建設省技調発第一一四号
平成四年四月一四日

各地方建設局長・北海道開発局長・沖縄総合事務局長あて

技術審議官通達


建設工事の安全対策に関する措置について


標記については、先に平成四年三月二日付け建設省技調発第五四号「建設工事の安全対策について」により通知しているところであるが、事業の執行にあたり左記事項について積極的な活用と推進を図り、円滑な事業実施に努められたい。
なお、その運用についての要綱を別添のとおり定めたので、遺憾のないよう取り扱われたい。

1 設計審査制度・施工条件検討制度の創設

土木工事における施工の安全確保の妥当性を確保するため、工事発注に際して適正な設計積算の実施にかかわる設計条件・施工条件の審査や条件明示に関する検討の充実を図ること。

2 組織的な事故調査

事故の再発防止を図るため、事故の発生に際してその原因を技術的に調査する委員会を組織すること。

3 建設現場における連絡体制の整備

複数の工事が相互に関連する建設現場において、緊密な情報交換を行うとともに非常時に対応できるよう連絡調整を行うこと。


別添

1 設計審査制度・施工条件検討制度の創設

(1) 設計審査会の設置

1) 目的

設計審査会は、土木工事に関する施工の安全確保の妥当性を確保するため、詳細設計において施工に係わる部分の審査を行うことにより、適正な設計積算の実施に資することを目的とする。

2) 適用工事

1) 土留工及び締切工

a 軟弱地盤の土留工で、掘削高さ七・〇m以上の場合。
b 偏土圧を受ける土留工で、掘削高さ七・〇m以上の場合。
c a、b以外の土留工で、掘削高さ九・〇m以上の場合。
d 一般交通を供用する路面覆工、仮設橋等の仮設構造物の場合。
e 仮設計画で、基準としている水面(計画水位)からの深さ七・〇m以上の締切工の場合。
f 河川堤防と同等の機能を有する仮締切の場合。
g 鉄道、道路等重要構造物等に近接し、その構造物及び周辺地域に地盤変動等の影響が予想される土留工及び締切工の場合。

2) ダム(砂防ダムを含む)

a 堤体高が三〇m以上の場合。

3) トンネル(シールドを含む)
4) 橋梁架設

a 最大支間が一〇〇m以上の場合。
b 最大支間が五〇m以上で架設工法がトラッククレーン工法及び架設桁工法以外の場合。
c 鉄道、道路等に近接し、その交通への影響が予想される場合。

5) 圧気潜函基礎(二気圧以上)
6) その他部長・工事事務所長が指示する工事

3) 設計審査会の組織と区分

1) 設計審査会は、本局及び工事事務所に設置する。
2) 本局の設計審査会は、前項の設計審査適用工事のうち、特に高度な技術的検討が必要な工事について審査を行う。本局の設計審査会が審査する対象工事は、各地方建設局ごとに定める。
3) 設計審査にあたって外部の経験豊富な技術者等による技術的助言を受けることができる。

4) 審査内容

設計審査会では、適用工事の詳細設計業務委託について、次の内容に関して審査を行う。
1) 他の関連する工事との整合性等、設計条件、施工条件の確認
2) 仮設構造物の設計
3) 施工方法の選択
4) 施工の安全に関する事項
5) 施工中の環境保全その他に関する事項

(2) 施工条件検討会の設置

1) 目的

施工条件検討会は、土木工事の発注に際しての条件明示に係わる事項の検討、及び施工中に工事の施工条件が契約書の設計条件と異った場合の設計変更に関する具体的な技術的対応方針の検討を行い、工事を安全かつ円滑に実施することを目的とする。

2) 適用工事

設計審査制度と同一とする。

3) 施工条件検討制度の組織

施工条件検討会は、本局及び工事事務所に設置し、その組織は、設計審査会と同一とする。

4) 検討内容

施工条件検討会では、次の内容について検討を行う。
1) 工事の発注時における条件明示内容に関する検討。
2) 工事中において、現場条件が契約図書の施工条件と異なった場合の設計変更に関する検討。
3) その他、工事契約に係る条件の変更に関する検討。

2 組織的な事故調査

(1) 事故調査委員会の設置

1) 目的

事故調査委員会は、直轄事業の工事において発生した事故について、工法・作業環境等を調査し、事故原因を技術的に分析して類似工事における事故の再発防止を図り、工事の安全かつ円滑な実施に寄与することを目的とする。

2) 事故調査委員会の位置付け

事故調査委員会は、発注工事で発生した事故に対応して、事故原因を技術的に分析するための常設する委員会である。
したがって、重大事故に対応して個別に設置される事故調査特別委員会は、これとは別に定めるところによる。

3) 構成

事故調査委員会は、本局に設置する事故調査委員会と、工事事務所に設置する現地調査委員会によって構成する。

4) 業務内容

1) 事故の発生状況・事故原因を調査し技術的に分析・整理して、データベース化を図る。
2) データベースをもとに、設計・積算・施工方法に係る基準等の充実を図る。

3 建設現場における連絡体制の整備

(1) 工事関係者連絡会議の設置

1) 目的

工事関係者連絡会議は、複数の工事が相互に関連する建設現場において、発注者と請負業者、及び請負業者間の安全施工に関する緊密な情報交換を行うとともに非常時における臨機の措置を予め定める等の連絡調整を図り、協力して工事を安全かつ円滑に実施することを目的とする。

2) 対象工事

1) 直轄事業で事業間の調整(河川と道路等)を必要とする工事
2) 複数の請負業者が同一区域で工事を行う場合
3) 土木工事と機械設備工事等、同時施工となる場合
4) その他、工事間の調整を必要とする工事

3) 業務内容

1) 各関連工事の工程の調整
2) 関連する仮設構造物の調整
3) 緊急時(災害発生時)の連絡・避難等体制の整備
4) 公衆災害防止の徹底
5) 安全パトロールの実施
6) 現場作業者に対する安全教育の徹底
7) 各種の安全に関する講習会・研修会の実施
8) その他、工事の安全施工に係る相互の連絡調整


All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport