

各地方建設局長・北海道開発局長・沖縄総合事務局長・国土地理院長・土木研究所長・建築研究所長・建設大学校長あて
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別添 建設省の工事安全対策
(平成四年一月二九日)
(建設省)
建設省の工事安全対策
――実質的な安全対策の着実な実行――
建設工事における施工の安全確保については、作業員の不注意による事故、第三者による工事現場への侵入事故等様々な原因による建設労働災害が依然として多いことや最近発生した第三者を巻き込む重大な事故等に鑑み、緊急に官民をあげて強力な安全確保策を図ることが必要である。
しかし、安全対策については、従来にあるような安全関係の計画書類の整備や規制の強化では限界があり十分な効果が期待できない。
むしろ、今後は規制強化の発想ではなく、発注者・設計者・施工業者・作業員等、関係者が各々の立場で自律的に安全を目指した対策が強く求められている。
したがって、建設省は
1) 建設従業者一人一人の安全意識を高めること
2) 経験と知識の豊かな技術者及び作業員が各々の責任において、強制ではなく自主的にチームワークよく安全な施工が実施できる体制及び環境を整えること
3) 現場毎に変化する諸条件を十分に考慮した計画・設計を実施するとともに、工程の進捗にともない生じる諸条件の変化に的確に対応しつつ弾力的な工期と適正な費用のもとに工事を実施すること
4) 安全に係る努力に対してプラス評価を与え、自主的な安全対策へのインセンティブを与えること
を基本方針として、以下の主な具体的対策を講ずる。
(1) 工事発注における安全配慮の充実
発注段階における設計審査、施工条件の明示と施工中の安全確保に配慮した積算の実施、ならびに技術的に困難な工事について技術力を有する業者の選定等の工事発注における安全配慮を充実させる。また、工事の季節変動を少なくし、熟練労働者の通年確保を図るとともに余裕のある工期の設定を図るため、工事国債の活用等により発注の平準化と工期の弾力化を推進する。
1) 安全確保の観点からの設計内容の検討
工事の施工法は、設計により大きく左右される。特に、トンネル掘削工事、橋梁架設工事及び大規模な土留め等の仮設を伴う工事等は、安全確保の観点からの設計審査が必要である。このため、安全確保上重要な工事について発注部局内に設計審査委員会を設け、経験豊富なアドバイザーの意見をも聞きながら設計を安全性の観点から審査する。また、作業のやり易さや安全性を考慮した設計を実施する。
1) 安全確保上重要な工事についての設計審査委員会の設置
2) 安全性を考慮した設計の実施
2) 施工条件の明示
建設工事は発注者の意向に基づく現地一品生産の受注工事であるため、工事の発注に際しては、設計思想を施工業者に明確に伝達することが重要である。また、建設工事は現場での地質条件や気象条件等の不確定な条件下において実施されるものであり、設計図書に示された施工条件と異なる施工条件の発生等に適切に対応するため、施工条件の明示と設計変更の徹底を図る。
1) 条件明示と施工条件の変化に対応した設計変更の徹底
3) 工事国債の活用などによる発注の平準化と工期の弾力化
工事国債の活用などにより発注規模の適正化、発注の平準化や余裕のある工期の設定を図る。このことにより、労働者を安定して確保できる他、熟練労働者が未熟練労働者を指導する機会が増えるので、労働者の質の向上を図ることができる。
1) 工事国債の活用などによる発注の平準化
2) 施工環境、施工条件を配慮した工期の設定
4) 安全確保に必要な経費の適正な計上
施工に際しての適切な安全管理を行うためには、施工業者が自主的に安全管理を実施できる環境を整備する必要がある。このため、従事する労働者への安全教育の義務付け及びそれに必要な安全教育費の計上等安全管理に十分配慮する。また、危険性の高い工事については施工業者が安全施工事前検討を実施する等、安全確保に資するために必要な経費を積算に反映する。
1) 現場での作業員等の安全研修の義務付けとこれらを考慮した安全対策費用の積算での的確な反映
2) 安全施工事前検討等に要する費用の積算への反映
5) 工事内容に応じた技術力を有する施工業者の選定
指名資格基準における安全性の評価を重視し、工事規模にかかわらず、技術的に困難な工事については、安全施工能力を有する建設業者を選定する。このため、業者の安全施工実績及び技術者情報のデータベース化とその活用を図る。
(2) 建設業者の施工管理体制の充実
安全管理の中心である建設業者における人材の育成及び確保を強く推進する。また、施工体制の複雑化、施工技術、施工環境の変化等への速やかで確実な対応を支援する。
1) 人材の確保と優良専門工事業者の育成
