建設省経入企発第一二号
平成一一年八月四日

建設業者団体の長あて

建設経済局長通知


下請契約における代金支払の適正化等について

標記については、従来から下請契約における注文者(以下「注文者」という。)に対する指導方お願いしているところであるが、資金需要の増大が予想される夏期を控え、経営基盤の脆弱な中小企業が多数を占める下請契約における受注者(以下、「受注者」という。)に対する適正な代金支払等の確保について、その経営の安定・健全性を確保するため特段の配慮が必要である。
また、最近の厳しい建設産業の経営環境を踏まえ、建設省においては、平成一〇年一二月九日に「建設業の経営改善に関する緊急対策」を、平成一一年七月一日には、「建設産業再生プログラム」を策定し、元請下請取引の適正化や経営改善の推進等の諸施策に取り組んできたところである。
特に、適正な契約の締結及び代金支払の適正化等については、平成三年二月五日に「建設産業における生産システム合理化指針」を策定し指導してきたところであるが、先般実施した「下請代金支払状況等実態調査」では三割強の下請契約において契約書による締結が依然として行われておらず、前払金や労務費相当分などの必要な資金についても、受注者に対して適正に支払われていない例が多く見られるなど改善が遅れている状況が見受けられる。また「専門工事業者下請取引実態調査」によれば、上位下請と下位下請の間の取引においても、書面による契約締結が依然として行われていない状況である。
今後、厳しい経営環境の中で、とりわけ元請下請取引の適正化が従来にも増して強く求められており、またそれが上位下請と下位下請の間の取引にも影響を与えることを踏まえ、同指針の遵守について現場事務所に至るまで格段の指導に努められるようお願いするとともに、特に下記事項に十分留意し、下請契約における請負代金の設定及び代金支払の適正化等に一層努められるよう、貴会傘下建設業者に対する指導をさらに徹底されたい。

1 建設工事の開始に先立って、建設工事標準下請契約約款又はこれに準拠した内容を持つ契約書により、適正な工期及び工程の設定を含む契約を締結するともとに、下請代金の設定については、施工責任範囲、施工条件等を反映した合理的なものとし、明確な経費内訳による見積書の提出、それを踏まえた双方の協議等の適正な手順によること。

また、工事内容に変更が生じ、工期又は請負代金を変更する必要があるときは、双方の協議等の適正な手順によりこれを変更すること。
なお、書面による契約が締結なされていない場合には、建設業法第一九条に抵触するので、十分留意すること。

2 注文者が前払金の支払を受けたにもかかわらず、受注者に対して資材の購入、建設労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払わない例が依然として見受けられるので、こうした慣行を一刻も早め改めること。

特に、公共工事においては、発注者からの前金払は現金でなされるので、企業の規模にかかわらず、前金払制度の趣旨を踏まえ、受注者に対して相応する額を速やかに現金で前金払するよう十分配慮すること。
また、前払金を受領していながら、受注者に対して適切な支払いを行わないことは、建設業法第二四条の三第二項に抵触するので、十分留意すること。
なお、公共事業にかかる前払金については、受注者(保証事業会社と保証契約を締結した注文者と下請契約を締結した受注者に限る。以下この段落において同じ。)の請求により受注者の口座へ振込が可能なので、この旨を受注者に対して周知するとともに、保証事業会社と保証契約を締結した注文者においては、この方式により受注者に対して前金払を行うよう努めること。

3 下請契約における代金の支払は、請求書提出締切日から支払日(手形の場合は手形振出日)までの期間をできる限り短くすること。
4 下請契約における代金の支払は、できる限り現金払とし、現金払と手形払を併用する場合であっても、支払代金に占める現金の比率を高めるとともに、少なくとも労務費相当分については、現金払とすること。

また、公共工事における完成払等発注者から現金による支払いがあったときは、受注者に対して相応する額を速やかに現金で支払うように配慮すること。

5 手形期間は、一二〇日以内でできる限り短い期間とするよう従来より通知しているところであるが、一二〇日を越える期間を設定している例も多く見受けられるので、さらに徹底すること。

また、一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付しないこと。

6 注文者は、受注者の倒産、資金繰りの悪化等により、下請契約における関係者に対し、工事の施工に係る請負代金、賃金の不払等、不測の損害を与えることのないよう十分配慮すること。

また、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者は、建設業法第四一条第二項及び第三項の適用があることも踏まえ、下請契約の関係者保護に特に配慮すること。

7 資材業者、建設機械又は仮設機材の賃貸業者、運送事業者等に対しても前記1から6までの事項に準じた配慮をすること。

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