水資源

令和3年度第2回水源地域支援ネットワーク会議

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集合写真

日 時 令和4年2月22日(火)
形 式 WEB開催
主 催 国土交通省
参加者(申込者) 81名
※内訳
 国の行政機関:11名
 独立行政法人:11名
 地方公共団体:39名
 NPO法人・民間企業等:16名
 個人:4名

概要

 水源地域支援ネットワーク会議は、全国の水源地域で地域活性化に取り組む個人や団体等が地域と分野を越えて様々な知見や情報を共有し、地域課題の解決や新たな取組につなげていくこと、また、お互いに切磋琢磨できる関係を構築する場づくりを目的としています。平成23年度より毎年2回(地方開催1回、東京開催1回)程度開催し、今回で19回目になります。
 今回の会議は、新型コロナウイルスの国内感染状況等を踏まえ、前回から引き続きWEB開催となりましたが、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営する株式会社トラストバンク会長の須永珠代氏と山梨県北杜市の篠原振一郎氏による講演を通じて、地域振興、環境保全、地域連携等について考えました。また、参加者から最近の地域活性化等の取組を報告していただき、今後の水源地域振興について情報交換しました。

(1)講演

[1] テーマ:『ふるさと納税事業等を通じた自立した持続可能な地域づくり』 講師: 須永 珠代  氏(株式会社トラストバンク会長兼ファウンダー)

  • 須永珠代氏[1]

  • 須永珠代氏[2]

 講演の前に、日本にとって大事な水資源を、どのような形であれ、皆さんに守ってもらっていることに感謝します。ありがとうございます。そのおかげで私たちが生活できることを、いつもありがたいと思っています。
 さて、私はふるさと納税の事業を通じて、いろいろな地域に行きました。47都道府県はもちろんのこと、市町村の数でいっても、1000近くの自治体を回っていますが、自治体に行った際、初めに聞くことがあります。それは今、何に一番困っているかです。そして、その一番困っていることに対して、ふるさと納税がどのように活用できるかを伝え続けています。
 初めに、私は、ふるさと納税は強力なマーケティングツールであると伝え続けています。お礼の品をもらえるというイメージが強いと思いますが、それはメリットの一つでしかなく、その先にある強力なマーケティングツールと思っています。さらに言うと、資金調達手段であるとも考えています。
 よく地域に行くと、あなたが言っていることはお金があるからできることで、何々市はできるかもしれませんが、ここのような小さな町は予算がないからできないと、皆さん、お金の話をして、お金がないからできないと言うことがほとんどです。そして、国がしてくれない、自治体がしてくれないと言います。もちろん、いろいろな人の協力は何をするにしても大事です。しかし、私自身も資本金50万円から始めて、信用力がなく、借り入れもできずにここまで来ました。ですので、お金がないからできない、人がいないからできないと言うのではなく、皆さんには勇気を持ってほしいと思います。
 弊社のミッションは『ICTで地域とシニアを元気にする』ことです。どのように元気にするのかが大事です。私自身は経営に大事な四つの要素として、『ヒト・モノ・お金・情報』を選びました。ここでいう経営は、地域が経営していくことも含まれます。この『ヒト・モノ・お金・情報』の四つが循環していれば、地域が自立して持続可能になると思っています。そこで、この『ヒト・モノ・お金・情報』が循環している状態をつくろうと考えたときに、日本だけではなく、世界中の都市化している国は全てそうですが、首都圏にお金が集まり過ぎています。そのお金の一部でいいので地域に回します。そして、物資は地域に頼っています。まさに皆さんが行われている活動の水源もそうです。人も首都圏に集まり過ぎています。それを少しでいいので循環するようにできないかを考えました。
 また、これほどインターネットが隅々まで浸透しているのにもかかわらず、情報が循環していません。情報の違いを非常に感じました。この情報は、地域はなかなか発信せず、必要な情報は届いていません。このような状態の中で、この『ヒト・モノ・お金・情報』を循環させようと思ったときに、最初に見つけたのがふるさと納税です。ふるさと納税であれば、『ヒト・モノ・お金・情報』が循環すると思いました。これは地域に寄与する素晴らしいツールになると感じ、10年前にふるさとチョイスという事業を立ち上げました。
 今回の水資源はふるさと納税に関係ないように思えますが、皆さんがこれからしたいことや、これから変えなければいけないことについて、活用するツールとして、最強のツールだと思っています。そのようなことをこれから紹介します。
ふるさと納税は大きく三つのサービスに分かれます。一つ目は皆さんもよく知っている返礼品がもらえるというものです。これは地場産業の発展につながります。2つ目は、私がきょう一番、皆さんに伝えたいもので、課題解決の資金調達です。弊社では自治体が主体となって行う資金調達ですので、ガバメントクラウドファンディングと名付けています。多くの方から少しずつお金を集め、大きな力にするというクラウドファンディングの手法です。長い名称ですので略してGCFと呼んでいます。そして、3つ目は、災害支援となります。
 まず、一つ目のふるさとチョイス事業については知っている方も多いと思いますので、軽くお話しします。この事業によりいろいろな地域や地場産業も潤っています。しかし、これはツールの一つでしかなく、ふるさと納税だけをすることはやめたほうがいいと思っています。お礼の品を出している人はふるさと納税を活用して、地域のお客を開拓したり、マーケティングの窓口にしたり、また、ふるさと納税は基本的に卸ではなく売値で出せますので、利益が大きくなる場合が多いですので、その利益を活用し、次の設備投資や店舗拡大に投資してください。海外に進出した事業者や店舗数を増やした事業者も多数います。ふるさと納税を事業拡大のツールとして、事業者や生産者に使ってもらいたいと思っています。
 次は、皆さんに一番伝えたいガバメントクラウドファンディングです。事例を紹介します。去年、奄美・沖縄が自然遺産登録されました。このときに奄美と沖縄の自然遺産登録された地域で、GCFを使って資金調達をしようと手を挙げてくれました。これは鹿児島県天城町、宇検村、龍郷町、瀬戸内町、奄美市、大和村、そして、沖縄県の竹富町、これらの市町村が皆でGCFを活用し、自然遺産登録をきっかけに資金調達をしようと立ち上げたプロジェクトです。自然遺産登録は登録された後が大変です。自然環境を保護するための活動が必要で、資金が必要です。そのために、自然遺産にまつわる取組を行い、このように資金調達をしました。これは無事に達成率105パーセントで達成しました。
 きょうは大勢の皆さんが集まったいい機会ですし、もう何年も活動をしているのでしょう。ふるさと納税は地域ごとや自治体ごとの取り組みですが、私はこのツールをそのようには見ておらず、皆が同じ魅力発信に使えばいいと思っています。ですので、ガバメントクラウドファンディングという名前にしました。一つ一つの地域が集まれば国になります。同じ課題を持っているのならば、そして、同じ魅力を持っているのであれば、皆で発信すればいいのです。そのような取り組みをしています。
 3つ目は、災害支援についてです。例えば、令和3年8月豪雨で、多数の自治体が被災しました。それらをまとめて皆で応援しようと、ホームページ上で自治体ごとの支援状況が一覧できるよう視覚化しました。実はまだまだマスメディアの力は大きく、災害時にマスメディアのカメラが入る自治体は、寄付が割と集まります。ボランティアも同じで、テレビで流れる自治体はボランティアも集まります。しかし、その隣の地域など、甚大な被害を受けているのに、テレビで流れないために寄付金は集まらず、ボランティアも集まらない現状を目の当たりにしました。
 インターネット上であれば並列に見せることができるし、または寄付が集まっていない自治体だけを目立たせることもできます。このように寄付を集めています。そのように経済循環を良くするため、そして、関係人口をつくるため、地域の経済状況を良くするためにいろいろな事業をしています。
 このように、ふるさと納税は地域経営において、マーケティングツールであるだけではなく、資金調達も必ず付いてくるという、本当に強力なツールです。ふるさと納税にはいろいろなイメージがあると思いますが、私は地域の活性化や地域を経営するため、そして、まさに水源を守るためのマーケティングツールだと思っています。皆さんが現在、抱えている課題の解決や魅力発信のためのツールとして、最強のツールの一つですので、ぜひ、ふるさと納税を活用してください。

※事例紹介を含めた概要については、以下のリンクからご覧いただけます。
  『ふるさと納税事業等を通じた自立した持続可能な地域づくり』概要【PDF】

[2] テーマ:『山梨県北杜市による水源環境の保全を通じた地域活性の取組』 講師: 篠原 振一郎 氏(山梨県北杜市政策推進課副主幹)

  • 篠原振一郎氏[1]

  • 篠原振一郎氏[2]

