建設投資の低迷や金融機関の貸し渋り等により、建設業者の資金繰りが依然として非常に厳しい状況にあることを踏まえ、建設業者の資金調達の更なる円滑化を図るため、国に対して建設業者が有する完成工事未収入金債権の流動化のための債権譲渡の承諾に係る事項について、「完成工事未収入金債権の流動化のための債権譲渡の承諾について」(平成一〇年一二月二四日付け建設省厚契発第六七号、建設省経建発第三五一号。以下「官房長通達」という。)により定められたところであるが、債権譲渡の承諾に係る事務取扱いについては、左記のとおり定めることとしたので、その取扱いに遺憾なきを期されたい。
1 債権譲渡の承諾の申請書類
支出負担行為担当官(以下「甲」という。)は、請負者(以下「乙」という。)が債権譲渡の承諾の申請をする場合には、以下の書類を甲に提出させるものとする。これらの提出書類への押印は、原則として実印とするが、乙が押印する場合において代表取締役から支店長等に対して完成工事未収入金の債権譲渡等に係る権限が委任されていることが確認できる場合は、支店長印等でも差し支えないものとし、受託者(官房長通達記4に規定する信託銀行をいう。以下同じ。)が押印する場合において代表取締役から支店長等に対して信託契約等に係る権限が委任されていることが確認できる場合は、支店長印等でも差し支えないものとする。また、乙が共同企業体である場合は、原則として代表者及び他の構成員の実印とするが、代表者が他の構成員より完成工事未収入金の債権譲渡について委任を受けていることが確認できる場合又は完成工事未収入金の債権譲渡に係る権限が代表者の権限であることが確認できる場合は、代表者のみの実印等でも差し支えないものとする。
なお、提出書類は様式1によるものとする。
(1) 債権譲渡承諾依頼書(様式1)三通
(2) 乙と受託者の調印済の請負代金債権信託契約書(以下「信託契約書」という。)一通
(3) 乙又は受託者が契約書類に実印を押印している場合は、発行日から三ケ月以内の乙又は受託者の印鑑証明書一通
(4) 乙又は受託者が契約書類に支店長印等を押印している場合は、以下のいずれかの書類
1) 代表取締役から支店長等に対して委任する事項が記載され、かつ使用印鑑が押印されている委任状(包括的な委任状でも差し支えない。)一通
2) 支店長等について支配人の選任がなされ、かつ登記がなされている場合は、発行日から三ケ月以内の当該支配人の印鑑証明書一通
(5) 乙が共同企業体であり代表者のみの実印等を押印している場合は、以下のいずれかの書類
1) 代表者が他の構成員より完成工事未収入金の債権譲渡について委任を受けていることが確認できる委任状(包括的な委任状でも差し支えない。)一通
2) 完成工事未収入金の債権譲渡に係る権限が代表者の権限であることが確認でき、かつ代表者の原本証明のある共同企業体協定書の写し及び発行日から三ケ月以内の代表者の印鑑証明書各一通
2 債権譲渡承諾の決裁処理手順等
(1) 申請書類等受理担当課は次のとおりとする。
1) 建設大臣官房官庁営繕部管理課(官庁営繕部所掌の工事)
2) 地方建設局総務部契約課(その他の工事)
(2) 申請書類等受理担当課は申請書類を添付して以下の手順で処理を行うものとする。
1) 申請書類等受理担当官は申請書類受理後、速やかに甲の承諾のために手続を行うこと。
2) 申請書類等受理担当官は申請書類受理後、速やかに支出官に報告すること。
3) 申請書類等受理担当官は債権譲渡の承諾後、「債務者の承諾」の欄に債務者(甲)の押印がなされた債権譲渡承諾書二通を乙に交付すること。
3 申請書類等の確認に際して留意すべき事項
申請書類等の確認に際して留意すべき事項は以下のとおりとする。
(1) 債権譲渡承諾依頼書(様式1)
1) 信託契約書は工事請負契約一件につき一通作成したものであること。なお、複数の工事請負契約に係る債権をまとめて一つの信託契約で譲渡することは、認めないこと。
2) 譲渡対象債権の金額が工事請負契約に基づき乙が請求できる債権金額(乙が履行遅滞の場合における損害金等の甲に対する債務を有する場合、これを相殺した後の金額とする。以下同じ。)と一致していること等を確認すること。
3) 乙が共同企業体である場合においては、乙の住所及び氏名の欄には、共同企業体の名称並びに共同企業体の代表者及びその他の構成員の住所及び氏名が記載されていることを確認すること。ただし、代表者が他の構成員より完成工事未収入金の債権譲渡について委任を受けていることが委任状により確認できる場合又は完成工事未収入金の債権譲渡に係る権限が代表者の権限であることが共同企業体協定書により確認できる場合は、共同企業体の名称並びに共同企業体の代表者の住所及び氏名が記載されていることを確認することでも差し支えない。
(2) 信託契約書
1) 別添の標準信託契約書例に従ったものであること。
2) 受託者が甲からの信託債権取立事務等を乙に委託する条項がある場合、債権の譲渡を認めないこと。(別添標準信託契約書例第二条参照)
3) 信託契約書に定める信託手数料(信託報酬及び優先受益権の予定収益配当額)が適正な水準を超えていないこと。(別添標準信託請負契約書例末尾一参照)
(3) 乙又は受託者の印鑑証明書
1) 債権譲渡承諾書等の印影を照合すること。
