建設省営計発第六四号
昭和六三年一〇月三日

筑波研究学園都市施設管理センター長あて

建設大臣官房官庁営繕部営繕計画課長通知


官庁施設のアスベスト対策について

標記について、別添のとおり吹付けアスベスト粉じんの飛散防止対策に関する暫定方針を定めたので、通知する。



別紙

吹付けアスベスト粉じん飛散防止対策暫定方針

(建設大臣官房官庁営繕部)
天然の鉱物繊維である石綿(アスベスト)は、耐火性、耐酸・アルカリ性、耐熱性、耐摩耗性に優れているため、建築材料(成型板、耐火被覆、吸音等を目的とした吹付け材(石綿吹付け材))として幅広く使用されてきた。このうち、石綿吹付け材として使用されてきたアスベストについては、吹付け作業従事者の健康への影響が指摘されたため、官庁営繕部では昭和四八年三月以降に設計された官庁施設での石綿吹付け材の使用を取り止めている。しかしながら、昭和五〇年以前に建設された官庁施設には石綿吹付け材を使用している施設もあり、その一部では経年による劣化や損傷が生じていることが想定される。また、一般の建築物についても、このような部位から、石綿吹付け材の粉じんが飛散する場合や当該部位の除去作業時に発生する粉じんによる人体の健康や環境への影響について社会的な関心が高まり、昭和六二年一二月二一日の参議院予算委員会では、建設省に対して、民間及び公共建築物におけるアスベストの使用状況等に関する質問が出されている。
これらを背景として各省庁でも様々な取組がなされているが、建設大臣官房官庁営繕部では、昭和六二年度に建設省が所掌する全施設、五、四〇〇施設(一〇、八四一千m2)を対象として、「石綿吹付け材の使用状況実態調査」を実施した。同調査により、少なくとも各省庁施設の約三〇〇施設で吹付けアスベストを使用していることが判明している。
このため、官庁営繕部では吹付けアスベストを使用している官庁施設について、所要の措置を適正かつ円滑に講ずることを目的として、次のとおり「吹付けアスベスト粉じん飛散防止対策暫定方針」を定める。
なお、同暫定方針に記載されていない事項は、建設省住宅局建築指導課及び建設大臣官房官庁営繕部監修の「既存建築物の吹付けアスベスト粉じん飛散防止処理技術指針・同解説」によるものとする。
1 基本方針

官庁営繕部が実施する吹付けアスベスト粉じん飛散防止対策(以下「防止対策」という。)は、対象施設に講ずる所要の措置内容(調査、維持保全及び各種処理)を別途定める「吹付けアスベスト関連調査要領」等により適正に判断して実施することを原則とする。措置を講ずる施設については、建物利用者の健康に対する安全性と建物等の所期の要求機能や性能を確保するものとし、措置の過程で発生する粉じん等が建物利用者、措置作業者等の健康及び周辺の環境に与える影響を十分に考慮するものとする。また、措置の実施については吹付けアスベスト関連調査結果等に基づき、緊急性の高い施設から順次計画的に整備していくこととするが、当面、昭和六三年度は試行期間とし、本省営繕計画課が指定する事案について、官庁営繕費により吹付けアスベスト関連調査及び所要の処理を行い、その試行結果等により同方針の見直しを図ることとする。
なお、試行後は措置対象施設数等を勘案し、中長期的観点から、吹付けアスベスト対策の技術的向上の進捗に整合した措置を計画的に行っていくものとする。

2 措置内容の判断と処理工法の選定

2・1 措置内容の判断

昭和六四年度以降、同対策を円滑かつ効率的に実施するため、各地方建設局等は、吹付けアスベストを施工している施設及び施工しているおそれのある施設について、別途定める「吹付けアスベスト関連調査要領」により所要の調査を各省各庁において実施するよう指導し、その調査結果に基づき、
(1) 維持保全する建物
(2) 処理を要する建物

とに、適正に判断する。

「維持保全する建物」と判断した場合、各地方建設局等は、当該施設管理者に対し別途定める「維持保全計画書」を作成の上、当該施工箇所を継続的に調査しながら所要の措置を講じるよう指導するものとする。
「処理を要する建物」と判断した建物について、各省各庁が官庁営繕費の施設特別整備により当該建物の処理を計画する場合、各地方建設局等は当該省庁が作成した営繕計画書と関連資料について当該省庁と協議の上、本省営繕計画課に提出する。下図は、その業務フローを示したものである。

2・2 処理工法の選定

処理工法の選定は、長期営繕計画又はその他の施設設備計画に照らし、次に示す「吹付けアスベスト粉じん飛散防止処理工法の選定フロー(案)」により選定する。
飛散防止処理工法の選定フロー(案)

※……既存建築物の吹付アスベスト粉じん

飛散防止処理技術指針・同解説

3 処理工法の仕様書作成等
3・1 設計図書の作成等について

吹付けアスベスト粉じん飛散防止改修工事(以下「アスベスト改修工事」という。)の設計図書作成等に当たっての打合せ、必要図書の考え方、表現方法等の設計プロセスは、通常の内装改修工事等と基本的には同じであるが、高度な安全管理のために特殊な仮設を必要とすること、作業性の良否による単価の差が大きいこと等アスベスト改修工事特有な内容を考慮して設計する必要があるので、設計段階での共通認識を高めるため、留意事項等を左記のとおり整理した。
(1) 設計打合せ等についての留意事項

1) 施設管理者に対し「改修工事」の概要を説明し、共通な認識の立場で安全管理、工程(作業日、工程を含む。)等について事前に十分打合せをする必要がある。
2) 施設の現状を極力設計図書に明示するために、事前調査を十分行う必要がある。
3) 更衣室等の仮設の設置場所及び廃棄物の処理方法等について、事前調査を行う必要がある。

(2) 設計図書作成についての留意事項

施工計画立案及び作業性の良否の判定を容易にできるよう考慮した設計図書を次のとおり作成する必要がある。
1) 特記仕様書……吹付けアスベスト粉じん飛散防止改修工事仕様書作成要領(案)によるほか、工事内容を明記する。

例……○○室の天井部分、吹付けアスベストを除去し、飛散防止処理剤塗布の上ロックウール吹付けを行う。

2) 仕上表……アスベスト改修工事の対象室及び更衣室等の仮設設置に係る室の各部の仕上げを明示する。
3) 配置図……アスベスト改修工事の対象室及び周囲の状況等を明示する。
4) 平面図……アスベスト改修工事の対象室のフロア全体を表すものとし、対象室及び更衣室等の仮設設置エリアを明示する。対象室のフロアが一階以外の場合、一階平面図を参考に添付することが望ましい。
5) 平面詳細図……アスベスト改修工事に障害となる設備機器、配管類、書架等も明示する。
6) 展開図……アスベスト改修工事の対象室の展開図は四面とし、処理範囲(寸法も併せて表示する。)を示すほか、梁型、建具、盤類等を明示する。
7)天井伏図……アスベスト改修工事の対象室は、天井高のほか、梁型及び障害となるダクト配管類を明示する。
8) 現場説明書……作業日(曜日)、作業時間を明示する。

3・2 共通仕様書の適用

吹付けアスベストの粉じん飛散防止工事の共通仕様は、「吹付けアスベスト粉じん飛散防止改修工事共通仕様書(案)」による。

3・3 特記仕様書の作成

吹付けアスベストの粉じん飛散防止工事の特記仕様は、「吹付けアスベスト粉じん飛散防止改修工事仕様書作成要領(案)」による。

3・4 吹付けアスベスト関連調査

吹付けアスベスト対策の処理工法選定等を適正に行うための関連調査は、「吹付けアスベスト関連調査要領(案)」による。

4 処理工法の単価等について

各処理工法別の実行単価等については、毎年度実情に応じて別途定めるものとする。



<別添資料>




吹付けアスベスト粉じん飛散防止改修工事仕様書作成要領(案)
第一章 総則

(適用範囲)
第一 この要領は、吹付けアスベスト粉じん飛散防止改修工事仕様書(以下「仕様書」という。)の作成について規定する。
第二 設備工事を含む場合、当該設備工事にかかる仕様書の記載については、「建築設備工事設計図書作成要領(昭和六〇年版)」(昭和六〇年八月二一日付け建設省営設発第三三号)による。
(仕様書の構成)
第三 仕様書は工事名称、工事概要及び工事仕様をもって構成する。
(仕様書の作成)
第四 仕様書は、原則として共通原図を使用して作成する。
2 工事の内容により共通原図を使用して仕様書を作成することが適当でない場合は、この要領に準じて仕様書を作成することができる。

第二章 共通原図の作成

(用紙規格)
第五 共通原図の用紙規格は、「建築製図基準」(昭和五九年二月二一日付け建設省営建発第七号)による。
(記載事項)
第六 共通原図に記載する事項欄は、次の各号に掲げるものとする。

一 工事名称
二 工事概要

イ 工事場所
ロ 工事種目

三 改修工事仕様

イ 共通仕様
ロ 特記仕様

第七 工事種目欄には、必要に応じ工事範囲を含むものとする。
第八 共通仕様欄は、「吹付けアスベスト粉じん飛散防止改修工事共通仕様書(案)」(以下「改修共通仕様書」という。)の適用範囲について記載する。
第九 特記仕様欄は、章、項目及び特記事項並びにその適用用法について記載する。
2 特記仕様の章欄は、改修共通仕様書の章番号及び名称を記載する。
3 特記仕様の項目及び特記事項欄には、別紙第1「共通原図記載事項例」に記載されたもののうち、必要なものを選んで記載する。
4 各章ごとに、項目及び特記事項の追加記載ができるように適宜余白を設ける。

第三章 共通原図を使用した仕様書の作成

(工事概要)
第一〇 工事場所は、原則として地番まで記入する。
第一一 工事種目は、建物、工作物の名称、構造、階数及び工事種別をそれぞれこの順序に記入する。ただし、建物については面積を付記し、工作物などについては構造を適宜記入し、階数は記入しない。
第一二 工事種目の各細目の記入方法は、次の各号による。

一 建物、工作物の名称、構造及び階数は、国有財産台帳上の内容を記入し、略語を用いない。
二 工事種別は、「建築工事仕様書作成要領(昭和六〇年版)」(昭和五九年一二月二四日付け建設省営建発第三五号)の別紙第3「国有財産増減事由用語表〔国有財産法施行細則第八条(増減事由用語)の別表第2〕」により記入する。

(改修工事仕様)
第一三 建築材料等は、「建築材料・設備機材等選定要領(案)」(昭和六三年一月一八日付け建設省営建発第三号、建設省営設発第二号)により適宜選定したものを、別紙第1「共通原図記載事項例」の<  >該当部分に記入する。
第一四 共通原図に記載されている特記仕様の項目及び特記事項の適用方法は、次の各号による。

一 項目のうち、適用する項目の番号に○印をつける。
二 特記事項のうち、・印のついたものを適用する場合は、当該・印に○印をつける。
三 特記事項のうち、・印及び※印のついたものの両方を適用する場合は、両方に○印をつける。
四 ※印のついたものは、改修共通仕様書にうたわれている指定内容又は標準的内容を示すものであり、特殊の事情で※印以外のものを指定する意図のない限り、これを適用する。この場合は○印をつけない。

第一五 共通原図に記載されていないものを適用する場合は、次の各号による。

一 項目が記載されていないものは、必要に応じて各章ごとに設けられた余白に適宜記入し、項目の番号に○印をつける。
二 特記事項が記載されていないものは、その都度指定する事項を記入する。
三 記載されている特記事項によらない場合は、別に指定する事項を記入し、(●)印をつけて適用を明らかにする。

第四章 内装仕上

(防火材料等)
第一六 改修する部屋が建築基準法の内装制限を受ける場合の壁・天井の仕上材は、防火材料又は基材同等の認定を受けた材料とする。
(内装仕上材料)
第一七 除去処理を行った後、吸音・断熱等の要求性能を引き続き必要とする場合は、ロックウール吹付等を行う。
第一八 除去処理を行った後、壁・天井の化粧仕上げを行う場合は、仕上塗材仕上げ又は軽量骨材吹付材吹付けを行う。
(耐火被覆材)
第一九 既存の耐火被覆層の処理を行った場合は、耐火性能を低下させない材料で修復する。



別紙第1 共通原図記載事項例
<別添資料>


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