建設省技調発第七一号
平成九年四月四日

官房長・官庁営繕部長・建設経済局長・都市局長・下水道部長・河川局長・砂防部長・道路局長・住宅局長あて

事務次官通知


公共工事コスト縮減のための行動計画について


この度、平成九年四月四日に開催された公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議において、公共工事コスト縮減対策に関する行動指針が策定され、あわせて建設省においては、本行動指針を踏まえ、別紙のとおりコスト縮減のための具体施策を盛り込んだ公共工事コスト縮減対策に関する行動計画を策定したところである。
ついては、本行動計画に基づき、関係行政機関相互の緊密な連絡を確保しつつ、公共工事のコスト縮減に一層努められたい。



別紙

公共工事コスト縮減対策に関する行動計画

第1 基本的考え方
1 政府行動指針と建設省新行動計画の位置づけ

政府の行動指針は、公共工事のコスト縮減に関する政府全体としての取り組みを図るため、この度策定されたものである。
本行動計画は、政府の行動指針を踏まえ各省庁ごとに策定する行動計画の一つとして、建設省が策定したものである。
なお、本行動計画は政府行動指針の内容を包含し、より具体化する形で作成している。

2 行動指針および建設省行動計画の背景と目的

我が国が現在おかれている政治・経済・社会情勢を踏まえ、さらに来るべき二一世紀を展望すれば、効率的な公共事業の展開を図っていくことが喫緊の課題である。
公共工事については、その執行をめぐる最近の状況や国の厳しい財政事情等を背景として、実施方法や経済効果等について様々な指摘がなされている。
公共工事の入札・契約手続については、透明性・客観性および競争性の高いものへと改革することを目的として、平成六年一月に「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」を定め、すでに実行している。
これと並行して、建設省において「公共工事の建設費の縮減に関する行動計画」を策定し、コスト縮減に鋭意努力し、平成八年八月には、その実施状況について中間報告を公表したところである。
また建設省では、農林水産省および運輸省と連携しつつ、事業の効率的・効果的執行を図るため、重点化等を鋭意進めている。
しかし現下の厳しい財政事情の下、限られた財源を有効に活用し、効率的な公共事業の執行を通じて、先進諸外国と比較して立ち遅れた社会資本整備を着実に進め、本格的な高齢化社会到来に備えるには、早急に有効な諸施策を実施し、公共工事コストの一層の縮減を推進していく必要がある。
かかる認識に基づき、政府は平成九年一月に、全閣僚を構成員とする公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議を設置し、約三ケ月の精力的検討を経て「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」を策定した。
建設省では、政府行動指針策定を踏まえ、平成六年一二月策定の現行行動計画を改定し、内容をさらに充実させた新行動計画を策定することとした。

3 行動計画の対象

本行動計画は基本的には、工事に関するコスト縮減を対象としており、用地取得に係るコストは、対象としていない。
しかしながら、公共工事の効率的な執行を支えるためには、公共用地を安定的に確保することが不可欠である。公共用地は、「正常な取引価格」で補償するものとなっており、これまでも地価の動向を踏まえた取得を行うとともに、先行取得を推進してきたところである。また近年の地価動向を踏まえ、これまでの下落状況を的確に反映し、適正な価格による取得に今後とも努める。
さらに、公共用地の取得を一層迅速化するため、用地取得に係る調査・測量等の民間委託および事業認定の適期申請の一層の推進・徹底等に取り組むものとする。

4 実施スケジュール

建設省は、平成九年度よりは、本行動計画に基づき、公共工事コスト縮減に資する諸施策を、速やかに実施するとともに、遅くとも平成一一年度末までに完了し、その効果が可及的速やかに得られるよう最大限の努力をすることとする。

5 公団等の指導

本行動計画は、建設省所管の公団等の事業も念頭において、策定している。
しかし、公団等は、事業内容や財源構成等にそれぞれ特性があることを考慮し、建設省は各公団等に対し、独自の行動計画を策定することを求める。

6 地方公共団体への協力要請等

地方公共団体の発注する公共工事の総額は、我が国の公共工事の発注額全体に占める割合が大きく、公共工事のコスト縮減を図り、社会資本整備を効率的に推進するには、地方公共団体の積極的取り組みが不可欠と考えられる。
建設省は、他省庁とも連携し、各地方公共団体に対し、政府行動指針および本行動計画を参考に積極的取り組みを行うことを強く要請する。
また、地方公共団体における公共工事コスト縮減を推進するため、現在各地方ブロック毎に、地方建設局と都道府県土木部を構成員として設置されている建設費縮減推進連絡調整会議を、他省庁所管事業の関係者も含め拡充し、情報交換等を通じた連携をさらに強化し、コスト縮減を推進する。

第2 具体的措置
1 公共工事コスト縮減の考え方

(1) 広範な取り組みの必要性

公共工事のコスト縮減については、これまでも「公共工事の建設費の縮減に関する行動計画」(平成六年一二月)を策定し実施する等、すでに取り組んできている。
一方、すでに実施された建設サービスの内外価格差検討(平成六年度建設省調査)においては、公共土木工事について我が国の建設コストは、米国に比べ一・一三〜一・四五倍(平成五年平均レート:一ドル=一一一円)となっている。これは、一般の物価も平均一・四一倍(経済企画庁調査、東京対ニューヨーク、平成五年平均レート:一ドル=一一一円)と高く、建設資材、労働力、建設機械等の公共工事を構成する要素がすべて一・二〇〜一・五一倍(平成五年平均レート)と高いなど我が国全体のコスト構造に関わっていること、さらに周辺環境対策等の社会的制約が間接的経費を押し上げていることによるためと考えられる。
公共工事は、多くの要素に関係する総合的な社会活動であり、公共工事の実効的なコスト縮減を図るためには、公共工事担当省庁のみならず、その他の関係省庁も含め、政府が一体となった広範な取り組みが不可欠である。(図―1参照)
今回、政府行動指針の策定により、関係協力省庁も含めた総合的な取り組みが図られることにより、さらに実効的な成果が期待される。

(2) 機能・品質の確保

公共工事の価格低減を目指すことが、社会資本が本来備えるべき機能・品質を損なわせることとなるのでは、行動計画の趣旨に反することとなる。
公共工事のコスト縮減にあたっては、まず、供用性、利便性、公平性、安全性、耐久性、環境保全、省資源、美観、文化性等の所要の機能、品質と両立させつつ進める必要がある。

(3) 不当なしわ寄せの防止

コスト縮減の裏付けなしに、工事価格のみを下げることによって、下請け企業、資機材供給者、労働者等一部の関係者が、不当なしわ寄せを被るような状態を、生起させてはならない。
すなわち、公共工事の価格低減を性急に図るために、「いわゆる歩切り」のような手段をとることは、下請け企業等へのしわ寄せへつながる危険性が高く、適切な手段とは言えない。
政府行動指針および本行動計画の基本的考え方は、諸施策を総合的かつ持続的に実施し、公共工事をとりまく諸環境を改善し、低いコストで、適正な機能・品質を持つ目的物を建設できる環境作りを行うことにある。

(4) 不正行為の防止

公共工事の実施に当たっては、入札談合等の不正行為を防止し、公正な競争を確保することが不可欠であることは言うまでもない。このため、平成六年度より、透明性・客観性および競争性をより高めるための入札・契約制度の改革を実施しているところであるが、国および地方公共団体を通じて、その一層の推進を図るとともに、技術力による競争を一層促進する入札・契約方式の検討を進める。
また、この改革と併せて、不正行為を行った事業者に対しては、発注者による指名停止措置や建設業法に基づく監督処分といったペナルティーを強化したところであり、損害賠償の請求を含め、厳正な運用を行うとともに、入札談合情報があった場合には、公正取引委員会との緊密な連携を確保する等適切に対処する。
さらに発注者および事業者に対する講習会の開催等により、私的独占の禁止および公正取引の確保に関する法律等の遵守を徹底する。
また、十分な施工能力を有しない不良不適格業者が、公共工事を受注した場合、一括下請負等の不適切な施工体制となるおそれがあるため、発注者支援データベースや施工体制台帳の活用等により、一括下請負等を排除するための所要の対策を講ずる。
これらの措置を通じて、入札談合等の不正行為の根絶に努め、適切な公共工事コスト形成に資することとする。

