建設省計建発第四六号
昭和四七年三月一八日

各都道府県知事あて

計画局長通達


建設業法の一部を改正する法律の施行及び運用について

建設業法の一部を改正する法律(昭和四六年法律第三一号)の施行については、すでに建設事務次官から通達されたところであるが、その解釈及び運用の方針は左記のとおりであるので、貴職におかれては十分留意のうえ事務処理にあたっては、遺憾のないよう措置されたい。

I 総則関係

建設業法(以下「法」という。)第二条第一項の別表の上欄に掲げる建設工事については、昭和四七年三月八日建設省告示第三五〇号をもってその内容を示しているところであるが、その具体的な例は、別表のとおりであるので、内容とあわせその周知を図る等建設業の許可事務の執行に支障のないよう措置すること。
この建設工事の内容及び例示は、現実の建設業における施工の実態を前提として、施工技術の相違、取引の慣行等により分類したものであるが、各工事の内容はそれぞれ他の工事の内容と重複する場合もあるので、この点留意すること。
なお、土木一式工事及び建築一式工事については、必ずしも二以上の専門工事の組み合せは要件でなく、工事の規模、複雑性等からみて個別の専門工事として施工することが困難なものも含むと解すること。

II 建設業の許可関係

1 許可一般について(法第三条)

(1) 許可の区分

イ 大臣許可と知事許可

建設大臣の許可と都道府県知事の許可の区分については、二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合には建設大臣の許可、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業しようとする場合には都道府県知事の許可とされているが、この場合における営業所は、当該許可に係る営業所のみでなく、当該建設業者についての建設業を営むすべての営業所と解して取り扱うこと。

ロ 一般建設業の許可と特定建設業の許可

許可は、一般建設業と特定建設業の別に区分して行なうものであり、同時に一の建設業につき一般建設業の許可と特定建設業の許可が重複することはあり得ない。ただし、一の建設業者につき二以上の業種について、それぞれ一般建設業の許可及び特定建設業の許可をすることは差し支えない。

(2) 営業所の範囲
「営業所」とは、本店又は支店若しくは常時建設工事の請負契約を締結する事務所をいう。したがって、本店又は支店は常時建設工事の請負契約を締結する事務所でない場合であっても、他の営業所に対し請負契約に関する指導監督を行なう等建設業に係る営業に実質的に関与するものである場合には、当然本条の営業所に該当する。

また「常時請負契約を締結する事務所」とは、請負契約の見積り、入札、狭義の契約締結等請負契約の締結に係る実体的な行為を行なう事務所をいい、契約書の名義人が当該営業所を代表する者であるか否かを問わないので注意すること。

(3) 許可の適用除外となる軽微な建設工事

建設業法施行令(以下「令」という。)第一条の二第一項の「木造住宅」とは、次のとおり解すること。
イ 「木造」とは、建築基準法第二条第五項に定める主要構造部が木造であるものをいう。
ロ 「住宅」とは、住宅、共同住宅及び店舗等との併用住宅で延べ面積の二分の一以上を居住の用に供するものをいう。

2 附帯工事について(法第四条)

建設業者は、許可を受けた建設業に係る建設工事のほか、当該建設工事に附帯する他の建設業に係る建設工事(以下「附帯工事」という。)をも請け負うことができるが、この附帯工事とは、主たる建設工事を施工するために必要を生じた他の従たる建設工事又は主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事であって、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないものをいう。
附帯工事の具体的な判断にあたっては、建設工事の注文者の利便、建設工事の請負契約の慣行等を基準とし、当該建設工事の準備、実施、仕上げ等にあたり一連又は一体の工事として施工することが必要又は相当と認められるか否かを総合的に検討すること。

3 一般建設業の許可の基準について(法第七条)

(1) 経営業務の管理責任者(第一号)

イ 「役員のうち常勤であるもの」とは、いわゆる常勤役員をいい、原則として本社、本店等において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している者がこれに該当する。なお、建築士事務所を管理する建築士、宅地建物取引業者の専任の取引主任者等の他の法令で専任を要するものと重複する者は、専任を要する営業体及び場所が同一である場合を除き「常勤であるもの」には該当しない。
ロ 「支配人」とは、営業主に代わって、その営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する使用人をいい、これに該当するか否かは、商業登記の有無を基準として判断すること。
ハ 「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」とは、営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいい、具体的には、法人の役員、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等の地位にあって経営業務を執行した経験を有する者がこれに該当する。
ニ 本号は、許可を受けようとする建設業について、本号のイ又はロに該当する者を一の建設業ごとにそれぞれ個別に置いていることを求めるものではなく、したがって二以上の建設業について許可を行なう場合において、一の建設業につき本号のイ又はロの要件を満たしている者が、他の建設業についても本号のイ又はロの要件を満たしているときは、当該他の建設業についてもその者をもって本号の要件を満たしているとして取り扱うことができる。

(2) 技術者(第二号)

イ 「専任」の者とは、その営業所に常勤して専らその職務に従事することを要する者をいうが、次に掲げるような者は、通常この「専任」の要件に該当しない場合が多いので十分に実態を調査し本号の基準に合致するか否かについて的確な判断を行なうこと。

(イ) 住所が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な者
(ロ) 他の営業所(他の建設業者の営業所を含む。)において専任を要する者
(ハ) 建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引主任者等他の法令により特定の事務所等において専任を要することとされている者(建設業において専任を要する営業所が他の法令により専任を要する事務所等と兼ねている場合においてその事務所等において専任を要する者を除く。)
(ニ) (イ)から(ハ)までに掲げる者のほか、他に個人営業を行なっている者、他の法人の常勤役員である者等他の営業等について専任に近い状態にあると認められる者

ロ 「実務の経験」とは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいい、建設工事の発注にあたって設計技術者として設計に従事し、又は現場監督技術者として監督に従事した経験等も含めて取り扱うこと。
ハ 本号の取扱いについては、(一)のニと同趣旨であり、したがって、二以上の建設業について許可を行なう場合において、一の建設業につき本号のイ、ロ又はハの要件を満たしている者が、他の建設業についても本号の要件を満たしているときは、当該他の建設業についても、その者をもって本号の要件を満たしているとして取り扱うことができる。

なお、経営業務の管理責任者に該当する者と専任の技術者とを重複して認めることは、勤務場所が同一の営業所である限り差し支えない。

(3) 誠実性(第三号)

イ 「不正な行為」とは、請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等法律に違反する行為をいい、「不誠実な行為」とは、工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為をいう。
ロ 許可(旧法による登録(以下「登録」という。)を含む。)を受けて継続して建設業を営んでいた者については、イに該当する行為をした事実が確知された場合以外は本号の基準に適合するものとして取り扱って差し支えないが、仮りに更新時において、該当する行為をした事実を確知した場合には、当該事実が法第二九条第六号前段の規定に該当する場合に限り、許可の有効期間中は当該許可の取消しを行ない、有効期間後は本号に適合しないものとして取り扱うこと。
ハ 次の(イ)又は(ロ)に該当する者は、原則として本号の基準に適合しないものとして取り扱うこと。

(イ) 建築士法、宅地建物取引業法等で不正又は不誠実な行為を行なったことにより免許等の取消処分を受け、その最終処分の日から二年を経過しない者
(ロ) 許可申請直前の過去三年間に建築士法、宅地建物取引業法等で不正又は不誠実な行為を行なったことにより二回以上営業の停止等の処分を受け、その最終処分の日から二年を経過しない者

なお、いわゆる暴力団等の経営に係るものについては、関係機関とも連絡のうえ、本号の厳格な適用を行なうこと。

(4) 財産的基礎又は金銭的信用(第四号)

次のイ、ロ又はハに該当する者は、倒産することが明白である場合を除き本号の基準に適合するものとして取り扱うこと。
イ 自己資本の額が三〇〇万円以上である者
ロ イの自己資本の額に相当する資金を調達する能力を有すると認められる者
ハ 許可申請直前の過去三年間許可を受けて継続して営業した実績を有する者(許可申請直前の過去二年間登録を受けて継続して営業した実績を有する者を含む。)
なお、本号の基準に適合するか否かは当該許可を行なう際に判断するものであり、許可をした後にこの基準に適合しないこととなっても直ちに当該許可の効力に影響を及ぼすものではない(法第一五条第三号の基準(五(二))について同じ。)

