経宅発第一四二号
平成六年九月一三日

各都道府県新住宅市街地開発法担当部長あて

建設経済局宅地開発課長通知


新住宅市街地開発法における行政手続法に定められた必要な措置の実施について


行政手続法(平成五年法律第八八号)は平成五年一一月一二日に公布され、現在、本年一〇月一日の施行予定に向けて各行政機関において必要な準備を行っているところである。行政手続法は、公正で透明な行政運営を確保するため行政庁が行う処分等に関して統一的な手続規定を定めるものであり、行政庁が処分等を行う場合には同法の定めるところに従って事前手続等を経ることが必要である。
新住宅市街地開発法(以下「法」という。)において都道府県知事が行うこととされている各処分も行政手続法に規定される事前手続等に従って実施することが必要であり、同法が施行されるまでに各都道府県知事は審査基準を定める等の措置を講じた上で同法の規定に従って各処分等を行うことが必要となる。
各都道府県知事におかれては、左記に定めるところを参考として行政手続法の施行までに審査基準を定める等の所要の措置を講ずるとともに、別添の「行政手続法の運用に当たって(未定稿)(各省庁事務次官等あて 総務事務次官通知 平成六年九月下旬発出予定)」等を参照して同法の趣旨を理解して事前手続等を遺漏なく行うよう取り計らわれたい。

第一 法第三二条第一項に規定する権利の処分の承認について

一 本規定の趣旨

本規定は、収用権を伴う新住宅市街地開発事業によって造成された造成宅地等又は造成宅地等である宅地の上に建築された建築物に関する権利の設定・移転に際して、権利の設定・移転を行おうとする者が投機的取引き等による不当な利益を得ることを防ぐとともに、権利の設定・移転を受けた者が処分計画に定められた利用規制の趣旨に従って当該造成宅地等を利用することを担保するため、権利の設定・移転を都道府県知事の承認に係らしめたものである。
本規定の承認に関する処分は、行政手続法第二章に規定される「申請に対する処分」に該当するため、各都道府県知事は同法の規定に基づき、審査基準を定める等の措置が必要となる。各都道府県知事は二を参考として審査基準を定めて公にするとともに、努力義務とされている標準処理期間についても、特段の事情がない限り、三を参考としてこれを定めて公にするように措置することが必要である。各都道府県知事はこれらの措置を講ずることを含め、同法第二章に規定されるところに従って、本規定の承認事務を行うこと。

二 行政手続法第五条に規定する審査基準の設定について

都道府県知事が承認に関する処分を行うに際しては、以下の(一)〜(三)の三点について次に掲げる事項を参考として審査基準を設けることが必要である。なお、新住宅市街地開発事業によって造成された宅地について賃借権等を設定することは、本事業によって造成された宅地は自己若しくは使用人の居住又は自己の業務の用に供することを目的とした者に譲渡されるという本法の趣旨に照らし合わせた場合、これを承認するケースは原則として有り得ないものと考える。
(一) 権利の設定・移転を行う者が不当に利益を受けないこと

1) 新住宅市街地開発事業によって造成された宅地の譲渡について

イ 居住又は営利を目的としない業務の用に供するものにあっては、法施行規則第一六条の二第六項の規定を勘案して譲渡価額が著しく高額でないこと。
ロ 営利を目的とする業務の用に供するものにあっては、時価を上限とすること。

2) 新住宅市街地開発事業によって造成された宅地の上に建築された建築物(造成宅地等である建築物を含む)の譲渡について

イ 居住又は営利を目的としない業務の用に供するものについては、法施行規則第一六条の二第五項の規定を勘案して譲渡価額が著しく高額でないこと。
ロ 営利を目的とする業務の用に供するものにあっては、時価を上限とすること。

3) 新住宅市街地開発事業によって造成された宅地の上に建築された建築物(造成宅地等である建築物を含む)についての賃借権等の設定について

賃借権等の使用収益を目的とした権利の設定については、近隣の同種の建築物の賃貸価額等から見て著しく高額である場合にはこれを承認することは不適切であること。

(二) 権利の設定・移転の相手方が処分計画に定められた処分後の造成宅地等の利用の規制の趣旨に従って当該造成宅地等を利用すると認められるものであること。

法施行規則第一九条に基づく権利処分承認申請書(別記様式第三)には、権利の設定・移転後の利用計画を記載することになっており、従来より、これにより権利の設定・移転後に当該造成宅地等が利用の規制の趣旨に従って利用されるかを判断してきたところである。今後も、権利の設定・移転の相手方が
1) 真に造成宅地等を必要として使用する意思があるかどうか
2) 処分計画等で定められた用途以外の目的に転用しないと認められるかどうか
3) 処分計画等で定められた期間内に定められた規模及び用途の建築物を建築すると認められるかどうか

等を勘案して判断することが適当であること。
(三) 権利の設定・移転の理由

権利の設定・移転の理由は個々の場合で異なるため、一律の審査基準を定めることは困難であるが、転勤、転職、死亡、疾病、家族構成の変化等のやむを得ないと認められる理由がある場合に限って承認することが適切であること。

