公有地の拡大の推進に関する法律(昭和四七年法律第六六号)の施行については、昭和四七年八月二五日付け建設省都政発第二三号、自治画第九二号をもつて建設事務次官および自治事務次官から通達されたが、土地開発公社に関する部分については、左記事項についても十分留意のうえ、その事務処理に遺憾なきを期せられたい。この旨貴下市町村にも通知されたい。
一 土地開発公社の設立の手続きについて
(一) 市町村における土地開発公社の設立については、次官通達三の(一)のイによること。
特に、安定的な業務量の確保、人材の有効活用等を図る上で必要であると判断される場合には、既設の土地開発公社についても共同化を推進すること。
(二) 土地開発公社を設立する議会の議決に当たっては、設立の主旨及び定款(案)を議案書として議会に提出すること。
(三) 理事又は監事となるべき者は、主務大臣又は都道府県知事に設立の認可申請をする前に指名しておくこと。
(四) 土地開発公社の設立の認可申請書の様式は、別添(一)によること。
(五) 土地開発公社の設立の主務大臣認可を受けようとするときは、建設大臣・自治大臣宛の認可申請書を建設大臣及び自治大臣にそれぞれ提出すること。また、都道府県知事が土地開発公社を認可したときは、認可書の写し及び認可申請書の副本を建設大臣及び自治大臣にそれぞれ提出すること。
(六) 土地開発公社を共同して設立した場合には、各設立団体において協議会等を設けて、土地開発公社の指導、監督等で重要な事項について協議調整することが望ましいこと。この場合に、出資するだけで設立団体とならない地方公共団体がある場合には、当該地方公共団体をも協議会等に加入させることが適当であること。
二 基本財産及び出資について
(一) 基本財産の額は、予定される業務の量等により個々的に判断すべきであるが、主務大臣の認可を受けようとするものにあっては概ね二、〇〇〇万円から三、〇〇〇万円、都道府県知事の認可を受けようとするものにあっては概ね五〇〇万円から一、〇〇〇万円を基準とすること。
(二) 出資の方法は現金によると現物によるとを問わないこと。なお、その払込みは、設立の場合にあっては、設立の認可後設立登記までの間に代表理事となるべき者に対して行うこと。
(三) 設立団体以外の地方公共団体が出資する場合の出資額については、当該地方公共団体の土地需要、財政事情等を勘案して妥当と認められる限度を超えないよう定めること。
三 土地開発公社の役職員等について
(一) 土地開発公社の役員については、法第一六条に定めるもののほか、民法(明治二九年法律第八九号)の規定が準用されているところであるが、定款において理事長制をとる等によって、責任体制を明らかにしておくことが望ましいものであること。
ただし、設立団体の長が土地開発公社の理事長を兼ねることは、設立団体との土地売買契約等の締結に際し双方代理となるおそれもあり、責任関係をより明確にする観点から、設立団体の長以外の者をもって理事長とすることが望ましいものであること。
(二) 土地開発公社は、定款に定めるもののほか、組織、服務、財務等に関する内部規程を整理しておくべきものであること。
(三) 土地開発公社の役員及び職員は、法第二〇条の定めるところにより、その取扱いに係る土地を譲り受け、又は自己の所有物と交換できないところであるが、なお、本条に該当しない場合においても土地の取得処分等について疑惑を生ずることのないよう、常に留意すべきものであること。
四 土地開発公社の業務について
(一) 土地開発公社は、法第一七条に定める業務を行うものであるが、その業務の運営に当たっては、国、地方公共団体等の土地利用計画を十分配慮しつつ行うべきものであること。
(二) 土地開発公社は、設立団体の必要とする土地をはじめ、国、他の地方公共団体等の用地の取得を行う場合においては、これらによる買取りの見通し等について十分検討の上、これらとの間で、関係法令に従い、買取予定時期、買取予定価額及び用途を明示した用地取得依頼契約を書面で締結すべきものであること。
特に、「公共公益施設用地」、「諸用地」等の名目で、その用途が不明確なまま土地取得を行うことは、厳に慎むべきものであること。
また、代替地の取得については、特にその必要性を十分に検討し、代替地として活用されることが確実である範囲にとどめるとともに、近隣の地方公共団体、土地開発公社等と代替地の融通を図るなど、既に保有する代替地の一層の活用に努めるべきものであること。
(三) 地方公共団体が、土地開発公社と用地取得依頼契約を締結する際には、地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二一四条の規定により、予算で債務負担行為として定めておかなければならないこと。
なお、債務負担行為の設定に当たっては、「債務負担行為の運用について」(昭和四七年九月三〇日自治導第一三九号)―において、債務負担行為に基づく支出額と公債費との合算額が地方債許可方針により起債制限を受けることとなる公債費相当額を超えることのないよう特に配慮することとされていることにも十分配慮すること。
(四) 土地開発公社が取得した土地について、国、地方公共団体等が、災害復旧等真にやむを得ない場合を除き、買い取ることなく供用の開始をすることや、買取りに要した費用を長期にわたり繰り延べることは、土地開発公社の健全な運営を図る観点等から不適切であることから、その改善に努めること。
(五) 法第一七条第一項第一号に基づき土地開発公社が行う「造成」は、同号に規定する土地の先行取得に伴い実施するものであり、道路、公園等の築造、整備事業とは異なるものであること。
しかしながら、この場合の「造成」の範囲については、画一的に判断、決定するのではなく、当該土地の用途及び土地開発公社の業務遂行能力等を踏まえ、処分相手先の意向を十分尊重して弾力的に運用すべきものであること。
(六) 法第一七条第一項第一号ロに規定する「公共施設」は、必ずしも不特定又は多数の住民が直接利用できる施設に限定されるものではなく、土地収用法(昭和二六年法律第二一九号)第三条各号に掲げられている施設を参考として、地域の実情を踏まえて判断すべきものであること。ただし、その場合、以下の点に留意すべきものであること。
ア 土地開発公社の性格にかんがみ、当該施設が直接住民の利益になるものであること。
イ 当該事業の実施によって、土地開発公社の本来業務である公有地の先行取得業務の実施の妨げになることがないこと。
ウ 事業の実施に当たっては、設立団体と十分協議の上行うこと。
(七) 土地開発公社が地域の開発、整備を図るために工業用地造成事業、住宅用地造成事業等を行う場合の土地の処分に当たっては、地方公共団体と十分協議の上行うこととすること。なお、地方住宅供給公社を設立している団体にあっては、住宅用地造成事業は地方住宅供給公社によって行われるよう土地開発公社を指導すること。ただし、次の場合において、地方住宅供給公社と十分調整の上行うときは、この限りでないこと。
ア 土地開発公社が法第一七条第一項第一号の業務として取得した土地をやむを得ない理由により目的を変更し、かつ、地方住宅供給公社が当該土地を買い取れない場合に限り、法令の範囲内で住宅用地として処分する場合
イ 土地開発公社がその相当部分を公有地等の取得のための代替地として処分する目的で住宅用地の造成を行う場合
ウ 土地開発公社が工業用地等の造成と併せて当該工業用地等に立地する企業がその従業員に対して提供する社宅、独身寮等の用地の造成を行う場合
エ 地方住宅供給公社の業務量が過大である場合等土地開発公社が住宅用地の造成を行うことが適当な場合
オ 土地開発公社が取得した土地を地方住宅供給公社に提供する場合
カ 地方住宅供給公社が地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律(平成四年法律第七六号)第四七条の地方住宅供給公社の設立の特例に基づいて設立されたものであるとき。
(八) 土地開発公社は、取得した土地をその用途に供するまでの間、いたずらに放置することなく、積極的な利用について検討すべきであり、そのために必要な範囲内であれば、当該土地に簡易な施設を建設し、管理することもさしつかえないものであること。また、法第一七条第一項第一号の規定により取得した土地については、更に、外部へ管理委託、賃貸又は信託(以下「賃貸等」という。)を行うこともさしつかえないものであること。ただし、その際、以下の点に留意すべきものであること。また、信託を行う場合には、その性質にかんがみ、設立団体は、あらかじめ当局(主務大臣の認可に係る土地開発公社については建設省及び自治省、都道府県知事の認可に係る土地開発公社については都道府県。以下同じ。)と十分協議すること。
ア 賃貸等の期間及び内容については、当該土地の最終的な利用の妨げとなることのないよう、妥当なものとすること。
イ 賃貸等の目的は、必ずしも公共的なものに限定する必要はないが、土地開発公社の保有地の活用方策として、いたずらに社会的批判を招くものにならないよう配慮すること。
(九) 土地開発公社は、法一七条第一項第一号の規定により取得した後に、事情変更等により、当初の目的に使用する必要がなくなった土地についても、原則として、同号に規定する用途に用いるべきものであること。
ただし、将来にわたり、当該土地の利用の見通しがなく、また、保有を継続することが土地開発公社の経営上の理由等により困難であると判断される場合には、当該土地が本法の規定による先買い制度により取得された場合を除き、他の目的により処分することもやむを得ないものであること。その場合、処分の目的は、極力「地域の秩序ある整備を図る」という土地開発公社の目的に沿うよう配慮するとともに、あらかじめ設立団体又は当該土地の取得を依頼した地方公共団体と十分協議し、処分に当たって社会的な批判を招くことのないよう配慮すべきものであること。
なお、当該土地が、本法の規定による先買い制度により取得された場合においても、「公有地の拡大の推進に関する法律の施行について(土地の先買い制度関係)」(昭和四七年一一月一一日建設省都政発第二六号・自治画第一〇四号)四の(一)ただし書のとおり、取得後の事情の変更により、住宅の用に供する宅地の譲渡に関する事業等、法第九条第一項の規定の範囲内で用途を変更することはさしつかえないものであること。
(一〇) (九)ただし書に従って他の目的により処分する場合には、当該土地の取得を依頼した地方公共団体が、依頼の状況等を踏まえた上で、その対応策を検討すること。
(一一) 地方公共団体は、その依頼に基づき土地開発公社が取得した土地のうち、当該土地開発公社による保有期間が一〇年を超えたものについて、保有期間が一〇年を超えた年度の次の年度中(保有期間が平成一二年三月三一日時点で一〇年を超えているものについては、平成一二年度中)に、当該土地開発公社に協議した上で、当該土地の用途及び処分方針を再度検討すること。
(一二) 法第一七条第二項第二号に定める「これらに類する業務」とは、土地の取得、管理に関連する業務で、具体的には、土地の利用に係る設計事務、土地の管理に係る事務等であること。
(一三) 土地開発公社が農村地域工業等導入促進法(昭和四六年法律第一一二号)第二条に規定する農村地域において工業団地の造成事業の用に供する土地を取得する場合には、原則として工業等導入地区又は工業等導入地区となることが確実と認められる地区の区域内において行うよう配意すること。
(一四) 土地開発公社は、原則として保安林(予定森林を含む。)及び保安施設地区(予定地を含む。)に係る土地の取得を行わないものとし、公益上やむを得ない事情によりこれらの土地を取得するときは、あらかじめ、森林法(昭和二六年法律第二四九号)に規定する監督行政庁に十分協議するよう指導すること。
(一五) 土地開発公社が市街化区域内において、土地改良区の地区内にある農地、採草放牧地を取得する場合には、その農地等の所有者が当該農地等を譲渡する旨をあらかじめ当該土地改良区に通知したことを確認した上で行うよう指導すること。
(一六) 建物等が存在する土地を取得する場合には、原則として、建物等は支障物件として移転し、又は取り壊し、更地として取得するべきものであること。ただし、建物等が当該土地の利用計画上又は取得目的に照らし必要と判断される場合はこの限りでないものであること。
五 土地開発公社の財務について
(一) 会計における勘定区分については、公有地の拡大の推進に関する法律施行規則(昭和四七年建設省・自治省令第一号)第八条の規定により、貸借対照表勘定においては資産、負債及び資本を計算し、損益勘定においては収益及び費用を計算することとされているが、このうち、貸借対照表勘定においては、次により細分して計算すること。
ア 資産勘定
流動資産、固定資産及び繰延資産
イ 負債勘定
流動負債、固定負債及び特定引当金
ウ 資本勘定
基本金及び準備金
(二) 予算の作成及び執行については、別添(二)「土地開発公社予算基準」を基準とすること。
なお、予算は、法第一八条第二項の規定により設立団体の長の承認を受けなければならないこととされているので、予算の作成及び執行の方法に関しては、土地開発公社の内部規程の整備等について設立団体と土地開発公社の間で十分に調整する必要があること。
(三) 設立団体等は、土地開発公社が長期借入金を借り入れるときは必要に応じ債務保証契約をすること。
(四) 土地開発公社が、債務保証に係る長期借入金を借り入れようとするときは、あらかじめ、借入れを必要とする理由、借入金の額、借入先、利率、償還の方法及び期間、利息の支払方法並びにその他必要な事項を設立団体等に協議すべきものであること。
(五) 土地開発公社が資金調達を行う際には、例えば借入先決定に当たって入札制度を導入する等、金利等の借入条件の改善に努力すべきものであること。特に、国庫債務負担行為による直轄事業又は補助事業の用に供する土地を先行取得する場合については、建設省の指導利率は買取時における上限となる利率を設定しているものであり、今後とも当該利率以下で借入を行うよう努力すべきものであること。
(六) 設立団体等の長は、土地開発公社に対して、本法の定めるところにより監督等を行うほか、地方自治法第二二一条等の規定により調査権等を行使することができるものであるが、土地開発公社の事業計画及び決算については、地方自治法第二四三条の三第二項の規定により議会に提出しなければならないこと。
また、設立団体等の長が、同項の規定により土地開発公社の決算を議会に提出する際には、損益計算書、貸借対照表に加え付属明細書を提出することが望ましいこと。
(七) 土地開発公社は地域の秩序ある整備を図るため設立された団体であり、利益の確保を目的とした業務運営を行うことは適切ではないが、保有地価格の上昇に伴う売買差益や土地開発公社自身の経営努力等により利益が発生した場合には、原則としてこれを内部留保し、再投資に充てるべきものであること。ただし、以下の条件を満たす場合には、当局と事前に十分協議の上、寄付等の方法により設立団体に対して還元することができるものであること。
ア 設立団体による関連公共施設の整備等、当該利益の発生について設立団体の寄与が認められること。
イ 土地開発公社において当面資金需要が予想されず、また、利益の還元によって、中長期的に土地開発公社の経営基盤を害するおそれがないこと。
ウ 土地開発公社の経営努力を阻害するおそれがないこと。
六 情報公開について
土地開発公社の公的性格にかんがみ、土地開発公社の情報公開についても可能な限り設立団体と同等の情報公開を行うことが求められているところであり、設立団体として、土地開発公社の積極的な情報公開が図られるよう努力すること。