 今回は本市の宝である水資源を守る取組を中心に、本市が取り組んでいる環境保全事業と企業の皆さんとの連携事業について紹介します。
 本市における環境保全の取組について、大きく二つに分けて紹介します。1点目は環境保全基金協力金についてです。ここでは制度の概要と基金の活用内容について、幾つかの事例を紹介します。北杜市環境保全基金協力金は市内の森林や水資源等の保全を行い、次の世代に引き継いでいくことを目的として、平成20年度に創設されました。本基金はこの理念に賛同する企業の皆さまからの環境保全協力金とふるさと納税による個人からの寄付金によって運用されています。多くの企業は協力金という形で、地域の課題解決や環境保全に貢献できるものとして、賛同しています。現在の企業版ふるさと納税の先駆けとなり得る、本市独自の制度でもあります。昨年度の実績は81の企業から協力してもらい、協力金も約3900万円に上りました。
 続いて、本制度の枠組みについて紹介します。まず、企業や個人からもらった協力金は北杜市環境保全基金として積み立てます。その基金の使い道を市民、企業、環境保全団体等の代表者からなる、環境保全基金活用検討委員会で審議し、市民提案型の環境保全事業補助金と市が実施する二つの事業に充当される仕組みです。基金を活用する事業は、『森を育て、水を守る』をテーマとした環境保全や環境教育、ユネスコエコパークに関連した事業に活用しています。市民提案型環境保全事業補助金は、補助率が3分の2で、上限は、地域住民が参加する事業は100万円で、その他は30万円となっており、1事業は3年間、補助を受けられる制度です。基金設置当初から約50の市民団体に補助金を交付しており、市民が活動を始める上で、その後押しになっていると考えています。
 続いて、大項目の二つ目、企業と連携した取組について紹介します。本市ではこれまでも防災や福祉、環境等の多岐にわたり、多くの企業、団体と連携し、取組を実施してきました。特に近年ではSDGsの理念に基づいた連携協定を結ぶなど、本市の未来を共に築いていく取組を進めています。そのうちの幾つかの取組について紹介します。
 初めに環境教育分野の連携として、昨年1月にパートナー協定を結んだサントリー食品インターナショナル株式会社様との取組を紹介します。サントリー様とは協定を通じて、市の豊かな森と水を次世代に引き継ぐ取り組みや環境教育推進を実施しています。本年度は市内の全ての小学校を対象に、サントリー様のインストラクターが直接、学校に出向き、森と水の学校の出張授業を実施しました。授業ではこれまでサントリー様が行ってきた水育のプログラムとして、森の役割や水が作られる過程、南アルプスの自然の特長などを話し、子どもたちは身近な森や水の大切さについて、あらためて気付いた様子でした。
 続いて、農業分野の連携として、東洋ライス株式会社様と株式会社ちとせ研究所様との取組を紹介します。東洋ライス株式会社様は米のとぎ汁の環境負荷に着目した独自の精米方法で製造された無洗米の活用や、精米時に取り除かれた米ぬかを肥料として活用するなどの取組を通じて、順番型農業や地産地消、市民の健康増進の実現などを目指しています。また、ちとせグループ様は、ちとせ様のバイオ分野における知見と技術を生かし、持続可能で高品質な農業を推進し、循環型社会の構築を目指しています。
ここで本市が目指す循環型農業の将来像のイメージを紹介します。里山を管理する中で収集される落ち葉や、本市の畜産農家から出るふん尿、家庭から出る生ゴミなどを主原料に、質の高い堆肥を効率的に作り、農薬や化学肥料に頼らない農業への転換を目指すことで水質保全や市民の健康増進、さらにもうかる農業につなげ、農業分野での循環型社会の実現を考えています。こうした社会の実現には民間企業の専門的な知見や技術が必要なことから、本市は現在、企業の皆さまと連携して取組を進めています。
本市は今後も貴重な水資源を市民、企業、行政など、全てのステ-クホルダーが連携し合いながら、森を育て、水を守る活動を継続していきます。また、この地で育つ子どもたちに未来の担い手となってもらえるよう、環境教育にもさらに力を入れていくと共に、IoTなどの技術を活用したソサエティー5.0の社会を目指してまいりたいと考えています。
 
※事例紹介を含めた概要については、以下のリンクからご覧いただけます。
  『山梨県北杜市による水源環境の保全を通じた地域活性の取組』概要【PDF】

(2)参加者による活動報告

  • 植克彦氏

  • 加藤満氏

 参加者が互いの地域や活動を知り、共に地域の問題解決や地域振興の新たな取組を進めていく関係の構築を目指し、以下の4団体による活動報告と意見交換を行ないました。
 
 [1]『笑湖活動実績 水源地域支援ネットワーク会議で学んだことの実践事例 』
    湖西夢ふるさとワイワイ倶楽部会長 阿部 和子 氏
 [2]『造園学の見地から見た水資源の可能性』
   NPO法人ジャパンフォレストフォーラム代表 植 克彦 氏
 [3]『ふるさと納税選ばれる返礼品への挑戦!~前年比226%を達成できた取り組み報告~』
   合同会社東峰村ツーリズム協会会長 小野 豊徳 氏
 [4]『柿の葉寿司振興 ~十軒十旨弁当のその後~』
   奈良県川上村水源地課 加藤 満 氏

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