水資源

令和2年度第2回水源地域支援ネットワーク会議

日 時 令和3年3月9日(火)
形 式 WEB開催
主 催 国土交通省
参加者
NPO法人いわて流域ネットワーキング、合同会社東峰村ツーリズム協会、湖西夢ふるさとワイワイ倶楽部、あざおね社中、NPO法人森、認定NPO法人JUON NETWORK、NPO法人雨水まちづくりサポート、エコ・グリーンツーリズム水の里しらやま、独立行政法人水資源機構、岩手県、福島県、福島県南会津町、栃木県、山梨県、長野県木祖村、岐阜県下呂市、滋賀県、滋賀県大津市、大阪府、大阪府茨木市、奈良県川上村、長崎県諫早市、熊本県菊池市ほか
 

1.概要

 水源地域支援ネットワーク会議は、全国の水源地域で地域活性化に取り組む個人や団体等が地域と分野を越えて様々な知見や情報を共有し、地域課題の解決や新たな取組につなげていくこと、また、お互いに切磋琢磨できる関係を構築する場づくりを目的としています。平成23年度より毎年2回(地方開催1回、東京開催1回)程度開催し、今回で17回目になります。
 令和2年度第2回は、新型コロナウイルスの国内感染状況等を踏まえ、初めてのWEB開催となりました。
 会議では、午前は(株)スノーピーク地方創生コンサルティングの後藤氏、(一社)日本まちやど協会の宮崎氏による講演、午後からは参加者活動報告発表としてNPO法人等4団体からの活動発表、(一社)グラフィックファシリテーション協会の山田氏によるワークショップを行い、各地域での水源地域振興活動について有益な情報共有の場となりました。
 

2.会議の内容

(1)講演

 [1] テーマ: 『野遊びと地方創生“野遊びSDGs”』
        講師: 後藤 健市 氏((株)スノーピーク地方創生コンサルティング代表取締役会長)

 
 スノーピークでは、『人生に、野遊びを』という企業像を掲げています。野遊びと言うと釣りやキャンプといったアクティビティをイメージされると思いますが、この野遊びによって豊かな自然に触れて楽しむことにより、その場所の価値もきちんと認識できて生かせることになり、それが結果として地方創生にもつながります。皆さんが活動している水源地だからこその価値もそういうところにあると思いますので、野遊びを取り入れるという発想を意識してもらいたいです。
 今までは何でもかんでもハードの箱モノでしたが、これからは場所を生かすということで、ハードとソフトを組み合わせることが必要です。それは、地域には当たり前にあるものをきちんとデザインして楽しく、感動できる体験をつくることを仕掛けていくということです。
そのような取組を行うに当たっては場所の個性をどう楽しんで生かすかが重要になりますが、皆さんは自分の地域には何もないと言います。けれども、地元の人間にとってはいつも見ている普通の風景とか、自分たちが働いている場所であるとか、そういった全てのものは、実は圧倒的な価値があるのです。ですから、これからは「何もない」ではなくて、ポジティブに「余計なものは何もない」と言ってください。何かあると言うのではなくて、ここには余計なものが何もないと言うと、そこにあるもの全部がポジティブに心の中に入ってきて、何かをしようという気にさせてくれます。いい意味でスイッチを入れるのが言葉なのです。
 そして、余計なものは何もない水源地の風景はまさに絶景であり、このような場所の価値をどのように楽しませるのかを考えることが大事です。本当に好きなこと、楽しいことには自分の意思で集まるし、喜んで時間もお金も使います。ですから地域で観光も含めて新しいことを考えていくことが必要になります。
 新しいことを考える際には、歴史、景観、環境といった要素も重要だけれども、本当に重要なのは皆さんも含めた地域の人です。何度も訪れたくなる場所は必ず仲間の人がいる場所でしょう。訪れた人がその場所にいる人とつながると、その場所は訪れた人にとっても内側の場所になるので、リピーターになってくれます。
 地方創生にとって本当に重要なのは、やはり地域の人たちが夢を持つことと、自分たち自身が動くという覚悟です。地域を野遊びでデザインして磨き上げ、それを地元の人たちが主役、主体で行うと、自分たちの地域の個性や価値をきちんと再認識、再確認できます。そうすると地域プライドが創出できて、真の地域ブランドの構築ができます。このように場所と人、自然と人、人と人とがとても濃くつながっていることが田舎のいいところです。
 水源地からのアクションを、皆さんが仕掛けられたらいいと思います。水源地はいろいろなところにあるわけですから、それをまさに全国各地からということです。日本の水源地から世界をハッピーにしてやるという圧倒的な大望、ビジョンを持ってやりましょうということが、まさにこれからやるべきことです。それを皆さんでイメージして、現場でどんどんそういったことをしていくのを意識してください。
 「自分たちの所でもこういったことを」とスイッチが入ってくだされば、私も今日お話しさせていただいたことはいいきっかけになってよかったと思います。
 
 [2] テーマ: 『日常をネットワークする「まちやど」』
      講師: 宮崎 晃吉 氏(一般社団法人日本まちやど協会代表理事)

