建設省都環整発第三四号
平成六年三月二八日

建設省都市局長通達



都市環境計画の策定の推進について


市町村の都市環境施策を総合的に推進するため、都市環境計画について左記事項を定めたので、これを参考としつつ、都市環境計画の策定を推進し、それに基づく都市環境施策を積極的に推進されたい。
以上、貴管下市町村(政令指定都市を除く。)に対しても、周知徹底方よろしくお取り計らい願いたい。

1 都市環境計画策定の背景

近年、二酸化炭素などの地球温暖化ガスの排出抑制や省エネルギーなどの地球環境への負荷の軽減や自然との共生に対する重要性が強く認識されている。また、生活の質的向上に伴い、ゆとりや潤いのある都市整備への要請が一層高まっている。
このため、地球温暖化問題に対しては、地球温暖化防止行動計画(平成二年一〇月二三日付け地球環境保全に関する関係閣僚会議決定)により、温室効果ガスの排出抑制等地球温暖化対策に関する政府としての行動計画を定めたところであり、その中で都市においては、二酸化炭素の排出の少ない都市・地域構造の形成を進めることとしているところである。また、建設省においては、建設行政における環境政策の基本的な考え方を明らかにするものとして、本年一月一三日に環境政策大綱を策定したところであり、その中で都市環境計画に基づく環境共生都市の総合的・計画的整備を図ることとしているところである。
これらの状況を踏まえ、都市地域において都市環境に係る施策を総合化、体系化した都市環境計画の策定を行い、これに基づき、都市環境整備を総合的に実施していくことにより、環境共生型の都市の実現を図っていく必要がある。

2 都市環境計画の内容

(1) 都市環境計画の基本理念

都市環境計画における都市環境とは、利便性、快適性等の住みやすさを作り上げていく創出的環境及び大気、水、緑等といった自然的環境という二つの環境の概念から成るものである。都市環境計画は、このような都市環境を対象とし、その向上を図るための計画であり、その基本理念は、環境負荷の軽減、自然との共生及びアメニティの創出を図った質の高い都市環境の形成である。

(2) 都市環境計画の性格

都市環境計画は、都市環境の整備を総合的に推進するための計画であり、都市環境の創造・改善のために必要な施策を総合化、体系化し、これに基づき各種の都市環境施策が展開されるべきものである。このため、都市環境計画は、土地利用計画、都市施設整備、市街地開発等のハード施策と、都市環境に関する地域住民の自主的活動や教育、普及啓発活動などのソフト施策の双方を対象として、総合的に策定するものであり、これらの施策組み合せ、連携によって良好な都市環境の形成に大きく寄与することを目指すものである。

(3) 都市環境計画の構成

都市環境計画の構成は、以下の構成が基本であると考えられるが、市町村の実情や判断により、これと異なる構成となることはさまたげるものではない。
1) 都市環境計画の理念
2) 都市環境の現況
3) 都市環境計画の目標・課題
4) 目標及び課題を実現するための手段
5) 重点整備計画

なお、都市環境計画の構成の具体的な内容については、別紙を参考とされたい。

3 都市環境計画の策定方法

(1) 策定主体及び対象区域

地域の実情に即したきめ細かな内容が求められること、また、都市計画との整合を保つ必要があること等から、策定主体は、市町村の都市部局とすること。
また、計画対象区域については、市町村の区域のうち、良好な都市環境形成の観点から総合的な計画の策定が必要と考えられる地域を選定することとし、必要に応じて都市計画区域外の地域も含めること。

(2) 策定の必要な都市

前記1の背景を踏まえれば、都市環境計画は全ての都市で策定することが望まれるが、都市環境計画策定の効果の把握等を行いつつ施策にフィードバックする等の検討作業が必要であるため、当面、総合的、体系的な都市環境整備の必要性が特に高いと想定される以下の1)又は2)の要件に該当する都市において、その策定の推進に努めること。
1) 三大都市圏若しくは人口二五万以上の都市圏に存する市町村又は県庁所在都市
2) 人口増加や産業機能の集中が進行しており、又は進行が見込まれ、都市環境の状況の変化が生じ、又は生じることが見込まれる市町村

(3) 計画期間

計画期間は、一〇年間を中間目標とした二〇年間とすること。

(4) 策定手続

都市環境計画は、地域に大きな影響を与えるものであり、質の高い都市環境の形成のためには、その地域の実情に即した地域の主体的取組や協力が不可欠である。このため、都市環境計画の策定に当たっては、原案段階から地域住民の意向を反映し、地域の選択を最大限尊重していくこと。
また、都市環境計画は、都市環境に係る施策を総合化した計画であり、その内容として、国及び都道府県の所管事項あるいは都市部局所管事項以外の事項も含むものであるので、都市環境計画の策定に当たっては、関係機関及び市町村内の関係部局と充分に調整をとり、整合性を確保すること。

4 都市計画、都市整備事業等への反映

都市環境計画の内容のうち、都市計画、都市整備事業等を通じてその実現を図ることが適切な施策については、都市環境計画と都市計画法第一八条の二第一項に規定する市町村の都市計画に関する基本的な方針等のマスタープランとの整合を図ることにより、具体の都市計画、都市整備事業等に反映されるよう努めること。
この場合において、都市環境計画において、これらの都市計画、都市整備事業等の施策とその他のソフト施策等との相互連携を明らかにすること等により、都市計画、都市整備事業等の実施が官民一体となった良好な都市環境の形成のための幅広い取組の一環として適切に位置づけられ、さらに実効をあげるものとなるよう留意するとともに、必要に応じ、都市環境計画と市町村の都市計画に関する基本的な方針の策定を連携して行う等内容、形式及び手続上の工夫を行うこと。


(別紙)

都市環境計画の構成について

都市環境計画の構成を以下に示すが、これは都市環境計画の構成の基本であるべきものを示したものであるので、市町村の実情により、市町村の独自の判断によって、この項目から取捨選択し、また、新たに独自の項目を設けることについては、さまたげるものではない。
1 都市環境計画の理念

都市環境計画の基本理念は、環境負荷の軽減、自然との共生及びアメニティの創出を図った質の高い都市環境の形成であり、この理念に沿って、望ましい都市環境像を明らかにすること。

2 都市環境の現況

都市環境計画策定の基礎的作業として、都市計画基礎調査等既存資料の活用や必要に応じた新たな調査の実施により、都市環境の現況について把握、評価を行うこと。都市環境の現況の評価は、都市環境計画の目標、課題の前提となるものであるので、当該都市の都市環境の特徴が明らかとなるものとすること。具体的な項目については、以下に例を示すので、これを参考とされたい。
1) 都市環境の現況の把握

1) 都市の土地利用及び整備の現状(土地利用の現状、市街地開発事業の現状↑等)
2) 都市の創出的環境の現状(都市の利便性の現状、文化環境の現状↑等)
3) 都市の自然的環境の現状(地形、気候、大気の現状、水環境の現状↑等)
4) 都市環境改善の取組の現状(都市環境改善に資する施設整備の現状、都市環境改善の市民の取組の現状↑等)
5) 都市環境に対する市民意識(都市環境に関する住民アンケートの結果↑等)
6) 都市環境の現状のまとめ(当該都市の都市環境の長所、短所の整理)

3 都市環境形成の目標・課題

1) 都市環境計画の目標・課題

都市環境計画の目標・課題については、環境負荷の軽減、自然との共生及びアメニティの創出を図った質の高い都市環境の形成という都市環境計画の基本理念を踏まえた上で、それに各都市の実情を考慮して定めること。また、既存のマスタープランの目標と整合のとれたものであること。特に、環境負荷の軽減、自然との共生、アメニティの創出については、バランス良くその実現を図るよう、その目標・課題を明らかにすること。

2) 課題・目標の定量的な目標値の設定

都市環境計画の目標・課題の中で、定量的に表せるものは出来るだけ記述すること。

4 目標達成及び課題への取組のための具体的な方策

都市環境計画の目標・課題に対応して、その取組のための具体的方策として、具体の地区を対象とした事業や施策を示すこと。この場合、施設整備事業のようなハード施策のみならず、ソフト施策、あるいはそれらを組み合わせた施策に関する事項についても、明らかにし、総合的な効果が発揮できるように留意すること。この内容は、都市計画と充分な連携をとって定めること。また、緑のマスタープラン、都市交通のマスタープラン、流域別下水道整備総合計画等既存の都市計画に関連する計画がある場合には、その活用を図ること。
具体的な項目については、以下に例を示すので、これを参考とされたい。
1) 水環境の保全・創出方策
2) 都市内の緑化推進、緑豊かな自然環境の保全・創出方策
3) 都市空間の整備方策
4) 都市交通体系の整備方策
5) 省エネ・リサイクル都市システムの整備方策
6) 土地利用の方策
7) その他の方策

5 重点整備計画

重点整備計画は、都市環境計画のうち都市環境を整備・改善するための緊急かつ重点的に実施すべき事項を定めるアクション・プログラムである。重点整備計画は、特定の地区を対象とし、その地区において重点的に都市環境の整備を図る重点整備地区の場合と、特定の施策(事業)を決め、それを都市全体で重点的に整備する重点整備施策の場合と二つのタイプがある。重点整備計画の構成として、以下に例を示すので、これを参考とされたい。
1) 重点整備地区の現状と問題点又は重点整備施策の必要性
2) 重点整備計画の目標
3) 重点整備計画の基本方針
4) 重点整備計画の事業実施のあり方


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