国地契第五〇号・国官技第二〇二号・国営計第一一一号
平成一四年一一月一一日

各地方整備局総務部長・企画部長・営繕部長あて

地方課長・技術調査課長・営繕計画課長通知


共同企業体への工事の発注に関する留意事項等について

共同企業体への工事の発注に関しては、「共同企業体への工事の発注に関する留意事項について」(平成一一年二月一〇日付け建設省厚契発第一二号、建設省経振発第一六号)に基づき、契約の相手方となる共同企業体の運営の適正化のために指導を行っているところであるが、このたび別添の通り「「中小建設業の振興について」(昭和三七年一一月二七日建設省発計第七九号)の一部改正について」(平成一四年三月二九日付け国総振第一六〇号)及び「特定建設工事共同企業体協定書(甲)の一部改正について」(平成一四年三月二九日付け国総振第一六二号)により共同企業体協定書(甲)の改正が行われ、また、「甲型共同企業体標準協定書の見直しについて」(平成一四年三月二九日付け国総振第一六四号)により当該改正の趣旨等に基づく共同企業体への適切な指導が求められたところである。
ついては、共同企業体を活用した工事の円滑かつ迅速な施工を確保すべく、契約の相手方となる共同企業体の運営が適正なものとなるよう、左記1の事項に留意の上、適切な指導を行うとともに、下記2の事項に留意の上、確認及び承認等を実施されたい。

1 共同企業体への工事の発注に関する留意事項

(1) 代表者の権限の明確化について

共同企業体の代表者は、その建設工事に関し、発注者及び監督官庁との折衝、請負代金の請求、受領等を行う権限を有するものとするのが原則であるが、その権限の行使の効果が帰属する主体を共同企業体とするためには、その権限の行使が共同企業体を代表して行うものであることを名義上明らかにする必要があること。

(2) 運営委員会での十分な協議について

共同企業体の最高意思決定機関である運営委員会においては、共同企業体の適正な運営を確保するため、組織及び編成並びに工事の施工の基本に関する事項、実行予算及び決算方法の承認に関する事項等のほか、資金管理方法や下請企業等の決定に関する事項等も含め、共同企業体の運営に関する基本的かつ重要な事項について、構成員全員が十分に協議した上でその意思決定を行うことが必要であり、代表者のみで決定すべきものではないこと。

(3) 共同企業体の構成員の責任について

甲型共同企業体は、建設工事の施工を共同で行うことに合意して形成された複数の建設業者から成る民法上の組合の一種であり、その各構成員は共同企業体がその事業のために第三者に対して負担した債務について、商法第五一一条第一項により連帯債務を負うべきものと解されていることから、各構成員は、従来の建設工事の請負契約の履行に加えて、下請企業との契約、資機材企業との契約その他の建設工事の実施に伴い共同企業体が負担する債務の履行に関しても、連帯して責任を負うべきであること。
なお、共同企業体が締結する下請契約等は、共同企業体として行うものであることから、共同企業体の名称を冠して共同企業体の代表者及びその他の構成員全員の連名により、又は少なくとも共同企業体の名称を冠した代表者の名義により締結すること。

(4) 会計処理について

1) 共同企業体の会計処理の公正性、明瞭性の確保をするとともに、共同企業体固有の財産を代表者の財産と峻別するため、単なる代表者名義の別口預金口座ではなく、共同企業体の名称を冠した代表者名義の別口預金口座により資金取引をする必要があること。

なお、「前払金保証約款」において別口普通預金口座により行うこととされている前払金に関する受入、支払等の資金取引についても、同様の取扱いとすべきことは当然であること。

2) 1)の目的を達成するためには、1)の措置に加え、共同企業体独自の会計単位により会計処理を行うべきものであること。
3) 前払金の取扱いについては、出資の割合に基づき分配する方法と共同企業体の前払金専用口座に留保する方法があり、各構成員間の協議によりどちらの方法をとるかを決定し、前払金の適正な使用を確保すること。

また、下請企業等に対する前払金の支払については、共同企業体が前払金の支払を受けたときは、下請企業等に対して、資材の購入、建設労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うとともに、完成払等発注者から支払があったときには、共同企業体は受注者たる下請企業等に対して相応する額を速やかに支払うよう適切に配慮すること。

(5) 構成員の除名について

三社の構成員から成る共同企業体では、構成員のうちいずれかが、工事途中において重要な義務の不履行その他の除名し得る正当な事由を生じた場合においては、共同企業体協定書において除名に関する規定がない場合であっても、民法上の規定に基づく除名対象者以外の構成員全員の承認及び発注者の承認を得ることにより、構成員の除名を行うことが可能であること。
「除名しうる正当な事由」には、除名される構成員に重要な義務の不履行が生じた場合のほか、共同企業体の業務執行に当たり不正な行為をした場合等が該当すると考えられるが、単に会社更生手続開始の申立てや民事再生手続開始の申立ての事実のみをもって除名することは妥当ではなく、当該申立て会社については構成員としての義務を果たすことができるかどうかを実質的に判断すること。

