建設投資の低迷や金融機関による不良債権処理の加速等により、建設業は非常に厳しい環境に直面し、地域の経済・雇用を支える中小・中堅建設業者は資金繰りの悪化及び連鎖倒産等の問題に直面している。
こうした状況を踏まえ、このたび中小・中堅元請建設業者への資金供給の円滑化及び下請保護を図るため、建設業者が有する公共工事に係る工事請負代金債権の譲渡を活用した事業協同組合(事業協同連合会組合等を含む)又は民法上の公益法人である建設業者団体(以下「事業協同組合等」という。)による転貸融資と財団法人建設業振興基金の債務保証を組み合わせた方式(下請セーフティネット債務保証事業)については、今後「公共工事に係る工事請負代金債権の譲渡を活用した融資制度について」(平成一四年一二月一八日付け国官会発第一八一一号、国地契発第五九号、国総振発第一四〇号。以下「官房長通達」という。)によることとされたところであるが、公共工事に係る工事請負代金債権(以下「工事請負代金債権」という。)の譲渡を活用した融資制度に係る事務取扱いについては、今後左記によることとしたので、その取扱いに遺漏なきを期されたい。
なお、「未完成公共工事に係る工事請負代金債権の譲渡を活用した融資制度に係る事務取扱いについて」(平成一一年一月二八日付け建設省厚契発第九号、建設省技調発第二〇号)は、廃止する。
1 債権譲渡を承諾する時点
当該工事の出来高(官房長通達2(2)1)にあっては、最終年度の工事に係る出来高)が、二分の一以上に到達したと認められる日以降とする。
なお、承諾に当たっての当該出来高の確認については、月別の工事進捗率等を記した簡易な工事履行報告書(様式1)の受領をもって足りることとする(出来高の査定ではない。)。
2 債権譲渡の対抗要件
債権譲渡が、元請負人(以下「乙」という。)の倒産等の兆候(一回目の手形不渡等)がない有効な時期になされ、かつ、支出負担行為担当官又は分任支出負担行為担当官(以下「甲」という。)の有効な日付ある承諾を得ることで第三者に対抗できる。
(参考) 民法施行法第五条
一〜四 (略)
五 官庁又ハ公署ニ於テ私署証書ニ或事項ヲ記入シ之ニ日附ヲ記載シタルトキハ其日附ヲ以テ其証書ノ確定日附トス
3 履行保証との関係
履行保証を付した工事のうち、甲が「工事請負契約及び設計業務等委託契約における契約の保証に関する取扱いについて」(平成七年六月三〇日付け建設省会発第三六五号、建設省厚契発第三〇号)、「工事請負契約について(依命通達)」(平成八年三月一日付け官会第二六一号)又は「工事請負契約における契約の保証に関する取扱いについて」(平成七年九月一八日付け北開局工第八〇号)に定める役務的保証を必要とするものについては、本制度の対象外とする。
保証委託契約約款等において、工事請負代金債権の譲渡につき保証人等の承諾が必要とされる場合には、当該譲渡に関する保証人の承諾書を提出させるものとする。
4 融資時の出来高確認
融資時の譲渡債権の担保価値の査定は、事業協同組合等が行うこととされているので、担保価値の査定のための出来高の確認を行う必要はない。
5 契約変更が行われた場合
契約変更により請負代金額に増減が生じた場合には、別添の債権譲渡契約証書(様式3―1)、3―2))第一条第一項(5)及び(7)の金額は変更後のものとする。
6 債権譲渡の承諾の申請書類
債権譲渡の承諾の申請を受ける場合には、以下の書類を乙から提出させるものとする。
(1) 債権譲渡承諾依頼書(様式2)三通
(2) 乙と事業協同組合等の調印済の債権譲渡契約証書(様式3)の写し一通
官房長通達6(2)1)、2)の措置を講じるときは様式3―1)が、同通達6(2)ただし書による措置を講じるときは様式3―2)が使用されていることを確認すること。
(3) 工事履行報告書(様式1)