4 法第八条について

(1) 本文かっこ書の趣旨

許可の申請が、更新に係るものである場合においては、本条第二号から第四号までの一に該当しても許可の拒否事由にはならないとされているが、これは法第三条の許可が業種ごとに与えられるものであり、法第二九条の規定による取消しを受けていない他の建設業の許可についてはその更新をする必要があること、営業の停止又は禁止は許可の更新を認めないものではないことによるものである。

(2) 第七号及び第八号かっこ書の趣旨

第七号及び第八号かっこ書は許可申請者の役員又は政令で定める使用人(以下単に「使用人」という。)のうちに、本条第二号又は第四号に該当する者があっても、その者が当該事由に該当する以前から当該許可申請者の役員又は使用人であった場合には、それをもって直ちに許可の取消し又は許可の拒否事由とすることは適切でないとの趣旨により規定されたものである。

5 特定建設業の許可の基準について(法第一五条)

(1) 技術者(第二号)

イ 営業所におかれる技術者に必要とされる実務の経験は、発注者から直接請け負った建設工事に係るものに限られており、したがって元請負人から請け負った建設工事に係る実務の経験は含まれない。
ロ 「指導監督的な実務の経験」とは、建設工事の設計又は施工の全般について、工事現場主任者又は工事現場監督者のような資格で工事の技術面を総合的に指導監督した経験をいう。
ハ 以上のほか、本号の技術者については、三の(二)のイ及びハによること。

(2) 財産的基礎(第三号)

次のイからハまでのすべての要件を満たす者は倒産のおそれが明白である者を除き、本号の基準に適合するものとして取り扱うこと。
イ 欠損の額の資本金の額の二〇パーセントを超えていないこと。
ロ 流動比率が七五パーセント以上であること。
ハ 資本金の額が一、五〇〇万円以上であり、かつ、自己資本の額が三、〇〇〇万円以上であること。

6 許可換えについて(法第九条)

許可を受けた建設業者が、法第九条各号の一に該当したときは、許可行政庁を異にすることとなるので、新たに許可を受けることが必要である。旧法においては、同条第一号又は第二号に相当する場合には、登録換えを行なうこととされていたが、新法においては新たな許可行政庁に対する新規の許可申請が必要であるので、取扱いにあたってとくに建設業者に対し指導すること。

7 登録免許税及び許可手数料について(法第一〇条)

(イ) 一般建設業の許可又は特定建設業の許可のいずれか一方を建設大臣から受けている者が、新たに他の区分に係る建設大臣の許可を受けようとする場合には、その者は法第一〇条第一号かっこ書の「すでに他の建設業について建設大臣の許可を受けている者」に該当しないものとして取り扱うこと。
(ロ) 都道府県知事の許可に係る許可手数料の徴収にあたって、二以上の建設業について同時に許可の申請があった場合には、建設大臣の許可の際の登録免許税の取扱いに準じて、一般建設業の許可又は特定建設業の許可の区分ごとに、これらの許可申請を一の許可申請として取り扱うこと。

III 建設工事の請負契約関係

1 請負契約の適正化について

(1) 法第一九条及び第一九条の二の運用

法第一九条及び第一九条の二の規定は、建設工事の請負契約の当事者に対して請負契約書の記載事項及びその相互交付並びに現場代理人の選任等に関する通知について義務を課したものである。これらの規定の実効性を期するため、現在、中央建設業審議会の勧告に係る建設工事標準請負契約約款(公共工事用約款、民間工事用約款及び下請契約用約款)について、その改正が審議されており、順次勧告される予定になっているので、この勧告に即して発注者及び建設業者に対する周知を図ること。

(2) 法第一九条の三及び第一九条の四の運用

イ 法第一九条の三及び第一九条の四の規定は、建設工事の請負契約の締結又はその履行にあたって、いわば経済上優越的な地位にある注文者が、その優越性を不当に利用して受注者を経済的に圧迫することを防止しようとするものであるが、元請負人である建設業者も下請契約に関しては注文者となるので、とくに元請負人がこれらの規定に違反しないよう十分指導に努めること。
ロ 「自己の取引上の地位を不当に利用」するとは、具体的には工事を多量かつ継続的に注文することにより優越的な地位にある注文者が、指名権、選択権等を背景に請負人を経済的に不当に圧迫するような取引等を強いることをいう。
ハ 「通常必要と認められる原価」とは、工事の施工場所の地域性、工事の具体的内容等を総合的に判断して通常当該建設工事に必要と認められる価格をいい、具体的には標準的な歩掛り、単価、材料費及び直接経費を基礎とした直接工事費、共通仮設費及び現場管理費よりなる間接工事費並びに一般管理費を合計して求める方法等により行なうこと。

