公共工事に係るいわゆるダンピング受注は、公共工事の品質の確保に支障を及ぼしかねないだけでなく、下請へのしわ寄せ、労働条件の悪化、安全対策の不徹底等につながるものであり、建設業の健全な発展を阻害するものである。
したがって、いわゆるダンピング受注は、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成一二年法律第一二七号)(以下「入札契約適正化法」と言う。)に基づく、「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」(平成一三年三月九日閣議決定)においても定められているとおり、排除を図る必要がある。
なお、低入札価格調査制度調査対象工事における契約の保証の額、経営事項審査の虚偽申請における資格認定の取り消し等及び公共工事に係る監督・検査の充実に係る措置については、別途通知することとしており、当該通知を踏まえ適切に対処されたい。
第1 体制等の整備
1 ダンピング受注対策地方協議会の設置
(1) 地方整備局の管轄区域を基本として、地方整備局の発注部局及び建設業担当部局が中心となって、管内都道府県、政令市等からなる、ダンピング受注対策地方協議会(以下、「協議会」という。)を設置することとする。
(2) 協議会においては、協議会参加の各発注機関において発生した低入札価格調査等に係る情報(落札率、受注業者名、施工状況等)や、記第1 2以降に記す具体的な取り組みについて、意見交換を行うことを基本とする。
2 低入札価格調査等に係る情報の公表
国土交通省直轄工事における低入札価格調査に係る情報(工事件名、予定価格、調査基準価格、落札価格、落札業者等)については、当該低入札価格調査制度調査対象工事を発注した地方整備局又は事務所において閲覧及びインターネットにより公表を行うこととする。
3 低入札価格調査制度調査対象工事の契約審査委員による審査
契約担当官等は、低入札価格調査制度調査対象工事について、予算決算及び会計令(昭和二二年四月三〇日勅令第一六五号。以下「令」という。)第八六条第二項に規定するものの他、「低入札価格調査制度対象工事に係る重点調査の試行について」(平成一二年一二月一二日付け建設省会発第七七三号、建設省厚契発第四四号、建設省技調発第一九三号、建設省営計発第一五九号)に規定する重点調査の対象となったもののうち特に重要なもの、その他、低入札価格調査制度調査対象工事のうち契約担当官等が必要と認める工事について、その調査の概要を記載した書面を契約審査委員(令第六九条に規定する契約審査委員をいう。)に提出し、その意見を求めることとする。
第2 適正な施工の確保の徹底
1 受注者側技術者の増員
国土交通省直轄工事のうち、専任の監理技術者の配置が義務づけられている工事において、調査基準価格を下回って落札した者と契約する場合において、当該業者が当該地方整備局管内で過去二年以内に竣工した工事、あるいは契約時点で施工中の工事に関して、以下のいずれかの要件に該当する場合には、監理技術者とは別に、同等の要件を満たす技術者を、専任で一名現場に配置を求めるものとする。
1) 六五点未満の工事成績評定を通知された企業
2) 発注者から施工中又は施工後において工事請負契約書に基づいて修補又は損害賠償を請求された企業。ただし、軽微な手直し等は除く。
3) 品質管理、安全管理に関し、指名停止又は部局長若しくは総括監督員から書面により警告若しくは注意の喚起を受けた企業
4) 自らに起因して工期を大幅に遅延させた企業
2 施工体制や技術者の専任制等に関する点検の実施
国土交通省管轄工事の工事現場における施工体制や監理技術者の専任制等の把握確認については、入札契約適正化法により、発注者が点検その他の必要な措置を講じることが義務づけられ、「工事現場における適正な施工体制の確保等について」(平成一三年三月三〇日付け国官地第二二号、国官技第六八号、国営計第七九号)及び「工事現場における適正な施工体制の確保等について」(平成一三年三月三〇日付け国港管第六〇三号、国港建第一〇八号)における「工事現場等における施工体制の点検要領」(以下、「要領」という。)に基づき措置されているところであるが、特に低入札価格調査制度調査対象工事については、要領に基づく点検の徹底を図ることとする。
また、各工事の監督職員は、要領に基づくもののほか、当該工事の施工状況を踏まえ、随時点検を実施するものとする。
3 下請業者への適正な支払確認等の実施
(1) 地方整備局の建設業担当官等は、国土交通省直轄工事における低入札価格調査に係る情報を踏まえ、下請代金支払状況等実態調査を活用して、低入札価格調査制度調査対象工事において、下請代金の不払いや支払い期間が不適切でないか等元請下請双方に調査の上、指導が必要と考えられる者に対して随時立入調査等を行う。
(2) さらに、地方公共団体に対しても「地方公共団体発注工事における不良・不適格業者の排除の徹底について」(平成一四年一一月一五日付け総行行第二一九号、国総入企第三七号)において、下請業者に著しい低価格発注のしわ寄せを不当に行っている受注者に対して改善指導を行うよう通知しているところであり、調査の結果を地方公共団体に通知し、適正化を徹底し、再発防止に努めることとする。
4 工事コスト調査の実施の徹底
国土交通省直轄工事における工事コスト調査については、低入札価格調査制度調査対象工事について、実態と官積算との乖離、当該工事が低価格で施工可能な理由等、工事コスト構造を詳細に把握することを目的として、「工事コスト調査について」(平成一四年二月一二日付け国地契第五四号、国官技第三一六号、国営計第一八九号)及び「工事コスト等調査について」(平成一四年二月一二日付け国港管第一一三五号、国港建第二五六号)により措置されているところであるが、引き続きその厳格な実施に努めることとする。