2 コスト縮減のための具体的施策

(1) コスト縮減の視点

具体的なコスト縮減の施策検討にあたっては、公共工事をめぐる最近の状況や民間ノウハウの活用、科学技術の進歩等の観点から、以下の事項に重点を置いて検討した。
イ) 計画・設計等の見直し



<別添資料>



ロ) 計画段階からの民間ノウハウの積極的活用
ハ) 技術水準の進展に対応した各種基準の見直し
ニ) 社会的規制等と調和のとれた工事施工の実現
ホ) 公共工事における情報化の推進
このため、公共工事の計画から施工に至る各分野を網羅的に検討し、1)計画・設計等の見直し、2)工事発注の効率化等、3)工事構成要素のコスト縮減、4)工事実施段階での合理化・規制緩和等の各分野について、例外を設けず、広範囲かつ具体的施策を検討した(1章の図―1に示した全項目を網羅的に検討)。

(2) 具体的施策

以下の四分野について、行動指針に定める施策も含め、一九項目の施策を、他省庁とも連携しつつ、平成九年度から平成一一年度末までに実施する。
なお具体事例(○印)は、政府行動指針の内容に加え、行動計画として追加的に例示したものである。
(各施策の詳細については、別添資料参照)
1) 工事の計画・設計等の見直しに関する施策

a 計画手法の見直し(施策番号1))

社会資本の整備にあたって、必要以上に華美や過大なものとなっていないか、現状のサービス水準が適切か等、社会資本の計画手法に関し原点に立ち戻って検討を行う。

(施策事例)

・ 公共施設が必要以上に華美なもの、過大なものとなっていないかの再検討
・ サービス水準の見直し

(具体事例)

○ 海岸侵食対策として実施する養浜工事について、港湾、漁港事業等と連携して、砂レキ等を活用する計画の推進
○ 公園施設の複合化等について、大規模な運動施設等の施設の複合化や一時的ピーク時のための施設について仮設等による対応

b 技術基準等見直し(施策番号2))

技術基準等が急速な科学技術の進歩に対応できているか、基準類の運用が画一的なために不経済な設計となっていないか、占用等の各種許可条件について改善する点はないか等の視点に基づき、公共工事担当省庁が所管する施設の技術基準について総点検を行う。

(施策事例)

・ 建築に関する基準類の見直し(例:建築基準法令の性能規定化推進)
・ 河川に関する基準類の見直し(例:河川管理施設等構造令における橋梁の径間長に関する規定の見直し)

(具体事例)

○ トンネル換気設計手法の改善(例:車両性能の向上に伴い、大型車の煤煙排出量が減少しているため、トンネル換気施設の設計基準を平成九年度に改定)
○ 下水管渠の道路埋設基準の見直し(例:道路に下水管渠を埋設する深さについて、管の強度を検討し、より浅い位置に設置できるよう管渠埋設基準を改定)
○ 小規模処理場の標準化(例:小規模処理場の水処理施設・汚泥処理施設、監視制御装置、管理棟等の標準化)
○ 公園施設に係る技術的な基準・標準の見直し(例:園路・広場の舗装や雨水排水施設等の設計に関する基準、標準について見直し)
○ 営繕事業について、諸基準の改訂および材料・機器規格、仕様等の標準化・統一化(例:新材料、新工法に対応した建築設計基準、設備設計基準等の改訂)および「官公庁標準仕様書(仮称)」の作成)

c 設計方法の見直し(施策番号3))