三 行政手続法第六条に規定する標準処理期間の設定について

都道府県知事が本規定の承認に関する処分を行うに際しては、各都道府県における実態、処理件数等を勘案して、適切な標準処理期間を定めることが必要であるが、本件処分の性質にかんがみれば、特段の事情がない限り、最長でも三週間程度で承認・不承認の別を定めることが可能であろう。なお、標準処理期間を定めた場合においても、一時的な件数増大等のやむを得ない理由により、標準処理期間内に処理できない場合があることが想定される場合には、その旨を明らかにしておくことが必要であること。

第二 法第三四条第四項に規定する標識の移転等に係る承諾について

一 本規定の趣旨

新住宅市街地開発事業が施行された土地においては、工事完了の公告の日の翌日から一〇年間は、第三二条第一項の規定により造成宅地等に関する権利の処分が制限され、また、同期間は第三三条第一項の規定による買戻し特約の有効期間であることにかんがみ、これらの事項を一般に周知させるために、第三四条第三項の規定により、新住宅市街地開発事業が施行された土地である旨を表示した標識(以下、単に「標識」という。)を設置することを都道府県知事に義務付けている。本規定は、都道府県知事により設置された標識を移転又は除却する場合等においては、都道府県知事の承諾を得ることを規定したものであり、承諾を与える行為は行政手続法第二章に規定される「申請に対する処分」に該当することとなるため、二及び三を参考として審査基準を定める等の措置を講ずることを含め、行政手続法第二章に規定されるところに従って、本承諾事務を行うことが必要となる。

二 行政手続法第五条に規定する審査基準の設定について

標識は新住宅市街地開発事業が完了した後も一〇年間は上記の制限が働くこと等を一般に周知するために設置されるものであり、造成宅地等の取引の安全を保護するために必要なものであるので、これを除却、汚損又は損壊することについては災害救助等の緊急の事由がない限り原則として承諾を与えることは適切でない。また、標識の移転については、公共工事の実施等の真にやむをえない理由があり、かつ、従前と同様に標識により表示事項を一般に広く周知することが可能な場所に移転される場合等には承諾を与えることができること。

三 行政手続法第六条に規定する標準処理期間の設定について

都道府県知事が承諾に関する処分を行うに際しては、過去の実例等を参考として、各都道府県知事において標準処理期間を定めることが必要であるが、本件処分の性質にかんがみれば、特段の事情がない限り、最長でも一週間程度で承諾・不承諾の別を定めることが可能であろう。

第三 法第四五条第一項に定める法人に対する処分等について

新住宅市街地開発事業の施行者は原則として公団、地方公共団体等の公的主体に限定されているが、法第四五条第一項の規定により、一定の場合には民間の法人も施行者になることができるとされている。
民間の法人が施行者となった場合には、都道府県知事による処分計画の認可(第二二条第一項)並びに施行計画の認可及び同計画の変更の認可(第四六条第一項)は「申請に対する処分」に、また、都道府県知事による施行者に対する監督(第四一条第一項)及び都市計画事業認可の取消し(第四八条第三項)は「不利益処分」に、それぞれ該当することとなるため、行政手続法の規定に従って審査基準を定める等の措置を講ずることが必要である。
しかし、法施行から現在に至るまでにおいて、民間の法人が新住宅市街地開発事業の施行者となった例はなく、また、今後も当面は民間の法人による事業施行は予定されていないことから、将来、民間の法人による事業施行が想定されるようになった段階において審査基準を定める等の措置を講ずれば足りるものであること。


(別添)

平成六年四月二五日
総務庁行政手続法施行準備室

行政手続法の運用に当たって(未定稿)

(各省庁事務次官等あて 総務事務次官通知)
(平成六年九月下旬発出予定)

はじめに

行政手続法(平成五年法律第八八号。以下「法」という。)及び行政手続法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(平成五年法律第八九号)が第一二八回国会において成立し、平成五年一一月一二に公布され、行政手続法の施行期日を定める政令(平成六年政令第  号)により、平成六年 月 日から施行されることになっています。また、行政手続法施行令(平成六年政令第  号)並びに行政手続法及び行政手続法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令(平成六年政令第  号)が同年 月 日に公布され、同年 月 日から施行されることとなっています。
法は、我が国の行政運営における公正の確保、透明性の向上等を求める内外からの要請にこたえるため、臨時行政改革推進審議会の答申(平成三年一二月一二日)に基づき、行政庁の処分、行政指導及び届出に関する手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的として制定されたものであります。
このような法の趣旨及び目的を踏まえ、法の運用に当たっての考え方を左記のとおり取りまとめましたので、法の運用に当たっては、これらについて格段の御配慮をお願いします。
第一 総則的事項

一 行政処分と行政指導との区分の考え方

1 法令で使われている行政上の行為を示す用語からは、それが「処分(不利益処分)」に当たるか行政指導に当たるか判別できないものがあるが、どちらに該当するかによって、課される手続内容が異なるので、各法令ごとにその区分を明確にした上で、国民の権利利益を損なうことのないよう適切に対処する必要があること。
2 法令の規定に基づき行われる行政庁の行為が「処分」に当たるか否か(相手方が行政庁の求める行為又は不行為を行う義務を負うか否か)の最終的な判断は、当該行為を規定する個別法の解釈により行われるものであるが、参考のため、判断に際しての考え方の大筋を示すと以下のとおりであること。

(1) 処分性の有無について、法令の規定により明確に判断できる場合は、それによって区分すること(2(2)参照)。また、明確に判断できない場合には、2(3)に該当する場合を除き、原則として処分性を有しないものと解すること。これは、処分が国民の権利義務に変動を与える行為であることから、このような場合において積極的に処分と解することは適当でないためである。
(2) 法令の規定上処分性の有無について判断できる規定がある場合

ア 処分性があると解されるもの

a 行政庁の求めに従わない、あるいは応じない場合に、罰則による制裁を課し得るもの。
b 「求める」に該当する用語が、「命ずる」「させる」等と規定されるもの(処分性を有しないとする特別の理由があるものを除く。例:相手方の意向の打診をするために行われる補正命令(行政不服審査法第二一条))
c 「求める」に該当する用語が、「指示する」「求める」「要求する」等と規定されるものであって、以下のもの

1) 行政庁の行為について不服申立てができる旨や当該行為を「処分」とする明示的な規定があるもの

(例)道路の原状回復措置の指示(道路法第四〇条第二項、第七一条第五項)

2) 行政庁の行為に従わなければならない旨の義務、その他相手方に義務を課し、その権利を制限することとなる法的効果についての規定があるもの

(例)重要文化財の管理に関する必要な指示(文化財保護法第三〇条、第三一条第一項)
委託運送業務の実施の要求(郵便物運送委託法第八条第一項)

3) 行政庁の行為に従わない場合には、そのことを直接の理由にして不利益処分による制裁を課しうるもの

(例)法律等に違反した場合の必要な指示(建設業法第二八条第一項〜第三項)

4) 条文の規定振りからみて、当該行為を処分と解さないと、整合性のある解釈がなし得ないもの

(例)薬剤による防除等措置の指示(森林病害虫等防除法第七条)

イ 処分性を有しないと解されるもの

a 「求める」に該当する用語が、「勧告する」「助言する」「指導する」「依頼する」「要請する」と規定されるもの

(処分性を有すると解される特別の理由があるものを除く。)

b 行政庁の行為(指示)に従わない場合に、改めて、同一内容の作為又は不作為を求める命令をすることができることとされている当該「指示」

(例)特定物資の売渡し指示(生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律第四条第一項、第二項)

c 行政庁の行為に従わない場合の最終担保措置が「その旨の公表」にとどまるもの

(例)見やすい表示をすべき指示(国民生活安定緊急措置法第六条第二項、第三項)

d 協力、援助のような本来的に相手方の自発的な意思にゆだねられるべき行為を求めるもの

(3) 法令の規定上、処分性の有無について判断できる規定はないが、処分性を有すると解される場合

1) 許認可等権限に基づく監督を受ける者に対して、法目的を達成するために一定の改善を求める「指示」

(例)温泉利用施設の管理者に対する改善指示(温泉法第一二条、第一五条)

2) 災害等の発生又は拡大を防止するため、物理的に危険が切迫している状況の下で必要な対策を講ずることを求める「指示」

(例)災害の発生防止等に必要な措置をとるべき旨の指示(河川法第五二条)

二 国、地方公共団体等に対して行う処分等への適用の考え方(第四条関係)

処分については、本法が一般国民の権利利益の保護を目的としていることから、国や地方公共団体がその固有の資格において処分の相手方となる場合には、国民と同様に取り扱うことは適当でないため、第四条第一項で適用除外としている。また、特殊法人、これに類するいわゆる認可法人等(同条第二項)及び行政上の事務を代行して行う指定機関(同条第三項)に該当するものについても、国や地方公共団体に準じて取り扱うことが適当と判断されたところである。
これに対し、行政指導については、国や地方公共団体に対しては、固有の資格において相手方となるものかどうかの区分が困難であること等から適用除外としているところである。他方、特殊法人や指定機関などについては、行政指導がこれらの特別の法人との特別な監督関係に基づいて行われることとされているものではないことから本法の規定を適用することとしている。ただし、行政指導の相手方たる地方公共団体又はその機関が固有の資格において行動しているものではない(一般国民と同様な立場で行動している)ことが明らかである場合には、行政指導の透明性、公平性の確保を図る法の趣旨を踏まえ、国の機関は、例えば、当該地方公共団体又はその機関から行政指導の書面の交付を求められた場合にはこれを交付するなど、法第四章に定める手続に従って行うよう努めること。

第二 申請に対する処分関係

一 審査基準の設定(第五条第一項・第二項関係)

1 許認可等の要件は、当該許認可等の内容に応じ様々であるが、行政庁の判断過程の透明性を向上させることが、行政運営における公正を確保し、処理の迅速化、円滑化に資するとの観点から本条が置かれていることを踏まえて、審査基準を作成すること。
2 個々の申請に対して、それを許諾するか拒否するかを判断するための行政庁の基準を明らかにすることが求められているので、審査基準の作成に当たっては、申請者等が当該許認可等を得るに当たって何を準備して申請をすれば良いかが分かるかどうかという観点からその内容をできる限り具体化するよう努めること。
3 行政庁に裁量が与えられている場合には、裁量権行使に当たっての行政庁の考え方が具体的に明らかにされることが重要であって、処理を画一化すること自体が目的ではないので、個々の申請についての当てはめ基準の作成が困難である場合であっても、審査に当たって、どのような要素が考慮されるのか、個々の要素はどの程度の評価を与えられることになるのかといったことをできる限り示しておくことが必要であること。

例えば、「実務経験」という指標で説明すると、許認可等を付与するに当たって実務経験が必須の条件である場合には、○年以上というように定量的に定めることが最も望ましいが、他の条件が同一であれば実務経験の有無が考慮されるという場合には、そのこと自体、あるいは経験年数が多い方が有利かどうかといったことを明らかにすることが求められている。

4 審査基準は、許認可等を付与する権限を有する行政庁(処分庁)において定めるものであるが、地方公共団体等同一の許認可等について多数の処分庁が存在する場合には、法令所管省庁においても、地域の事情等も考慮しつつ、できる限りその参考となる指針を処分庁である地方公共団体等に示すことが望ましいこと。

二 標準処理期間の設定(第六条、第九条関係)

1 標準処理期間を設定する場合において、経由機関、協議機関があるときには、処分庁で審査する期間のほか、それぞれの機関で要する期間を定め、それぞれの期間を明らかにした上で、全体としての処理に要する期間を定めること。
2 標準処理期間を算定するに当たっては、

(1) 適法な申請を前提に定めるものであるから、形式上の不備の是正等を求める補正に要する期間は含まれないものとすること。
(2) 適正な申請の処理に際しても、審査のため、相手方に必要な資料の提供等を求める場合にあっては、相手方がその求めに応答するまでの期間は含まれないものとすること。

3 標準処理期間の定め方は、日、月等をもって、具体的な期間として定めることが望ましいが、そのような設定が困難な場合には、一定の幅をもった期間として定められないかどうか、あるいは、申請内容を類型化して区分することによって、その区分ごとに定められないかどうかなど、当該許認可等の性質に応じた工夫をすることによってできる限り申請の処理に要する目安として何らかの期間を示すよう努めること。
4 地方公共団体等同一の許認可等について多数の処分庁が存在する場合において、その審査がいずれの処分庁においても同一の期間に終了すると見込まれるものであるときは、法令所管省庁においても、あらかじめ一応の目安を示すなど、標準処理期間の設定が円滑に行われるよう努めるものとすること。
5 標準処理期間は、申請の処理の目安として定められるものであり、その期間の経過をもって直ちに「不作為の違法」に当たるということにはならないが、申請者からの照会に対しては、迅速な処理に努めていることが理解されるよう、第九条第一項の規定の趣旨に沿って適切に対応すること。

三 審査基準及び標準処理期間の公表(第五条、第六条関係)

1 審査基準を公にするに当たっては、審査基準が、申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準であることから、当該法令に規定されている条文やその解釈に関する文書を併せて申請者等に示すことができるようにしておくこと。
2 審査基準が、法の施行日において公にできないものについては、その理由が「行政上特別の支障があるとき」に該当することによるものか、あるいは、従来より審査実績がないなど止むを得ない事情があって、施行時点では具体化できないことによるものか、いずれにしてもその間の事情を、また、公にできる場合においても、基準として十分に具体化することが困難なものについては、その理由を、申請者等に説明できるよう、関係窓口の職員に対してその徹底を図ること。
3 公にされている審査基準を変更する場合の国民への周知については、その審査基準が一般的に定着している場合には、単に事務所に備え付けている関係文書の差し替えといった方法だけでなく、関係者への情報提供などの方法により積極的に国民が知りうるような措置を講ずることが望ましいこと。
4 標準処理期間の設定が困難である場合には、その理由を申請者等に対して説明できるよう、関係窓口の職員等に対してその徹底を図ること。

四 申請に対する審査、応答(第七条関係)

1 申請が行政庁の事務所に到達したときは、当該申請が形式上の要件に適合しないものであっても、行政庁は、その補正を求めることによって審査を継続する意思があるのか、あるいは、求められた許認可等を拒否することによって審査を打ち切るのか、いずれかの対応を明確にしなければならない。これは、申請の的確かつ迅速な処理を確保することをねらいとするものであるので、申請が受付窓口において適切に処理されるよう関係職員に対してその趣旨の徹底を図ること。
2 法令において経由機関に関する規定が置かれている場合には、申請者が直接行政庁に対して申請することが許されなくなるものも多いので、申請者の手続上の権利を保障しようとする法の趣旨にかんがみ、申請がなされたにもかかわらず経由機関において申請の処理が遅延するような不適切な事態を招かないよう、以下の点に留意すること。

1) 経由機関が処理に要する期間を行政庁において明確に示すこと
2) 当該許認可等を行う行政庁は、経由機関について標準処理期間を設定した趣旨にかんがみ、やむを得ない事情がない限り当該処理期間内に処理を終えるよう経由機関に対して徹底するとともに、処理が遅延していることを知ったときは、遅滞なく申請書を送付させるなど必要な措置をとること

五 拒否処分をする場合の理由の提示(第八条関係)

1 申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合に示す理由については、許認可等の性質、その根拠法令や審査基準の内容や具体性によりその程度は異なるものと考えられ、許認可等の性質、当該法令の趣旨、目的に照らして判断されるべきであるが、どのような事実を基に拒否処分が行われるのか申請者において十分認識し得る程度に示すこと。
2 第八条第二項は、処分が書面により行われるか口頭により行われるかは、当該処分を規定する法令において決められるべきものとの考え方の下に、処分が書面で通知されても、その理由が口頭で示されるだけでは、判断の慎重、合理性を担保し、併せて処分の相手方に対して事後の便宜に資するという趣旨が損なわれるおそれがあることから規定しているものである。したがって、本条をもって、処分を口頭で行うことが容認される根拠とすることのないよう留意すること。

六 申請者以外の者の利害の考慮(第一〇条関係)

現行の法令では、許認可等を行うに当たって、関係者の意見を聴取する具体的な方法についての規定がない場合であっても、当該法令において申請者以外の者の利害を考慮すべきことが許認可等の要件とされているときには、行政庁が許認可等を行うかどうかの判断に際しては、関係者から意見聴取に努める実益のないときや関係者からの意見聴取に努めることが他の公益との比較衡量上不適切と考えられるとき、あるいは、行政効率を著しく阻害すると考えられるときなどを除き、行政庁がその判断に当たっての必要な情報を収集するために必要に応じ関係者の意見を聴取することが望ましいとの観点から、行政庁に努力義務を課すこととしたものである。
したがって、円滑な行政運営を確保するため、本条の立法趣旨を踏まえ、行政庁において申請事案ごとにそれぞれの事情を十分考慮して適切に判断される必要があること。

第三 不利益処分関係

一 処分基準の設定(第一二条関係)

1 処分基準の設定については、一般に処分に関する行政庁の裁量が比較的広く、また、処分の原因となる事実の反社会性や処分の名あて人となるべき者の情状等を個別の事案ごとにどう評価するのかといった問題もあるので、努力義務としているが、その設定に当たっては、基本的には、「第二 申請に対する処分関係 一 審査基準の設定(第五条第一項・第二項関係)」に準じて、その運用を行うこと。
2 処分基準を公にしておくことについては、これにより脱法的な行為が助長される場合も想定されるので努力義務としているものであるが、処分基準の設定も含めて、法の趣旨を十分に踏まえ、適切な対応に努めること。

二 聴聞手続又は弁明手続の選択(第一三条関係)

1 不利益処分の名あて人となるべき者について弁明の機会の付与の手続を執った場合にあって、その結果として、第一三条第一項第一号イからハまでに掲げる処分を行うことが相当であると判断し、当該処分をしようとするときには、改めて聴聞手続を執る必要があること。
2 処分の原因となる事実が発生した場合に、その事実に基づいて、第一三条第一項第一号イからハまでに掲げる処分を行うこととするか、又は同号イからハまでに掲げる処分以外の処分を行うこととするかについて、あらかじめ予定できない事情がある場合には、聴聞手続を執ることが適当であること。

三 不利益処分をする場合の理由の提示(第一四条関係)

1 不利益処分をする場合の理由の提示については、基本的には、「第二 申請に対する処分関係 五 拒否処分をする場合の理由の提示(第八条関係)」に準じて、その運用を行うこと。
2 不利益処分をする場合に名あて人の所定が判明しないときにおけるその処分の理由の通知の取扱いについては、処分に関する慎重な判断を担保し、及びあて人の事後救済手続上の便宜を図るという本条の趣旨にかんがみ、処分の通知を公示の方法により行う際に、あわせて、その理由をいつでも名あて人に提示する旨を公示しておくこと。

四 事前通知(第一五条、第三〇条、第三一条関係)

1 聴聞又は弁明の機会の付与の通知において記載する「不利益処分の原因となる事実」については、不利益処分のあて人となるべき者等が防御権の行使の準備を行う上で欠かせないものであり、名あて人となるべき者の防御権を保障する趣旨が損なわれないよう事実の概要を具体的に記載すること。
2 「聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地」については、聴聞を行うに当たり、不利益処分の名あて人となるべき者等が文書等の閲覧(第一八条関係)や関係人の参加許可(第一七条関係)等に関して連絡、照会を行う相手先として記載する趣旨であり、具体的な対応が可能となるよう、行政庁の聴聞事務担当課又は室等の組織の名称及び所在地を記載すること。
3 不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合に第一五条第三項(第三一条において準用する場合を含む。)に規定する公示の方法により通知を行うに当たっては、掲示を始めた日から二週間を経過したときに当該通知がその者に到達したものとみなされることにかんがみ、通知において記載する聴聞の期日又は弁明の機会の付与の日時については、提示を始めた日から数えて、二週間に同条第一項に規定する相当な期間を加えた日数を下回って設定してはならないこと。
4 不利益処分の名あて人となるべき者が聴聞の期日の変更を申し出ることは、第一五条第一項の趣旨から、十分許容されるものであること。したがって、その申出に理由があれば、行政庁は、申出に係る必要な調整に努め、その結果聴聞の期日を変更することとなれば、その期日を当該名あて人となるべき者等に通知することとすること。
5 第一三条第一項第一号ハに該当する不利益処分に係る聴聞において第一五条第一項の通知を行った場合には、当該処分において解任し又は除名すべきこととされている役員等がその通知を受けた者とみなされ、当事者の地位を取得することとなることにかんがみ、その者の聴聞に関する手続への参加が円滑に確保されるよう、行政庁は、当該役員等に対し参考までに連絡を行い、又はその通知を受けた当事者に対し、速やかに通知の内容を当該役員等に対し連絡するよう指導すること。

五 関係人の聴聞に関する手続への参加(第一七条関係)

1 聴聞に関する手続に参加することを希望する者がいわゆる「関係人」に当たるかどうかを認定するに際しては、その者が予定される不利益処分につき自ら利害関係を有する旨を行政庁に対して疎明することとする手続が必要になると考えられるが、その疎明手続及び主宰者による参加許可手続については、聴聞の期日までに十分な時間的余裕を持って行うこと。また、その者の申請があった時に、既に聴聞の期日までの時間的余裕がない場合にあっては、できる限り速やかにこれらの手続を行うものとし、聴聞規則等において当該申請の期限を設けることとしている場合であっても、その期限を経過してなされた申請を速やかに処理することにより対応できるときにまで拒否することのないよう留意すること。

主宰者が関係人に対して聴聞に関する手続に参加することを求める場合にあっても、同様に、聴聞の期日までに十分な時間的余裕を持ってその求めを行うこと。

2 関係人の認定に当たっては、第一八条の文書等の閲覧手続及び第二四条第三項の報告書作成手続を適切かつ円滑に進めるため、その者が自己の利益を害されることとなる関係人か否かについても判断しておくこと。

六 文書等の閲覧(第一八条関係)

1 不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧に当たっては、適宜、資料目録を作成しその内容を相手方に教示するなど、関係者の資料の閲覧が円滑に進められるよう配慮すること。
2 資料の閲覧を許可することにより第三者の利益を害するおそれがあるなど正当な理由があるとして、その閲覧を拒む場合にあっては、拒む理由となる部分以外の関係のない部分まで閲覧を拒むことはできないこと。したがって、閲覧請求の対象となる資料の全てについて閲覧を拒む理由があると判断するのでなければ、支障がある部分を伏せるなどして閲覧させることが適当であること。
3 聴聞の期日における審理の過程で資料の閲覧請求があった場合に、その資料の閲覧を認めるべきにもかかわらず当該期日において閲覧させないときには、改めて聴聞の期日を定め、それまでの間にその資料を閲覧させる必要があること。
4 資料の閲覧について日時及び場所を指定する場合にあっては、聴聞の期日における当事者等の防御権の行使の準備を妨げることのないよう、十分な時間的余裕を持って指定すること。
5 本条は、資料の閲覧に際して、閲覧請求対象資料の複写を行うことまで保障する趣旨ではないが、他方で、複写を禁止するものでもないので、閲覧請求者から資料の複写の申出があれば、その資料の保全状態やその閲覧に係る申出者の便宜又は設備の設置状況等を参酌しつつ、行政庁の裁量により適切に対処すること。

七 主宰者の指名(第一九条関係)

1 主宰者の指名については、主宰者により関係人の参加許可等の事務が円滑に進められるよう、聴聞の通知の時までにはこれを行うものとすること。
2 主宰者を指名して以降、当該主宰者が第一九条第二項各号のいずれかに該当するに至ったときは、速やかに、新たな主宰者を指名すること。
3 本条は、不利益処分を行う立場にある課等の責任者を主宰者に指名することを排除するものではないが、当該行政庁の組織等の態様等に応じ、当該責任者以外の職員を主宰者に充てることが可能である場合にあっては、国民の聴聞運営への理解に資する観点からは、当該責任者以外の職員を主宰者に指名するなど配慮することが望ましいと考えられること。

なお、運用上、主宰者を補佐する職員を置いて補助的な義務(調書等の作成に関する経過の記録等)を行わせる場合には、同様の観点から、その聴聞に係る事案の調査検討に携わった職員以外の職員を充てるよう配慮すること。

八 聴聞の進行(第二〇条、第二一条関係)

1 当事者等の質問について主宰者の許可によることとしているのは、質問権が濫用されることとなれば、聴聞の審理の円滑かつ適切な進行が妨害されることとなるおそれがあることを配慮したものであり、当事者等の質問権を不当に制限することがあってはならないこと。
2 補佐人の出頭許可については、当事者等の防御権の適正な行使又は聴聞の審理の円滑な進行の上で必要と認められる場合には、法の趣旨から、当然にそれを許可することが必要であると解されること。

また、補佐人の許可の手続については、「五 関係人の聴聞に関する手続への参加(第一七条関係) 一」に準じて、その運用を行うこと。

3 第二〇条第四項は当事者等の主張の内容等をより明らかなものとし、もって当事者等の権利利益の保護に資するとの趣旨で規定するものであるので、主宰者は、同項の規定により、不利益処分の原因となる事実を立証することとなる証拠書類等の提出まで促すことができるものではないこと。
4 聴聞においては、特定の分野において専門的知識を有する第三者等のいわゆる参考人等からの意見聴取の手続まで定めているものではないが、必要に応じ、聴聞に係る事案に関し参考人等からの意見聴取を行い、もって適正な審理に資することとすることまで排除するものではないこと。
5 陳述書及び証拠書類等の提示の方法については、当該陳述書等又はその写しを提示する方法によることとなるが、陳述書については、提示を求める者が了解する場合には、口頭でこれを読み上げることもできると解されること。
6 陳述書の提示については、陳述書はその提出者の意見陳述に代わるものと位置付けられるので、原則として主宰者はこれを拒むことはできないものと解されるが、証拠書類等については、これを提示することにより提出者又は第三者の正当な利益を害するおそれがある場合には、その部分について提示を拒むこととしてもやむを得ないものと解されること。

九 聴聞の続行と終結(第二二条、第二三条関係)

1 続行期日の指定に関し、なお聴聞を続行する必要があるかどうかの判断については、当該事案について当事者等の防御権を保障する上でその意見陳述等の機会が十分に与えられたかどうか、また、当該不利益処分の原因となる事実について当事者等の主張に根拠があるかどうかについて判断する上で、なお当事者等の意見陳述等を促す必要があるかどうか等の観点に照らし、法の趣旨を十分に踏まえてこれを行うこと。
2 当事者が聴聞の期日に出頭しなかった場合には、第二三条に該当する場合を除き、その当事者に意見陳述等の機会を与えるため、改めて聴聞の期日を定めることとなるが、その場合には、第二二条の規定の適用を受け、聴聞の期日の指定等については同条に定める手続によることとなること。
3 当事者に代わり、その代理人が聴聞の期日に出頭し、若しくは陳述書若しくは証拠書類等を提出し、又は参加人に代わり、その代理人が聴聞の期日に出頭した場合にあっては、その当事者又は参加人については第二三条の適用はないこと。
4 第二三条第二項は、やむをえない理由により当事者の聴聞の期日への出頭が相当期間見込めないにもかかわらず、その当事者が自らの口頭による意見陳述をあくまで求めるなどしてその陳述書又は証拠書類等を提出しようとしないことが、一方で、処分により確保されるべき公益を不当に害するおそれがあることに配慮したものである。本規定の適用に当たっては、当事者の権利利益を不当に損ない、聴聞本来の趣旨を没却することのないよう、当事者の意向、状況等について慎重に検討を行い判断を行うこと。

一〇 聴聞調書及び報告書の作成等(第二四条関係)

1 調書は、行政庁が不利益処分の決定についての事実認定を行う上で、重要な基礎となるものであり、適正な事実認定に十分に資することとなるよう、当事者及び参加人の陳述の要旨は的確に記載すること。

また、当事者等から提出された証拠書類等とその当事者等が行った陳述との関係が明確なものとなるよう、証拠書類等と陳述内容との対応関係を明らかにしておくこと。

2 調書及び報告書の行政庁への提出に当たっては、あわせて、当事者等から提出された証拠書類等を添付すること。
3 主宰者は、聴聞の審理(陳述書等に基づくものを含む。)の結果を踏まえ、法により授権された権能の下、主宰者としての責任において報告書を作成するものであること。

なお、報告書の具体的な記載方法については、特に制約があるものではないが、例えば、次のような例が考えられる。
1) 当事者等の主張に理由がないことが明白であるとの心証を抱いた場合

「〜なので、当事者等の〜の主張には理由がないものと考える。」

2) 客観的・明白な証拠はない(行政庁が保有する証拠書類等と当事者等が提出した証拠書類等と整合しないような場合。以下同じ。)が心証として理由がないと考えられる場合

「〜の観点からみれば、当事者等の〜の主張には理由がないのではないかと考える。」

3) 客観的・明白な証拠はないが心証として理由があると考える場合

「〜の観点からみれば、当事者等の〜の主張には理由があるのではないかと考える。」(又は「〜の点については、行政庁が保有する証拠書類等では十分に証明されないのではないか。」という書き方もありうると考えられる。)

4) 当事者等の主張に理由があることが明白であるとの心証を抱いた場合

「〜なので、当事者等の〜の主張には理由があるものと考える。」

また、聴聞の審理の場で、当事者等が、例えば、「(不利益処分の原因となる事実の存在自体は認めた上で)〜という事情があるので、処分は勘弁してほしい。」といういわゆる情状に関する事実を述べることを排除する趣旨ではないので、その情状事実に理由があると思料するときは、例えば、「処分に当たっては、〜の点についても参酌願いたい。」旨の意見を記載することもできる。

4 調書及び報告書は、聴聞の終結後速やかに行政庁に提出されることとなるが、特に続行期日が定められた場合における第一回目等の聴聞の期日に係る調書については、その作成後行政庁に提出するまでの間は、主宰者において適切に管理が行われること、また、その間、その閲覧の求めがあったときには主宰者がこれに対応すべきものである旨留意を要すること。

一一 聴聞の再開(第二五条関係)

「聴聞の終結後に生じた事情」とは、聴聞の終結後に、不利益処分の原因となる事実について行政庁が新たな証拠書類等を得た場合等を指すものであること。

一二 不利益処分の決定(第二六条関係)

行政庁は、不利益処分の決定をするときは、法第二六条で規定するとおり、聴聞の審理の結果を踏まえ作成される調書及び報告書を参酌してこれを行うものである。とはいえ、聴聞の趣旨を踏まえれば、聴聞の審理の対象となった不利益処分の原因となる事実以外の事実(以下「新事実」という。)に基づいて不利益処分をすることがあってはならず、新事実を原因として不利益処分をしようとするときは、改めて当該新事実について聴聞を行うことが必要であること。

一三 その他

1 口頭による弁明の機会の付与を行う場合にあっては、口頭によるやりとりを行う権利まで保障する趣旨ではないものの、弁明を受ける行政庁の職員は、法の趣旨を十分に踏まえ、不利益処分の名あて人となるべき者の権利の行使を不当な損なうことのないよう、真摯な対応に心掛けること。
2 口頭による弁明の機会の付与を行う場合にあっても、法の趣旨を確保していく上で、弁明を受ける職員は、その弁明内容を的確に記録し、適切な管理に努めることとし、また、法の趣旨からは、その者が書面で提出することを希望すれば当然これは許容すべきであると解されること。
3 第二七条第二項ただし書の規定は、第一五条第三項の規定による提示を行った結果、その聴聞の期日までの間に不利益処分の名あて人となるべき者が同項に規定する書面(聴聞通知)の交付を受けた場合にあっては、適用されないこと。

第四 行政指導関係

一 行政指導の明確原則と書面の交付(第三五条関係)

1 行政指導については従来から、とかく不透明、不明確との強い判断があることを踏まえ、第三五条第一項において、それが口頭によると書面によるとを問わず、その趣旨、内容、責任者が明確に示されなければならないという明確原則を定め、その具体化の方法として、求めに応じて書面を交付することとしている。このような法の趣旨を行政指導に携わる者に十分徹底させる必要があること。
2 第三五条第二項に規定する書面の交付に際しては、行政指導の内容等を書面で明らかにすることが相手方の協力を得るためにも有益であることにも十分留意し、書面の作成に当たっては、具体的かつ分かりやすく記述すべきものであること。

なかでも、行政指導に対しては一般にその責任の所在が不明確であることについての批判が強いことから、誰が当該行政指導を行うことを決定した者であるかを示す「責任者」を明示することが重要であり、当該「責任者」が特定できるよう具体的な職名等を明記する必要があること。

3 第三五条第二項に規定する「行政上特別の支障」に該当するか否かについては、基本的にはケースバイケースの判断によるものであり、行政指導を行った当該行政機関において判断することとなるが、既に口頭で行った行政指導についてこれをそのまま書面化するものであることから、これを拒み得る「行政上特別の支障」とは、口頭で趣旨、内容、責任者を明らかにすることはできても、書面を交付することによってその内容が一般に明らかになり、行政目的の実現が妨げられるおそれを生ずる場合などに限られるものであり、法の趣旨を損なう運用が行われることのないよう留意すること。
4 広範多岐な行政分野において様々な形で行われている行政指導について、一律に書面化を義務付けることは困難であり、行政運営の効率性とのバランスを考慮した結果、その端緒を「相手方から求められたとき」としたものであり、相手方からの求めがあれば、行政上特別の支障がない限り、できるだけ速やかに書面を交付すべきことは当然である。ただし、第三五条第三項に規定する場合のように、行政指導の明確化という本制度の趣旨に照らし、相手方からの書面の請求に応ずる必要がないケースについてまで書面交付を義務付ける趣旨ではないこと。

二 行政指導の指針の策定、公表(第三六条関係)

1 策定、公表すべき「共通してその内容となるべき事項」とは、いわゆる「行政指導の指針」であって、申請に対する処分における審査基準、不利益処分における処分基準に該当するものであり、個々の行政指導を行う場合の行政機関の基本的な考え方を明確に示すことにより、行政指導の透明性・公平性を確保し、もって、国民の行政に対する信頼の確保に寄与するという本条の趣旨を踏まえて、その策定に当たること。
2 「共通してその内容となるべき事項」としては、おおむね、1)当該行政指導を行う趣旨(目的)、2)その対象となり得る者の範囲又は該当する行為、3)その対象となる者に対して求めることとなる作為又は不作為の内容及び4)当該行政指導を行う場合の責任者に関することが必要であること。
3 行政指導については、法令にその根拠となる規定が置かれた当該行政指導の趣旨等が明確になっているものもあるものの、一般にはどのような行政指導が行われるのかは国民にとって必ずしも明確ではない。このため、策定当初における行政指導の指針の周知に際しては、事案に応じて、関係者への情報提供などの方法により積極的な公表措置を講ずる必要があること。

三 業界団体に対する行政指導

業界団体に対してその傘下の事業者に対する指導を求める行為は、当該団体に対する行政指導に該当するので、第三五条の適用を受け、当該団体からの求めがあれば書面を交付する必要があること、また、その内容が、行政機関が事業者に対する行政指導を行う場合の指針となるべきものであるときは、第三六条の適用をも受け、同条の規定に従い公表する必要があること。


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