1.日時 令和元年9月26日(木)~27日(金)
2.場所 奈良県川上村
3.主催 国土交通省
4.講師 NPO法人ひろしまね理事長 安藤周治氏、北海道大学観光学高等研究センター 上田裕文氏
5.参加者
NPO法人さくらおろち、(公財)宮ヶ瀬ダム周辺振興財団、近畿中国森林管理局、滋賀県、奈良県、鳥取県鳥取市、和歌山県橋本市、福岡県東峰村 ほか
奈良県川上村では、吉野川紀の川流域の源流として、平成8年に「川上宣言」を発信し、都市にはない豊かな暮らしの実現と住み続けられる村を目指して総合的な戦略に取り組んでいます。
今回の会議では、会議初日に、大滝ダムと併設している学べる防災ステーションの視察、森と水の源流館において「吉野川紀の川流域連携」の取組みの紹介と、川上村が水源地域振興において抱える課題について、川上村民を交え意見交換会を行いました。
また、会議2日目には、丹生川上神社上社や匠の聚の視察の他、村民自身が村民の日々の暮らしを支える仕組み作りを行っている一般社団法人かわかみらいふの取組の紹介がありました。各事業内容等の説明を交えながら実際に現地を視察し、活発な意見交換が行われました。
大滝ダム・学べる防災ステーション
丹生川上神社上社
匠の聚
【大滝ダム・学べる防災ステーション】
説明者:大岡 泰氏(大滝ダム学べる防災ステーション館長)
大滝ダムの役割や水と人の歴史などを楽しく学習する施設です。過去に起こった豪雨体験やパビリオンの見学などで、水の怖さ、治水対策、発電や河川環境の保護などについて訪れた人へ伝えています。校外学習で訪れた子どもたちへは、「探検手帳」を活用して見学してもらい、持ち帰って大滝ダムで「見たこと、学んだこと、感じたこと」を新聞にまとめてもらう「ダム見学新聞」コンクールを行っています。
【大滝ダム】
伊勢湾台風(昭和34年)による甚大な被害を受けたことをきっかけに計画・建設され、平成25年3月31日に建設事業が完了し、運用を開始しました。紀の川の洪水被害を最小限にくい止めるとともに、水道用水・工業用水の供給、発電及び紀の川下流の河川環境に配慮した河川水補給も行っています。
【丹生川上神社上社】
説明者:望月康麿氏(丹生川上神社上社 宮司)
天武天皇白鳳四年(675年)ご進言により建立、奉祀されたと伝えられます。現在の社境内地は、昭和34年の伊勢湾台風をうけた大滝ダム建設事業に伴い水没のやむなきこととなり、天下万民の幸福のため、現在地に平成10年3月にご遷座となりました。祭典神事や、村の催しなど一年を通じて、川上村民同士が交流できる場所となっています。
【匠の聚】
説明者:井上 進哉氏(一般財団法人グリーンパークかわかみ 匠の聚代表)
匠の聚(たくみのむら)は平成11年5月にオープンした、様々なジャンルのアーティストたちがアトリエを構え、創作活動を行う芸術家村です。
誰もが自由に利用できる作品展示ギャラリーやカフェ、陶芸や七宝などのアート体験ができる工房や宿泊コテージも備えています。アーティストが匠の聚に居住し、自らの創作活動を行うほか、教室や体験プログラムを通じ、子どもから大人までが楽しめるものづくりの場を提供しています。
[1]テーマ:『吉野川紀の川における真の流域連携とは』(於:森と水の源流館)
発表者:尾上忠大氏(公益財団法人 吉野川紀の川源流物語事務局長)
川上村は、新しい森と水を守る仕組みづくりの創出と、水源地としてその責任を積極的に果たしていくことを掲げた「川上宣言」を具現化するために、村が原生林を買収、740ヘクタールを保全しています。全国の自治体が森林の公有化に乗り出している動きがありますが、川上村は広島市に次いで2番目に早く取り組んでおり、面積としては全国で一番大きい面積を公有化しています。
”「水質」で語れば「悪者さがし」、「恵み」で語れば「互いへ感謝」”という言葉を意識して活動しております。
紀の川下流地域である和歌山県との交流のひとつに「紀の川じるしのESD[1]」という研修会を実施しています。和歌山県内の先生と奈良県内の先生などが、「水のつながりをどのように授業に活かしているのか」について体験の共有と意見交換を行い、教室で生徒に対して行う授業をどのようなものにしていくか、定期的に集まって考えています。
川上村(水源地のむらづくり)で、森と水の源流館が存在意義を果たすことによって水源地のむらづくりを継続していけると思っていましたが、そこにESDの視点を新たに加え、現在は「地域資源の教材化」に着目して取り組んでいます。
ESDとは、当事者意識を育てる参加型学習であり、地域住民・児童生徒が地域の良さを見つける学習、地域の課題を見出す学習、地域の課題を解決する方策の模索を位置付けていますが、学校と地域をつなぐことによって地域の大人や行政職員にも地域を見直してもらえるきっかけになるのでは考えています。
最近は、平成30年度版の環境白書に事例として川上村が取り上げられました。流域圏の連携として、「紀の川じるし」が掲載されています。「紀の川じるし」は、吉野川紀の川の流域をひとつの“商店街”に見立て、川の流れがもたらす地域の“恵み”をブランド化し、地域を元気にして水源の森を守り、流域の環境を守る意識を広めるために立ち上げました。こうした、吉野川紀の川の源流から海までの流域で密に連携していくことで、流域の子どもから大人までが水のつながりについて考え、川上宣言の「川上における自然とのつきあいが、地球環境に対する人類の働きかけの、すばらしい見本になるよう努めます」という目標に一歩近づいているのではないでしょうか。
(公財)吉野川紀の川源流物語による発表
(一社)かわかみらいふによる発表・移動スーパー
会議参加者が2班(A班・B班)に分かれ、川上村が抱える課題について議論しました。議論には川上村民にも参加していただきました。
A班では、NPO法人ひろしまね理事長 安藤周治氏の進行もと、「柿の葉寿司の販路拡大・促進」について、以下のような意見が出ました。
・柿の葉寿司の生産能力の把握をする必要がある
・ファンを増やしたい
・川上村ならではの柿の葉寿司を広報したい
・味や伝統を守りたい
⇒大事なことは地元が苦しくなりすぎない程度に頑張ること。そして適切な価値づけ、
ブランディング化を行い、正しく世の中に広報していくことが大事であると痛感して
いる。各事業者とともに広報面の強化を中心に取り組んでいきたい。(川上村)
B班では、北海道大学観光学高等研究センター准教授 上田裕文氏の進行のもと、「大滝ダムサイト及びおおたき龍神湖面の活用」について以下のような意見が出ました。
・もっと湖面を活用したイベントで利用できるようにしたい
・周辺設備や環境を利用したアクティビティ(ボルダリング、SUPヨガ、トライアスロンなど)ができるようになりたい。
・下流から見るダムは大迫力!
・夕日が見えにくい村だが、夕景や月の光を映した湖面がきれい。
⇒人的資源(活動する人)、自然資源(きれいなダム湖)、人口資源(大滝ダム)、社会資源(アクティビティを通したコミュニティ)を複合的に活用し、ダム周辺の活性化につなげていきたい。今回のアイデアを含めて検討し、まずできることは実施をしていきたい。(川上村)
意見交換会