最適の構造形式、施工方法等を選定するために、設計の初期段階において数ケースの比較設計を実施しているが、比較内容をさらに充実させるための方策を検討する。特に設計VE等、より幅広い視点から設計内容を検討するシステムの導入を図る。
また、従前の使用資材を最小とする設計思想から施工手間を含め総合価格で最小となる設計思想への転換(材料ミニマムから労働量ミニマムへ)をベースに、設計手法の見直しを行う。

(施策事例)

・ 改善提案を設計担当者以外の専門家が行う「設計VE(Value Engineering)」の導入等による構造形式・施工法等の比較検討の充実
・ 設計手法の見直し

(具体事例)

○ 高水護岸の護岸厚さ設計方法の見直し
○ 鋼橋設計の合理化を図り、比較的簡単な構造の橋梁で進めている省力化構造の設計について、その適用範囲拡大
○ 営繕における設計VEの導入により、平面計画、仕上げ材料、構造計画、設備計画、施工法等について施設価値(機能/コスト)を向上

d 技術開発の推進(施策番号4))

建設技術の開発にあたっては、国が官民の適切な連携の下に効率的な研究開発を進めるとともに、民間の優れた技術力を活用することが重要である。しかしながら、これまで公共事業の実施にあたっては、その安全性・確実性の追求や受注機会均等の趣旨から、民間で開発された新技術の活用について、積極性に欠けていた傾向があり、それが民間の技術開発インセンティブを削ぐ結果ともなっていた。
このため民間が積極的に技術開発を進めるような仕組みを検討し、コスト縮減に有効な新技術の開発・活用・普及を図ることを検討する。

(施策事例)

・ 民間が行うコスト縮減に資する技術の研究開発について官民共同研究開発等の充実
・ コスト縮減に資すると考えられる情報化・電子化・検査・測量等の技術や新素材の開発等を、各省が連携して実施するとともに、新技術に係る情報交換体制を整備(平成九年度に関係省庁連絡会議を設置)

(具体事例)

○ コンクリートダムにおけるコンクリート用骨材、フィルダムにおける堤体材料の岩石について、利用する範囲を拡大して歩留まりを向上
○ シールド機械のカッタビットの耐久性向上、シール機構の向上を図ることにより、シールドトンネルの長距離施工の採用

e 積算の合理化(施策番号5))

公共工事の積算は、予定価格の算定を行うために、実態調査をベースに作成した積算基準、単価データ等をベースに実施されている。しかし発注機関によって基準が異なる、基準の公開が不十分である、積算基準の改訂に時間を要している等の指摘もあることから、積算基準等の統一、公開、機動性向上等について検討を行う。

(施策事例)

・ 公共事業を発注する官庁や特殊法人の積算基準等の統一、公開
・ 市場単価方式活用やパソコンシステム化による積算事務効率化
・ モニタリング調査の充実等による積算基準の早期改訂体制の整備

2) 工事発注の効率化等に関する施策

a 公共工事の平準化の推進(施策番号6))

公共工事の実施量については、年間を通じてできるだけ一定量となるよう発注時期の調整等により努力をしているところであるが、相当の波が生じているのが実態である。平準化を進めることは、労働力、機械等の有効利用、資材の需要安定等非常に効果が大きいと予想されることから、地方公共団体事業も含め強力に推進していくこととする。

(施策事例)

・ 平準化に資する工期設定の改善、国庫債務負担行為等による円滑な事業の実施
・ 地方公共団体にも、国と同様の対応を要請

(具体事例)

○ 各発注機関において、公共工事の平準化を念頭に置いた計画的かつ迅速な発注
○ 補助事業等について、工事の施行状況を踏まえた国庫債務負担行為等による円滑な事業の実施
○ 都道府県建設技術センター等を支援

b 適切な発注ロットの設定(施策番号7))

公共事業の効率的執行を図り、コスト縮減に資するためには、中小建設業者等の受注機会の確保に配慮しつつ適切な発注ロットの設定を進めることが要請されるところであり、そのための方策について検討する。あわせて事業箇所の重点化等により投資の重点化を図る。

(施策事例)

