

国官会第一八一一号・国地契第五九号・国総振第一四〇号
平成一四年一二月一八日
官房長・総合政策局長通知
公共工事に係る工事請負代金債権の譲渡を活用した融資制度について
従来、国土交通省においては、一〇〇億円(うち国庫補助分五〇億円)の基金を財団法人建設業振興基金に設け、最大四、〇〇〇億円程度の債務保証等の事業の利用促進を図ってきたところである。これは、中小・中堅元請建設業者への資金供給の円滑化及び下請保護を図るため、一定の下請保護方策を講ずることを前提として、中小・中堅元請建設業者が有する公共工事に係る工事請負代金債権(以下「工事請負代金債権」という。)を事業協同組合(事業協同組合連合会等を含む。)又は民法上の公益法人である建設業者団体(以下「事業協同組合等」という。)に譲渡することを認め、これを担保とすることにより当該事業協同組合等が当該建設業者に対して行う転貸融資について財団法人建設業振興基金が債務保証を行う事業(下請セーフティネット債務保証事業)である。
しかしながら、建設投資の低迷や金融機関による不良債権処理の加速等により、地域の経済・雇用を支える中小・中堅建設業者の資金繰り悪化及び連鎖倒産等の問題に直面していることを踏まえ、今後本制度の運用に当たっては左記によることとしたので、留意されたい。
なお、「未完成公共工事に係る工事請負代金債権の譲渡を活用した融資制度」(平成一一年一月二八日付け建設省厚契第八号、建設省経振第六号)及び「未完成公共工事に係る工事請負代金債権の譲渡を活用した融資制度について」(平成一一年二月二二日付け官会第二四八号)は廃止する。
1 本制度の概要
本制度は、公共工事を受注・施工している中小・中堅元請建設業者(以下「元請負人」という。)から事業協同組合等への工事請負代金債権の譲渡について、支出負担行為担当官又は分任支出負担行為担当官(以下「甲」という。)が工事請負契約書(「工事請負契約書の制定について」(平成七年六月三〇日付け建設省厚契発第二五号)、「工事標準請負契約書について(依命通達)」(平成八年三月一日付け官会第二六一号)、「北海道開発局工事請負契約書案について」(平成九年一月一六日付け北開局工第一八七号)又は「官庁営繕部所掌の工事に係る工事請負契約書の制定について」(平成七年九月五日付け建設省営管発第五五六号)によるものをいう。以下同じ。)第五条第一項ただし書に規定する「甲の承諾」を得て譲渡がなされた当該債権を担保として、事業協同組合等が元請負人(以下「乙」という。)に対して融資を行うものである。本制度では、事業協同組合等が金融機関から転貸融資資金を借り入れる際の債務保証を財団法人建設業振興基金が行うことができるものとする。また、事業協同組合等は、融資に際し、乙の下請負人等への支払状況等を確認するとともに、万が一乙が倒産に至った場合には、事業協同組合等が乙に代わって下請負人等への支払を行う。
なお、この場合、倒産とは以下の場合をいう(以下同じ)。
1) 破産、民事再生手続開始、会社更生手続開始、会社整理開始又は特別清算開始の申立てがなされた場合
2) 手形交換所の取引停止処分を受けた場合
3) その他乙が所在不明等により一般的に債務の弁済ができなくなった場合
2 債権譲渡の対象工事
本制度は、以下を除く工事を対象とする。
(1) 附帯工事、受託工事等の特定の歳入財源を前提とした工事又は他省庁等からの支出委任工事
(2) 以下の工事を除く、国庫債務負担行為及び歳出予算の繰越し等工期が複数年度に亘る工事
1) 国庫債務負担行為の最終年度の工事であって、かつ、年度内に終了が見込まれる工事
2) 財務大臣の承認を経て前年度から繰り越された工事であって、かつ、年度内に終了が見込まれる工事
(3) 甲が役務的保証を必要とする工事
(4) その他乙の施工する能力に疑義が生じているなど債権譲渡の承諾に不適当な事由がある工事
3 譲渡債権の範囲
譲渡される工事請負代金債権の額は、本件請負工事が完成した場合においては、本件工事請負契約書に定められた検査に合格し引渡を受けた出来形部分に相応する工事請負代金額から前払金、中間前払金、部分払金及び本件工事請負契約により発生する甲の請求権に基づく金額を控除した額とする。ただし、本件工事請負契約が解除された場合においては、本件工事請負契約書に定められた出来形部分の検査に合格し引渡を受けた出来形部分に相応する工事請負代金額から前払金、中間前払金、部分払金及び本件工事請負契約により発生する違約金等の甲の請求権に基づく金額を控除した額とする。
なお、事業協同組合等と乙の間の債権譲渡契約において、請負代金額に増減が生じた場合には乙が事業協同組合等に変更後の工事請負契約書の写しを提出して通知しなければならない旨を定めることとする。
4 承諾権限
乙が債権譲渡を行うに当たっては、工事請負契約書第五条第一項ただし書に規定する甲の承諾を得るものとしている。
5 債権譲渡先
債権譲渡先は、事業協同組合等であって、中小・中堅元請建設業者への資金供給の円滑化及び下請保護に資する資金の貸付事業を行う者とする。
事業協同組合等は組合員等の加入が広く認められること、組合員等の経営状態を熟知していること、建設業に精通していること等にかんがみ、債権譲渡先として認めることとしたものである。
6 債権譲渡を認めるに当たり必要とされる下請保護方策
(1) 融資時の事業協同組合等への乙の支払計画等の提出
乙は事業協同組合等より融資を受ける際に、当該工事に関する融資申請時までの下請負人等への代金の支払状況及び当該借入金の下請負人等への支払計画を事業協同組合等に提出し、事業協同組合等において確認することとしている。
(2) 乙倒産時の下請保護方策
甲は、債権譲渡の承諾を行うに当たり、乙と事業協同組合等の間の債権譲渡契約において、原則として、以下の1)又は2)のいずれかの措置が講じられていることを確認するものとする。
なお、乙の倒産時等の下請保護に関しては、乙及び事業協同組合等が責任を持って行うこととし、甲は関与しないものとする。
1) 乙が倒産により下請負人等への支払ができなくなった場合には、事業協同組合等は、事業協同組合等が甲から受け取る当該工事請負代金額の一定割合を限度として、乙に代わって下請負人等に代金を支払う旨の特約が、乙と事業協同組合等の間の債権譲渡契約において定められていること。
なお、一定割合の部分は、当該工事の下請割合、下請代金支払方法等を勘案して、乙と事業協同組合等の間で任意に定めるものとし、甲は関与しないものとする。
2) 乙が倒産により下請負人等への支払ができなくなった場合には、事業協同組合等は、事業協同組合等が甲から受け取る当該工事請負代金額から乙への貸付金を精算の上、残余の部分を乙に代わって下請負人等に支払う旨の特約が、乙と事業協同組合等の間の債権譲渡契約において定められていること。
ただし、事業協同組合等の事務体制にかんがみ、当分の間は、融資時に前項の下請負人等への支払計画等の提出を行い、かつ、事業協同組合等と乙との間の債権譲渡契約において、事業協同組合等が甲から受け取る当該工事請負代金額から乙への貸付金を精算の上、乙の倒産による任意整理において、残余の部分を事業協同組合等が乙に代わって下請負人等に支払うことにつき債権者間の合意が整ったときは、当該合意に従って支払を行うこととする旨が定められている方式も認めることとする。
この場合には、事業協同組合等の事務体制を整備の上、1)又は2)への移行を図るようにすることとしているので念のため申し添える。
7 譲渡債権が担保する範囲
本制度に係る譲渡債権は、事業協同組合等の乙に対する当該工事に係る貸付金及び乙倒産時の当該工事に係る下請負人等の債権を担保するものであって、事業協同組合等が乙に対して有するそれ以外の債権を担保するものではない。
8 債権譲渡承諾書交付までの日数等
(1) 債権譲渡承諾書交付までの日数
甲は、(3)の場合を除き、乙から債権譲渡の承諾の申請書類を受理した日より一週間(末日が行政機関の休日に当たるときは、「行政機関の休日に関する法律」(昭和六三年法律第九一号)第二条に定める取扱いとする。以下「交付期限」という。)以内に承諾するものとする。
(2) 交付期限までに交付できない場合の措置
(1)にかかわらず、やむを得ない事情で、交付期限までに乙に対し債権譲渡承諾書を交付できない場合には、甲は、その旨を速やかに乙に連絡するものとする。
(3) 承諾を行わない場合の取扱い
甲は、申請に係る工事が記2に規定する対象工事に該当しない場合又は申請書類の確認により承諾を行うことが不適当と認められる場合には、承諾を行わないものとする。この場合においては、甲は承諾を行わない旨を速やかに乙に連絡するものとする。
9 その他
本制度は健全な建設業者が積極的に活用すべきものであるので、甲においては、債権譲渡を申請したことをもって、乙の経営状態が不安定であるとみなし、また、指名等で不利益な扱いをすることのないよう十分留意されたい。
また、当然のことであるが、本制度に係る債権譲渡によって乙の工事完成引渡債務が一切軽減されるものではないことを申し添える。
附 則
この通達は、平成一四年一二月一八日から適用する。
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