経宅発第九一号
昭和六一年八月一五日

各都道府県知事、各指定都市の長、公団総裁(住都、地域)あて

建設省建設経済局長通達


新住宅市街地開発法の一部改正等について


新住宅市街地開発法の一部を改正する法律(昭和六一年法律第四九号)、新住宅市街地開発法施行令及び住宅金融公庫法施行令の一部を改正する政令(昭和六一年政令第二七七号)、新住宅市街地開発法施行規則及び都市計画法施行規則の一部を改正する省令(昭和六一年建設省令第九号)は、法律については昭和六一年五月一六日に、政令については昭和六一年八月一二日に、省令については昭和六一年八月一四日にそれぞれ公布され、昭和六一年八月一五日から施行された。
この改正新住宅市街地開発法等の運用に当たつては、左記の事項に留意し、遺憾のないようにされたい。
なお、貴管下関係市町村及び地方住宅供給公社に対しても、この旨周知方取り計らわれたい。 (注)
(注)の文章は、公団総裁あてのものには含まれない。

第一 改正の趣旨について

新住宅市街地開発事業は、大規模かつ総合的な街づくり事業として、健全な住宅市街地の形成と国民の居住水準の向上に寄与してきたところであるが、近年、地域整備上の要請に即した魅力ある街づくりを行うことが求められているほか、住宅の近くに居住者の雇用の場を確保する必要性が高まつているなど様々な状況の変化がみられている。このため、今回の改正法は、新住宅市街地開発事業において複合的機能を有するニュータウン開発を行うことができるようにすることを主たるねらいとして、施設立地の多様化を行つたほか、住区の規模要件の緩和、建築義務期間の延長等の制度改正を行つたものである。
したがつて、今後、新住宅市街地開発事業を推進するに当たつては、今回の法改正の趣旨を十分に踏まえ、高度化かつ多様化している居住者のニーズに応えつつ、真に時代の要請に応じた活力ある街づくりを行うようにすること。

第二 施設立地の多様化について

一 特定業務施設の立地

(一) 特定業務施設の範囲

1) 特定業務施設は、事務所、良好な居住環境と調和する工場、研究所、研修施設、厚生施設等をいうものであること。

なお、次に掲げる施設は、従来と同様に、公益的施設として取扱うものであること。
(イ) 小中学校、高等学校、短期大学、大学、幼稚園等の教育施設
(ロ) 診療所、病院等の医療施設
(ハ) 市役所出張所、警察署、消防署、郵便局等の官公庁施設
(ニ) 店舗、スーパーマーケット、百貨店等の購買施設
(ホ) 保育所、児童厚生施設、公民館、集会所、図書館、美術館、博物館、スポーツ用施設、健全な娯楽用施設
(ヘ) 卸売市場、電気通信事業用施設、電気供給施設、ガス供給施設、熱供給施設
(ト) 交通施設、駐車場
(チ) その他住民サービスを目的とする事務所、事業所

2) 特定業務施設は、居住者の雇用機会の増大及び昼間人口の増加による事業地の都市機能の増進に寄与する施設でなければならないが、居住者の雇用機会の増大とは、新住宅市街地開発事業により開発される住宅市街地の居住者に雇用の場を提供する機会を増大するという趣旨であり、昼間人口の増加による事業地の都市機能の増進に寄与するとは、住宅市街地に昼間人口が集積することを通じて、商店、病院、交通施設等の公益的施設の充実に資するという趣旨である。特定業務施設の敷地の造成を含む新住宅市街地開発事業を施行する場合には、これらの目的が達成され、活力ある住宅市街地が形成されるように留意すること。
3) 特定業務施設は、良好な居住環境と調和する施設でなければならないが、良好な居住環境と調和するとは、住宅地としての良好な居住環境を阻害しない状態で施設の本来の機能を発揮することをいうものであり、騒音、ばい煙、悪臭等の発生状況を考慮して判断することとし、具体的には次のとおり判断すること。

