1.日時 平成28年10月25日(火)~26日(水)
2.場所 岩手県奥州市胆沢区
3.主催 国土交通省
4.参加者(敬称略)
岩手県、岐阜県、秋田県東成瀬村、群馬県東吾妻町、岩島地区八ッ場ダム対策協議会、坂上地区八ッ場ダム対策協議会、
(公財)宮ヶ瀬ダム周辺振興財団、しらやま振興会、東峰村ツーリズム協会 外
岩手県奥州市で開催した今回の会議では、全国の水源地域で地域活性化に取り組む個人や団体等が地域と分野を越えて様々な知見や情報を共有し、地域課題の解決や新たな取組に繋げていくこと、また、お互いに切磋琢磨できる関係を構築することを目指しました。
具体的には、「地域の宝を活かし、経済的に自立して活動していくには?」をテーマに地域の活動拠点や地域資源を見学するとともに、参加者それぞれの経験やアイデアを持ち寄り、奥州市ひいては北上川流域を活性化する方策を考えるため、地元活動者及び外部講師からそれぞれ講演を行い、出席者が互いに各々の経験を活かした意見交換を行いました。
胆沢ダム管理支所内展示スペース
ダム直下の胆沢川カヌーコース
地域の活動拠点「セミナーハウス」
胆沢ダムやダム直下の胆沢川カヌーコース(2016いわて国体に利用)等、今後の活用が期待される施設を視察しました。それぞれの施設では、施設の関係者から概要等の説明を受け、今後の活用や展望についての話を伺いました。また、地元の団体の活動拠点として利用されているセミナーハウス(農家の古民家を改修した施設)で講演や意見交換を行いました。
田中講師による講演
井筒講師による講演
[1]テーマ:「北上川水源地域の活動について(四十四田、御所、湯田)」
講 師:佐井 守 氏(いわて流域ネットワーキング)
四十四田さくらまつりは、四十四田ダム近隣の住民が主体となって行われており、地域の伝統技能やキッズダンスを披露する「湖畔ステージショー」や近隣地域のゆるキャラが集合する「キャラクター交流会」等で交流を図っているほか、「流域うまいもの市」や「地元のみんなの商店街」を開催し、水源地域の特産品を販売している。販売にあたり、各市町村から無償でテントを借り受けて開催しているが、非常に盛況なため、出店希望にテントが追いついていないという状況である。
「水源地子ども交流会(里川キャンプ参加体験)」は、視野と交流の輪を広げることと健全教育を目的として開催されているが、特に廃校になった旧南山形小学校の校舎を活用して校舎2階からの流しそうめんは人気プログラムとなっている。
湯田ダムカレーは、道の駅等で提供されており、湯田ダムで入手したダムカードの提示で割引がある。このカレーは季節毎に食材を変える工夫をしており、クオリティが高く人気のメニューとなっている。
[2]テーマ:「遠野、薪の駅プロジェクトについて」
講 師:千葉 和 氏(NPO法人遠野エコネット 代表理事)
毎月第1日曜日に、放置されている間伐材を活用し、「薪づくり倶楽部」を開催している。薪割り参加者に薪券(軽トラック1台分の薪と交換できる)を配布している。
また、山仕事の見方を変えることや間伐業者不足を補うため、「遠野山仕事はじめの一歩講座」を開催している。山主や山に興味がある人を森林ボランティアとして呼び込んで人材育成を図るほか、山仕事のハードルが高いイメージを払拭するため、近年では特に女性を呼び込んでおり、今年は女性の参加者数が男性参加者数より多かった。
その他、マツ枯れ被害対策としてマツの炭づくりや田瀬湖の一斉清掃、猿ヶ石川でのモニタリング調査、植樹活動等環境保全・再生活動も行っている。
[3]テーマ:「胆沢ダム水源地域の活動について」
講 師:菊池 拓巳 氏(いわて流域ネットワーキング 理事)
胆沢ダムで「胆沢ダムフェス」を開催している。主な催しとして、管理支所内でのカフェ営業や地元特産品の販売、調整池でのカヌー体験を用意している。また、「胆沢ダムフェス2016 in夏」では、新たに堤体登山やラフティング体験を、「胆沢ダムフェス2016 in秋」では、湖面を活かした取組として、湖面の巡視体験や奥州湖でのカヌー体験を用意した。特に湖面の巡視体験は人気で予約のない当日参加希望者が参加できないほどであった。
また、ダムの他にも、胆沢川を「川のレスキュー講習」の場として活用している。岩手県内では、講習を行える条件の揃った場所があまりない中、胆沢川は非常に条件が揃っている利点を活かしたものである。
[4]テーマ:「岩ダムカフェについて」
講 師:早坂 桃子 氏 、嵯峨 檀 氏(岩手大学同好会「川部」)
岩手大学同好会「川部」は、川を楽しむことで川を通じて、自然環境や流域の水辺について、地域との関係性を学び、それを発信していくことを目指して活動している。
