建設省経建発第七〇号
平成一一年三月三一日

各都道府県知事(建設業主管部局)あて

建設経済局長通達


経営事項審査に係る経営状況分析の見直し等について


平成一〇年二月四日、建設市場がかつてみられない大きな構造変化に直面している中、技術と経営に優れた企業が伸びられる透明で競争性の高い市場環境の整備を進めていく観点から、中央建設業審議会より建議が出された。同建議においては、経営事項審査を中核とする企業評価制度について、量的な指標である完成工事高の比重の見直し等の観点から見直しを行い、規模の競争ではなく技術力・質による競争を促すような制度とする必要があるとされており、この指摘を受けて、経営事項審査の審査基準の改正が行われ、平成一〇年七月一日より施行されたところである。
一方、同建議においては、「現行の経営状況分析に関する一二の指標は昭和六三年に定められたものであり、建設業者を取り巻く経済状況も大きく変わったことから、不良資産の反映等の観点も含めて、指標の妥当性等について検討を行い、早期に結論を得る必要がある。」との指摘や、「企業会計では、連結決算を重視する方向にあるが、このような流れを受けて建設業者の経営状況分析に当たって連結決算を用いることを検討すべきである。」との指摘がなされている。
今般、これらの指摘等を踏まえ、建設業法(昭和二四年法律第一〇〇号)第二七条の二三第三項の規定に基づき中央建設業審議会の意見を聴いて、建設業法第二七条の二三第三項の経営事項審査の項目及び基準を定める件の一部を改正する告示(平成一一年建設省告示第一〇五六号)が公布され、平成一一年七月一日から施行されることとなり、併せて建設業法施行規則の一部を改正する省令(平成一一年建設省令第五号)が公布された。
今回の改正の主要な内容は左記のとおりであるので、貴職におかれてはその趣旨に従い、事務処理に当たって遺漏なく措置されるようお願いする。
なお、新たな経営状況分析による経営事項審査については、平成一一年七月一日以降に許可行政庁に申請されたものから適用することとしており、特に平成一一年度は年度途中に改正されることとなるので、各建設業者に対しても改正の趣旨を十分徹底の上、円滑な施行を図られるようお願いする。

1 経営事項審査に係る経営状況分析の見直し

1 新たな経営状況分析の指標

建設業者の経営状況を一層的確に経営状況分析に反映させる観点から、従来の経営状況分析に関する一二の指標を別紙のとおり見直すこととした。
これについては、従来の経営状況分析の収益性を表す各指標は、経常利益を反映する指標で統一されていたが、様々な角度から建設業者の収益性を分析できるようにするため、経常利益に加え営業利益及びキャッシュ・フローを反映する指標を導入することとした。また、従来の生産性を表す各指標は、経営状況を的確に反映していないと考えられるため削除し、新たに安定性を表す指標として、建設業者の抱える有利子負債の状況に着目した指標を導入することとした。

2 連結決算の経営状況分析への反映

企業会計が連結決算を重視する方向にあることを受け、証券取引法(昭和二三年法律第二五号)第二四条の規定により、有価証券報告書を大蔵大臣に提出しなければならない者については、同条の規定により提出された連結財務諸表(連結貸借対照表、連結損益計算書及び連結剰余金計算書をいう。)に基づき算出された経営状況の評点等を、単独の財務諸表(建設業法第二七条の二三第五項(同法第二七条の二六第二項で準用する場合を含む。)の規定により添付された、建設業法施行規則(昭和二四年建設省令第一四号)別記様式第一五号から第一七号までによる直前一年の各営業年度の貸借対照表、損益計算書及び利益処分に関する書類(建設業以外の事業を併せて営む者については、別記様式第二五号の七による当該建設業以外の事業に係る売上原価報告書を含む。)をいう。)に基づき算出されたものに加えて付記することとした。

