生かした自立した地域の形成を図るため、旭川、函館、釧路、帯広、北見・網走等の都市において高次都市機能の充実・導入や地域の個性を生かした中心市街地の活性化を図る。その際、高齢化等に対応したものとなるよう十分配慮する。あわせて、道内各地域では、これら中核となる都市等を中心に周辺の市町村が様々な連携を行うなどの地域連携に関する取組を「パートナーシップ・プロジェクト」として積極的に推進することとされており、これを支援し、また、各地域相互間及び道外との広域的な連携や交流を進める観点から、北海道の基幹路線となる北海道縦貫、横断自動車道、これらに接続する道南圏における函館・江差自動車道、道央圏における日高自動車道、道央・道北圏にまたがる深川・留萌自動車道、道北圏とオホーツク圏をつなぐ旭川・紋別自動車道、十勝圏における帯広・広尾自動車道の整備や釧路中標津道路等地域高規格道路の整備を進めるとともに、コミューター航空の活用、空港、港湾、高速鉄道網、高度な情報通信基盤の整備等を図る。北海道新幹線については、政府・与党検討委員会検討結果に基づき、所要の事業を進める。このような地域連携に係るソフト、ハードの取組を進め道央圏を中心に集積している産業機能等を積極的に活用しながら、農林水産業、製造業等異業種間の交流や産学官の協力を一層推進するとともに、冬の寒冷な環境条件を活用した独創的な研究開発やそれらの事業化に向けた取組等を促し、時代のニーズに対応した新産業の育成や地場資源を活用した産業の高度化を進める。青函地域については、北海道と東北の両地域のみならず、日本列島と太平洋・日本海をつなぐ津軽海峡が交差する十字路に位置し、インターブロック交流圏として今後の発展が期待される地域であることから、青函トンネルの一層の活用方策、新たな交通体系について、交流圏構想等の動向を見つつ長期的視点に立って検討する。また、高度な情報通信基盤の整備や情報共有の促進等を通じたより一層の交流、連携を推進する。

 北方圏やアジア・太平洋地域を中心に世界に開かれた広域国際交流圏を形成するため、札幌を核とする中枢拠点都市圏において、良好な拠点市街地の整備を進めるとともに、高次都市機能の集積を進める。また、富良野・大雪地域やニセコ・羊蹄・洞爺地域を始め道内各地域においては、酪農地帯の雄大な風景や美しい丘、山岳や豊かな天然林、雪、流氷、全国屈指の温泉群等の地域資源を活用したグリーン・ツーリズム等の促進や広域的な観光、リゾート地域の整備を推進するとともに、これらの拠点と道内外の観光資源を有機的に結びつけた魅力ある広域観光ネットワークの形成を図る。これに加え、アジアを始め世界各地域におけるPRや外国人観光客の受入れ体制の強化等を通じて、世界水準の観光・保養拠点を形成する。さらに、国際交流の拠点となる新千歳空港、苫小牧港や釧路港、近隣の北方圏等へ開かれた空港、港湾の整備を推進することにより北の国際ゲートウェイ機能を強化するとともに、アクセスのための交通基盤の整備を図る。また、これらの周辺地域において国際水準の物流機能、研究開発機能等の強化を図る。こうした取組を通じて、北方圏や日本海沿岸諸地域との交流、連携を推進するとともに、長期的視点に立ち、極東ロシア等において進められている各種開発プロジェクトに係る支援機能の集積を図りつつ、特にサハリンのエネルギー開発の後方支援拠点の形成を図る。

 苫小牧東部地域については、生産施設や我が国にとって重要な施設である国家石油備蓄基地を含むエネルギー関連施設の立地等が進んでいるが、近年の経済社会情勢の変化を踏まえて、臨海・臨空性と中枢都市圏に隣接するというポテンシャルとこれまでの基盤整備を生かし、国際的な交流需要に対応した空港機能への活用策など開発方策等の検討を行いつつ、それに基づき推進する。


次頁「2 東北地域」へ
目次へ
「21世紀の国土のグランドデザイン」トップページへ