 
 まちやどは、まちを一つの宿と見立てて、宿泊施設と地域の日常をネットワークさせて、まちぐるみで宿泊客をもてなすことで、地域価値を向上していく事業のことです。
 まずは、まちやどのきっかけとなった萩荘の事例を紹介します。萩荘は昭和30年に建てられた木造アパートでしたが、老朽化して取り壊すことになった際に、それはもったいないと感じ、カフェやアートギャラリー、私の設計事務所などが入っている複合施設にリノベーションを行いました。最初は借金をして始めたということもあり、自分の家を借りるお金もなかったため、仕方なく萩荘の一部に住んでいましたが、風呂もキッチンもありません。それで、銭湯に行って、町の飲食店を食べ歩くという生活をしていました。しかし、考えてみれば、ワンルームマンションの一室に、自分の生活を閉じ込めるよりもよほど豊かな生活ができていることに気付きました。そして、そのような街に住んでいる感覚をもっと多くの人に味わってもらいたいと思いました。
 そこで、空き家をリノベーションした宿泊施設をつくりました。ここに泊まる人は、まず萩荘の2階にあるレセプションでチェックインします。ここにはラウンジがあり、コンシェルジュがオリジナルマップなどを使ってまちの魅力を伝えます。また、宿泊料金には銭湯チケットが含まれているので、泊まった方は必ず銭湯に行くことになります。銭湯の案内をするときには、近くにある、一杯飲むこともできる店なども案内もして、まちの中にお金が落ちていくようなアナウンスをします。このような形で、まずレセプションができ、宿泊室がまちの中にあり、銭湯をネットワークして、自転車屋さんでレンタサイクルして、街の飲食店で食事をして、バーで一杯飲んで、商店街で買い物をして、アーティストの出会いという文化を体験するというようなネットワーク全体を構築していきます。
 このような動きは私たちだけではなく、日本全国で同時多発的に増えており、現在は、北は北海道から南は鹿児島の離島まで、22のまちやどが分布しています。
 ここで重要なのは既にある価値とどのようにネットワークしていくかということです。既にある価値、自然資源、空間資源、地域資源、人的資源、歴史資源を活用していこうというものです。共通する要素としては、まずまちのコンシェルジュがいます。まちのコンシェルジュは地域の人と外から来た人をつなげる役割を果たします。宿泊施設は新しい立派なものを建てるのではなく、既にある建物を活用し、まちに住んでいるような体験をしていただきます。最も重要なコンテンツはガイドブックに書いてあるような観光がメインのものではなく、まちの人とのコミュニケーションです。外からの人にまちを楽しんでもらうだけではなく、地元の人がその試みを通じて、自分たちのまちに誇りを持ち、楽しく仕事ができる形につなげていくことが重要だと思っています。
 感じている事業の効果では、それまでは観光とは無縁だったようなところで観光客が増えたというものがありますが、同時に、移住者が増えたり、起業する人が増えたりするということにつながっているケースが多いということです。これは、お客さん目線で来るというよりは、新たな住民として迎えていることによる効果だと思います。
観光とは無縁だと思われている町にこそ、むしろ日常が残っているという意味で可能性があります。共通している点は、宿泊客はお客さまであるということだけではなく、1日からの住民であるという認識があることで、住むということと地続きになっていく宿泊の在り方となっています。
 暮らしと観光の間を模索して、いわゆる大量消費的な社会に関連する観光ではなく、小規模で地域連携し、地域連帯していく持続的な社会につながるような動きとして進めています。

(2)参加者による活動発表・意見交換

  参加者が互いの地域や活動を知り、共に地域の問題解決や地域振興の新たな取組を進めていく関係の構築を目指し、以下の4団体による活動発表と意見交換を実施しました。
 
   [1] 一般社団法人いわて流域ネットワーキング
   [2] 合同会社東峰村ツーリズム協会
   [3] 湖西夢ふるさとワイワイ倶楽部
   [4] あざおね社中

(3)ワークショップ

 テーマ: 『オンラインで深めるコミュニケーションの手法~グラフィックファシリテーション~』
 講 師: 山田 夏子 氏(一般社団法人グラフィックファシリテーション協会代表理事)

 
 冒頭、山田講師からグラフィックファシリテーションの考え方等について講義いただきました。
 
 ・グラフィックファシリテーションとは、話し合いと同時進行で絵と文字で書いていき、話し合いの場の活性化、発言している参加者の主体性を育むことを目的として、話を見える化していくという手法。
 ・本来、本当に人が主体的に納得し、物事を決めていくためには、お互いの背景をまず理解するという「対話」が必要。
 ・主張の優劣を決めるためだけの「議論」をお互いの背景を理解しあう「対話」の次元に高めていくためには、言語レベルだけではすれ違いが起きてしまいがちなので、グラフィックを活用することが有効。
 ・自分はどんなことを願っているのか、この土地がどうなってくれたらいいと思っているのかなどというエッセンスレベルを自分のなかにクリアに可視化したイメージを持ち、それを人に語ることができれば、それが共感や共鳴を生み出し、人の心を動かすことにつながる。グラフィックファシリテーションはその可視化の一助となるとなるのでぜひ活用していただきたい。
 
 その後、参加者との質疑応答を通して、グラフィックファシリテーションを体験するワークショップを実施しました。

お問い合わせ先

国土交通省水管理・国土保全局水資源部水資源政策課
電話 :03-5253-8111
直通 :03-5253-8392
ファックス :03-5253-1581

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