なお、この場合の一般管理費には利潤相当額を含まないものとして取り扱うこと。

ニ 許可に係る建設業者が、法第一九条の三又は第一九条の四の規定に違反している事実を認めたときは、法第四二条第一項の規定に基づき、公正取引委員会に対し適当な措置をとるべきことを求めるとともに、必要に応じて中小企業庁長官に同条第二項の通知を行なうこと。

(3) 法第一九条の五の運用

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二条第一項にいう事業者については、公正取引委員会が同法の規定に基づき勧告等の措置をとることになるので、本条によって勧告の対象となる発注者は国又は地方公共団体等のいわゆる公共発注者に限られる。

2 下請施工制度の改善について

建設工事の施工に関して不必要な重層下請が行なわれる結果、建設工事の適正な施工、下請建設業者の育成及び建設労働者の保護に欠ける面が生ずることは、従来からもしばしば指摘されているところであるが、その改善のため、不必要な重層下請の除去につき建設業者に対し強力に指導するとともに、法第二二条の一括下請の禁止の規定が遵守されるようあわせて指導に努めること。

3 元請負人の義務について

(1) 法第二四条の三第二項の運用

建設工事の施工にあたって注文者から前払を受けた場合には、資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を下請負人にも前払することが望ましく、またそれが下請負人の保護育成にも資するので、できるかぎり下請負人に対して前払を行なうよう建設業者に対して十分指導すること。

(2) 法第二四条の四第二項ただし書の趣旨

本条の規定により、元請負人は、下請負人からその請け負った建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、その検査をすみやかに行ない下請負人の申出に応じ目的物の引渡しを受けなければならないが、下請契約において定められた工事完成の時から二〇日を経過した日以前の一定の日を引渡しの日とする特約をしている場合においては、その特約は有効であり、その日が引渡しの日となる。

(3) 法第二四条の五の適用

イ 本条は、特定建設業者が注文者となった下請契約における下請代金の支払について、下請負人を保護するためにその期日、方法等について規制するものであるが、当該建設工事に係る特定建設業者又はそれと同等以上の資力を有すると認められる資本金額三、〇〇〇万円以上の法人は、本条の規定による保護の対象となるものではない。
ロ 第三項の「一般の金融機関」には、預金又は貯金の受け入れ及び資金の融通をあわせて業とする銀行、相互銀行、信用組合、信用金庫、農業協同組合等が該当するが、いわゆる市中の金融業者は含まれない。また、「割引を受けることが困難であると認められる手形」に該当するか否かは、その時の金融情勢、金融慣行、下請負人の信用度等の事情並びに手形の支払期間を総合的に勘定して判断すること。

なお、下請代金の支払につき、手形を交付した場合において、その手形が支払期日までに割引くことができなかった場合には、第四項の規定に違反することとなる。

(4) 法第二四条の六の運用

法の規定又は令第七条の三の建築基準法、宅地造成等規制法、都市計画法、労働基準法若しくは職業安定法の規定に違反している下請負人等が、本条第二項の規定による特定建設業者の是正の要求に応じない旨の通報を受けた場合には、本条の規定により適切な措置を講ずるとともに、その違反の内容を当該法令の担当部局に通報すること。
なお、特定建設業者が、本条の規定による指導を行なわないとき又は下請負人等の違反事実を発見しても通報をしないときには、法第二八条の規定による指示の対象となる。

(5) 資材業者等の保護

法第二四条の二から第二四条の五までの規定は、建設工事に係る元請負人の下請負人に対する義務を規定したものであるが、建設工事の施工にあたっては、下請負人のみならず、資材業者、建設機械又は仮設機材の賃貸業者等が元請負人と密接な協力により作業を行なう場合が多いので、これらの者についても下請負人の保護の規定に準じてその保護が図られるよう建設業者に対して指導を行なうこと。