岩ダムカフェは、胆沢ダムフェスに合わせて管理支所1階の展示スペースを借りて営業している。来場者からは、「ダムでコーヒーが飲めると思わなかったので嬉しい」や「コーヒーを飲みながら良い景色を見られて嬉しい」といったダムとカフェの組み合わせに新しさを感じる内容の意見が多く寄せられ好評であった。2016年夏の開催では、これまでの地域住民による手作りケーキ販売に加え、奥州珈琲や地元のパンを取り入れ、メニューの充実を図った。客層は、子どもから年配の方までと幅広い世代の方に利用してもらうことができた。
[5]テーマ:「水辺がつなぐ地域活性化」
講 師:田中 里佳 氏(国土交通省河川環境課 課長補佐)
土佐堀川(大阪市)、宮川(高山市)、乙川(岡崎市)など全国各地の代表的なミズベリングプロジェクトを紹介。プロジェクトの当事者は、計画する人、つくる人だけでなく、使う人も一緒になって考える必要がある。
また、水辺の利活用のポイントは、[1]「どう使うかを考える」、[2]「1人では無理でも得意分野を持つ数人が集まればできる」、[3]「小さなことでも成功を重ねプラスのスパイラルをつくる」こと。
公共空間を活用する際、「川」は公園や道路といった他の公共空間と異なり、自然と人との営みの曖昧な境界があり、災いと恵みを与える存在であることとこの曖昧な境界が川の良さでもあり、このことを認識して感謝と畏れの気持ちを忘れずに活用していくことが大事。
[6]テーマ:「ローカルベンチャーがなぜ地方でウケるのか。」
講 師:井筒 耕平 氏(村楽エナジー株式会社 代表取締役)
ローカルベンチャーとは、地域資源を活用しながら、自由な発想で事業を起こし、しっかり稼ぐことであり、地方には、「活用されていない資産(建物や土地)が豊富」、「都会でするより費用が安くローリスクミドルリターン」、「人材不足」といった要因で起業機会が山ほどあるのが魅力である。
プロジェクトを行うにあたり、必要な役割は、「プロデューサー(お金と想いがあるが専門性がない人)」、「ディレクター(専門性がありプロジェクトを引っ張っていくことができる人)」、「マネージャー(現場で管理する人)」及び「オペレーション(プロジェクトを実行する人)」の4つがあり、地方では、特にディレクターが不足している。
西粟倉村では、課題解決のために取り組むというよりも、ローカルベンチャーとして活動した結果、課題解決に結びつけていくという雰囲気があり、外から来たローカルベンチャーが課題解決型の地元企業と同居(共存)できている。
また、地域おこし協力隊の活用についても、西粟倉村では特徴がある。地域おこし協力隊の全国共通の問題として3年後に協力隊を卒業しても仕事がないということがあるが、西粟倉村では、3年後に路頭に迷わせないために2つの型を用意している。一つ目は、起業した協力隊員に活動経費を負担する「起業型」。二つ目は、「就職型」で、ローカルベンチャーに卒業後の採用を見据えて隊員を雇ってもらう形。給与等は村が負担することになっている。
意見交換会「奥州市全体の活性化につながるアイデア出しを!」
「奥州市全体の活性化につながるアイデア出しを!」をテーマに、参加者が車座形式で奥州市の活性化のためのアイデアを出し合い、それについて意見交換を行ったほか、奥州市の枠を越えて参加者がそれぞれの活動内容を紹介し、課題や工夫点について話し合う場となりました。
意見交換等の場では、参加者から
・「民間は公共の意識、行政は経営の意識を持つべき。これは、一般的にお互い不足しているところであり、そういう意識を持つことで相互理解、より良い連携ができる」
・「地域の人間、財産をいかに発掘していくかが1番重要。また、外からの人間と地域の人間の軋轢やコミュニケーションをどうするかが難しいが、地域をより良くするには、地域の人間がその地域で楽しく過ごせる環境を作り、その延長で外から新しく人が入ってきて地域を興していければ最高の形」
・「堤体登山やカヌー、サイクリングを組み合わせて胆沢ダムトライアスロンとして競技性をもたせて開催できれば面白いのではないか」
・「市町村合併によって、地域と行政が距離的なものだけでなく、繋がり的な面でも距離が空いてしまったのではないかと住民、職員それぞれが感じている。今回の会議に出席してみて、地域住民と行政が話をできる場があれば良いと考える」
等の意見が挙がりました。
また、会議後には、「参加者から互いの活動内容や経験談等が聞けて参考になった」、「全国から人が集まり情報共有をすることができる場があるのは良い」という声が聞かれました。