熟練労働者が定着し、若者にとって魅力ある就業先となるよう雇用・労働条件を改善し、職場環境を整備する。特に、建設労働者の多くが、専門工事業者に属する技能労働者であることから、その人材確保を図るためには雇用者である専門工事業者が健全に育つ必要がある。このため、総合工事業者に対して、自ら安全意識の向上に努めるとともに、優良な専門工事業者を評価・選定するよう指導するなど専門工事業者が健全な発展を遂げることができるような環境整備を推進する。また、総合工事業者と専門工事業者間の契約の適正化を図る。
1) 週休二日制の導入等雇用・労働条件等の改善
2) 総合工事業者による専門工事業者の評価・選定
3) 総合工事業者と専門工事業者間の契約の適正化
2) 現場作業員に対する教育の徹底強化
事故を生じさせないためには、現場作業員の一人一人に至るまで安全に対する自覚を持って仕事に臨むことが大切であり、その日一日の作業手順をよく理解していることが必須である。このため、全員が毎朝の安全ミーティングに参加できる条件を支援し、特に未熟練労働者に対しては、視覚に訴える教育ビデオ等を用いた教育等、分かり易い方法の工夫への努力を支援する。
1) 作業員への作業手順の周知徹底のための安全ミーティングの実施
2) 未熟練労働者に対する効果的教育
3) 役割と責任に応じた施工管理体制の充実
総合工事業者と専門工事業者の役割と責任に応じた施工管理体制の充実を図るため、施工体制台帳の整備などにより、主任技術者等の配置の徹底を図るとともに、総合工事業者と専門工事業者の業務区分を明確にし、適切な施工管理体制に資するためのマニュアルの作成及び建設業者における社内安全管理体制の強化を指導する。また、分業化、重層構造化が進行する中で、総合工事業者と専門工事業者間における情報の交換を推進するためのミーティングの強化を指導する。
1) 施工体制台帳の整備
2) 総合工事業者と専門工事業者間における情報交換のためのミーティングの強化
4) 現場技術者の育成と技術力の向上
建設工事は多種多様な作業から構成され、かつ多様な役割の人間が関連している。従って、安全施工を確保するためには、技術者並びに労働者がそれぞれの立場において各業務に精通した人材を配置することが重要である。熟練労働者の不足は一層職長等の現場技術者の役割を高めている。未熟練労働者に対するより細かい安全管理にあわせて、機械化・高度化する施工技術に対応した安全管理が必要であることから、これら技術者の技術力の向上を図るとともに、その社会的地位を高める必要がある。このような現場技術者の育成と技術力の向上を図るため、技術者に対する継続的な研修の実施、専門工事業者における技術者資格の明確化、さらに資格取得に関する支援を行う。
1) 専門工事業における技術者の資格制度の充実
2) 技術者に対する継続的な研修の実施
5) 新技術や新しい施工環境への対応
従来工法においては熟練作業員とみなされる者に対しても、昨今の機械化をはじめとする新工法等の適用にあたっては、施工方法の高度化に対応した効率よい教育を実施する。このような工事現場内の対応とあわせて工事周辺の住民及び道路利用者等にも安全確保のための措置に対する適切な理解が得られるべく努めるよう指導する。
1) 施工方法の高度化に対応した効率よい教育の実施
2) 周辺住民及び道路利用者等への広報活動
(3) 技術基準の整備及び技術開発の推進
現状を踏まえた技術指針等を常に見直すとともに、安全確保に資する施工技術の開発と普及を推進する環境整備を行う。また、直接的に効果が期待できる安全施設、安全機器の開発を推進する。
1) 技術指針・要綱等の拡充
現在作業中の「土木工事安全施工技術指針」、「市街地土木工事公衆災害防止対策要綱」等の改定・拡充を急ぐ。また、土木工事安全施工技術指針の図解をまじえた解説書などの安全施工に関わる基本的教育を一層充実する。特に高度化する施工技術、合理化施工など、新工法・新技術に対応した施工環境の変化に備えた安全施工マニュアル等を策定する。
1) 土木工事安全施工技術指針の改定とその図解付き解説書の作成
2) 建設工事公衆災害防止対策要綱(仮称)の策定(市街地土木工事公衆災害防止対策要綱の改定・拡充)
3) 橋梁架設作業等の安全施工マニュアル(基本的な指針、基準、手引)の策定
4) 建設機械転倒防止のための地盤養生マニュアルなどの策定
5) 仮設構造物についての設計基準類の拡充と常時見直し
2) 安全施工技術の開発と普及
工事において危険作業に従事する作業員を減らすため、ロボット化、自動化、プレハブ化などを組み込んだ安全な施工法を開発し、開発された新技術の普及を促進する。さらに、災害の危険性を事前に把握し予防するために、異常検知・情報システムの開発、設置を行う。また、供用中道路の工事における車両の侵入による災害を防止するため、一般ドライバーへの注意喚起用施設、車両侵入防止施設、一般車道と工事現場を区分する施設等の安全施設を開発する。
1) 省人化のための自動化・プレハブ化技術の開発
2) 異常検知・通報システムの開発