(6) 公正取引委員会への措置請求

許可に係る建設業者が、法第二四条の三第一項、第二四条の四又は第二四条の五第三項若しくは第四項の規定に違反している事実を認めたときは、法第四二条第一項の規定に基づき、公正取引委員会に対し適当な措置をとるべきことを求めるとともに、必要に応じて中小企業庁長官に同条第二項の通知を行なうこと。

IV 施工技術の確保関係

1 主任技術者及び監理技術者の設置について(法第二六条)

(1) 本条第一項の規定により建設業者は工事現場に、当該建設工事に関し一定の実務の経験を有する者又は建設大臣の定める資格を有する者等を主任技術者として置かなければならないこととされているので、この規定が遵守されるよう建設業者を指導すること。
(2) 本条第二項の規定により発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、当該建設工事に係る下請契約の請負代金の総額が二、〇〇〇万円以上(建築一式工事にあっては三、〇〇〇万円以上)となる場合においては、(1)の主任技術者に代えて、当該建設工事に関し建設大臣の定める国家資格を有する者又は一定の指導監督的な実務の経験を有する者等を監理技術者として工事現場に置かなければならないこととされているので、この規定が遵守されるよう建設業者を指導すること。

なお、当該建設工事に係る建設業が指定建設業である場合にあっては、監理技術者は建設大臣の定める国家資格を有する者等に限られることとなったので留意すること。

(3) (1)の主任技術者又は(2)の監理技術者は、本条第三項の規定により公共性のある工作物に関する重要な工事については、工事現場ごとに「専任」の者でなければならないので、常時継続的に当該工事現場に置かれていることが必要であり、原則的には、他の工事現場の技術者と兼ねることができないが、公共性のある工作物に関する重要な工事以外の工事については、職務を適正に遂行できる範囲において他の工事現場の主任技術者又は監理技術者と兼ねることができる。

下請負人が置かなければならない(1)の主任技術者についても、当該建設工事が公共性のある工作物に関する重要な工事である場合は、工事現場ごとに「専任」の者でなければならないが、下請工事においては施工が断続的に行われることが多いことを考慮し、専任の必要な期間は、当該下請工事の施工期間とする。

(4) 本条第三項の規定により専任が必要とされる監理技術者のうち、国、地方公共団体、法人税法別表第一に掲げる公共法人等が発注者である指定建設業に係る建設工事に置かれる者は、本条第四項の規定により指定建設業監理技術者資格者証の交付を受けた者でなければならないものとされているので、この規定が遵守されるよう建設業者を指導すること。

2 法第二六条の二の趣旨について

(1) 建設工事を施工する建設業者は、すべて法第二六条第一項又は第二項の規定により主任技術者又は監理技術者を置かなければならないが、当該工事が土木一式工事又は建築一式工事である場合においては、そこに置かれる主任技術者又は監理技術者は、一式工事の構成部分をなす各専門工事を総合的に管理するものであって、当該一式工事の構成部分である各専門工事の施工についての技術上の管理をつかさどる技術者の設置とは別個のものである。

したがって、これらの専門工事の適正な施工を確保するため、当該専門工事をみずから施工するときは、当該専門工事に係る技術者を置かなければならないこととされたものである。

(2) (1)と同趣旨により、建設業者が許可を受けた建設業に係る建設工事の附帯工事をみずから施工する場合においては、当該附帯工事に係る技術者を置かなければならないこととされている。
(3) また、土木一式工事若しくは建築一式工事の構成部分である各専門工事を施工する場合又は附帯工事を施工する場合において、当該工事に係る技術者を置いてみずから施工することができない場合には、当該建設工事に係る許可を受けた建設業者に当該工事を施工させなければならないこととされている。

V 監督関係

1 建設業者等が他の法令に違反した場合の監督処分について

法第二八条第一項第三号の「業務に関し他の法令に違反し」た場合とは、建設業者の業務に関し、刑法、商法、所得税法、法人税法その他建設業法以外のすべての法令に違反した場合をいい、その違反の事実が明白である限り必ずしも刑が確定することを要しない。しかしながら、違反の事実の有無及びその程度の判断等にあたって、送検、起訴、一審判決、確定判決等の結果をまつことは差し支えない。

