1.日時 平成31年2月27日(水)~28日(木)
2.場所 東京都千代田区、港区
3.主催 国土交通省
4.参加者(敬称略)
(一社)いわて流域ネットワーキング、NPO法人最上川リバーツーリズムネットワーク、NPO法人森、(独)水資源機構、NPO法人全国水環境交流会、ジャパン・トラベル(株)、(一社)藤野観光協会、(公財)宮ヶ瀬ダム周辺振興財団、あざおね社中、NPO法人加治川ネット21、水の里しらやま、(有)サンスペースアメニティ、(有)麺の清水屋、明宝特産物加工(株)、(同)東峰村ツーリズム協会、愛知県、滋賀県、福岡県、熊本県、長野県木祖村、奈良県川上村 ほか
東京で開催した今回の会議では、第1部として、中央合同庁舎3号館(東京都千代田区)において、水源地域における振興の取組や観光資源、特産品等を紹介するPRフェアを行いました。
その後、第2部として、有志による水源地域における活性化活動についての発表と意見交換を行いました。
また、北海道大学観光学高等研究センター上田裕文准教授による、お土産のデザインに関するワークショップのほか、内閣府地方創生推進事務局遠藤参事官及び北海道下川町蓑島SDGs推進戦略室長による講演を実施しました。ワークショップと講演を通じて、参加者が、お土産をデザインする際にサービスデザインという視点から考える手法についてと、地方創生とSDGsの関係について学ぶことのできる機会となりました。
中央合同庁舎3号館(国土交通省)1階正面玄関脇スペースにおいて、水の里PRフェアを初開催しました。水源地域の振興や首都圏と水源地域との交流、理解の促進を図るため、国土交通省職員・来訪者等に対し、水源地域における振興の取組や観光資源、特産品等の紹介を通して水源地域の魅力の発信を行いました。
水の里PRフェアの様子
水の里PRフェアの様子
参加者が互いの地域や活動を知り、共に地域の問題解決や地域振興の新たな取組を進めていく関係の構築を目指し、以下の7団体による活動発表と意見交換を実施しました。
[1] 一般社団法人いわて流域ネットワーキング
[2] 一般社団法人藤野観光協会
[3] あざおね社中
[4] 水の里しらやま
[5] 有限会社サンスペースアメニティ
[6] 奈良県川上村
[7] 合同会社東峰村ツーリズム協会
参加者による活動発表
意見交換
サービスデザインを通したお土産のデザインの実践
【ワークショップ】
テーマ:「サービスデザインを通したお土産のデザイン」
講 師:上田 裕文氏(北海道大学観光学高等研究センター 准教授)
冒頭、上田講師からサービスデザインの考え方等について講義いただきました。
・デザイン思考をビジネスに使用できるように発展させた手法である「サービスデザイン」は、使い手の気持ちになって物事を考える事が重要。
・地域のお土産をデザインする上では、地域が有するシーズをもとにお土産を考えるのではなく、ユーザーの観察を行い、優れた体験を提供できるコトづくりの考え方が必要となる。
・お土産は、贈る側贈られる側の双方で幸せを生む体験であり、地域での体験を語ることのできるツールとなる。
その後、デザイン思考の5つのステップ(共感、定義、創造、試作、検証)を通して、各水源地域のお土産について実践的に考えるグループワークを実施しました。
【講演】
SDGsに関し、地方創生とSDGsの関係、SDGs関連の支援策等にについて内閣府地方創生推進事務局 遠藤参事官からご講演いただいた後、地方自治体での具体的な取組について北海道下川町 蓑島SDGs推進戦略室長からご講演いただきました。
[1]テーマ:「地方創生に向けたSDGsの推進について」
講師: 遠藤 健太郎氏(内閣府地方創生推進事務局 参事官)
SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットにおいて全会一致で採択された、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現のための、2030年を年限とする17の国際目標である(その下に169のターゲット、232の指標)。「普遍性」「包摂性」「参画型」「統合性」「透明性」という5つの特徴がある。
