〇日時
平成31年1月30日 (水) 8時00分~10時00分
〇場所
国土交通省(中央合同庁舎3号館)10階 共用会議室A
〇出席委員(五十音順)
東京大学大学院 石原委員、足利大学 牛山座長、椙山女学園大学 大串委員、東京大学大学院 加藤委員、放送大学 來生委員長、早稲田大学 清宮委員、森・濱田松本法律事務所 桑原委員、一般社団法人海洋産業研究会 中原委員、株式会社日本政策投資銀行 原田委員、一橋大学 山内委員
〇オブザーバー
内閣府 総合海洋政策事務局 有倉参事官
環境省 大臣官房 環境影響評価課 熊倉課長
農林水産省 水産庁 漁港漁場整備部 計画課 吉塚課長
〇事務局
経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 松山部長
経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 政策課 山影課長
経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課 山崎課長
国土交通省 大臣官房 浅輪技術参事官
国土交通省 港湾局 海洋・環境課 中﨑課長
国土交通省 港湾局 海洋・環境課 海洋利用開発室 中川室長
〇議題
1.前回のご指摘事項について
2.再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定について
〇議事概要
1. 前回のご指摘事項について
1-(1) 固定資産税について
委員
・固定資産税については、業者の人が巻き込まれないように制度的な土台づくりをしていただきたい。
・固定資産税の課税対象範囲の範囲はどうなっているのか。
・固定資産税については、事業者公募の段階で、ある程度の考え方が整理され、示されていることが重要ではないか。
事務局(国土交通省)
・固定資産税は、促進区域に設置されているものがすべて対象と考えている。
座長
・本日の委員からのご意見を反映し事務局で検討した内容を次回の合同会議において示す。
1-(2) 中長期的な洋上風力発電の導入拡大について
(特に議論なし)
2. 再エネ海域利用法に基づく促進区域の指定について
2-(1) 促進区域の指定基準の具体的内容
2-(1)-1 促進区域の指定基準の概要および全体
委員
・再エネ海域利用法第8条第1項の第1号から第6号までの条件を総合的に判断するというのは妥当だが、誰が、どういった責任のもと判断するのか。
・洋上風力は技術進歩も市場変化も激しいため、特に事業性に関わる条件については、具体的数値をベンチマークとして設定しても、今後それ自体が変わっていくと想定される。その変化に対してどのように対応していくのか。一度促進区域として指定した区域が、状況の変化によって取り消されることもあり得るのか。
・再生可能エネルギー市場では、FIT認定を受けたにもかかわらず事業が実施されないといった問題も生じている。一般海域の洋上風力は、国が促進区域を指定し、事業者を公募することとなるが、確実に事業が実施されることが重要である。その意味で、あまり細かい数字で縛ってしまうのもよくなく、具体的な条件について精査して、その中で指定していくのが大事であり、こういった点を考慮して総合的に判断ということを考えていくべき。
・技術刷新を考えると、指定基準を数値として示すことに懸念が生じるが、一方で予見可能性の面では目安が示されていることは重要。いつ頃見直すのか、といったことを示すのが良いのではないか。
事務局(国土交通省)
・技術的な判断をする必要があり、そういったところは有識者の意見を踏まえながら判断することとなるが、最終的には再エネ海域利用法の通り、国土交通省と経済産業省の両省の責任のもと、総合的な判断を下す。
・占用する事業者が選定されているなかで、促進区域の変更により促進区域指定を取り消すことはない。ただし、今後の指定基準の修正・変更の可能性は十分にあり得る。
2-(1)-2 自然的条件と出力の量(第1号関係)
委員
・ベンチマークとして具体的な数値が示されることは、必ずしもこの数値が足切ラインではないものと理解しているが、良いことだと思う。
・出力の量について、「効率的な洋上風力発電事業の実施のためには一定の規模を確保する必要」という考え方に対し、欧州主要国における設置・入札案件の平均出力が約35万kWという旨記載があるが、DBJが関わってきた案件を見ても納得の数字。ただし、例えばイギリスのラウンド1では小規模だったものが、近年タービンの大型化に伴い案件も大型化しており、導入に際してはこういった状況も踏まえて検討が必要であり、港湾があるのか、日本の現状に即した大きさという議論もあるのではないか。
・具体的な基準が示されることで、今後の洋上風力の指針として寄与するものと考える。欧州平均の35万kWは規模の目安。日本国内事例では北九州港の22万kW、秋田・能代港の17万kW、鹿島港の19万kWの計画があり、欧州では50万kWを上回る設置完了案件があることから35万kWからプラス・マイナス20万kWという数字が良い按配となる。範囲についても、目安が必要ではないか。