2 許可を受けないで建設業を営んでいる者に対する取扱いについて

許可を受けないで建設業を営んでいる者が、建設工事を適正に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき若しくはそのおそれが大であるとき又は請負契約に関し著しく不誠実な行為をしたときは、必要な指示又は営業の停止を行なうことができることとされたので、これらの事実を把握し、的確な措置をとるよう努めること。また、これらの監督処分事由に該当した者が同法の規定に違反して許可を受けていなかった場合には、告発をもってのぞむ等法の厳正な執行に努めること。

3 業種別許可制と監督処分の関係について

(1) 指示(法第二八条第一項)

建設業者が法の規定に違反した場合又は法第二八条第一項各号の一に該当した場合に行なう指示は、当該違反等の事実が建設業者の経営のあり方等建設工事の施工に関する全般の姿勢に係るものであるときは、特定建設業の許可若しくは一般建設業の許可又は許可の種類の区分にとらわれず当該建設業の経営体そのものに対する指示とし、当該事実が個々具体の建設工事に係るものであるときは、その具体の建設工事に係る許可を受けた建設業に対する指示として取り扱うこと。

(2) 営業の停止(法第二八条第三項)

建設業者が法第二八条第一項各号の一に該当したとき又は同項の規定による指示に従わないときに行なう営業の停止は、(1)の指示処分の例により取り扱うこと。
なお、その範囲については、一定地域における建設工事の施工を停止する処分、許可を受けた建設業に係る建設工事のうちの一部について営業を停止する処分等もありうるので、処分の対象となった事実等からその範囲を適切に判断すること。

(3) 許可の取消し(法第二九条)

建設業者が法第二九条各号の一に該当する場合に行なう許可の取消しは、次により取り扱うこと。
イ 第一号、第三号又は第五号に該当する場合には、それぞれ当該事実に関する建設業の許可を取り消すこと。
ロ 第二号に該当する場合には、次の(イ)、(ロ)又は(ハ)に掲げる許可を取り消すこと。

(イ) 当該事実が法第八条第一号又は第五号に係るものであるときは、当該建設業者が受けているすベての建設業の許可
(ロ) 当該事実が法第八条第六号に係るもので、法定代理人が同条第一号、第二号、第三号又は第五号に該当するときは当該建設業者が受けているすべての建設業の許可、同条第四号に該当するときは当該建設業の許可
(ハ) 当該事実が法第八条第七号又は第八号に係るもので、当該法人の役員又は法人若しくは個人の使用人が同条第一号、第二号又は第五号に該当するときは当該建設業者が受けているすべての建設業の許可、同条第四号に該当するときは当該建設業の許可

ハ 第二号の二に該当する場合には、当該建設業者が受けているすべての建設業の許可を取り消すこと。
ニ 第四号に該当する場合には、当該事実が法第一二条第一号から第三号までのいずれかに係るものであるときは当該建設業者が受けているすべての建設業の許可を、同条第四号に係るものであるときはその廃止された建設業の許可を、それぞれ取り消すこと。
ホ 第六号に該当する場合には、当該事実が当該建設業者の建設工事の施工に関する全般の姿勢に関して生ずるものであるときは、その情況に応じて、特定建設業の許可若しくは一般建設業の許可又は許可の種類の区分にとらわれず相当と認める範囲の建設業の許可を、当該事実が個々具体の建設工事の施工に関して生ずるものであるときはその具体の建設工事に係る建設業の許可を、それぞれ取り消すこと。

4 営業の禁止(法第二九条の四)

(1) 法第二九条の四の規定は、監督処分の実効性を期するため、営業の停止又は許可の取消しの処分を受けた建設業者等の役員又は使用人等が、新たに、みずから又は他の建設業者の役員となって営業を開始することを禁止したものであるので、この営業の禁止は、営業の停止又は許可の取消しに伴って必ず行なうこと。
(2) 「相当の責任を有する」使用人とは、当該処分の原因である事実に関し、直接行為責任を有し、又はその職務権限等から判断し監督責任を有する使用人と解して取り扱うこと。

5 建設業者等の監督に関する連絡について

(1) 都道府県の管轄区域内において建設工事を施工している建設大臣又は他の都道府県知事の許可に係る建設業者について、法第二八条又は第二九条の規定による監督処分の対象となる事実があると認められたときは、遅滞なく当該事実の概要その他必要な事項を当該許可行政庁に連絡すること。

なお、これに関連して都道府県知事は、法第三一条の規定により、当該都道府県の区域内で建設業を営むすべての者に対して必要な報告を徴し、又は立入検査を行なうことができることとされている。

(2) 建設業者その他の建設業を営む者について、法第二八条第三項の規定により営業の停止を命じ、又は法第二九条第五号若しくは第六号の規定により許可を取り消し、及び当該建設業者等の役員、使用人等について法第二九条の四第一項又は第二項の規定により営業を禁止したときは、遅滞なく当職に報告すること。

6 聴問について(法第三二条)

法第二九条第四号に該当する場合で法第一二条の規定による届出があったものについて許可の取消しを行なったときは当該届出に係る事実が確実であると判断することができた場合に限り、法第三二条の規定による聴問を行なわないで許可を取り消して差し支えない。

VI 雑則関係

1 表示の制限について(法第四〇条の二)

法第四〇条の二の「許可を受けた建設業者であると明らかに誤認されるおそれのある表示」とは、許可、免許、公認等の用語又は許可番号と類似の番号等を広告、看板、名刺、契約書等に記載することをいう。
したがって、許可を受けずに建設業を営む者について、このような行為を行なっていることが判明したときは、すみやかにその是正につき適切な指導を行なう等法の厳正な執行に努めること。

2 法第四一条第二項及び第三項の勧告について

(1) 第二項の運用

イ 「必要があると認めるとき」とは、支払を遅滞した賃金(以下「不払賃金」という。)の額、労働者の生活状態、賃金不払事案の具体的事情等を総合的に検討して、労働者の救済が必要であると認めるときをいうが、支払の遅滞の対象が労働者の賃金であるので、ごく少額の場合等を除きおおむね必要があると認めるときと解すること。
ロ 立替払等を勧告すべき賃金の額は、不払賃金のうち当該建設工事における労働の対価として「適正と認められる賃金相当額」であるので、不払賃金のうち当該建設工事の相当分及び当該賃金額が当該地域における一般の賃金水準からみて適正な額であるか否かを認定する必要があるが、これについては都道府県労働基準監督署と密接な連携をとり、その認定を基礎として十分検討し判断すること。

なお、これに関連して労働者が直接、賃金の不払を訴えてきた場合には、管轄の都道府県労働基準監督署にも申し出るよう指導すること。

ハ 「その他の適切な措置」には、立替払と同等の効果のある貸付(無利子、無担保で、かつ、労働者が賃金の支払を受けるまで返済を猶予するもの)又は賃金の支払に充当することを条件とする当該賃金不払を行なった下請業者に対する融資が該当する。

(2) 第三項の運用

本項の規定は、特定建設業者の工事現場で工事を施工している下請負人が建設工事の施工に関し他人に損害を加えた場合において、下請負人が債務を履行しないため債権者である当該他人が窮状におちいった場合で行政庁の救済がとくに必要とされる場合に限るべきものと解されるので、立替払等の勧告は当該他人が倒産の危機に頻する等の場合にのみ行なうこと。

(3) 特定建設業者に対する立替払等の指示

法第二八条第一項後段の「必要があると認めるとき」とは、特定建設業者が発注者から直接請け負った建設工事につき、その下請負人等が賃金の支払を遅滞した場合又は他人に損害を加えた場合に、当該不払又は債務の不履行等の事実の発生原因について特定建設業者に何らかの責任があり、立替払等を強制することが行政上妥当であると認められるときと解すること。
したがって、具体的には、当該特定建設業者が法第一九条の三、第一九条の四、第二四条の三、第二四条の四又は第二四条の五の規定に違反する行為を行なったため結果的に下請負人が倒産した場合又は当該特定建設業者が法第二四条の六の規定に違反して下請負人等に対し的確な指導を行なわなかった場合等がこれに該当する。

VII 指定建設業に係る経過措置について

(1) 昭和六三年六月六日の時点で既に特定建設業の許可を受けて土木工事業、建築工事業、管工事業、鋼構造物工事業若しくは舗装工事業(以下「五業種」という。)を営んでいる者又は昭和六三年六月五日までに五業種に係る特定建設業の許可の申請をした者に関しては、その営業所ごとに置くべき専任の技術者の資格及び工事現場に置く監督技術者の資格については、昭和六五年六月五日までの間は、従前の例により取り扱うこととする。
(2) VI1(4)の監理技術者については、昭和六五年六月五日までの間は、従前の例により取り扱うこととし、指定建設業監理技術者資格者証の交付を受けた者を置くことを要しない。


別表

建設工事の種類
建設工事の例示
土木一式工事
 
建築一式工事
 
大工工事
大工工事、型枠工事、造作工事
左官工事
左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事
とび・土工・コンクリート工事
イ とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物の揚重運搬配置工事、鉄骨組立て工事、コンクリートブロツク据付け工事、工作物解体工事
ロ くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事
ハ 土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事
ニ コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事
ホ 地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、道路付属物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事
石工事
石積み(張り)工事、コンクリートブロツク積み(張り)工事
屋根工事
屋根ふき工事
電気工事
発電設備工事、送配電線工事、引込線工事、変電設備工事、構内電気設備(非常用電気設備を含む。)工事、照明設備工事、電車線工事、信号設備工事、ネオン装置工事
管工事
冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更生工事
タイル・れんが・ブロツク工事
コンクリートブロツク積み(張り)工事、レンガ積み(張り)工事、タイル張り工事、築炉工事、石綿スレート張り工事
鋼構造物工事
鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、石油、ガス等の貯蔵用タンク設置工事、屋外広告工事、閘門、水門等の門扉設置工事
鉄筋工事
鉄筋加工組立て工事、ガス圧接工事
ほ装工事
アスファルトほ装工事、コンクリートほ装工事、ブロックほ装工事、路盤築造工事
しゅんせつ工事
しゅんせつ工事
板金工事
板金加工取付け工事、建築板金工事
ガラス工事
ガラス加工取付け工事
塗装工事
塗装工事、溶射工事、ライニング工事、布張り仕上工事、鋼構造物塗装工事、路面標示工事
防水工事
アスファルト防水工事、モルタル防水工事、シーリング工事、塗膜防水工事、シート防水工事、注入防水工事
内装仕上工事
インテリア工事、天井仕上工事、壁張り工事、内装間仕切り工事、床仕上工事、たたみ工事、ふすま工事、家具工事、防音工事
機械器具設置工事
プラント設備工事、運搬機器設置工事、内燃力発電設備工事、集塵機器設置工事、給排気機器設置工事、揚排水機器設置工事、ダム用仮設備工事、遊技施設設置工事、舞台装置設置工事、サイロ設置工事、立体駐車設備工事
熱絶縁工事
冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、動力設備又は燃料工業、化学工業等の設備の熱絶縁工事
電気通信工事
電気通信線路設備工事、電気通信機械設置工事、放送機械設置工事、空中線設備工事、データ通信設備工事、情報制御設備工事、TV電波障害防除設備工事
造園工事
植栽工事、地被工事、景石工事、地ごしらえ工事、公園設備工事、広場工事、園路工事、水景工事
さく井工事
さく井工事、観測井工事、還元井工事、温泉掘削工事、井戸築造工事、さく孔工事、石油掘削工事、天然ガス掘削工事、揚水設備工事
建具工事
金属製建具取付け工事、サッシ取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドアー取付け工事、木製建具取付け工事、ふすま工事
水道施設工事
取水施設工事、浄水施設工事、配水施設工事、下水処理設備工事
消防施設工事
屋内消火栓設置工事、スプリンクラー設置工事、水噴霧、泡、不燃性ガス、蒸発性液体又は粉末による消火設備工事、屋外消火栓設置工事、動力消防ポンプ設置工事、火災報知設備工事、漏電火災警報器設置工事、非常警報設備工事、金属製避難はしご、救助袋、緩降機、避難橋又は排煙設備の設置工事
清掃施設工事
ごみ処理施設工事、し尿処理施設工事


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