国内でのSDGs推進のため、総理を本部長とするSDGs推進本部が設置されている。2018年12月に決定された「SDGsアクションプラン2019」では、科学技術イノベーションの活用、SDGsを原動力とした地方創生、次世代・女性のエンパワーメントを3本柱としており、これに基づき各省連携して取り組んでいるところ。
地方創生を深化させていくためには、中長期を見通した持続可能なまちづくりに取り組むことが重要。自治体におけるSDGs達成に向けた取組は地方創生の実現に資するものであり、これまでの取組をさらに深めるためにSDGsの考え方を活用してもらいたい。
地方公共団体におけるSDGs達成に向けた取組の推進のため、内閣府では「モデル事例の構築」と「官民連携の促進」の2つの取組を行っている。前者は「SDGs未来都市・自治体SDGsモデル事業」により、自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案する都市を「SDGs未来都市」として選定し、そのうち特に先導的な取組を「自治体SDGsモデル事業」として選定している。後者は「地方創生SDGs官民連携プラットホーム」を立ち上げ、各自治体が抱える課題と民間企業・NPO等が有する解決のためのノウハウとのマッチング支援、分科会の開催、普及促進の活動を行っている。
地域課題の解決のための共通言語としてSDGsを活用いただきたい。
[2]テーマ:「持続可能な地域社会の実現に向けて SDGs未来都市しもかわ」
講師 :蓑島 豪氏(北海道下川町政策推進課SDGs推進戦略室 室長)
下川町は北海道の北部に位置し、約9割を森林が占めている。急激な人口減少を経て、1980年頃から住民主体の地域活性化活動が始まり、現在は町の方針である「持続可能な地域社会の実現」のため、森林総合産業を構築する「経済面」、エネルギー自給と低炭素化を目指す「環境面」、超高齢化対応社会を構築する「社会面」の3側面の価値創造、統合的解決をコンセプトに、まちづくりを進めている。
循環型森林経営システムを構築するほか、FSC認証の木材生産やカーボンオフセットクレジット等、持続可能な森林の管理生産を行っており、林地残材を活用したバイオマスによるエネルギー自給では年間約1,900万円のコスト削減の効果が得られている。バイオマス熱供給システムを中心とした“一の橋バイオビレッジ”では集落再生の取組を行っており、徒歩エリアに住民センターや地域食堂等を設けるほか、特用林産物栽培研究所を設置し、年商約6千万円の収益と約20名の雇用を生み出している。生産年齢世代の移住、起業も多く、2009年に51.6%だった高齢化率は2016年には27.6%となっている。
まちづくりにSDGsを取り入れたさらなるレベルアップを考え、昨年「2030年における下川町のありたい姿(下川板SDGs)」として7つの目標を作った。地域ステークホルダー(住民)が中心となり作った点、総合計画の将来像に位置づけている点、指標を設けて「見える化」する点、町内外の多様な人々が連携する点が特徴であり、現在は、バックキャスティングで実現に向けた計画づくりを行っているところ。たとえば、「人も資源もお金も循環・持続するまち」という目標では、貨幣獲得拡大を目指すと共に地域外へ流出している貨幣を内生化すること、地消地産・地域内消費を促し、スモールビジネスやソーシャルビジネスが生まれること等を目指している。
ありたい姿の実現のためには、地域内外の多様な主体とパートナーシップをとることが重要であり、様々な企業や国際機関、大学、自治体等と連携体制を形成することで、互いに補完する関係を目指している。また、さらなる拡大のため、拠点となる「しもかわSDGsパートナーシップセンター」の設立を予定している。
地方自治体がSDGsを取り入れるメリットは以下の4つと考えているが、SDGsへのアプローチは各地域によって様々な形があるだろう。
1.チェックリスト(17の目標から地域を見つめ直すことによる新たな課題の発見や気づき)
2.バックキャスティング(未来(将来像)から現在を見て、この実現のための手を打っていく良質なまちづくり)
3.ブランディング(SDGsのフレームワークを通してビジョンや取組を発信することによるブランド向上)
4.パートナーシップ(様々な人々との出会いや連携による新たな展開)
内閣府地方創生推進事務局による講演
下川町による講演