2) 乙又は受託者が複数の工事請負契約に係る債権譲渡の承諾依頼等を行う場合において、既に発行日から三ケ月以内の印鑑証明書を提出している場合においては、提出を省略することができるものとすること。
3) 一回の申請において複数の工事契約に係る債権譲渡を行う場合においても、一通提出すれば足りるものとすること。
(4) 乙又は受託者が支店長等に対して債権譲渡等の権限を委任している場合における委任状(契約書類に支店長印等を押印している場合)
1) 債権譲渡承諾書等の印影と委任状の使用印鑑を照合すること。
2) 委任状に記載されている委任事項を確認すること。
3) 乙又は受託者が複数の工事請負契約に係る債権譲渡の承諾依頼等を行う場合において、既に包括的な委任状を提出している場合には、原則として提出を省略することができるものとすること。
4) 一回の申請において複数の工事契約に係る債権譲渡を行う場合においても、一通提出すれば足りるものとすること。
(5) 乙又は受託者が支店長等を支配人として選任している場合における当該支配人の印鑑証明書(契約書類に支店長印等を押印している場合)
1) 債権譲渡承諾書等の印影を照合すること。
2) 乙又は受託者が複数の工事請負契約に係る債権譲渡の承諾依頼等を行う場合において、既に発行日から三ケ月以内の支配人の印鑑証明書を提出している場合においては、提出を省略することができるものとすること。
3) 一回の申請において複数の工事契約に係る債権譲渡を行う場合においても、一通提出すれば足りるものとすること。
(6) 共同企業体の場合における委任状又は共同企業体協定書の写し(契約書類に代表者のみの実印等を押印している場合)
1) 委任状に記載されている委任事項又は共同企業体協定書に記載されている代表者の権限事項を確認すること。
2) 乙及び受託者が複数の工事請負契約に係る債権譲渡の承諾依頼等を行う場合において、既に包括的な委任状又は共同企業体協定書の写しを提出している場合には、原則として提出を省略することができるものとすること。
3) 一回の申請において複数の工事契約に係る債権譲渡を行う場合においても、一通提出すれば足りるものとすること。
4 受託者からの債権金額の請求
甲は債権譲渡を受けた受託者からの債権金額の請求に当たっては、以下の書類を受託者に提出させるものとする。
(1) 請求書(様式2)一通
(2) 「債務者の承諾」の欄に債務者(甲)の押印がなされた債権譲渡承諾書(様式1。ただし、受託者の原本証明のある写しでも差し支えない。)一通
(3) 受託者の原本証明のある信託契約書の写し(別添標準信託契約書例)一通
(4) 乙又は受託者が契約書類に実印を押印している場合は、発行日から三ケ月以内の乙又は受託者の印鑑証明書(ただし、写しでも差し支えない。)一通
(5) 乙又は受託者が契約書類に支店長印等を押印している場合は、以下のいずれかの書類
1) 代表取締役から支店長等に対して委任する事項が記載され、かつ使用印鑑が押印されている委任状(委任を受けている支店長等の原本証明のある写しでもよく、また、包括的な委任状(原本証明のある写しでもよい。)でも差し支えない。)一通
2) 支店長等について支配人の選任がなされ、かつ登記がなされている場合は、発行日から三ケ月以内の当該支配人の印鑑証明書(ただし、写しでも差し支えない。)一通
(6) 乙が共同企業体であり代表者のみの実印等を押印している場合は、以下のいずれかの書類
1) 代表者が他の構成員より完成工事未収入金の債権譲渡について委任を受けていることが確認できる委任状(代表者の原本証明のある写しでもよく、また、包括的な委任状(原本証明のある写しでもよい。)でも差し支えない。)一通
2) 完成工事未収入金の債権譲渡に係る権限が代表者の権限であることが確認できる共同企業体協定書の写し(代表者の原本証明のあるものに限る。)一通
5 請負代金の請求書類等の確認に際して留意すべき事項
(1) 請求書(様式2)
政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二四年法律第二五六号)第六条第一項における請求書の受理日は、受託者からの請求書を受理した日であり、債権譲渡の承諾書の債務者(甲)の承諾日と同一日又は承諾日以降の日となる。
(2) 債権譲渡承諾書(様式1)
3(1)の規定に留意すること。
(3) 受託者の原本証明のある信託契約書の写し(別添標準信託契約書例)
3(2)の規定に留意すること。
(4) 乙又は受託者の印鑑証明書
3(3)の規定に留意すること。
(5) 乙又は受託者が支店長等に対して債権譲渡等の権限を委任している場合における委任状(契約書類に支店長印等を押印している場合)
3(4)の規定に留意すること。
(6) 乙又は受託者が支店長等を支配人として選任している場合における当該支配人の印鑑証明書(契約書類に支店長印等を押印している場合)
3(5)の規定に留意すること。
(7) 共同企業体の場合における委任状又は共同企業体協定書の写し(契約書類に代表者のみの実印等を押印している場合)
3(6)の規定に留意すること。
6 支払の処理手順
支払官は前記4の(1)〜(6)の書類等に基づき、支出決議のうえ支払を行うこと。