・ 経常建設共同企業体の一層の活用を図る等により、中小建設業者等の受注機会の確保を図りつつ、適切な発注ロットの設定を推進
・ 地方公共団体にも、国と同様の対応を要請

(具体事例)

○ 事業箇所の重点化等により、投資の重点化推進

c 入札・契約制度検討(施策番号8))

現在の公共工事においては、発注者の有する情報の範囲で最も望ましい施工方法等を決定しているが、民間の技術開発の著しい分野においては、民間の有する技術力を活用することにより、コスト縮減が可能となる場合もあると考えられる。そこで民間から技術提案を募り、公共工事に反映させる入札・契約制度の検討を行う。

(施策事例)

・ 技術提案を受け付ける入札・契約方式(VE方式)の検討・試行。その後、中央建設業審議会の建議を踏まえ、同方式の導入を推進。
・ 中央建設業審議会の建議を踏まえ、地方公共団体に対し同方式の導入推進を要請

d 諸手続の電子化等(施策番号9))

公共工事の執行については、入札・契約手続、工事の施工等について各種の書類の提出が必要であるが、これらの書類の様式が発注者毎に異なっている等により、諸手続に多くの労力と費用を要していると予想される。
一方、情報化技術の進展は著しいものがあり、これを活かすためにも、様式の統一等を行うとともに、手続を合理化し、電子化する方策を検討する。

(施策事例)

・ 工事関係書類の様式統一・電子化
・ 技術資料の提出等を電子的手法により行うことが可能となるような環境整備
・ 地方公共団体に対して、資格審査書類の統一化推進等を要請

3) 工事構成要素のコスト縮減

a 資材の生産・流通の合理化・効率化(施策番号10))

資材によっては、生産面で一部に非効率性が存在する、取引の多層化がみられる等の指摘がなされている。このような生産・流通慣行を改善し、効率化の推進に努める。
建設資材コストに占める物流コストの一層の縮減に資するため、物流に係る諸規制緩和等について取り組む。

(施策事例)

・ 砕石、生コンクリートの構造改善事業の着実な実施
・ 建設資材の調達・流通等の実態調査実施
・ 建設資材の調達・流通に係る情報化の促進
・ 建設資材の物流に係る規制緩和の推進
・ 交錯輸送の削減等により引き続き物流の効率化を推進

b 資材調達のための諸環境の整備(施策番号11))

資材の調達については、品質を確保しつつ、多様な資材調達のための環境整備が必要である。
また、規格・サイズ等を集約し生産効率を高める努力も必要である。
さらに、技術レベルの向上に対応した品質検査等の見直しについても検討する。

(施策事例)

・ 海外建設資材活用促進のための環境整備の推進
・ 資材規格等の標準化・統一化
・ 資材の品質管理、検査方法の簡素化

(具体事例)

○ 海外建設資材活用のため、横断的に情報交換する場を設けることを目的に、海外建設資材活用連絡協議会(仮称)を設置
○ 海外資材の活用を図るモデル工事を実施するとともに、活用のためのノウハウを整理し、提供
○ 品質確保を客観的に確認できた段階において(例:品質管理監査制度の実施及びその結果の公表等)、個々の土木工事の生コンクリートのJIS規格品の試験練りを廃止

c 優良な労働力の確保(施策番号12))

建設技能者の安定的な確保を図るには、年間を通じた業務量の平準化、高齢化対策、若年労働力の確保等に配慮する必要がある。さらに、生産技術の進歩、機械化の進展に対応し、「基幹技能者」や「多能工」の育成が急務であり、これらの方策を検討する。
また住宅等の特殊な技術・技能を有する外国人の技術者、インストラクターの円滑な活用を図る。

(施策事例)

・ 「基幹技能者」、「多能工」等を育成するための業種横断的訓練校を整備
・ 建設業に従事する労働者に対して民間事業者が行う教育訓練の充実を支援

(具体事例)

○ 建設産業に従事する労働者の確保・育成を図るため、労働省、文部省と協力して、業界団体、教育機関等と連携を図りながら、建設産業人材確保・育成推進協議会の活用、建設労働体験セミナーの普及促進などの総合的実施

d 建設機械の有効利用(施策番号13))

機械経費の低減を図る観点から、品質・性能の向上等建設機械に係る技術水準等を踏まえ、建設機械に関する安全・環境対策の効率化を図る必要がある。
また、建設機械部品の有効活用を図るため、油圧ショベル等の建設機械のアタッチメントや保守等の部品互換性の向上等を図る必要がある。

(施策事例)

・ 建設機械の労働安全対策に関する手続き等の効率化の検討
・ 建設機械の環境対策について、環境の保全が図られることを前提として、同一目的の規制・基準等間での整合性を確保しつつ、その運用方策の見直し
・ 建設機械部品の標準化及び保守部品の即納年限の設定

(具体事例)

○ 油圧ショベルのアタッチメントなど建設機械部品の互換性を確保するための業界標準やJISの策定のための検討を通産省と協力して平成九年度より実施
○ リースレンタル市場における情報システム構築のための検討を平成九年度より実施

4) 工事実施段階での合理化・規制緩和等

a 労働安全対策(施策番号14))

労働者の安全の確保を図るとともにその対策の効率化を図ることが必要である。
労働安全対策について、発注者の考え方が発注時に十分受注者に伝わるよう一層の対策を検討する。

(施策事例)

・ 労働安全対策に関する手続き等の効率化について検討
・ 積算基準の共通仮設費における安全費の明確化について検討

b 交通安全対策(施策番号15))

許可申請について、申請・許可手続きの遅延等により早期の許可ができない場合がある。また、適切な交通安全対策を講じることは重要であるが、道路工事の施工範囲等を考慮することにより、コスト縮減を図れるものがある。
また、海上工事の実施について、施工計画の早期具体化等により工事許可(または不許可)の手続き期間を短縮できる余地がある。
これらについて、規制手続きの合理化等について検討する。

(施策事例)

・ 許可申請に関する手続きの合理化等について検討
・ 交通の安全と円滑を確保しつつ、集中工事の活用等工事施工の合理化について、モデル工事の試験的実施を含め検討

c 環境対策(施策番号16))

環境保全は、国民の健康保護等の観点から重要であり、環境保全のためのコストは適切に負担されるべきであるが、例えば技術の進歩に伴い騒音レベルが低下している建設機械に関する規制について、見直しが必要となっている例もある。これらの規制に伴う負担の軽減や手続きの簡素化等について検討を進める。

(施策事例)

・ 騒音規制法の規制対象となる特定建設作業に指定されている建設作業について、一定の限度を超える大きさの騒音を発生しないものとして指定された建設機械を使用する場合は、届出事務による負担の軽減を検討

d 建設副産物対策(施策番号17))

建設副産物対策については、資源の有効利用、環境保全の見地から非常に重要な問題であるが、コストの視点からも、発生量の増大、リサイクル率の停滞、処分費の増大、公共事業間の連携不足等の問題が指摘されている。これらに対応するために具体的検討を行う。

(施策事例)

・ 建設副産物の発生抑制(計画・工法選定段階での配慮等)
・ 再生資源の利用促進(建設汚泥、発生木材、発生土等)
・ リサイクルのルール確立、連携の強化、情報交換体制の確立、技術開発の推進

(具体事例)

○ リサイクルの目標設定および実務担当者向けガイドラインの策定
○ 建設副産物の発生量抑制等のチェックマニュアル作成とモデル工事の実施
○ 各種公共工事間で建設副産物の利用を促進するため、国レベル、地方レベルの連絡協議会を設置

e 埋蔵文化財調査(施策番号18))

埋蔵文化財については、我が国の歴史、文化等の正しい理解のために欠くことのできない貴重な歴史的遺産であるが、公共工事の観点からは、工事遅延、調査費の増大等の問題を生じている。
これらを回避するために、連絡調整の円滑化、調査の効率的実施、調査範囲・期間・費用等の標準化等について検討を行う。

(施策事例)

・ 公共工事部局と文化財保護部局との連絡調整システムの整備
・ 埋蔵文化財調査の効率化、調査範囲・期間・費用等の標準化
・ 調査測量技術の向上、遺跡情報の充実

(具体事例)

○ 公共事業部局と文化財保護部局との円滑な連絡調整による文化財調査の迅速化を図るため、都道府県単位で連絡調整システムの整備に文化庁とともに平成九年度より着手
○ 効率的な発掘調査推進や遺跡不時発見を少なくするため、測量技術、深査技術等の開発を文化庁とともに平成九年度より着手

f 消防基準、建築基準等(施行番号19))

建築基準法については、計画通知(確認申請)手続きの迅速化、行政機関の指導内容の整合化、新技術採用の円滑化等について検討する。
消防法については、手続きの迅速化、排煙設備の建築基準法との整合等について検討する。
その他関係法等について所要の施策を行う。

(施策事例)

・ 手続きの迅速化、運用の整合化
・ 電気事業法における自家用電気工作物に関する届け出手続きの周知
・ ガス事業の内管工事に係る行政改革委員会指摘事項の事業者への通知

(具体事例)

○ 建築基準法における建築確認関係事務の民間活用を含め、計画通知(確認申請)手続きの迅速化
○ 消防法における届け出や検査の簡略化、迅速化、円滑化
○ 新技術に対応した消防用設備の円滑な導入および技術基準の弾力的対応
○ 排煙設備について建築基準法と整合を図ることにより建設コストを縮減

3 公共工事コスト縮減の目標

(1) 考え方

国民にわかりやすい指標を示すため、本行動計画においては、公共工事コスト縮減に関する具体的数値目標を設定する。
本行動計画で示された施策のうちには、その効果が得られるまでに時間を要するものが多いことを考慮する必要があるので、ここで示す目標数値は、前記2に盛り込まれた具体的施策が、すべて実施され、十分な効果が発現した時点での期待値を推計したものである。
推計にあたっては、施策毎に行動指針対象期間内での実施内容と効果を想定し、可能な限り積み上げを行った。
しかしながら、工事構成要素のコスト縮減や工事実施段階での合理化・規制緩和等に係る分野については、積み上げが困難であることから、一定のモデルを想定し努力目標数値の推計を行った。

(2) 数値目標

2(2)に示した施策について、計画から施工に至る四分野に対応して、数値目標を以下のとおり定める。

公共工事コスト縮減の数値目標

施策分野
数値目標
1) 工事の計画・設計等の見直し
公共工事コストを少なくとも六%以上縮減することを目指す
2) 工事発注の効率化等
 
3) 工事構成要素のコスト縮減
公共工事コストを少なくとも四%以上縮減することを目指す(努力目標、行動指針より引用)
4) 工事実施段階での合理化・規制緩和等
 

注1) 平成八年度の標準的な公共工事コストに対しての比率を示す。
注2) 物価変動要因は除いて推計している。

これら全体の取り組みにより、公共工事のコストを、少なくとも一〇%以上縮減することを目指す。
このため、平成一一年度末までにすべての施策を完了し、この期間中に概ねの縮減効果が得られるよう、最大限の努力をする。

4 フォローアップ

(1) 実施方法

本行動計画の実施状況は、公共工事コスト縮減に関する行動計画フォローアップ委員会(委員長:建設事務次官)においてフォローアップする。
さらに政府行動指針および本行動指針の実施状況については、適宜、公共工事コスト縮減対策関係閣僚会議に報告するものとする。

(2) 実施内容

フォローアップにあたっては、本行動計画に示した各施策について、その実施状況を検証し、それらによる公共工事のコスト縮減について評価する。

(3) 行動計画の見直し

建設省は、必要に応じ他省庁と連携しつつ、本行動計画策定後も引き続きコスト縮減のための新たな課題、施策の抽出を継続し、実施に移していくものとする。
政府行動指針のフォローアップの結果等を踏まえ、三年後を目途に本行動計画の内容の見直しを行うものとする。


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