水資源

令和3年度第1回水源地域支援ネットワーク会議

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日 時 令和3年10月28日(木)
形 式 WEB開催
主 催 国土交通省
参加者 105名
※内訳
 国の行政機関:16名
 独立行政法人:16名
 地方公共団体:53名
 NPO法人・民間企業等:15名
 個人:5名

 概要

 水源地域支援ネットワーク会議は、全国の水源地域で地域活性化に取り組む個人や団体等が地域と分野を越えて様々な知見や情報を共有し、地域課題の解決や新たな取組につなげていくこと、また、お互いに切磋琢磨できる関係を構築する場づくりを目的としています。平成23年度より毎年2回(地方開催1回、東京開催1回)程度開催し、今回で18回目になります。
 今回の会議は、新型コロナウイルスの国内感染状況等を踏まえ、前回から引き続きWEB開催となりましたが、ダムマニア&ダムライターの宮島咲講師と公益財団法人イオン環境財団の山田晃講師による講演を通じて、地域振興、環境保全、地域連携等について考えました。
 また、平成23年度から始まった水源地域支援ネットワークに関する10年間の取組を、最初期から携わってきたアドバイザーと振り返りつつ、今後の水源地域振興について鼎談しました。

(1)講演

 [1] テーマ:『ダムマニアから見る水源地域振興』 講師: 宮島 咲 氏(ダムマニア&ダムライター)

 ダムマニアからみる水源地振興について話をします。私がダム巡りを始めた2001年当時は、ダムは非常に閉ざされた場所で、個人で気軽に行けない世界でしたが、現在は、ダムの雰囲気が180度変わっています。以前は人が全くいなかったダムも非常に賑わっています。ダム好きの私にとっては非常にうれしいことです。ダムはなぜこれほど変貌したのでしょうか。この変貌はいい方向への変化です。それに役立ったものの一つがダムカードです。国土交通省が担当して作ったもので、2007年7月に誕生しました。現在では約700から800カ所のダムで配布されています。
 ダムカードと同時に誕生したアイテムがダムカレーです。このダムカレーは2007年頃から出始めましたが、ダムを訪れた者が食べるのに最適なアイテムです。ダム巡りをしている者は、ダムカレーがあることが分かると食べることが多いです。ダムカレーの誕生によって、ダムに関するお金を使ってもらう手段が構築されたといっても過言ではありません。現在は日本に約200種類あるといわれていて、各都道府県に最低1個はあります。
 そのような経緯を経て、ダム関係者や水源地の方々は、さまざまなイベントを仕掛け始めました。ダムは集客できる観光施設であると気付いたわけです。そのイベントは大きく五つの種類に分けられます。1点目は点検放流のイベント化です。点検放流とは何かというと、ダムは年に1回、水門がきちんと動くかを確認しなければならない決まりがあります。その日はダムの水門を上下に動かし、きちんと動くかを点検します。以前は平日にこっそりと行われていて、水がたまっていないときに水門だけを動かしていました。現在はあえて水がたまっている土日に開催をするように変更し、それを1カ月前ぐらいからいつ点検放流をするか告知してイベント化をしています。
 2点目は観光放流の開催です。集客のためにダムの放流を行うようになりました。これは以前からずっと行っていたダムもあります。
 3点目はダム見学ツアーの開催です。2007年頃からダムが主催する無料のダムツアー、民間が主催する有料のダムツアーが誕生し、年々増えています。この2年は新型コロナウイルス感染症の影響で下火になっていますが、また復活してくるでしょう。4点目はダムのライトアップの開催です。各地でライトアップをするダムが増えていて、非常にきれいです。5点目は、自主参加を促すアイテムがどんどん増えています。新潟のダムスタンプラリー、かるた等のオリジナルグッズを配布するようになりました。例えば、スタンプラリーは、何カ所かのダムを回るとオリジナルグッズがもらえるなどの仕掛けがされています。
 大きく分けてこの5種類が、最近、ダムで行われていて、人を寄せ付ける手段になっています。集客できるイベントが増え、水源地に多くの観光客、見学客が訪れています。この現象はインフラツーリズムとも呼ばれています。ダムを利用した地域振興の始まりです。地域振興とインフラツーリズムは、果たして同じなのかを私なりに考えてみました。地域振興は、地域に人が増え、賑わうことです。インフラツーリズムは、ダムなどを見て回らせる取り組みのことを指します。インフラツーリズムをする人が増えれば、地域振興や町おこしになるかというと違います。
 なぜかというと、インフラツーリズムを仕掛けている者と地域振興をしようとしている者の着地点が違うからです。地域振興とは、単純に表現すると地域が儲かることです。それに対してインフラツーリズムは、インフラストラクチャー施設を見てもらえればいいのです。地域が儲かることと簡単に言いましたが、人流の活発化でダムに人が来て、ダムの周りが儲かりだし、飲食店、お土産店、商業が活発化をします。活発化すると人がたくさん来るので、お店はアルバイトをもっと雇おうとして、雇用の増加につながります。それによってその地区に人がどんどん住み始めます。
 ダムマニアの私にとって、多くの人がダムの水源地を訪れてお金を使ってくれることは、非常にうれしいです。それに対して、水源地の人々には、訪れた人に最大のおもてなしをしてもらいたいです。簡単にいうと、おもてなしとは、お金を稼ぐ手段をつくり、お金の落としどころをつくることです。例えばお土産など、お金を使わせる手段を構築してください。それに関しては、官民とダムの管理者が一体となり、おもてなしの手段、お金を使う手段の構築をしてもらいたいと願っています。

