1.経 緯
1997年1月に島根県隠岐島沖で発生した「ナホトカ号」事故や1999年12月にフランス・ブルターニュ沖で発生した「エリカ号」事故など、タンカー*による大規模油流出事故等を契機として、サブスタンダード船*(条約等の国際基準を満たさない船)の排除が世界的な喫緊の課題となりました。サブスタンダード船の背景には、自国籍船舶に対して国際基準を遵守するべき監視・監督義務を負っている旗国政府が、その責任を十分に果たしていない現状があり、IMO*において旗国政府が条約上の責務の実施を徹底するための手段についての検討が進められてきました。
このような状況に鑑みて、2002年1月に東京で開催された「交通に関する大臣会合」において、我が国は旗国政府の条約の実施状況に対するIMOによる監査制度の創設を提唱し、同提案をIMOへ提出することが合意され「海洋汚染の防止に関する大臣共同声明」に盛り込まれました。これを受け、同年6月の第88回IMO理事会において我が国を含む先進19ヶ国が共同提案を行い、IMOの場で監査制度について検討が開始されることになりました。2003年12月の第23回IMO総会において、旗国、寄港国及び沿岸国に対する監査制度である「任意によるIMO加盟国監査スキーム」の創設が承認され、その後、枠組み、監査基準、監査員の選定・訓練、実施手順、費用負担の在り方など、監査の詳細に関する検討・調整を経て、2005年12月の第24回IMO総会において、同監査スキームの実施が採択されました。
IMOは、各加盟国に対して監査申込みの照会や監査員の募集等を行った後、実施スケジュールを調整し、2006年9月から監査を開始する予定です。
2.任意によるIMO加盟国監査スキームの概要
このスキームは、IMO事務局長の下で、加盟国からIMOに推薦されたメンバーにより構成される第三国の監査員チームが、申込みをした任意の加盟国に対して、対象条約の実施状況について監査を行うものです。また、これは、監査結果のフィードバックによる被監査国の条約実施のパフォーマンスの向上と被監査国に対する技術支援の必要性の見極めを目的に実施されるため、監査結果については非公表です。
監査対象条約は、SOLAS条約* (海上人命安全条約)、MARPOL条約* (海洋汚染防止条約)、STCW条約* (船員の訓練・資格証明・当直基準条約)、LL条約(満載喫水線条約)、TONNAGE条約(船舶トン数測度条約)及びCOLREG条約(海上衝突予防条約)の6条約です。(ただし、海事保安に係わるSOLAS条約の附属書XI章2とSTCW条約の既存の強制的な監査要件の対象となっている部分については、対象外です。)
3.我が国の対応
我が国は、監査制度の創設当初より主導的な役割を果たしてきましたが、今後も同スキームの進展と実効性向上のために、その運用や検討においても積極的に貢献していくこととしています。
また、サブスタンダード船を排除していくためには、開発途上国の同スキームへの参加が必須であるとの認識から、我が国は、任意の監査制度である同スキームの早期定着を推進するために、2006年度内の監査受け入れに向けて準備を進めています。
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