・促進区域の指定にあたって必要なデータの精度と、上限価格設定時に必要なデータの精度は、異なる。上限価格設定においては更に精度の高いデータが必要。海域によっては、事業者やNEDO等が既に取得しているデータもあり、活用できるのではないか。
事務局(経済産業省)
・供給価格上限額について、前回資料38ページに第13条抜粋がある。公募占用指針には上限価格を定めなければならず、調達価格等算定委員会の意見を聴いて決めることが法律で定められている。どの程度のデータを取るかは法律上決められておらず、調達価格等算定委員会における今後の検討事項である。
2-(1)-3 航路等への支障(第2号関係)
委員
・安全確保という観点から言えば、他の条件等と同じく、離隔距離についても例えば航路の数百メートル以内等、数値的なベンチマークを示すことも検討して良いのではないか。
2-(1)-4 港湾との一体的な利用(第3号関係)
委員
・建設時に必要な港湾と維持管理時に必要な港湾の規模は異なると理解。維持管理段階で建設用の港湾を有効に活用できるかという視点が必要。また、1プロジェクトで1港湾を開発するのではなく、港湾を複数案件で有効利用することがコスト削減につながるのではないか。
・風車等の大型化に伴い、基地港湾として適当な耐荷重・広さも、今後ますます大きくなる可能性があり、それを先見的に見据えた検討が必要。岸壁によって制約を受けないように、また、改良ができるようにして欲しい。
事務局(国土交通省)
・港が洋上風力建設の制約にならないようにというご意見について、事業者がどのような風車等を採用しようとしているか、出来る限り詳細を見通したうえで、最大の地耐力を考慮していく想定。また、風車大型化に合わせた船舶の大型化も想定している。
・建設時の基地港は複数の案件で時系列をずらして効率的に使うこと、広域性の観点も踏まえ無駄な投資を避けることで事業性を上げることを考慮したい。洋上風力の建設中には港湾をある程度占用的に使うことも考慮したい。
・ 建設時の基地港湾は大型で地耐力にも特別な配慮が必要である一方、維持管理はそういった特別な条件よりも立地的な近さもが重要という方向性で検討している。
2-(1)-5 系統の確保(第4号関係)
委員
・当面はやむを得ないのかもしれないが、将来的には事業者に頼るのではなく予め国で系統を確保するようにご検討いただきたい。
・ 「系統接続の見込みがあること」について北東北募集プロセスの事例が挙げられているが、関西電力・中部電力・東京電力の各エリアではそもそも系統連系の制約による募集プロセスが発生していない。こういった現時点で系統連系の制約を表明していないエリアにおいて、「系統接続の見込み」はどのように考えているのか。
事務局(経済産業省)
・「系統接続の見込みがあること」の確認の視点は、事業者等が十分な系統を確保していて、公募により別の事業者が選ばれた場合にはその系統枠を譲ることを約束すること、とするのが事務局の案である。 加えて、将来的な系統増強の在り方については、再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会第2次中間整理において、洋上風力を例にとりながら、全国のマスタープランを検討すべきといったことも含めて記載されている。将来的には系統もトータルで考えながら区域指定をおこなうべきということが、その委員会でも述べられている。
2-(1)-6 漁業への支障(第5号関係)
委員
・「漁業への影響について十分に確認する必要がある」という考え方に対し、「漁業に支障があると見込まれる場合には促進区域の指定は行わない」と断定的な確認の視点案が示されている。更に、「協議会の設置等の前にも」という時間的な観点も示されており、大変良い確認の視点。
・海洋産業研究会では、洋上風力と漁業等の協業・協調を予てから提唱しており、影響は必ずしもマイナスだけでなくプラスの側面もあることに留意のうえ、協調方策やプラスの影響についても加筆して頂けると良い。
・促進区域は洋上風力以外のものは排除するというような性質ではないのではなく、総合的かつ多目的な海洋利用という観点で、安全確保が十分になされたうえであれば例えば風車の間を遊覧船等で往来するなどのエコツーリズムもあり得るのではないか。
・ 委員長 漁業への影響はプラス・マイナスの両方があるとのご指摘について、事務局には確認していないが、プラスとマイナスの両面を指す「影響」と、主にマイナスの側面を指す「支障」という言葉を意図的に使い分けていると考えていた。
事務局(国土交通省)
・漁業との関係が常に対立構造にあるという趣旨ではないので、プラスの影響についてのご意見を反映できるよう書き方を変えていきたい。
オブザーバー
洋上風力の導入において、漁業との関係性はとても重要であると認識。関係性は必ずしも否定的なものと捉えるのではなく、銚子沖や五島沖で試験的に設置されているものに対しては地元からは理解を得られている事例もある。その一方で、これから新たに導入する場所では、どういう影響があるのか、既存の生活を乱されるのではないかと不安感があるのも事実。
・漁業者との調整を図る上で、漁業への影響の確認になるが、影響がないとは言い切れない。この影響については、具体イメージをもって提示して頂かないと、漁業者は判断できない。検討段階で区域の広さを確定することは難しいかもしれないが、沿岸までか沖合まで広がるのか、促進区域のエリアではどういう構造の発電施設なのか、イメージをもって提示しなければ、漁業者は理解できず、全く違うものを想像して否定的になってしまうことが懸念される。
2-(1)-7 その他促進区域指定にあたって考慮すべき事項
オブザーバー
・「海洋環境の保全」に関連して、環境省からも環境に関するデータを収集・提供し、促進区域の指定に資するように協力していきたい。
2-(2) 促進区域の指定手続き
2-(2)-1 国による既知情報の収集
委員
・「その他の情報収集」について、既知の情報を最大限活用してほしい。様々な事業者が先行して情報収集し調整を進めているので、それを有効に使い、プロセスが早まることを評価するなどすれば、時間・資本を投じてきたものに対する公平性につながると考えられるのでは。
事務局(国土交通省)
・民間事業者の情報は、仮に国で入手できたとしても、国で調査した内容(詳細調査)で確認しながらの活用としたい。公平性の確保が必要。
2-(2)-2 有望な区域の選定プロセス(既知情報によるスクリーニング)
委員
・有望な区域という考え方が新たに示された。第三者委員会によるスクリーニングについて開催頻度や運用を工夫して、第三者委員会が建設時期等のボトルネックにならないようにすること、事業者からみて透明性がある選定プロセスであることが重要。
2-(2)-3 協議会の運営方法
オブザーバー
・調整の対象者について、沿岸であれば共同漁業権という地元漁業者が排他的に使える水域になるが、沖合に行くと地元以外からも往来があり関係者が広がる水域になる。沖合になればなるほど、都道府県だけでは判断できず、必要に応じて関係団体等に事前確認が必要になるのではないか。
・先行的に地元と調整している情報に基づいて区域指定プロセスに入ることを想定していると思われるが、地元関係者は、極端にいえば信頼関係も含めて「その企業だから」合意しているのであって、公募でどの事業者になるかわからないとなれば、地元の意見も変わるのでは。事前の関係団体・都道府県の意見聴取に注意が必要。
2-(2)-4 国による詳細調査について
委員
・基地港湾として転用可能など既存港湾施設がどの程度あるのか見込みは持っているのか。建設に適した地耐力等を備える基地港湾の整備に長期間かかるのであればその間に技術革新が進んでしまい、いま議論している想定が変わってしまう。また費用負担も問題であり、例えば一時的に専用的に港湾施設を使用することになる民間事業者の資金を投じてPFI的に整備するなども検討の余地があるのではないか。
・既知情報収集、必要な詳細調査について、国が実施する流れ自体は良いと思う。ただし、候補となる区域がすべて決まってからしか詳細調査できないとなると、スピード感が遅くなる。迅速に事業を推進するために、すべての候補が出そろうのを待たずに、先行的に風況調査・地盤調査等に着手できるか。
事務局(国土交通省)
・港湾区域内で事業者が選定されている事業は、使用する港湾施設の検討が進んでいる。一般海域についても、使用する港湾施設の検討を行っていく。民間事業者の資金活用についても検討していきたい。
協議会で地元の了解なくできる調査があれば、有望な区域については早めの調査をすすめたい。関係省庁の情報も活用する。
2-(2)-5 促進区域指定の判断プロセス(詳細情報によるスクリーニング)
委員
・国の調査と第三者委員会の役割がよくわからない。2通り考えられ、ひとつ目が単純にある一定の条件を満たしているかチェックする役割、もうひとつが国の政策目標への整合・合致の度合いを測りスクリーニングすることで政策目標達成の誘導を目指す役割だとすると、どちらがどちらを担うのか。国の調査は前者、第三者委員会は後者だとすれば、国の政策目標を明確化する必要があるのではないか。
事務局(経済産業省)
・第三者委員会はスクリーニングとしての要素が強い。あらかじめ決められた基準等に基づいてスクリーニングしてもらうとともに、最新の技術にあっているかどうか等専門的な評価等をしていただきたいという趣旨であり、そういう意味では、国の政策目的はあらかじめ決まっており、それも含めてスクリーニングしてもらうことと考えている。
2-(2)-6 促進区域の指定プロセスの全体像とスケジュール
委員
・都道府県単位で有望な区域に関する要望を出す際に、複数の区域について要望することは可能か。その後拡大することは可能か。
