東京で開催した今回の会議では、参加者相互の交流を深めることにより、地域振興の新たな取り組みを共同して進めていく関係の構築を目指すとともに、参加者に共通の課題である「地域の情報発信」の強化を目指しました。
具体的には、参加者が自らの活動や地域について発表し、互いに各々の経験を活かしたアドバイスをしあうワークショップや討論を行いました。成功体験だけでなく、失敗体験についても参加者間で共有することができました。
また、地域資源やイベント等に関する実践的かつ効果的な情報発信に関して、実際に活動に取り組んでいる講師をお招きして講演を行いました。講演内容は非常に具体的なもので、参加者からは「地元ですぐに取り組みたい」との声が聞かれました。
【会議の概要】
1 開催日:平成27年2月23日(月)~24日(火)
2 場 所:経済産業省 別館310会議室
3 主 催:国土交通省
4 参加者:(敬称略) NPO法人最上川リバーツーリズムネットワーク、栃木県市貝町、NPO法人森、
(公財)宮ヶ瀬ダム周辺振興財団、しらやま振興会、 長野県木祖村、愛知県名古屋市、湖西夢ふるさとワイワイ倶楽部、
奈良県天川村、富貴・筒香田んぼつくりタイ、東峰村ツーリズム協会 外
テーマ:「見せ方でこんなに違う~素材の商品化~」
講 師:井上弘司氏(地域再生診療所代表執行役)
全国各地の具体的な取り組み事例を紹介しながら、地域資源を活かすポイントについて講演をしていただきました。
講演後、参加者からは、直売所で売れ残った野菜の活用方法、民泊の取り組みを進めるための協力者を広げるアイディアなどについての質問が出ました。また、野菜のペースト化など早速検討を始めたいという声も聞かれました。
講演の概要は以下のとおりです。
新規事業の企画は、「やりたいこと」、「協力者募り」、「地域に役立つこと」、「地域活性化につながること」の4つの組み合わせが大切です。
埋もれている資源はたくさんあり、それをどう切り取り、商品化するかをよく考えることが必要です。あまりお金をかけず、野菜のペースト化など比較的簡単に取り組めるものをお勧めします。
田舎の魅力の中心は「食」です。新鮮さや、そこでしか食べられない食べ方など、商品価値を高める工夫をし、実際の作業を体験してもらうことで、感動、共鳴、共感を呼ぶことができます。地元の人は自分が暮らしている地域に誇りを持ち、商品の背景にある自分の地域や風土を常に考えていくことが大切です。
また、田舎の魅力には景観美もあります。古民家のたたずまいや棚田など、手入れされた生産空間そのものです。
これらの魅力のPR手段としてホームページがありますが、まず、何のホームページなのか、そして価格、注文先はどうかなど、消費者が本当に欲しい情報を掲載することが大切です。
テーマ:「人が集まる!行列ができる!イベント企画とチラシの作り方」
講 師:坂田静香氏(NPO法人男女共同参画おおた理事長)
坂田講師が代表を務める団体で過去に作成されたチラシや、チラシのビフォーアフターなど、具体的な素材を用いて、イベント企画のポイントや、チラシ作成のノウハウについて講演をしていただきました。講演後、参加者からは、チラシの効果的な配布手段は何か、申込受付の手段は何がよいか、マイナスイメージを与える情報はどう表現したらよいか、などの質問が出ました。また、具体的かつ実践的な内容で、地元ですぐに応用したい、という感想がありました。 講演の概要は以下の通りです。
人が集まらなかったときに、天気が悪かった、住民の意識が低い、いいことをやっているのでいつかは報われる、などのいい訳を考えるのではなく、原因を分析することが大切です。失敗する講座は、たいてい、[1]ニーズがない、[2]組み立てが悪い、[3]広報が行き届いていない、といった原因があります。 いい企画をつくり、宣伝して初めて集客につながる、企画と広報は「かけ算」の関係になっています。ポイントは、
[1]企画の対象者を明確にし、絞り込みを行うこと。人それぞれ抱えている課題が異なり、課題を解決できる講座だと確実に集客できる。
[2]魅力的なタイトルをつけること。講座に参加してこうなりたいという、参加者の心に響き、ゴールが見えるタイトルを付けること(開催者側の目的は前面に出す必要はない。)。
[3]自分の講座にたくさんの人が集まって欲しいという担当者の熱意 と努力。
参加者が互いの地域や活動をよく知り合い、共に地域の問題解決や、地域振興の新たな取り組みを進めていく関係の構築を目指し、参加者が互いにプレゼンテーションを行い、意見交換を行いました。プレゼンは以下の8組の方が行いました。
[1] 栃木県市貝町
[2] 奈良県天川村
[3] 富貴・筒香田んぼつくりタイ
[4] 湖西夢ふるさとワイワイ倶楽部
[5] しらやま振興会
[6] NPO法人 森
[7] 東峰村ツーリズム協会
[8] 愛知県名古屋市
参加者からは、互いの取り組みの様子や失敗談、裏話のようなものが聞けたことや、会場からの意見を共有できたことなど、互いの活動を知る以上の収穫があったという声が聞かれました。また、こういう情報共有の場は続けてほしいとの意見もありました。
意見交換後の井上講師による講評では、地域づくりはビジネスと結びついたものでなくてはならず、地域づくりとビジネスは車の両輪である。また、イベントの開催自体が目的となってはいけない、企画には期限を設け、スケジュール感を持って取り組むことが必要、とのお話がありました。
会議参加者が二つのグループに分かれ、「健全な水循環の維持・回復のために、私たちができること、やってほしいこと」をテーマに討論しました。
Aグループでは、NPO法人ひろしまね理事長 安藤周治氏の進行のもと、
・ 健全な水循環の維持、回復のためのキーワードは「企業」、「交流」、「教育」である。
・ 特にCSRに取り組む企業との連携を進める必要がある。
・ 上下流交流を盛り上げていくため、水循環の中で私たちの生活が成り立っているという意識の啓発が必要である。
・ そのためには子供への教育が重要であり、学校で自分たちの地域の水源を学ぶなど、教育課程の一部として設けられることが望ましい。
・ こうした活動を継続していくためには、楽しみながら取り組んでいくことが重要で、流域全体としてお互いの満足度の向上が図れる活動となる必要がある。
などの意見が出されました。
Bグループでは、札幌市立大学講師 上田裕文氏の進行のもと、
・ 健全な水循環を維持することは、健全な人の循環を維持することでもある。
・ 水循環と同様に、上下流の人の循環、あるいは都市と農村の人の循環が大切であ り、人の交流を考え方の中心におく必要がある。
・ そのため、河川の歴史のふり返りや水循環の教育を通じて、上下流のつながりを 再認識し、水に対する意識を共有する必要がある。
・ 下流住民には、ツアーやイベントをとおして、水源地を知るための体験をしても らう必要がある。
・ 地域の魅力を伝える語り部など人材育成を行っていく必要がある。
・ こうした活動を維持していくためには、CSRに取り組む企業の協力も含め、ビジネスにつなげていく必要がある。
などの意見が出されました。