※事例紹介を含めた概要については、以下のリンクからご覧いただけます。
 『ダムマニアからみる水源地域振興』概要【PDF】
 

 [2] テーマ:『水源地域におけるイオン環境財団の植樹等の取組』 講師: 山田 晃 氏(公益財団法人イオン環境財団事務局)

 本日は、水に関連した本財団の活動内容、水源地域におけるイオン環境財団の植樹等の取り組みについて紹介します。
 本財団は名前のとおり、小売業のイオンから独立した環境財団です。したがって、イオンの基本理念を脈々と受け継いでいます。お客さまを中心に人間、地域、平和を基本理念とし、平和で豊かな社会の実現に貢献することを使命にしています。イオンの様々な活動は、独りよがりではなく、必ず地域の方々と連携して行っているのが一つのポイントです。本財団における事業の4本の柱は、パートナーシップ、環境教育、イオンの森づくり、助成です。それぞれについて簡単に説明します。
 パートナーシップでは、本財団は、国、地方公共団体、大学、研究機関、国際連合等々の多様なステークホルダーと連携しています。生物多様性の保全等に貢献した方にみどり賞、日本アワードなどを顕彰しています。環境教育では、環境への関心を高めてもらい、将来、グローバルに活躍する若い人材育成を目指しています。
 イオンの森づくりでは植樹を行っています。私たちの植樹は植えっ放しではなく、植える、育てる、生かすことをモットーに活動し、地元の住民の方々と共に植樹を実施しています。植樹の中には3本の柱があります。1点目は、イオンモール等の施設を造る前に、地域の方々と植樹をします。2点目は、3.11の東日本大震災を契機に始まった心をつなぐプロジェクトです。東北地方の方々と様々なところで植樹をしています。3点目は、本財団が中国、東南アジアなど、海外で行っている海外植樹です。
 助成では、環境保護活動を行う団体に対し、資金面の支援をしています。これもボリューム的には非常に大きく、財団を設立してから30年間で約3000団体を支援し、支給額は28億円です。本年度に関しては150団体からの応募があり、助成総額は1億円です。これは毎年、財団が設定するテーマに沿って、活動をしている方々や団体に応募をしてもらいます。6月下旬から8月までに募集をして、11月に支給を決定する流れです。本年度のテーマは里山コモンズです。日本固有の里山の維持、保全の活動をしている方々を対象に助成を行います。
 イオンの植樹活動について説明をします。植樹活動は、ある日、突然、思い付いて始めたわけではありません。現理事長の岡田は三重県の四日市の出身であり、1960年当時の現状を見て思い付いたのが原点です。当時、何が起きていたかというと、日本は高度成長期でした。四日市周辺では海岸線にコンビナートがたくさんでき、煙突からばい煙がどんどん舞い上がり、質の悪いガソリンによって車が排気ガスをまき散らしていました。岡田の自宅前にはナンテンが生えていたそうですが、ナンテンの実やモクセイが全くならなくなってしまいました。何かおかしいと思っているうちに、四日市ぜんそく、光化学スモッグなどの公害問題が矢面に出てきて、地元の人たちも含めて何とかしなければならないと考えました。イオンは小売業なので物は売れますが、当時、公害をなくす薬などはありませんでした。そのときに、木や葉が空気をきれいにするかもしれないという思いで植樹を始めました。
 イオンのふるさとの森づくりは、10年以上行っています。どういうことが起きているかというと、木が大きくなっているのはもちろんですが、ここに野鳥などが戻ってきています。鳥類の生息空間へと成長していて、生態系が回復をしています。もともとの時期から見ると、1.5倍から7.5倍の数の野鳥が記録されているのが分かってきていて、生き物が地域の自然な豊かになっていることが証明されています。
  植樹による効果は大きく三つです。1点目は地球温暖化防止です。木々や葉が二酸化炭素を吸収して、貯蔵し、酸素を出してくれます。葉の拡散作用で気温の上昇が抑制されます。2点目は生態系の保全と再生です。植樹によって鳥や昆虫が飛来してきます。3点目は防災で、防災林の植樹や地域の復興です。
 2021年度の植樹は、コロナ禍によって規模を非常に縮小して行うことになりました。本年から新たな計画として活動しているのは、地域と連携したイオンの里山創設です。里山は生態系の宝庫です。地域や子どもたちの憩いの場にもなります。地域のお年寄り等から子どもたちへの文化、伝統の継承もできます。これらができる里山を再生し、日本全国に広げたいです。イオン環境財団は、これからも皆さんと共に考え、共に行動することを基本とし、地球環境の保全のための活動をしていきます。

(2)鼎談

 10年を迎えた水源地域支援ネットワークに創成期より携わっているNPO法人ひろしまね理事長の安藤周治氏及び北海道大学メディア・コミュニケーション研究院准教授の上田裕文氏、並びに国土交通省水資源政策課長の3名で、これまでの水源地域支援ネットワークで印象に残っていること、会議を地方で開催する意義、新型コロナウイルス感染症の影響、水源地域への思い、今後のあり方、展望等について鼎談を行いました。
 
※概要については、以下のリンクからご覧いただけます。
 『鼎談~10年間の取組とこれからの水源地域振興~』概要【PDF】

お問い合わせ先

国土交通省水管理・国土保全局水資源部水資源政策課
電話 :03-5253-8111(内線31-315)
直通 :03-5253-8392

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