第3回「高潮・津波ハザードマップ研究会」の開催結果
ライン

 

 第3回「津波・高潮ハザードマップ研究会(座長:河田 惠昭 京都大学防災研究所 巨大災害研究センター長)」が下記の通り開催された。

  1. 日時
     平成15年5月1日(木) 10:00〜12:00

  2. 場所
     グランドアーク半蔵門 富士の間

  3. 出席者
     河田、磯部、今村、片田、中野、廣井、藤吉、山田の各委員

  4. 議事
     事務局から資料説明後、ハザードマップの記載内容、周知方法、活用などについて議論を行った。

  5. 内容
     各委員等からの主な意見は次の通り。
     (1)高潮・津波ハザードマップの記載内容
    • 「ハザードマップ」の用語は一般の方には難しいため、「防災地図」や「安全地図」といった用語を使うべきである。また、高潮と津波で別々のハザードマップを作成するならば、「高潮ハザードマップ・津波ハザードマップ」と表記すべきである。
    • 一般の方は広い視点でハザードマップを見ないで自分の家の位置の浸水深と到達時間のみを見ることが多いので、災害イメージの固定化が懸案事項である。紙1枚のハザードマップでこの懸案を払拭するには限界もあるが、最大限に配慮するべきである。
    • 災害の固定化を避けるため、ハザードマップの中に災害のシナリオを書き込む方法もある。
    • ハザードマップの作成シナリオや外力条件が、現実に発生する津波と異なる場合があることを、住民に知らせる必要がある。また、この周知が災害発生直後のハザードマップの活用に生きてくると思う。
    • 高潮に関して言えば、台風の暴風圏に入った地域では、災害弱者は円滑に避難ができないので、避難開始時刻も情報として提供する必要がある。
    • 行政は台風の接近度等による、避難所開設の具体的な基準を設定する必要がある。
    • 津波等の到達時間も重要な情報であることを再認識して欲しい。
    • 到達時間の情報をハザードマップに表示するのはマイナスの要因の方が大きく、住民に間違った余裕を与える可能性がある。
    • 情報提示の目的でハザードマップを配布するだけではだめで、住民とのワークショップを開催し、口頭で説明することが大切である。津波到達時間も必要な情報であるが、これは対話を通じて住民に説明すべきである。
    • 到達時間の表現としては、海岸線までの到達時間と海岸線から町までの到達時間を情報提示する方法もある。この場合、後者は数分と短くなるので、一般の方に切迫性を与える効果がある。
    • 東海地震の場合、家屋倒壊で通れない道路も多々ある。少なくとも、太平洋沿岸の地域におけるハザードマップには、津波及び浸水に特化しないで、陸域部の地震被害に関する関連情報を盛り込むべきである。
    • ハザードマップには必要最小限の情報のみを記載し、他の情報は小冊子にして配布するのが良いと思うが、いくつかのパターンのハザードマップ媒体を用意して、試験的にモデル地区で説明・配布し、どのようなスタイルが最適であるか調査することを提案する。
    • バッファの設定方法については、水面を取り扱うため標高で設定する方法が適している。さらに、「災害特性、地形及び居住状況を考慮して、バッファを設定する」旨の内容を追記して欲しい。
    • バッファの設定方法については、住民の立場、特に避難の観点からすれば、町丁目界による設定がわかりやすい。
    • 本日提示のハザードマップ試作版では、避難すべき地域と住民が不明確である。また、想定外力としてレベル1〜3の提案があったが、ハザードマップ内に各レベルにおける浸水域の色分けを示す方法がある。この場合、レベル1〜3の定義付けと、各レベルに応じた防災体制づくりが必要である。

     (2)高潮・津波ハザードマップの周知、住民による確認、避難時の活用

    • リアルタイム情報を出す場合、あらかじめ幾つかのシミュレーションを通じて危険パターンを把握しておき、この知見をリアルタイム情報に反映できれば良い。また、リアルタイム情報の効果を確認するためのモデルケースとしては、海岸保全区域の外にある臨海地帯の工場で使える情報であるかをテストする方法がある。
    • 観光客もさることながら、ドライバーへの周知が必要である。避難に関する道路標識を設置したり、レストハウス等にポスターやチラシを設置する工夫が考えられる。
    • 車のカーナビのサービスに津波情報を付加したり、道の駅で情報を車搭載のパソコンにダウンロードしたり、CDを配布するが考えられる。
    • 河川ではリバーカウンセラーが重要な役割を演じているケースもある。地域の一般の方へ災害情報をインタープリートできる人間の養成が必要である。
    • ハザードマップの避難時の活用を考える時、避難場所への所要時間を情報提示する必要がある。この所要時間はワークショップ等により、住民が避難経路を選択して、実際に避難の予行をした際の時間を計測して設定する。
    • ハザードマップはワークショップの教材に過ぎないと考えれば良いが、問題はワークショップにも参加して頂けない住民の大半を占める無関心層への注意喚起である。この対策としては、子供への災害教育が効果的であると思う。
    • 現地に設置する避難用の標識は、全国統一すべきである。

     (3)その他

    • 市町村が主体的にハザードマップを作るために必要となる浸水予測シミュレーションは、国や県がサポートする必要がある。
    • 今後、さらなる新技術の開発が必要であり、本研究会の終了後も、ハザードマップに関する研究を継続すべきである。

配付資料

【問い合わせ先】
内閣府(防災担当)地震・火山対策担当
電話03-5253-2111 (内線51414)
農林水産省農村振興局防災課
電話03-3502-8111 (内線4978)
水産庁漁港漁場整備部防災漁村課
電話03-3502-8111 (内線7293)
国土交通省河川局砂防部海岸室
電話03-5253-8111 (内線36322)
国土交通省港湾局海岸・防災課
電話03-5253-8111 (内線46735)

 PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Acrobat Readerが必要です。右のアイコンをクリックしてAcrobat Readerをダウンロードしてください(無償)。
 Acrobat Readerをダウンロードしても、PDFファイルが正常に表示されない場合はこちらをご参照下さい。

アクロバットリーダーホームページへ
(ダウンロード)

ライン
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport