建設業の譲渡は、得意な営業分野への特化による収益力の向上、スケールメリットによる経営基盤の拡充等を通じ、当事者双方の企業体質の強化に資するものであり、昨今の建設業を取り巻く厳しい経営環境にかんがみれば、このような企業体質の強化へ向けての建設業者の自主的な取組みについては、可能な限り積極的に支援していく必要がある。
このような観点から、今般、建設業の譲渡に係る建設業法上の事務取扱いについて、建設業者の合併の場合に準じ、左記のとおり細目及び留意事項を取りまとめ、その円滑化と統一を図ることとしたので、今後は関係法令及び通達に加え、これによられたい。
なお、建設業者の合併の場合については、従来から「建設業者の合併に係る建設業法上の事務取扱いの円滑化等について」(平成七年一二月四日付け建設省経建発第二九七号)により、許可関係事務及び経営事項審査事務の円滑化と統一とが図られてきたところであるが、今後もこれに基づき、これらの事務を迅速に処理されるよう取り計らわれたい。
第1 許可関係事務の取扱い
1 建設業の許可申請の取扱い
建設業の譲渡に係る建設業の許可申請の取扱いについては、建設業の譲渡を行う者(以下「譲渡人」という。)から建設業の譲渡を受ける者(以下「譲受人」という。)への建設業の移行の円滑化を図るため、次に掲げる事項に留意するものとする。
(1) 許可申請の速やかな処理
建設業の譲渡に伴い譲受人から建設業の許可の申請があったときは、当該建設業の譲受人への移行を円滑に進め、事業の空白をなるべく生じさせないという観点から、可及的速やかに処理すること。
なお、建設業の譲渡に伴い譲渡人の建設業の許可を取り消す必要がある場合、譲受人に対する同種の建設業の許可は、譲渡人の建設業の許可の取消し前においてもできるものであることに留意すること。
(2) 事前打合わせの実施
(1)の許可申請に係る審査を円滑に実施するため、建設業の譲渡により許可申請が必要となると見込まれる場合には、なるべく早く申し出、事前打合わせを行うよう、建設業者(許可申請をすることとなる者を含む。)を指導すること。
(3) その他の留意事項
建設業の譲渡に当たり事業の内容に変更事項が多数ある場合には審査に相応の期間が必要であり、(1)に掲げる取扱いは建設業の譲渡に伴う許可申請についての行政手続法(平成五年法律第八八号)第六条の標準処理期間をその他の許可申請に比べて短縮する趣旨ではないこと。
2 譲渡人が施工中の建設工事の取扱い
(1) 注文者との事前協議
譲渡人が施工中の建設工事で譲渡がなされる日までに完成しないものの取扱いについては、一般的には注文者と譲渡人の請負契約の中で処理されることとなる(公共工事については公共工事標準請負契約約款第五条参照)ので、当該工事の取扱いについては、建設業の譲渡前から注文者と十分協議するよう関係建設業者を指導すること。
(2) 建設業法第二九条の三第一項の適用に当たっての留意事項
建設業の譲渡に伴い譲渡人の建設業の許可が取り消された場合で、かつ、当該取り消された建設業の許可業種に係る譲渡人の請負契約上の債権債務が包括的に譲受人に引き継がれる場合には、当該建設業の許可業種に関する限り、譲受人を建設業法(昭和二四年法律第一〇〇号。以下「法」という。)第二九条の三第一項に規定する一般承継人に該当するものと解して差し支えなく、この場合、譲受人は、1(1)に掲げる許可を受けるまでの間は、同項の規定により工事を施工することとなる。
第2 経営事項審査関係事務の取扱い
1 譲渡後の経営事項審査を受けることができる時期及び審査基準日
(1) 建設業の譲渡について、譲渡人の建設業に係る営業の全てを譲渡するいわゆる全部譲渡の場合、営業所、従業員、のれん等の有形無形の財産(いわゆる積極財産のほか消極財産も含む。)が、建設業の業種別又は地域別に一括して譲渡される場合等、譲渡人に対する企業評価の全部又は一部を譲受人に承継させるべきであると考えられるときは、譲受人の経営事項審査の取扱いについて、可及的速やかに新たな経営実態に即した客観的事項の評価を行うことを可能とするため、譲渡後最初の営業年度終了の日を待たず、譲受人の経営事項審査を行うことができるものとする。
(2) この場合、審査基準日は、次によるものとする。
1) 譲受人が新たに設立される法人の場合は、譲受人の設立の日である設立登記日
2) 譲受人が1)以外の場合は、建設業の譲渡の契約上定められている譲渡の期日以降であって、かつ、譲渡を受けたことにより新たな経営実態が備わっていると認められる期日
(3) その他以下の事項に留意すること。
1) (2)の審査基準日に係る経営事項審査(以下「譲渡時経審」という。)を譲受人が申請する場合、譲渡人は、建設業の譲渡を行った後の新たな経営実態に即した譲渡時経審を、譲受人と同時に申請しなければならないこと。
2) 譲渡人又は譲受人(以下「譲渡人等」という。)が建設業の譲渡を行う直前の営業年度終了の日を審査基準日とする経営事項審査(以下「譲渡直前経審」という。)を既に受けている場合に、譲渡時経審を譲渡人等に義務付けるものではないこと。
したがって、譲渡人等が譲渡直前経審を受けているときは、譲渡時経審を受けない場合でも法第二七条の二三第一項違反にはならず、譲渡後最初の営業年度終了の日以降の経営事項審査において、譲渡後の新たな経営実態に即した評価がなされるまでの間は、譲渡直前経審が有効であること。
3) 譲渡人等は、建設業の譲渡前に法第二七条の二三第一項違反とならない限り、譲渡直前経審を受けずに、譲渡時経審のみを受ければ足りるものであること。また、譲渡人等が譲渡後に経営事項審査を受けようとする場合には、譲渡直前経審ではなく、譲渡時経審を受けるよう指導すること。
4) 業種毎に時点の異なる評価が並存することは望ましくないことから、建設業の譲渡後に譲渡人等から譲渡時経審の申請がある場合には、公共事業を請け負う可能性のあるすべての業種につき審査を受けるものとし、特定の業種を選択して審査を受けることのないよう指導すること。
5) 譲渡人等が譲渡直前経審及び譲渡時経審の両方を受けた場合においては、譲渡時経審の通知に併せて譲渡直前経審に係る通知を撤回するには及ばないものであるが、再審査の場合(建設業法施行規則(昭和二四年建設省令第一四号)第二一条)にならい、既に法第二七条の二七第三項の規定により譲渡直前経審の結果を通知した発注者に対しては譲渡時経審の結果を通知するとともに、以降同項の規定により発注者の請求があった場合には譲渡時経審の結果を通知すること。
2 審査項目の細目
1(1)の譲渡人に対する企業評価の全部又は一部を譲受人に承継させるべきであると考えられるときには、譲渡人及び譲受人に係る年間平均完成工事高、自己資本額、経営状況、労働福祉の状況、営業年数及び工事の安全成績の各審査項目については、「建設業者の合併に係る建設業法上の事務取扱いの円滑化等について」(平成七年一二月四日建設省経建発第二九七号)別紙第2、2(1)の吸収合併の場合における合併時経審の各審査項目の審査方法の取扱いに準拠して算定する。
3 経営事項審査申請書の記載方法
譲渡人及び譲受人の譲渡時経審及び建設業の譲渡後最初の営業年度終了の日以降初めて受ける経営事項審査の申請については、建設業法施行規則様式第二五号の六の経営事項審査申請書様式中「備考(組織変更等)」欄に、譲受人が新たに設立される法人の場合は設立登記日、それ以外の場合は譲渡人が譲渡を行ったと認められる期日を記載するとともに、譲渡の旨を明記すること。
4 経営事項審査結果通知書の取扱い
譲渡人及び譲受人の譲渡時経審及び建設業の譲渡後最初の営業年度終了の日以降初めて受ける経営事項審査の申請については、発注者に対して譲渡に伴う特例的取扱いによる経営事項審査であること等を明らかにするため、「経営事項審査の事務取扱いについて」(平成一〇年六月一八日建設省経建発第一九二号)の様式第2号の「行政庁記入欄」の下に、譲受人が新たに設立される法人の場合は設立登記日、それ以外の場合は譲渡人が譲渡を行ったと認められる期日を記載するとともに、譲渡の旨を明記すること。