3) セーフティゾーン確保の施設の開発
3) 新技術活用のための条件整備
民間などにおいて開発された新技術をスムーズに事業に反映できる技術活用制度を充実し、安全確保に資する施工技術の開発普及促進を図る。また、民間の技術開発研究を促進して行くため、開発費用に対する融資制度等の整備の充実を図る。
1) 技術提案型の特定技術活用パイロット事業の推進
2) 技術開発費用への融資制度の充実
4) 安全対策機器の開発と普及
災害の種類別で一番多い墜落に対しては、安全帯の使用が義務付けられているが、作業能率の低下を招く作業内容に対しては、安全ネットをはじめこれに変わる安全対策機器の開発及びその普及を図る。建設機械の多機能化及び未熟練労働者の増大といった状況の中で、労働者の未熟さを機械機能でカバーしたり省力化による安全施工という新たな観点から、操作性における容易性・統一化、視界の向上、危険の感知・報知、転倒時の保護など各種の安全装置の技術的高度化が期待される。安全型建設機械の開発とあわせて、これを普及・活用する仕組みを検討する。機械開発における仕様の設定にあたっては、利用条件を十分考慮する。また、機械の使用にあたっては、適用条件を明確に示して、機械施工による危険を未然に防止する対応を検討する。
1) 墜落防止機器の開発
2) 安全型建設機械の開発及び普及
3) 利用条件を反映した機械仕様の設定
5) 民間技術力の積極活用
安全対策に関して、技術提案を取り入れ、安全施工技術の開発を促進する。建設機械の購入に当たっても、安全に寄与すると認定された機械の購入に際しての税制上の優遇措置を検討する。最近、大規模工事、パイロット工事等においては広く地域住民等に建設工事を知ってもらうため、積極的に見学者を工事現場内に案内する等の広報活動に努めている。安全対策パイロット工事の推進等によって、建設工事に携わる工事技術者の意識の向上のみならず、一般にも安全施工の状況を理解してもらう等の配慮を工夫する。また、効率よく作業員を再教育するため、施工方法の高度化に対応した模擬体験的教育シミュレーションの導入を図る。
1) 技術提案の促進
2) 安全機器購入における優遇制度の導入
3) 安全対策パイロット工事の実施
4) 模擬体験的教育シミュレーションの導入
(4) 事故防止のための体制強化等
調査・設計・施工の分業化が進む中、連帯性を確保するためには各々の段階において担当部署が責任範囲を十分自覚し、安全性を考慮する他、フィードバックシステムにより施工現場の意見を取り入れる。
事故防止のための常設の組織を設置するとともに、データを蓄積し災害原因を分析するとともにこれらを活用できる仕組みを開発する。
1) 設計審査委員会の設置
安全確保上重要な工事について、発注部局に設計審査委員会を設け、外部のアドバイザーの意見をも聞きながら設計を安全性の観点から審査する。
2) 現場からのフィードバックシステムの確立
特に安全確保上重要な工事において、現場における施工段階で設計条件と異なる条件に遭遇した建設業者から設計変更の申し出があった場合には、発注責任者と現場代理人の双方を含む施工条件検討委員会にて検討の上、設計変更を実施する。
1) 施工条件検討委員会による設計変更
3) 工事関係者間における連絡体制の強化
発注者及び関連する施工業者からなる連絡会議を常設し、必要な情報交換を行うとともに、非常時における臨機の措置をあらかじめ定め、普段より徹底する。
4) 事故調査委員会の設置
事故原因を技術的に分析しそれを教訓とするため、事故調査委員会を設置するとともに、これらを統括する組織の設置を検討し、死亡事故等の重大事故の場合に原因を調査する。また、事故事例を収集しデータバンク化を図り、再発防止のために活用する。
5) 事故関連情報の蓄積(データベース化)と活用方策の検討
最近の安全対策は、危険要因を事前に予測し施工計画段階で対応策を盛り込む方向である。事前に予測し、対策を施すことは仕様書の施工条件明示及び積算への反映の根拠となり、今後一層、手法の充実が望まれるところである。このためには、事故事例及び作業環境を蓄積(データベース化)し、原因を分析して事前評価手法や安全対策の充実を図る。
1) 事故事例のデータベース化
2) 安全施工技術のデータベース化
3) 現場条件・機械仕様の設計への反映
(5) 工事関係者による自主的な安全対策の推進へ向けたインセンティブの強化
工事関係者の安全に対する努力をプラス評価することにより、工事の安全対策への意識向上を図り、自主的な安全対策が推進される環境を整備する。
1) 無事故業者の表彰制度創設
2) 建設業者の格付けに際して、安全実績の積極的評価
3) 発注者による安全施工能力を有する建設業者の選定
4) 総合工事業者による専門工事業者の評価・選定
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