新住宅市街地開発法施行令の一部を改正する政令が、昭和六〇年三月五日政令第二〇号として公布施行され、これに基づき同法施行規則の一部を改正する省令が、昭和六〇年三月一九日建設省令第一号として公布施行された。改正政令及び改正省令は、施行者が造成した宅地を民間の住宅分譲事業者(以下「民間事業者」という。)対して直接譲渡できること等を定めたものである。民間事業者への宅地の譲渡に当たつては、左記の点に留意し、その積極的な活用を図られたい。
一 改正の趣旨について
今回の改正は、住宅需要の多様化への対応及び新住宅市街地開発事業の施行区域の早期熟成を図るため、公的住宅建設事業者に加え、民間事業者で良好な居住性能及び居住環境を有する集団住宅を建設するものに宅地を譲渡できる道を開き、民間活力の活用により健全かつ良好な住宅市街地の開発の促進を図るものであり、その運用に当たつては民間事業者の創意工夫が発揮されるよう積極的な指導を行うこと。
二 指針について
(一) 施行者は、新住宅市街地開発法施行令(以下「令」という。)第四条第一項第三号の二イに規定する「指針」を定めようとするときは、次の点に留意すること。
イ 指針は、良好な居住環境を備えた集団住宅の建設を図るため住宅の位置、形態、意匠等必要な事項を施行者が定めることとされたものであるが、民間事業者の創意工夫を活用する趣旨から、必要最少限の事項を定めるものとすること。
ロ 新住宅市街地開発法施行規則(以下「規則」という。)第一六条の二第四項第一号に規定する「基本方針」には、施行者の施行している事業の全体計画に沿つて令第四条第一項第三号の二に規定する「特定区域」において形成すべき居住環境の全体像を明らかにすること。
ハ 特定区域の範囲及び面積を定めるに当たつては、市街化の促進及び良好な街並みの形成の観点から民間事業者の活用が効果的な区域を選定するとともに、公営住宅、公団住宅、公社住宅等公的住宅建設事業との土地利用上の調整を図ること。
ニ 規則別記様式第二の三に規定する「特定区域内に建設されるべき集団住宅」の「位置」、「形態」、「意匠」及び「その他」には、次に掲げる事項のうち集団住宅が良好な居住環境を形成するために必要な事項について記載すること。
(イ) 位置 建築物の壁面の位置、附帯施設の位置等
(ロ) 形態 建築物の高さ、斜線制限、建築物の戸建形式等
(ハ) 意匠 建築物の屋根及び外壁の色、通路の仕上げ等
(ニ) その他 設備及び構造に関する事項、附帯施設の規模等
ホ 集団住宅の附帯施設として駐車施設等の整備を民間事業者が行う必要のある場合においては、適正な規模の施設が確保されること。
(二) 指針を周知させるための措置について
規則第一六条の三に規定する「指針を周知させるための措置」は、地方公共団体の公報及び新聞への掲載、施行者の事務所等における掲示等の方法により事業意欲のある民間事業者が充分了知しうるよう行うこと。
なお、住宅の規模、分譲の時期等に関して施行者が条件を付すときはその旨も併せて周知させること。
(三) その他
指針を定めた処分計画の認可(変更認可を含む。)に関しては、都道府県知事の認可担当部局は、あらかじめ当該指針について住宅主務部局と協議すること。
三 民間事業者の決定について
(一) 施行者は、特定区域内の宅地の譲受人となるべき民間事業者の決定に当たつては、次の方法により公正に行うこと。
イ 民間事業者の資力、信用及び技術的能力並びに住宅分譲事業の計画について、あらかじめ明確な審査基準を定めておくこと。
ロ 譲受人となることを希望する民間事業者から、資力、信用及び技術的能力を判断するための書類(事業経歴書その他必要な資料)並びに住宅分譲事業の計画に関する書類(集団住宅の設計の概要、住宅及びその敷地の譲渡予定価額の見積書その他必要な資料)を提出させて審査を行うこと。
ハ 民間事業者の決定を公正ならしめるため、施行者に選考委員会等の組織を設けることにより審査を行うこと。
(二) 民間事業者の決定に当たつては、資本力の大きい企業に限らず、地元産業の振興の観点から中小企業者が組織する事業協同組合、協業組合等の活用についても配慮すること。
(三) 住宅及びその敷地の譲渡予定価額は、あらかじめ施行者においてその見積りについて審査すること。ただし、民間事業者が集団住宅の建設について住宅金融公庫から貸付けを受けることを譲渡の条件とするときは、住宅の譲渡予定価額については、住宅金融公庫の審査をもつてこれに代えるものとする。
(四) 住宅の敷地の譲渡については、国土利用計画法(昭和四九年法律第九二号)第二三条等に基づいて、民間事業者が届出等を行うことを要する場合があるので、施行者においても当該敷地の譲渡予定価額が近傍類地の取引価格等を考慮して算定される相当な価額に照らして著しく適正を欠くものでないことに留意するとともに、必要な場合には国土利用計画法担当部局との連絡調整を図ること。
四 民間事業者に譲渡する宅地の処分価額について
民間事業者に譲渡する宅地の処分価額は、新住宅市街地開発法(以下「法」という。)第二四条により類地等の時価を基準とすることとされているが、当該宅地が最終的には居住の用に供されること等を勘案し、住区内の周辺の居住の用に供する宅地の処分価額との均衡を失しない価額とするよう配慮すること。
五 譲渡契約について
施行者は、民間事業者との宅地の譲渡契約において、法第三三条第二項に規定する場合に宅地を買戻す旨の特約を定めるほか、次に掲げる特約も併せて定めるものとすること。
(一) 民間事業者があらかじめ提出した事業の計画に従つて集団住宅を建設し、又は譲渡しない場合には、施行者が宅地を買戻す旨の特約。
(二) 当該住宅の譲受人(その承継人を含む。)が法第三二条第一項の規定に違反した場合又は同条第三項の規定により付された条件に違反した場合には、民間事業者が当該住宅及びその敷地を買戻す旨の特約。
(三) 民間事業者は、令、規則及び本通達に従つて住宅を建設し譲渡することについて、施行者の確認を受け、施行者は、その旨を確認したことを証する書面を交付する旨の特約。
六 法第三二条の運用について
都道府県知事が法第三二条(造成宅地等に関する権利の処分の制限)に基づき、民間事業者が建設した住宅及びその敷地の譲渡を承認するに当たつては、次の点に留意すること。
(一) 令、規則及び本通達に定めるところにより、適正に住宅が建設されその敷地とともに譲渡されるものであることを施行者が確認していること。
(二) 民間事業者があらかじめ国土利用計画法第二三条の規定による届出等を行つていないときにあつては、住宅の敷地の譲渡価額が近傍類地の取引価格等を考慮して算定される相当な価額に照らして著しく適正を欠くものでないことについて、事前に国土利用計画法担当部局との連絡調整を図ること。