・ひとつの促進区域は一定程度の規模になる想定だが、促進区域を足してもよいのか。
・一度促進区域を指定して終わりではなく、何年後かにはまた促進区域指定のプロセスもあり得るのではないか。
事務局(経済産業省)
・都道府県単位で出てくる区域が複数あってもよく、限定しない方針。ただし、1促進区域において事業を実施できるのは1事業者のみ。
・年度毎に区域指定プロセスを行う。区域毎の調整状況次第でスピード感は異なると想定されるので、同じ都道府県から複数回・複数年度にわたって提案があっても良い。
2-(2)-7 計画的・継続的な促進区域の指定
委員
・建設が一時期に集中すると、最終的にコストに跳ね返るため、計画的な導入が必要。
・調達価格等算定委員会においても、いつまでにどのぐらいのコストを低減させていくかを議論している。洋上風力は欧州では急激にコストダウンが進んでおり、サプライチェーンの形成等により、日本においてもコスト下がると期待できる。そうすると、計画的・継続的な促進区域の指定が非常に重要になり、コストの問題と合わせて考える必要がある。太陽光やバイオマスにおいては、価格設定と導入量について意図せざる大きな問題が生じ、国民負担を増大させたという反省がある。どういうスケジュールで進めるかによって市場全体がいびつになる可能性があるため、これを考慮する必要がある。そのため、初期段階ではむしろ抑制的に進め、熟度を見て、段階的に導入規模を拡大していく必要があるのではないか。100万kWという数字が出ているが、最初は例えばその半分から始めるなど、もう少し限定的・段階的に進め、全体的なコスト低減を進めていく必要があるのではないか。
・継続的に指定していくことは非常に重要であり、可能であれば、年度ごとにどの程度の促進区域が指定されるのか、計画が分かるようにすると、事業者の予見性がさらに高まるのではないか。そうすると、優先的に選定が行われることも生じざるを得ないので、公平性・透明性を担保するという観点で、選定する際の理由や判断基準を示すことが重要ではないか。
・中小規模でスタートし、確実に実施できる段階で拡大していくというような指定の仕方も等もあるのではないか。
・日本と同じく海洋国家であるイギリスの例では、2000年のラウンド1で、2003年のラウンド2、2010年のラウンド3までの、段階的に洋上風力の導入を進めてきた。日本でもそれなりの規模感と持続性が必要であり、国際的にも日本が目指すべき方向と一致している。
・イギリスの例が日本の参考になることについて同意見。イギリスのラウンド1は1区域100MW前後で、比較的小規模に初めて、現在のマーケットにまで発展した。当時と現在ではタービンの大きさが異なるが、考え方としては参考になる。
・サプライチェーン構築について、必ずしも都道府県単位で考えるべきではないのではないか。例えば隣の県に既に拠点港があった場合、新たに拠点港をつくるのは合理的でない。都道府県単位を超え、ある程度広域で判断する必要もあるのではないか。
事務局(国土交通省)
・サプライチェーンは都道府県単位で発展するものではないというご指摘について、基地港湾がどこにどれくらいあると効率的か、民間資金がどの程度あると効率的か、製造拠点ができるのであればそこから基地港湾へ輸送する場合の効率性という視点も踏まえて検討していきたい。
3. とりまとめ
委員長
・本日は具体的には指定区域の選定基準の議論であったが、委員のご意見は、区域指定に関わるものであるがゆえに様々な要素が入っていた。事務局は、有益なご意見を、どの当事者とのあいだで、どのタイミングで必要なのか、という視点で整理してほしい。
オブザーバー
・本会議では、区域指定と事業者選定という、再エネ海域利用法の中核的な部分を議論して頂いている。内閣府で進める基本方針の策定においては、本会議で検討する内容をエッセンスとして盛り込んでいく予定である。
座長
・促進区域の指定基準の基本的な考え方、促進区域の指定手続きの大きな流れについて検討をいただいたところ、各委員から様々なご意見をいただいたものの、全体を通して大きな異論はなかったと考える。
・「道府県からの情報収集(要望聴取)を含め、国による既知情報の収集については先行的に開始することとしてはどうか」という事務局案に関して、委員の賛同が得られるのであれば、委員会とりまとめを待たずに既知情報の収集を始めてはどうかと思うが如何か。
・各委員からいただいたご意見は、本日回答した内容も含め、追加事項・修正事項を事務局にて精査し、次回以降の議論に資するよう検討を進めてほしい。
お問合せ先
経済産業省資源エネルギー庁
省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課
電話:03-3501-4031
FAX:03-3501-1365
国土交通省港湾局
海洋・環境課
電話:03-5253-8674
FAX:03- 5253-1653