(イ) 準工業地域に建築することができる工場等であつても、建築基準法(昭和二五年法律第二〇一号)別表第二(ほ)項第三号又は第四号に規定する商業地域内において作業場の床面積にかかわらず事業を営むことが禁止されている工場等は、特定業務施設に該当しないものとすること。
(ロ) 大気汚染防止法(昭和四三年法律第九七号)第二条第二項に規定するばい煙発生施設(同法施行令(昭和四三年政令第三二九号)別表第一中一の項に規定するボイラー、一〇の項に規定する食料品の製造の用に供する直火炉及び一三の項に規定する廃棄物焼却炉を除く。)又は同条第五項に規定する粉じん発生施設を設置する工場等は、特定業務施設に該当しないものとすること。
(ハ) 悪臭防止法(昭和四六年法律第九一号)第二条に規定する悪臭物質を発生することにより、良好な居住環境を損なうおそれのある施設は、特定業務施設に該当しないものとすること。なお、このような施設の例としては、鶏ふん処理場、でん粉製造工場、魚腸骨処理場、水産かん詰製造工場、たばこ製造工場、化粧合板製造工場がある。

4) 研究所についても、原動機を使用する試作機能を有する研究所等であつて、騒音、ばい煙、悪臭等を発生する可能性のあるものについては、3)に掲げるところにより特定業務施設かどうかを判断すること。

(二) 特定業務施設の配置

1) 特定業務施設の事業地内への配置に当たつては、住区及び公共施設の配置等との整合性を確保しつつ、個々の施設の性格に応じ、適切に決定すること。
2) 特定業務施設のうち工場及び研究所(試験研究に際し原動機又は化学物質を使用するものに限る。)については、住区の外に配置することとするほか、住区との間に、幹線街路、緑地等居住環境の保全に有効な空間を確保するように努めること。
3) 大規模な事務所、研修施設、厚生施設等については、事業地の一定区域に集約的に配置すること。小規模な事務所、研修施設、厚生施設等については、住区内外に適切に配置すること。
4) 特定業務施設の設置に伴う発生交通により、良好な居住環境を確保する上で支障を生ずることがないように道路交通網と施設配置との整合を図ること。

(三) 特定業務施設の敷地の規模

新住宅市街地開発法第四条第二項第四号に規定する「特定業務施設の敷地の規模」とは、事業地内の特定業務施設の敷地の総規模をいうものであるが、これについては、個々の事業ごとに地域の特性に応じて適切に決定すること。
この場合において、新住宅市街地開発法が健全な住宅市街地の開発を目的とするものであることにかんがみ、特定業務施設の敷地の規模は、住宅用地の規模の二分の一を超えないものとするとともに、事業地の二割を超えないものとすること。

(四) 特定業務施設に係る施行計画及び処分計画

特定業務施設の敷地の造成を含む新住宅市街地開発事業を施行する場合には、次のとおり施行計画及び処分計画を定めること。
1) 施行計画では、設計説明書中に特定業務施設の整備計画を記載することとなるが、ここには、新住宅市街地開発事業として特定業務施設の整備を行うものについてはその整備に関する計画を、特定業務施設の敷地の造成を行うものについてはその配置に関する計画を記載することとし、配置に関する計画においては、特定業務施設について、少なくとも、「工場等」及び「その他の業務施設」に区分してその配置を記載すること。なお、「工場等」とは、工場、研究所(試験研究に際し原動機又は化学物質を使用するものに限る。)等周辺の居住環境への配置が必要な施設を意味するものであること。
2) 処分計画では、新住宅市街地開発法施行規則別記様式第二によるほか、処分計画の基本方針を定めることとし、その中において、処分後の造成宅地等の利用の規制に関し、特定業務施設の用に供する造成宅地等については、特定業務施設が居住者の雇用機会の増大及び昼間人口の増加による事業地の都市機能の増進に寄与し、かつ、良好な居住環境と調和するように、あらかじめ、施行者と十分協議させる旨を定めること。なお、特定業務施設については、処分計画書の「造成宅地等に関する事項」中「建築すべき建築物」の「用途」の欄に「事務所」、「工場」、「研究所」、「その他の業務施設」等の区分により記載すること。また、工場については、「造成宅地等に関する事項」中「備考」の欄に業種を記載すること。

(五) 特定業務施設の用に供する造成宅地等の処分等

特定業務施設の用に供する造成宅地等の処分については、公募が原則であるが、特定の者に建設し、又は管理させることが、新住宅市街地開発事業の円滑な進行又は新住宅市街地開発事業が施行された土地の区域の発展に寄与する特定業務施設の用に供する造成宅地等は、公募をしないで譲受人を決定することができるとしたものであり、これらの造成宅地等の処分に当たつては、次に掲げるところにより行うこと。
1) 特定業務施設の用に供する造成宅地等の公募を行う場合