2 経営事項審査における三級建設業経理事務士の取扱い

経営事項審査の審査項目である建設業経理事務士等の数については、一級及び二級の建設業経理事務士の有資格者(公認会計士、税理士等を含む。)が評価対象とされ、さらに平成一〇年度末までの措置として三級建設業経理事務士の有資格者についても評価対象とされていたが、建設業経理事務士の一層の普及を促進する観点から、三級建設業経理事務士の評価期間を平成一五年度末まで延長することとした。

3 経営状況分析の見直しに係る再審査の申立て

経営事項審査の基準が改正された場合において、当該改正前の基準に基づく経営事項審査の結果の通知を受けた者については、当該改正の日から一二〇日以内に限り再審査(当該改正に係る事項についての再審査に限る。)を申し立てることができることとされており、今回の経営状況分析の見直しに係る再審査の申立期間は、平成一一年七月一日(木)から平成一一年一〇月二八日(木)までとなる。
なお、この場合の再審査の対象となる経営事項審査の結果は、再審査の申請をしようとする日の一年七月前の日以降を審査基準日とするものとする。

4 貸借対照表、損益計算書及び完成工事原価報告書の様式の改正

1 税効果会計の導入

平成一〇年一二月に、財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和三八年大蔵省令第五九号)等の一部改正がなされ、証券取引法第二四条の規定により有価証券報告書を大蔵大臣に提出しなければならない者については、その作成すべき財務諸表(貸借対照表、損益計算書、利益処分計算書又は損失処理計算書及び附属明細表をいう。)等について税効果会計(貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得の計算の結果算定された資産及び負債の金額との間に差異がある場合において、当該差異に係る法人税等(法人税、住民税及び利益に関連する金額を課税標準として課される事業税をいう。以下同じ。)の金額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期利益の金額と法人税等の金額を合理的に対応させるための会計処理をいう。以下同じ。)の適用が義務付けられることになり、また、株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則(昭和三八年法務省令第三一号)の一部改正がなされ、商法(明治三二年法律第四八号)第二八一条第一項の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書の記載方法について、税効果会計を適用することが公正な会計慣行として認められるようになった。
これらを踏まえ、建設業法施行規則別記様式第一五号で定める貸借対照表及び別記様式第一六号で定める損益計算書についても、税効果会計を適用することができるよう、それらの様式の一部を改正することとした。

2 労務外注費の記載

経営事項審査に係る経営状況分析の見直しに伴い、完成工事原価報告書の中の「労務費」に労務外注費(工種・工程別等の工事の完成を約する契約でその大部分が労務費であるものに基づく支払額をいう。)を含めて記載する場合においては、その額を明らかにするため、建設業法施行規則別記様式第一六号で定める完成工事原価報告書の様式の一部を改正することとした。

3 事業税の記載方法の改正

損益計算書に記載すべき事業税の記載方法については、従来は販売費及び一般管理費の中の「租税公課」に含めて記載することとされていたが、事業税のうち利益に関連する金額を課税標準として課されるものは、法人税又は住民税の記載方法と同様に「税引前当期利益」の下に記載することとするため、損益計算書の様式等の一部を改正することとした。

4 損益計算書の注の記載方法の改正

損益計算書の注の記載を徹底する観点から、注に掲げる事項で該当事項がない場合においては、「該当なし」と記載するよう、損益計算書の記載要領の一部を改正することとした。なお、貸借対照表の注の記載方法については既に同様の措置が講じられているので、念のため申し添える。
これらの改正のうち、前記1及び2に掲げる改正による新たな様式の貸借対照表、損益計算書及び完成工事原価報告書については、平成一一年四月一日以後に開始した営業年度に係る決算期に関して作成すべき貸借対照表、損益計算書及び完成工事原価報告書について適用されるが、平成一一年一月一日以後に決算期の到来した営業年度に係るものについても適用することができる。
また、前記3及び4に掲げる改正による新たな様式の貸借対照表及び損益計算書については、平成一一年三月三一日以後に決算期の到来した営業年度に係る貸借対照表及び損益計算書について適用される。


別紙
<別添資料>


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport