建設投資の低迷や金融機関の貸し渋り等により、建設業者の資金繰りが依然として非常に厳しい状況にあることを踏まえ、建設業者の資金調達の更なる円滑化を図るため、当分の間、国に対して建設業者が有する完成工事未収入金債権について、その流動化のための債権譲渡の承諾に係る事項を下記のとおり取り扱うこととした。従来は、債権譲渡の承諾に係る事務取扱いを含めて、「完成工事未収金債権の流動化のための債権譲渡の承諾に係る事務取扱いについて」(平成一〇年二月一三日付け建設省厚契発第八号、建設省経建発第三四号)により取り扱われてきたところであるが、今般の改正により、債権譲渡の承諾に係る事務取扱いについては別途通知により定めることとしたので、その取扱いには十分に留意されたい。
なお、平成一〇年二月一三日付け建設省厚契発第八号、建設省経建発第三四号をもって通知した「完成工事未収金債権の流動化のための債権譲渡の承諾に係る事務取扱いについて」は廃止する。
1 完成工事未収入金債権の流動化の概要
完成工事未収入金債権の流動化とは、請負者(以下「乙」という。)が信託の設定を目的として、支出負担行為担当官(以下「甲」という。)に対して乙が有する工事請負代金請求債権を信託銀行に譲渡し、当該信託銀行がその債権の信用力を裏付けとして受益権証書を発行することにより、乙の資本市場からの資金調達を図るものである。この措置は、流動化を促進するため、工事請負契約書(「工事請負契約書の制定について」(平成七年六月三〇日付け建設省厚契発第二五号)又は「官庁営繕部所掌の工事に係る工事請負契約書の制定について」(平成七年九月五日付け建設省営管発第五五六号)によるものをいう。以下同じ。)第五条第一項ただし書に規定する「甲の承諾」を行うものである。
2 債権譲渡の対象債権
債権譲渡の承諾を認める対象債権の要件は以下のとおりとする。なお、対象債権に係る工事については、工事請負契約書第三一条に規定する工事完成に伴う検査の結果を入念に調査・確認すること。
(1) 甲と乙との間で締結された工事請負契約書第三二条第一項に基づく乙の完成払代金の支払請求権であること。
(2) 工事請負契約書第三一条第四項に規定するところにより、甲が乙から工事目的物引渡しを受けた工事に係る債権であること。
(3) 完成払代金に係る債権金額(乙が履行遅滞の場合における損害金等の甲に対する債務を有する場合、これを相殺した後の金額とする。)が一億円以上の工事に係る債権であること。ただし、次に掲げる工事に係る支払請求権は除く。
1) 分任支出負担行為担当官が契約権者である工事
2) 附帯工事、受託工事等の特定の歳入財源を前提とした工事(ただし、建設省関係公団・事業団からの受託工事等について、債権譲渡の対象とすることに関し、支障が生じないと確認できる場合はこの限りではない。)
3) 他省庁等からの支出委任工事
4) その他債権譲渡の承諾に不適当な事由がある工事
3 承諾権限
乙が債権譲渡を行うに当たっては、工事請負契約書第五条第一項ただし書に規定する甲の承諾を得るものとする。
4 債権譲渡先の制限
甲が行う債権譲渡の承諾先は別表に掲げる信託協会加入の金銭債権信託の取扱い信託銀行(以下「受託者」という。)とする。
5 債権譲渡承諾書交付までの日数等
(1) 債権譲渡承諾書交付までの日数
甲は、乙から申請書類を受理した日より一週間以内(以下「交付期限」という。交付期限の末日が行政機関の休日に当たるときは、「行政機関の休日に関する法律」(昭和六三年法律第九一号)第二条に定める取扱いとする。)に承諾するものとする。なお、交付までの日数の短縮については、この施策が実効性のあるものとなるための最も重要な事項であるため、特段の配慮をされたい。
(2) 交付期限までに交付できない場合の措置
甲は交付期限までに乙に対し債権譲渡承諾書を交付できない場合には、その旨を速やかに乙に連絡すること。
(3) 承諾を行わない場合の取扱い
甲は、申請に係る債権が記2に規定する対象債権に該当しない場合その他申請書類の確認により承諾を行うことが不適当と認められる場合、承諾を行わないものとする。この場合、甲は承諾を行わない旨を速やかに乙に連絡すること。
6 支払期日
(1) 支出官は、信託契約書により、債権者である受託者から適法な請求書を受理した日から四〇日以内に支払を行うこと。
(2) 契約の性質上、前記によることが著しく困難な特殊の内容を有するものについては、当事者(甲及び受託者)の合意により、政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二四年法律第二五六号)第七条に定める取扱いができるものとする。