(6) 代表者の変更について

共同企業体においては、共同企業体の適正な運営を確保する観点から、工事途中において、代表者が脱退し若しくは除名された場合又は代表者としての責務を果たせなくなった場合において、他の構成員全員及び発注者の承認により代表者を変更することができるよう、予め共同企業体協定書において定めておく必要があること。
「代表者としての責務を果たせなくなった場合」には、代表者としての権限行使が適切に行えなくなった場合等が該当すると考えられるが、単に会社更生手続開始の申立てや民事再生手続開始の申立ての事実のみをもって代表者を変更することは妥当ではなく、当該申立て会社については代表者としての義務を果たすことができるかどうかを実質的に判断すること。
なお、特定建設工事共同企業体においては、代表者は円滑な共同施工を確保するため中心的役割を担う必要があるとの観点から、施工能力が大きい者とされており、また、代表者の出資比率は構成員中最大とされていることから、代表者を変更する場合は、他の構成員のうち施工能力が大きい者(等級の異なる者による組合せにあっては、上位等級の者)とするとともに、出資比率を当該構成員の出資比率が構成員中最大となるよう変更すること。

2 確認及び承認等

(1) 契約課又は経理課(経理課が置かれていない事務所にあっては、総務課等。以下「契約担当課」という。)は、工事請負契約の締結に当たって甲型共同企業体から共同企業体協定書の提出を受けた際に、当該共同企業体協定書(以下「当該協定書」という。)について、経常建設共同企業体にあっては○○経常建設共同企業体協定書(甲)(「中小建設業の振興について」(昭和三七年一一月二七日建設省発計第七九号)によるものをいう。以下「経常協定書」という。)の、特定建設工事共同企業体にあっては特定建設工事共同企業体協定書(甲)(「建設工事共同企業体の事務取扱いについて」(昭和五三年一一月一日建設省計振発第六九号)によるものをいう。以下「特定協定書」という。)の規定及び上記一の趣旨に照らして、代表者の権限、運営委員会、構成員の責任及び取引金融機関等当該協定書の規定が不適切なものでないことを確認すること。

なお、当該協定書について不適切な規定がある場合には、甲型共同企業体に対して、速やかに当該協定書の変更を行い、前記1の趣旨及び経常建設共同企業体にあっては経常協定書の、特定建設工事共同企業体にあっては特定協定書の規定に反しないものとするよう指導すること。

(2) 契約担当課は、施工体制台帳により一次下請契約が共同企業体の名称を冠して共同企業体の代表者及びその他の構成員全員の連名により、又は少なくとも共同企業体の名称を冠した代表者の名義で締結されているか確認を行うこと。なお、単なる代表者名義で締結されている等不適切な場合には、共同企業体の名称を冠して共同企業体の代表者及びその他の構成員全員の連名により、又は少なくとも共同企業体の名称を冠した代表者の名義により締結するよう指導すること。
(3) 契約担当課は、前払金支払請求書又は請負代金支払請求書が到達した際、預金口座が、共同企業体の名称を冠した代表者名義の別口預金口座となっているか確認を行うこと。なお、預金口座が単なる代表者名義の別口預金口座である等不適切な場合には、預金口座を共同企業体の名称を冠した代表者名義の別口預金口座とするよう指導すること。
(4) 契約担当課及び当該工事を所掌する課は、工事途中における構成員の脱退、構成員の除名又は代表者の変更の承認に際しては、工事の進捗状況を勘案しつつ、適正な施工継続が可能であるか等を判断した上で承認を行うこと。なお、承認にあたり、疑義が生じた場合は本省担当課へ事前に時間的余裕を持って協議すること。
(5) 共同企業体の会計処理については、各建政部が、建設業法第三一条第一項に基づく立入検査を実施した際に、独立会計単位により経理処理を行っているかどうかを確認する場合があることを申し添える。


附 則

本通達は、平成一四年一一月一一日以降に競争参加資格の認定を受けた共同企業体について適用するものとする。本則1(4)2)については、共同企業体の会計処理を自らの会計に取り込んで行っている建設業者がその会計処理方法を変更するために電算システムの変更等の準備に一定期間を要する場合において、本則1(4)1)の目的に資するため、共同企業体独自の預金口座の資金の留保が可能な限り行われないよう、構成員に対する出資金の請求時期を取引業者に対する現金による代金支払い時に限定する等の資金管理方法が運営委員会において決定されたときに限り、準備に要する時間の範囲内で、かつ、平成一五年三月三一日までに競争参加資格の認定を受けた共同企業体については、適用しないものとする。


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