(4) 発行日から三ケ月以内の乙及び事業協同組合等の印鑑証明書各一通
(5) 保証委託契約約款等において、工事請負代金債権の譲渡につき保証人等の承諾が必要とされている場合には、当該譲渡に関する保証人の承諾書
7 債権譲渡の承諾の決済処理手順等
(1) 申請書類等受理担当課は別表のとおりとする。
(2) 申請書類等受理担当課は申請書類を添付して以下の手順で処理を行うものとする。
1) 申請書類等受理担当課は申請書類受理後、速やかに甲の承諾のための手続を行うものとする。
2) 申請書類等受理担当課は本制度専用の債権譲渡整理簿(様式4)により債権譲渡の申請及び承諾状況を管理すること。
3) 申請書類等受理担当課は申請書類受理後、速やかに支出官に報告すること。
4) 申請書類等受理担当課は債権譲渡の承諾後、甲の押印がなされた債権譲渡承諾書(様式2)二通を乙に交付すること。
8 申請書類等の確認に際して留意すべき事項
申請書類等の確認に際して留意すべき事項は以下のとおりとする。
(1) 債権譲渡承諾依頼書(様式2)
譲渡対象債権の金額(申請時時点)が工事請負契約に基づき乙が請求できる債権金額と一致していること等を確認すること。
(2) 債権譲渡契約証書(様式3)の写し
官房長通達六に従った下請保護方策が講じられていることを確認すること。
(3) 工事履行報告書(様式1)
工事進捗率が二分の一以上であることを確認すること。
(4) 乙及び事業協同組合等の印鑑証明書
1) 債権譲渡承諾依頼書等の印影を照合すること。
2) 乙及び事業協同組合等が複数の工事請負契約に係る債権譲渡の承諾依頼等を行う場合において(申請書類は個別に提出させる)、申請書類等の提出を受けた日から起算して三ケ月以内に発行された印鑑証明書が既に申請書類等受理担当課に提出されている際には、当該証明書の提出を省略することができるものとすること。
9 債権譲渡先
債権譲渡の対象先として想定される事業協同組合等の名簿については、別途連絡する。
10 融資実行の報告書の要求
乙及び事業協同組合等が、甲による承諾後、金銭消費貸借契約を締結し、当該契約に基づき融資が実行された場合には、速やかに連署にて甲に融資実行報告書(様式5)の提出をさせるものとする。
11 工事請負代金の振込先の変更について
融資実行報告書(様式5)を受理した場合は、遅滞なく振込先を事業協同組合等の指定口座に変更する手続をとること。
12 事業協同組合等からの債権金額の請求
債権譲渡を受けた事業協同組合等からの確定した債権金額の請求に当たっては、以下の書類を提出させるものとする。
(1) 工事請負代金請求書(様式6)一通
(2) 甲の押印がなされた債権譲渡承諾書(様式2)の写し一通
(3) 発行日から三ケ月以内の乙及び事業協同組合等の印鑑証明書一通
(4) 債権譲渡契約証書(様式3)の写し一通
本債権譲渡が行われた場合には、それ以降は乙及び譲渡を受けた事業協同組合等は工事請負契約書第三七条に基づく部分払を請求することはできないものとする。
なお、当然のことであるが、事業協同組合等は甲による検査に合格し、引渡を行った場合にのみ、債権金額の請求ができるので、念のため申し添える。
13 工事請負代金の請求書類等の確認に際して留意すべき事項
(1) 工事請負代金請求書(様式6)
請求金額が官房長通達三に規定した譲渡債権の範囲並びに債権譲渡承諾依頼書及び債権譲渡承諾書において規定されている債権金額と一致していること等を確認すること。
(2) 債権譲渡承諾書(様式2)の写し
8(1)の規定に留意すること。
(3) 乙及び事業協同組合等の印鑑証明書
8(4)の規定に留意すること。
14 支払の処理手順
支出官は上記12の(1)〜(4)の書類等に基づき、支出決議のうえ支払を行うこと。