(イ) 特定業務施設の用に供する造成宅地等の公募を行う場合の選考については、処分計画に記載された特定業務施設の規模及び用途のほか、周辺環境との調和の状況、雇用面の効果、施設の維持・運営能力等を総合的に勘案して行うこと。
(ロ) 施行者は、特定業務施設の用に供する造成宅地等の公募及び選考に当たつては、次の方法により行うこと。

(a) 譲受人の公募は、地方公共団体にあつては公報への登載により、住宅・都市整備公団、地域振興整備公団及び地方住宅供給公社にあつては掲示により行うこと。このほか、施行者は、主要な関係機関、報道機関等を通じて公募が行われる旨を周知させるように努めること。また、公募は、申込の受付開始の日より、少なくとも二週間前から行うこと。
(b) 譲受人の決定を行う場合には、あらかじめ、少なくとも次に掲げる事項に関し、明確な審査基準を定めておくこと。

(1) 資力、信用及び技術的能力に関する事項
(2) 雇用に関する事項
(3) 騒音、ばい煙、悪臭等の発生及びその防止措置に関する事項
(4) 地方公共団体等の意向に関する事項

(c) 譲受人となることを希望する者から、資力、信用及び技術的能力を判断するための書類(事業経歴書その他必要な書類)並びに特定業務施設の建設及び運営に関する計画に関する書類(特定業務施設の概要、工期及び操業開始時期、雇用計画、工場等にあつては騒音、ばい煙、悪臭等の発生の有無及びその防止に関する書類その他必要な書類)を提出させて審査を行うこと。
(d) 譲受人の決定を公正なものとするため、施行者に選考委員会等の組織を設けることにより審査を行うこと。

(ハ) 施行者は、特定業務施設の用に供する造成宅地等の譲渡契約において、新住宅市街地開発法第三三条第二項に規定する場合に宅地を買戻すことができる旨の特約を定めるほか、良好な居住環境との調和に関する事項について施行者が必要な条件を定め、当該条件に従わない場合には施行者が宅地を買戻すことができる旨の特約を併せて定めるものとすること。

2) 特定業務施設の用に供する造成宅地等を公募をしないで譲受人を決定する場合

(イ) 特定業務施設の用に供する造成宅地等を公募をしないで譲受人を決定する場合とは、居住者の雇用機会の増大及び昼間人口の増加による事業地の都市機能の増進に寄与する程度が特に大きい場合をいうものであり、その選考に当たつては、当該特定業務施設の事業地全体の発展に果たす役割を考慮しつつ、周辺環境との調和の状況、施設の維持・運営能力等も十分であることを確認して行うこと。
(ロ) なお、施行者は、特定業務施設の用に供する造成宅地等を公募をしないで譲受人を決定する場合の選考及び契約に当たつては、1)(ロ)(b)、(c)及び(d)並びに(ハ)に掲げるところにより行うこと。

3) また、職住近接を実現するとともに、昼間人口の増加を図り住宅市街地としての健全な発展に寄与するようにするため、特定の者に建設し、又は管理させることが、新住宅市街地開発事業の円滑な進行又は新住宅市街地開発事業が施行された土地の区域の発展に寄与する公益的施設又は特定業務施設に関しては、そこに勤務する者の宿舎の用に供する造成宅地等についても一括して当該公益的施設又は特定業務施設の用に供する造成宅地等の譲受人に譲り渡すことができるようにしたものであるが、この宿命は、公益的施設又は特定業務施設で行われる業務の円滑な遂行に欠くことができないものに限られるものであること。この場合において、公益的施設又は特定業務施設自体の敷地とこれらの敷地に勤務する者の宿舎の敷地とは、必ずしも隣接することを要しないものであり、宿舎の敷地の配置は、特にやむをえないものを除き、通常の住宅用地と同じ取扱いをすることとし、良好な居住環境が確保されるようにすること。

二 準工業地域の設定

(一) 準工業地域の配置

準工業地域が定められている区域については、住区を設定しないものとし、住区との間に、幹線街路、緑地等居住環境の保全に有効な空間を確保するように努めること。

(二) 準工業地域の規模

新住宅市街地開発法第二条の二第四号の規定により、事業地の大部分が第一種住居専用地域又は第二種住居専用地域内にあることとされているが、この「大部分」とは、約三分の二として運用してきたところである。したがつて、住居地域、近隣商業地域、商業地域及び準工業地域が定められている区域については、これらの区域の面積の合計が最大限事業地面積の約三分の一を超えない範囲内のものとなるが、その範囲内でどのように用途地域が定められている区域に関し新住宅市街地開発事業を施行するかについては、健全な住宅市街地の開発という新住宅市街地開発法の目的を踏まえ、かつ、事業地の規模、当該区域に形成される住宅市街地のあり方、近隣の開発の状況等を勘案して各事業地ごとに適切に決定すること。

(三) 準工業地域に立地する施設

準工業地域には、工場、研究所(試験研究に際し原動機又は化学物質を使用するものに限る。)等の特定業務施設及び準工業地域に立地することが適当な公益的施設を配置すること。住宅は、準工業地域には配置しないこと。

三 その他良好な居住環境の確保のための措置

(一) 特定業務施設の用に供する造成宅地等の処分後においても、次に掲げるところにより、良好な居住環境の確保に努めること。

1) 工事完了公告の日の翌日から起算して一〇年を経過する日までの期間は、造成宅地等が適正に利用されているかどうかについて留意するとともに、必要な場合には、適切に買戻権を行使すること。
2) 工事完了公告の日の翌日から起算して一〇年を経過した後においても、長期的に良好な居住環境が確保されるようにするため、必要に応じ、地区計画、建築協定、特別用途地区等の制度を活用することについて関係部局に申し出るものとすること。

(二) 事業地の良好な居住環境を確保するため、特定業務施設の敷地の造成を含む新住宅市街地開発事業を施行する場合には、道路、公園、下水道等の公共施設の必要かつ十分な整備を行うこととし、特に、現在施行中の事業の計画を変更して特定業務施設を立地させる場合には、公共施設の整備計画について必要な見直しを行うこと。
(三) 特定業務施設に騒音規制法(昭和四三年法律第九八号)第二条第一項に規定する特定施設を設置するときは、その操業開始時に、当該特定施設の発生する騒音が同法第四条第一項に規定する都道府県知事の定める規制基準(同条第二項に規定する市町村の定める規制基準が定められている場合については、当該市町村の定める規制基準)に照らしその数値以下であるかどうかについて、当該特定業務施設の設置者に騒音の測定を行わせ、その結果を施行者に通知させるものとすること。ただし、十分な遮音壁の設置等により、当該特定施設の発生する騒音が明らかに規制基準値を超えないと認められるときは、この限りでないものとすること。
(四) 特定業務施設に振動規制法(昭和五一年法律第六四号)第二条第一項に規定する特定施設を設置するときは、その操業開始時に、当該特定施設の発生する振動が同法第四条第一項に規定する都道府県知事の定める規制基準(同条第二項に規定する市町村の定める規制基準が定められている場合については、当該市町村の定める規制基準)に照らしその数値以下であるかどうかについて、当該特定業務施設の設置者に振動の測定を行わせ、その結果を施行者に通知させるものとすること。ただし、振動防止措置を講ずること等により、当該特定施設の発生する振動が明らかに規制基準値を超えないと認められるときは、この限りでないものとすること。
(五) 特定業務施設に大気汚染防止法第二条第二項に規定するばい煙発生施設として同法施行令別表第一中一の項に規定されたボイラー、一〇の項に規定された食料品の製造の用に供する直火炉又は一三の項に規定された廃棄物焼却炉を設置するときは、その操業開始時に、当該ボイラー、食料品の製造の用に供する直火炉又は廃棄物焼却炉の排出するばい煙が同法第三条第一項若しくは第三項、第四条第一項又は第五条の二第一項若しくは第三項に規定する排出基準等に照らしその数値以下であるかどうかについて、当該特定業務施設の設置者にばい煙量及びばい煙濃度の測定を行わせ、その結果を施行者に通知させるものとすること。
(六) 施行者は、(三)から(五)までに基づき特定業務施設の設置者から通知を受けた場合において、環境上の判断が必要と認められるときは、都道府県(騒音規制法第二五条又は振動規制法第二三条の規定に基づき市町村長に事務が委任されている場合にあつては当該市町村、大気汚染防止法第三一条第一項の規定に基づき市長に事務が委任されている場合にあつては、当該市。以下(七)において同じ。)の環境担当部局に通知するものとすること。
(七) 以上に掲げるもののほか、施行者は、良好な居住環境を確保するため特に専門的な判断が必要であると認められるときは、都道府県の環境担当部局と協議するものとすること。

四 税制上の措置

(一) 新住宅市街地開発事業に関しては、租税特別措置法(昭和三二年法律第二六号)の規定に基づき、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例、交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例、収用交換等の場合の譲渡所得の特別控除等(同法第三三条、第三三条の二、第三三条の四、第六四条、第六四条の二、第六五条及び第六五条の二)及び特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除等(同法第三四条の二及び第六五条の四)の規定の適用が認められているものであるが、特定業務施設の敷地の造成を含む新住宅市街地開発事業についてもこれらの租税特別措置を適用されるものであること。なお、これについては大蔵省は了解済みであること。
(二) 新住宅市街地開発事業に関しては、地方税法(昭和二五年法律第二二六号)第五八六条第二項の規定に基づき、施行者が新住宅市街地開発事業の用に供する土地について特別土地保有税が免除されているものであるが、特定業務施設の敷地の造成を含む新住宅市街地開発事業についてもこの特別土地保有税の免除措置は適用されるものであること。なお、これについては自治省は了解済みであること。

第三 住区の規模要件の緩和について

一 住区の人口密度の最低限度の緩和

近年、良好な居住環境に対するニーズが高まつており、これに対応して区域内に緑地を相当残している開発地区がみられること等から有効宅地化率が低下しており、また、核家族化の進行により一世帯当たり人員が低下している。このため、住区の人口密度の下限を一ヘクタール当たり一〇〇人から八〇人に引き下げたものであり、この改正により、従来より多様な住宅街区の設定が可能となつたが、その設定に当たつては、良好な居住環境の住区が実現されるようにすること。

二 住区の規模の下限の引き下げ

住区は、一小学校を成立させる人口規模を有する地区とすることが基本であるが、近年、一学級当たりの児童数の低下等により、六〇〇〇人程度の人口で一小学校が成立しうるとみられ、また、所得水準の向上により、人口当たりの施設維持能力が向上しており、更に、一世帯当たり人員が低下している。こうした状況を踏まえ、住区をおおむね六〇〇〇人からおおむね一〇〇〇〇人までが居住することができる地区としたものであるが、一住区により構成される比較的小規模な地区について新住宅市街地開発事業を施行する場合においても、事業地内に教育施設、医療施設、購買施設等の必要な公益的施設を確保すること。

第四 建築義務期間の延長について

一 従前の二年の建築義務期間は、現実の土地取得費及び住宅建築費を考慮すれば、宅地の取得者にとつて相当に厳しいものとなつていた。このため、一方で収用対象事業としての土地利用の適正さを確保する必要性も踏まえ、住宅等の通常の建築物については建築義務期間を三年とし、更に、三年でも建築が無理な場合が多いと考えられる高さ三一メートルを超える建築物等又は病院、大規模小売店舗若しくは工場の用に供する建築物については、建築義務期間を五年としたものである。しかし、宅地はできる限り速やかにその本来の用途に供されることが望ましいことであるので、今後とも、必要な場合には買戻権を行使する等により、建築義務期間が遵守されるように留意すること。
二 今回の法改正により延長された建築義務期間は、昭和六一年八月一五日以降に締結される買戻しの特約に係る建築物について適用されるものであり、昭和六一年八月一四日以前に締結された買戻しの特約に係る建築物については、建築義務期間は従前どおり二年であること。

