建設省厚発第一七七号
平成五年五月三一日

各地方建設局長・官庁営繕部長・国土地理院長・土木研究所長・建築研究所長・建設大学校長あて

官房長通知


入札・契約手続のより一層の透明性・競争性の確保について


入札・契約関係業務に関しては、従来から厳正かつ公正な執行について特段の御尽力を願っているところであるが、平成四年一一月二五日付けの「入札・契約制度の基本的在り方」に関する中央建設業審議会の答申において、多様な入札・契約方式の検討、現行の指名競争入札方式の改善等を行うよう求められたところであり、また、今般、入札・契約制度の運用をめぐり不透明な点があったのではないかとの指摘がなされたこともあり、省内に入札手続改善検討委員会を設置し、新たな入札・契約方式の導入、指名競争入札制度のより一層の透明性・競争性を確保するための具体策等について検討を行い、去る五月一〇日に検討結果を取りまとめたところである。
建設省としては、入札手続改善検討委員会の検討結果を踏まえ、速やかに実施すべきであるとされた事項について、左記のとおり実施することとしたので、遺憾のないよう措置されたい。

1 指名基準の具体化・明確化について

地方支分部局の所掌する工事の請負契約に関し、指名競争に参加する者を指名する場合の基準(以下「指名基準」という。)は、「地方支分部局工事請負業者選定事務処理要領」(昭和四一年一二月二三日付け建設省厚第七六号。以下「選定要領」という。)第一六に定められているところであるが、当該指名基準についてより具体化・明確化を図る観点から、選定要領第一六第六項イからチまでに掲げる事項の運用基準を別紙のとおり定めたので、当該指名基準の運用に当たって十分留意されたい。

2 新たな入札・契約方式の導入について

建設省直轄工事においては、広範な入札参加機会の確保及び技術力に基づく競争性の確保を図るため、「技術情報募集型指名競争入札方式」及び「施工方法等提案型指名競争入札方式」を平成五年度当初から導入を決定し、既に実施しているところであるが、これに加え、新たに入札参加者の参加意欲を尊重するとともに、技術的適性をより的確に評価するため、入札参加者の意向を確認し、類似工事の実績及び配置予定技術者に関する簡易な技術資料の提出を求め、審査の上指名する意向確認型指名競争入札方式を試行することとしたので、遺憾のないよう措置されたい。
なお、本方式の実施に当たっての具体的な手続等は、別途通達する。

3 削除
4 適正な見積期間の確保について

建設省直轄工事において、入札の方法により競争に付そうとする場合の見積期間については、予算決算及び会計令(昭和二二年勅令第一六五号)第七四条本文の規定により、少なくとも一〇日以上確保することとされているが、当該期間については、原則として、土曜日、日曜日、祝日並びに夏期及び年末・年始の休暇を除いた期間とするよう措置されたい。

5 入札執行回数について

入札執行回数は、原則として、二回を限度とするものとする。
再度入札においても落札者がない場合の契約制度の運用の適正化については、「建設省所管公共工事に係る入札・契約業務の適正な執行について」(平成四年七月三一日付け建設省会公発第一一四号)記6を参照されたい。
なお、「工事請負契約に伴う入札手続の合理化について」(昭和四五年一月二七日付け建設省厚発第六五七号)記1は、廃止する。

6 施行日

この通達は、平成五年七月一日から施行する。ただし、記2は通達の日から施行する。


(別紙)
地方支分部局所掌の工事請負契約に係る指名基準の運用基準

指名基準の留意事項
 
1 審査基準日以降における不誠実な行為の有無

以下の事項に該当する場合は、指名しないこと。

(1) 地方支分部局所掌の工事請負契約に係る指名停止等の措置要領(昭和59年3月29日付け建設省厚第91号。以下「指名停止要領」という。)に基づく指名停止期間中であること。
(2) 地方支分部局発注工事に係る請負契約に関し、次に掲げる事項に該当し、当該状態が継続していることから請負者として不適当であると認められること。

1) 工事請負契約書に基づく工事関係者に関する措置請求に請負者が従わないこと等請負契約の履行が不誠実であること。
2) 一括下請、下請代金の支払遅延、特定資材等の購入強制等について、関係行政機関等からの情報により請負者の下請契約関係が不適切であることが明確であること。

(3) 警察当局から、地方支分部局の長に対し、暴力団員が実質的に経営を支配する建設業者又はこれに準ずるものとして、公共工事からの排除要請があり、当該状態が継続している場合など明らかに請負者として不適当であると認められること。
2 審査基準日以降における経営状況

会社更生法に基づく会社更生手続開始若しくは民事再生法(平成11年法律第225号)に基づく再生手続開始若しくは民事再生法(平成11年法律第225号)に基づく再生手続開始の申立てがなされ一般競争(指名競争)参加資格の再審査に係る認定を受けていない場合又は手形交換所による取引停止処分、主要取引先からの取引停止等の事実があり、経営状態が極めて不安定である場合は指名しないこと。
なお、単に赤字決算であることのみをもって、直ちに指名から除外しないこと。

3 審査基準日以降における工事成績
(1) 地方建設局請負工事成績評定要領(昭和42年3月30日付け建設省官技第15号)に定める工事成績(以下「工事成績」という。)の平均が過去2年連続して60点未満である場合は指名しないこと。
(2) 工事成績等が優良であるかどうかを総合的に勘案すること。
(3) 工事成績の平均が過去2年連続して80点以上であること、表彰状又は感謝状を受けていること等工事の成績が特に優良である場合は、これを十分尊重すること。
4 当該工事に対する地理的条件

本店、支店又は営業所の所在地及び当該地域での工事実績等から見て、当該地域における工事の施工特性に精通し、工種及び工事規模等に応じて当該工事を確実かつ円滑に実施できる体制が確保できるかどうかを総合的に勘案すること。

5 手持ち工事の状況

当該地域における工事の手持ち状況から見て当該工事を施工する能力があるかどうかを総合的に勘案すること。

6 当該工事施工についての技術的適性

以下の事項に該当するかどうかを総合的に勘案すること。

(1) 当該工事と同種工事について相当の施工実績があること。
(2) 当該工事の施工に必要な施工管理、品質管理等の技術的水準と同程度と認められる技術的水準の工事の施工実績があること。
(3) 地形、地質等自然的条件、周辺環境条件等当該工事の作業条件と同等と認められる条件下での施工実績があること。
(4) 発注予定工事種別に応じ、当該工事を施工するに足りる有資格技術職員が確保できると認められること。
(5) 公募型指名競争入札方式の場合においては、配置予定の技術者及び当該工事の施工計画等、意向確認型指名競争入札方式の場合においては、配置予定の技術者がそれぞれ適正であること。
7 審査基準日以降における安全管理の状況
(1) 指名停止要領に基づく指名停止期間中である場合は、指名しないこと。
(2) 地方支分部局発注工事について、安全管理の改善に関し労働基準監督署等からの指導があり、これに対する改善を行わない状態が継続している場合であって明らかに請負者として不適当であると認められるときは、指名しないこと。
(3) 安全管理の状況が優良であるかどうかを総合的に勘案すること。
(4) 地方支分部局発注工事について過去2年間に死亡者の発生及び休業8日以上の負傷者の発生がないこと等安全管理成績が特に優良である場合は、これを十分尊重すること。
8 審査基準日以降における労働福祉の状況
(1) 賃金不払に関する労働省からの通報が地方支分部局の長に対してあり、当該状態が継続している場合であって明らかに請負者として不適当であると認められるときは、指名しないこと。
(2) 地方支分部局発注工事について建設業退職金共済組合又は中小企業退職金共済事業団と退職金共済契約を締結していないかどうか、又は証紙購入若しくは貼付が不十分かどうかを総合的に勘案すること。
(3) 建設労働者の雇用・労働条件の改善に取り組み表彰状を受けていること等労働福祉の状況が特に優良である場合は、これを十分尊重すること。

(注) 審査基準日以降における状況等に係る事項については、必要があると認めるときは、審査基準日以前の状況等も勘案し、当該状況等を判断することができるものとする。


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