建設省官技発第一六〇号
昭和四九年七月一〇日

土木研究所長、建築研究所長、各地方建設局長、筑波研究学園都市営繕建設本部長、北海道開発局長、沖繩総合事務局長、各都道府県知事、政令指定都市市長、日本住宅公団総裁、日本道路公団総裁、首都高速道路公団理事長、阪神高速道路公団理事長、本州四国連絡橋公団総裁、水資源開発公団総裁、下水道事業センター理事長あて

建設事務次官通知


薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針について

薬液注入工法による建設省所管の建設工事の施工については、先に昭和四九年五月二日付け建設省官技発第一〇二号をもつて指示したところであるが、今般、その取扱いについて、別添のとおり薬液注入工法による建設工事の施工に関する暫定指針を定めたので、左記事項に留意し、その取扱いについて遺憾なきを期せられたい。

1 この暫定指針は、今後新たに着手する薬液注入工法による建設省所管の建設工事に適用するものであること。
2 この暫定指針は、現段階においては、薬液の地中での性質が必ずしも明らかでないものがあることにかんがみ、安全性重視の観点に立つて、その性質が明確になるまでの間、薬液の種類を限定することとしたが、今後研究の進展に伴い、その見直しを行うものであること。
3 現在、薬液の注入を一時中止している工事の再開については、次の各号に定めるところによること。

(1) 周辺の井戸水に関し、別表1に掲げる検査項目について、同表の検査方法により、検査を行い、その測定値が同表に掲げる水質基準に適合しているか否かを確認すること。この場合において、同基準に適合していないものがあるときは、簡易水道の敷設等飲料水の確保に関し代替措置を講ずること。
(2) 再開工事において使用する薬液は、水ガラス系の薬液で劇物又は弗素化合物を含まないものに限るものとすること。
(3) 再開工事の施工については別添暫定指針第三章の、また、同工事の施工に伴う地下水等の水質の監視については同第4章の例によること。
(4) この暫定指針でその使用を認められていない薬液を注入した地盤を掘削することとなる場合においては、次によること。

(イ) 掘削残土の処分にあたつては、地下水等としや断すること。
(ロ) 地下水等の水質の監視については、別表1に定める検査項目、検査方法及び水質基準により行うこと。この場合において、採水回数は、薬液注入完了後一年間、一月に二回以上行うものとする。
(ハ) 排出水の処理にあたつては、別表2の基準に適合するように行うこと。

4 なお、この暫定指針においては、工事施工中緊急事態が発生し、応急措置として、行うものについては適用除外とすることとしたが、この通知の趣旨にかんがみ安全性の確保に努め、特に地下水等の水質の事後の監視については、上記3の(4)に準じて厳重に行うこと。


別表―1

水質基準

薬液の種類
検査項目
検査方法
水質基準
備考
水ガラス系
水素イオン濃度

水質基準に関する省令(昭和41年厚生省令第11号。以下「厚生省令」という。)又は日本工業規格K0102の8に定める方法
PH値8.6以下であること。

 
 
過マンガン酸カリウム消費量

厚生省令に定める方法
10ppm以下であること。
薬液成分として有機物を含むものに限る。

 
弗素

厚生省令に定める方法
0.8ppm以下であること。
薬液成分として弗素化合物を含むものに限る。

尿素系
ホルムアルデヒド

日本薬学会協定衛生試験法のうち保存料試験法の17.b―1による方法
検出されないこと。

 
アクリルアミド系
アクリルアミド

ガスクロマトグラフ法(試料を10倍に濃縮し、炎イオン化検出器を用いて測定するものに限る)
検出されないこと。

 
リグニン系
六価クロム

厚生省令に定める方法
0.05ppm以下であること。

 

注 検出されないこととは、定量限界以下をいう。

定量限界は、次のとおりである。

ホルムアルデヒド 0.5ppm
アクリルアミド 0.1ppm



別表―2

排水基準

薬液の種類
検査項目
検査方法
水質基準
備考
水ガラス系
水素イオン濃度

日本工業規格K0102の8に定める方法
排水基準を定める総理府令(昭和46年総理府令第35号。以下「総理府令」という。)に定める一般基準に適合すること。

 
 
生物化学的酸素要求量又は化学的酸素要求量

日本工業規格K0102の16又は13に定める方法
総理府令に定める一般基準に適合すること。
薬液成分として有機物を含むものに限る。

 
弗素

日本工業規格K0102の28に定める方法
総理府令に定める一般基準に適合すること。
薬液成分として弗素化合物を含むものに限る。

尿素系
水素イオン濃度

日本工業規格K0102の8に定める方法
総理府令に定める一般基準に適合すること。

 
 
ホルムアルデヒド

日本薬学会協定衛生試験法のうち保存料試験法の17.b―1による方法又は日本工業規格K0102の21に定める方法
5ppm以下であること。

 
アクリルアミド系
アクリルアミド

ガスクロマトグラフ法(炎イオン化検出器を用いて測定するものに限る。)
1ppm以下であること。

 
リグニン系
六価クロム

日本工業規格K0102の51.2.1に定める方法
総理府令に定める一般基準に適合すること。

 


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