第五 譲受人の公募をしない造成宅地等の範囲の拡大について

第二 一(五)に記した特定の者に建設し、又は管理させることが新住宅市街地開発事業が施行された土地の区域の発展等に寄与する特定業務施設の用に供する造成宅地等のほか、地方公共団体出資の営利法人で公益的施設等の建設又は管理の事業を営むものが当該事業の用に供する造成宅地等についても、公募をしないで譲受人を決定できることとしたものであること。
一 近年、市街地の熟成に応じた公益的施設の計画的かつ階段的な整備が一層必要となつているとともに、住民のニーズの多様化を反映して、大規模な商業施設、文化施設等を身近に求める需要が高まつている。一方、このような施設の建設又は管理の主体としては、その業務の運営、資金調達等の面から営利法人とすることが適当なものもあるため、地方公共団体が資本金等の二分の一以上を出資している株式会社又は有限会社がその業務の用に供する造成宅地等については、公募をしないで譲受人を決定することができるものとしたものである。なお、こうした法人を活用するに当たつては、当該法人が中長期的に適切に公益的施設等を整備するという役割を果たすこととなるように留意すること。
二 新住宅市街地開発事業に関しては、地方税法第五八六条第二項の規定に基づき、地方公共団体の出資法人等が公益的施設の用に供する土地については特別土地保有税が免除されているものであるが、地方公共団体出資の営利法人についてもこの特別土地保有税の免除措置は適用されるものであること。なお、これについては自治省は了解済みであること。

第六 優先譲渡の対象範囲の拡大について

流通業務団地造成事業は、大都市において流通機能が過度に集中している状況を緩和し、都市の機能の維持及び増進に寄与することを目的とする事業であり、新住宅市街地開発事業と流通業務団地造成事業との一体的な開発・整備を推進するため、流通業務市街地の整備に関する法律(昭和四一年法律第一一〇号)による流通業務団地造成事業に関連して新住宅市街地開発事業が施行される場合には、流通業務団地造成事業に係る流通業務施設の敷地の譲受人となつた者で従業員住宅用地を必要とするものに対して優先譲渡を行うこととしたものである。流通業務団地造成事業と新住宅市街地開発事業が関連して行われているかどうかについては、都市計画にその関連性が明示されているかどうかによつて判断すること。

第七 宅地の規模の下限の引き下げについて

近年、住宅は二階建住宅が主流となり、平屋建住宅が多くみられた立法当時に比べより少ない宅地の面積で良好な居住環境を確保することができること、住宅の防火性能が向上していること等に鑑み、居住の用に供する宅地の最低規模を二〇〇平方メートルから一七〇平方メートルに、地形の状況その他の特別の事情によりやむを得ない場合における宅地の最低規模を一七〇平方メートルから一五〇平方メートルにそれぞれ引下げたものである。なお、地形の状況その他の特別の事情によりやむを得ない場合とは、宅地が地区の縁辺部においてがけ地に接する場合、幹線道路等の公共施設に隣接する場合等で、土地の有効利用を勘案してやむを得ず一七〇平方メートルの規模を確保することができないときのことをいうものであること。また、一七〇平方メートル未満の居住の用に供する宅地を設定するのは、当該宅地に一般的な住宅が建設された場合において、日照、通風、採光、防災等の観点から支障がないものと認められるときに限るものとすること。

第八 現在施行中の事業への適用について

大規模かつ計画的な街づくり事業の趣旨から、改正法は今後計画される新住宅市街地開発事業のほか、現在施行中の新住宅市街地開発事業にも適用することとしている。ついては、現在施行中の新住宅市街地開発事業についても、改正法の趣旨に則つて、適宜、計画の見直しを行うこと。なお、計画の見直しを行うに当たつては、地域の発展に与える効果、住民のニーズ等を十分に掌握するように努めること。

第九 その他

一 特定業務施設の敷地の造成を含む新住宅市街地開発事業を施行しようとするときは、当該事業地における特定業務施設の必要性及び必要量の根拠に関する所要の資料を整えた後、都道府県の都市計画部局と早期の段階から緊密な連絡調整を行うこと。
二 新住宅市街地開発事業を施行しようとするときは、あらかじめ、都道府県の農林担当部局に十分説明すること。また、港湾区域、港湾区域内の埋立地、臨港地区及び港湾施設用地(以下「港湾区域等」という。)について新住宅市街地開発事業を施行しようとするときは、港湾計画との調整が図られ、かつ、港湾機能の支障とならないよう十分配慮するものとし、あらかじめ、当該港湾区域等に係る港湾管理者と協議すること。更に、事業地が港湾区域等に隣接するときは、当該港湾区域等に係る港湾管理者と密接な連絡を図る等により、港湾計画との調和に適切な配慮を払うこと。

All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport