建設省経建発第一三三号
平成六年六月三日

都道府県知事あて

建設経済局長通達


不正行為に対する監督処分の基準について


今般、刑法の談合及び贈賄並びに独占禁止法のいわゆる入札談合を行った建設業者に対し建設大臣及び都道府県知事が全国的に統一して的確な監督処分を行う観点から、別添のとおり不正行為に対する監督処分の基準を定めたので、貴職におかれては、平成六年九月一日からこの基準によって監督処分を実施されたい。
なお、この基準はその施行後に実行行為が行われたものから適用することとするので、基準の施行までの間、建設業者に対して十分周知方お願いする。また、この基準については事例を積み重ねる中でより適切な運用を図ることが望まれるので、貴職においても当分の間、個別案件ごとに当職と連携を密にされたい。



別添

不正行為に対する監督処分の基準

1 本基準の趣旨

公共工事に関し刑法の談合及び贈賄並びに独占禁止法のいわゆる入札談合が行われることは、建設業界のみならず公共事業の執行そのものに対する国民の信頼を失わせるものであり、その未然防止を図るためにも、これらの不正行為に対しては的確な監督処分によって対応することが必要である。そこで、これらの不正行為を行った建設業者に対する監督処分の基準を設けその適正な運用を図ることとする。

2 基本的な考え方

(1) 営業停止の方法

イ 建設業法第二八条第三項においては、建設大臣又は都道府県知事は一定の場合に建設業者の営業の全部又は一部の停止を命ずることができることとされている。営業停止についての従来の運用は、民間工事も含めて全部の営業を停止させるものであったが、公共工事に関する贈賄、入札談合等の不正行為を効果的に防止するために、建設業者の営業のうち公共工事に係るものについてより長期の営業停止期間を設定することとする。
ロ 不正行為が地域的に限定され当該地域の担当部門のみで処理されたことが明らかな場合は、必要に応じ地域的な営業停止や特定の営業所に関する営業停止を行うこととする。
ハ 不正行為が他と区別された特定の工事の種別(土木、建築等)に係る部門のみで発生したことが明らかな場合は、必要に応じ当該工事の種別に応じた営業停止を行うこととする。
ニ 建設業法第二八条第一項第三号の適用に当たっては、他法令違反の確認と併せて、当該違反行為の内容・程度、建設業の営業との関連等を総合的に勘案し、建設業者として不適当であるか否かの認定を行うこととする。

(2) 監督処分等の時期

イ 他法令違反に係る営業停止については、その刑の確定、排除勧告の応諾又は審決の確定等の法令違反の事実が確定した時点で行うこととする。
ロ 営業停止に至らない場合でも、公正取引委員会による警告が行われた場合等必要があるときは、指示処分を機動的に行うこととする。
ハ 贈賄等の容疑で役員等が逮捕された場合など社会的影響の大きい事案については、法令遵守のための社内体制の整備等を求めることを内容とする勧告を、まず、書面で行うこととし、刑の確定等を待って最終的に営業停止処分その他法令上の必要な措置を行うこととする。

3 不正行為に対する営業停止期間の具体的な基準
営業停止の具体的な期間としては、次に掲げる期間を原則として設定することとし、当該不正行為の社会的影響、その行為の動機等を踏まえた悪質さの程度、同様の行為の繰り返しの有無、社内体制の刷新の時期・内容、他の制度による措置を含めた全体としての制裁の内容・程度等、建設業者の情状を総合的に斟酌して期間を加減することとする。

(1) 刑法の談合罪

イ 代表権のある役員が懲役一年以上の刑に処せられ、かつ、建設業者として情状が重い場合は、最高一年間の営業停止を行うこととする。
ロ その他の場合には、原則として、一月以上の営業停止を行うこととする。この場合、代表権のある役員が刑に処せられたときは三月以上、代表権のない役員又は支店長等のときは二月以上を原則として、営業停止を行うこととする。

(2) 刑法の贈賄罪

イ 代表権のある役員が懲役一年以上の刑に処せられ、かつ、建設業者として情状が重い場合は、最高一年間の営業停止を行うこととする。
ロ その他の場合には、原則として、一月以上の営業停止を行うこととする。この場合、代表権のある役員が刑に処せられたときは三月以上、代表権のない役員又は支店長等のときは二月以上を原則として、営業停止を行うこととする。

(3) 独禁法違反の入札談合

イ 刑事告発に基づき、代表権のある役員が懲役一年以上の刑に処せられ、かつ、建設業者として情状が重い場合は、最高一年間の営業停止を行うこととする。
ロ 排除勧告の応諾、審決の確定又は課徴金納付命令があった場合は、一五日以上を原則として、営業停止を行うこととする。

(4) 指示処分を受けた者が再び類似の行為を行った場合

指示処分を受けた者が、指示に違反して短期間のうちに再び類似の行為を行った場合には、情状を重くみて、営業停止処分を行うこととする。
今回の改革が制度の抜本的な変更を意味するものであることから、その改革の影響を現時点ですべて見通すことは困難である。したがって、いわば試行錯誤の中から新しい秩序をつくり上げていく覚悟が必要である。このため、本建議の実施状況についての定期的なフォローアップを行い、制度や運用を絶えず見直し、その改善に対し持続的な努力を払うことが重要である。
生活空間の豊かさが求められている今、住宅・社会資本整備に寄せる国民の期待は高く、その担い手としての建設業の役割も大きい。また、地域の経済を支える基幹産業として、さらには、我が国産業全体における重要な雇用の場として、その役割は重い。建設業は、本来「夢を形にする」ダイナミックでロマンにあふれた産業である。いかに現在の試練が厳しくても、これを乗り越えてこそ明るい未来も開けてくる。発注者、受注者、そしてすべての関係者においては、今般の改革が、公共工事に関する行政の見直しや建設業界の構造変革につながるものであるという自覚を持ち、本建議の内容の実現に向けて、強い決意をもって、粘り強くかつ着実に取り組んでいくことが強く求められている。


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