建設業法の一部改正する法律(平成六年法律第六三号)により、平成七年六月二九日から特定建設業者に施工体制台帳の作成等が義務付けられ、また、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成一二年法律第一二七号。以下「入札契約適正化法」という。)の適用対象となる公共工事(以下単に「公共工事」という。)は、発注者へその写しの提出等が義務付けられることとなったが、その的確な運用に資するため、施工体制台帳の作成等を行う際の指針を左記のとおり定めたので、貴職におかれては、十分留意の上、事務処理に当たって遺漏のないよう措置されたい。
1 作成特定建設業者の義務
建設業法(昭和二四年法律第一〇〇号。以下「法」という。)第二四条の七第一項の規定により施工体制台帳を作成しなければならない場合における当該特定建設業者(以下「作成特定建設業者」という。)の留意事項は次のとおりである。
(1) 施工計画の立案
施工体制台帳の作成等に関する義務は、発注者から直接請け負った建設工事を施工するために締結した下請契約の総額が三、〇〇〇万円(建築一式工事にあっては、四、五〇〇万円)以上となったときに生じるものであるが、監理技術者の設置や施工体制台帳の作成等の要否の判断を的確に行うことができるよう、発注者から直接建設工事を請け負おうとする特定建設業者は、建設工事を請け負う前に下請負人に施工させる範囲と下請代金の額に関するおおむねの計画を立案しておくことが望ましい。
(2) 下請負人に対する通知
発注者から請け負った建設工事を施工するために締結した下請契約の額の総額が三、〇〇〇万円(建築一式工事にあっては、四、五〇〇万円)に達するときは、
1) 作成特定建設業者が下請契約を締結した下請負人に対し、
a 作成特定建設業者の称号又は名称
b 当該下請負人の請け負った建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせたときには法第二四条の七第二項の規定による通知(以下「再下請負通知」という。)を行わなければならない旨
c 再下請負通知に係る書類(以下「再下請負通知書」という。)を提出すべき場所
の三点を記載した書面を交付しなければならない。
2) 1)のa、b及びcに掲げる事項が記載された書面を、工事現場の見やすい場所に掲げなければならない。
上記1)の書面の記載例としては、次のようなものが考えられる。
〔1)の書面の文例〕
下請負人となった皆様へ
今回、下請負人として貴社に施工を分担していただく建設工事については、建設業法(昭和二四年法律一〇〇号)第二四条の七第一項の規定により、施工体制台帳を作成しなければならないこととなっています。
この建設工事の下請負人(貴社)は、その請け負ったこの建設工事を他の建設業者を営むもの(建設業の許可を受けていないものを含みます。)に請け負わせたときは、
1) 建設業法第二四条の七第二項の規定により、遅滞なく、建設業法施行規則(昭和二四年建設省令第一四号)第一四条の四に規定する再下請負通知書を当社あてに次の場所まで提出しなければなりません。また、一度通知いただいた事項や書類に変更が生じたときも、遅滞なく、変更の年月日を付記して同様の通知書を提出しなければなりません。
2) 貴社が工事を請け負わせた建設業を営むものに対しても、この書面を複写し交付して、「もしさらに他の者に工事を請け負わせたときは、作成特定建設業者に対する1)の通知書の提出と、その者に対するこの書面の写しの交付が必要である」旨を伝えなければなりません。
作成特定建設業者の商号 ○○建設 (株)
再下請負通知書の提出場所 工事現場内建設ステーション/△△営業所
〔2)の書面の文例〕
この建設工事の下請負人となり、その請け負った建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせた方は、遅滞なく、建設業法施行規則(昭和二四年建設省令第一四号)第一四条の四に規定する再下請負通知書を提出してください。一度通知した事項や書類に変更が生じたときも変更の年月日を付記して同様の書類の提出をしてください。
○○建設 (株)
(3) 下請負人に対する指導等
施工体制台帳を的確かつ速やかに作成するため、施工に携わる下請負人の把握に努め、これらの下請負人に対し速やかに再下請通知書を提出するよう指導するとともに、作成特定建設業者としても自ら施工体制台帳の作成に必要な情報の把握に努めなければならない。
(4) 施工体制台帳の作成方法
施工体制台帳は、所定の記載事項と添付書類から成り立っている。その作成は、発注者から請け負った建設工事に関する事実と、施工に携わるそれぞれの下請負人から直接に、若しくは各下請負人の注文者を経由して提出される再下請負通知書により、又は自ら把握した施工に携わる下請負人に関する情報に基づいて行うこととなるが、作成特定建設業者が自ら記載してもよいし、所定の記載事項が記載された書面や各下請人から提出された再下請負通知書を束ねるようにしてもよい。ただし、いずれの場合も下請負人ごとに、かつ、施工の分担関係が明らかとなるようにしなければならない。
〔例〕発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者をA社とし、A社が下請契約を締結した建設業を営む者をB社及びC社とし、B社が下請契約を締結した建設業を営む者をBa社及びBb社とし、Bb社が下請契約を締結した建設業を営む者をBba社及びBbb社とし、C社が下請契約を締結した建設業を営む者をCa社、Cb社、Cc社とする場合における施工体制台帳の作成は、次の1)から10)の順で記載又は再下請負通知書の整理を行う。
1) A社自身に関する事項(規則第一四条の二第一項第一号)及びA社が請け負った建設工事に関する事項(規則第一四条の二第一項第二号)
2) B社に関する事項(規則第一四条の二第一項第三号)及び請け負った建設工事に関する事項(規則第一四条の二第一項第四号)
3) Ba社に関する…〔B社が提出する再下請負通知書等に基づき記載または添付〕
4) Bb社に関する…〔B社が提出する再下請負通知書等に基づき記載または添付〕
5) Bba社に関する…〔Bb社が提出する 〃 〕
6) Bbb社に関する…〔Bb社が提出する 〃 〕
7) C社に関する事項(規則第一四条の二第一項第三号)及び請け負った建設工事に関する事項(規則第一四条の二第一項第四号)
8) Ca社に関する…〔C社が提出する 〃 〕
9) Cb社に関する…〔C社が提出する 〃 〕
10) Cc社に関する…〔C社が提出する 〃 〕
また、添付書類についても同様に整理して添付しなければならない。
施工体制台帳は、一冊に整理されていることが望ましいが、それぞれの関係を明らかにして、分冊により作成しても差し支えない。
(5) 施工体制台帳を作成すべき時期
施工体制台帳の作成は、記載すべき事項又は添付すべき書類に係る事実が生じ、又は明らかとなった時(規則第一四条の二第一項第一号に掲げる事項にあっては、作成特定建設業者に該当することとなった時)に遅滞なく行わなければならないが(規則第一四条の五第三項)、新たに下請契約を締結し下請契約の総額が(一)の金額に達したこと等により、この時よりも後に作成特定建設業者に該当することとなった場合は、作成特定建設業者に該当することとなった時に上記の記載又は添付をすれば足りる。
また、作成特定建設業者に該当することとなる前に記載すべき事項又は添付すべき書類に係る事実に変更があった場合も、作成特定建設業者に該当することとなった時以降の事実に基づいて施工体制台帳を作成すれば足りる。
(6) 各記載事項及び添付書類の意義
施工体制台帳の記載に当たっては、次に定めるところによる。
1) 記載事項(規則第一四条の二第一項)関係
イ 第一号の「建設業の種類」は、請け負った建設工事にかかる建設業の種類に関わることなく、特定建設業の許可か一般建設業の許可かの別を明示して、記載すること。この際、規則別記様式第一号記載要領五の表の( )内に示された略号を用いて記載して差し支えない。
ロ 第二号イ及びヘの建設工事の内容は、その記載から建設工事の具体的な内容が理解されるような工種の名称等を記載すること。
ハ 第二号ロの「営業所」は、作成特定建設業者の営業所を記載すること。
ニ 第二号ホの「監理技術者資格」は、監理技術者が法第一五条第二号イに該当する者であるときはその有する規則別表(二)に掲げられた資格の名称を、同号ロに該当する者であるときは「指導監督的実務経験(土木)」のように、同号ハに該当する者であるときは「建設大臣認定者(土木)」のように記載する。
ホ 第二号ホの「専任の監理技術者であるか否かの別」は、実際に置かれている技術者が専任の者であるか専任の者でないかを記載すること。
ヘ 第二号ヘの「主任技術者資格」は、その者が法第七条第二号イに該当する者であるときは「実務経験(指定学科・土木)」のように、同号ロに該当する者であるときはその有する規則別表(二)に掲げられた資格の名称を記載する。
ト 第三号ロの「建設業の種類」は、例えば大工工事業の許可を受けているものが大工工事を請け負ったときは「大工工事業」と記載する。この際、規則別記様式第一号記載要領五の表の( )内に示された略号を用いて記載して差し支えない。
2) 添付書類(規則第一四条の二第二項)関係
イ 第一号の書類は、作成特定建設業者が当事者となった下請契約以外の下請契約にあっては、請負代金の額について記載された部分が抹消されているもので差し支えない。
ただし、平成一三年一〇月一日以降の契約に係る公共工事については、全ての下請契約について請負代金の額は明記されていなければならない。
なお、同号の書類には、法第一九条各号に掲げる事項が網羅されていなければならないので、これらを網羅していない注文伝票等は、ここでいう書類に該当しない。
ロ 第二号の「監理技術者資格を有することを証する書面」は、作成特定建設業者が置いた監理技術者についてのみ添付すればよく、具体的には、規則第一三条第二項に規定する書面を添付すること。
ハ 第三号の「主任技術者資格を有することを証する書面」は、作成特定建設業者が置いた規則第一四条の二第一項第二号ヘに規定する者についてのみ添付すればよく、具体的には、規則第三条第二項に規定する書面を添付すること。
(7) 記載事項及び添付書類の変更
一度作成した施工体制台帳の記載事項または添付書類(法第一九条第一項の規定による書面を含む。)について変更があったときは、遅滞なく、当該変更があった年月日を付記して、既に記載されている事項に加えて変更後の事項を記載し、又は既に添付されている書類に加えて変更後の書類を添付しなければならない。
変更後の事項記載についても、(4)に掲げたところと同様に、作成特定建設業者が自ら行ってもよいし、変更後の所定の記載事項が記載された書面や各下請負人から提出された変更に係る再下請負通知書を束ねるようにしてもよい。
(8) 施工体系図
施工体系図は、作成された施工体制台帳をもとに、施工体制台帳のいわば要約版として樹状図等により作成の上、工事現場の見やすいところに掲示しなければならないものである。
ただし、公共工事については、工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所に掲示しなければならない。
その作成に当たっては、次の点に留意して行う必要がある。
1) 施工体系図には、現にその請け負った建設工事を施工している下請負人に限り表示すれば足りる(規則第一四条の六第二号)。なお、「現にその請け負った建設工事を施工している」か否かは、請負契約で定められた工期を基準として判断する。
2) 施工体系図の掲示は、遅くとも前記1)により下請負人を表示しなければならなくなったときまでには行う必要がある。また、工期の進行により表示すべき下請負人に変更があったときには、速やかに施工体系図を変更して表示しておかなければならない。
3) 施工体系図に表示すべき「建設工事の内容」(規則第一四条の六第一号及び第二号)は、その記載から建設工事の具体的な内容が理解されるような工種の名称等を記載すること。
4) 施工体系図は、その表示が複雑になり見にくくならない限り、労働安全等他の目的で作成される図面を兼ねるものとして作成しても差し支えない。
(9) 施工体制台帳の発注者への提出等
作成特定建設業者は、発注者からの請求があったときは、備え置かれた施工体制台帳をその発注者の閲覧に供しなければならない。
ただし、公共工事については、作成した施工体制台帳の写しを提出しなければならない。
(10) 施工体制台帳の備置き等
施工体制台帳の備置き及び施工体系図の掲示は、発注者から請け負った建設工事目的物を発注者に引き渡すまで行わなければならない。ただし、請負契約に基づく債権債務が消滅した場合(規則第一四条の七。請負契約の目的物の引渡しをする前に契約が解除されたこと等に伴い、請負契約の目的物を完成させる債務とそれに対する報酬を受け取る債権とが消滅した場合を指す。)には、当該債権債務の消滅するまで行えば足りる。
(11) 法第四〇条の三の帳簿への添付
施工体制台帳の一部は、上記(10)の時期を経過した後は、法第四〇条の三の帳簿の添付資料として添付しなければならない。すなわち、上記(10)の時期を経過した後に、施工体制台帳から帳簿に添付しなければならない部分だけを抜粋することとなる。このため、施工体制台帳を作成するときには、あらかじめ、帳簿に添付しなければならない事項を記載した部分と他の事項が記載された部分とを別紙に区分して作成しておけば、施工体制台帳の一部の帳簿への添付を円滑に行うことが出来ると考えられる。
2 下請負人の義務
施工体制台帳の作成等の義務は、作成特定建設業者に係る義務であるが、施工体制台帳が作成される建設工事の下請負人にも次のような義務がある。
(1) 施工体制台帳が作成される建設工事である旨の通知
その請け負った建設工事の注文者から1(2)1)の書面の交付を受けた場合や、工事現場に1(2)2)の書面が掲示されている場合は、その請け負った建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせたときに以下に述べるところにより書類の作成、通知等を行わなければならない。
(2) 建設工事を請け負わせた者及び作成特定建設業者に対する通知
(1)に述べた場合など施工体制台帳が作成される建設工事の下請負人となった場合において、その請け負った建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせたときは、遅滞なく、
1) 当該他の建設業を営む者に対し、1(2)1)の書面を交付しなければならない。
2) 作成特定建設業者に対し、(3)に掲げるところにより再下請負通知を行わなければならない。
(3) 再下請負通知
1) 再下請負通知は、規則第一四条の四に規定するところにより作成した書面(以下「再下請負通知書」という。)をもって行わなければならない。再下請負通知書の作成は、再下請負通知人がその請け負った建設工事を請け負わせた建設業を営む者から必要事項を聴取すること等により作成する必要があり、自ら記載をして作成してもよいし、所定の記載事項が記載された書面を束ねるようにしてもよい。ただし、いずれの場合も下請負人ごとに行わなければならない。
2) 再下請負通知書の作成及び作成特定建設業者への通知は、施工体制台帳が作成される建設工事の下請負人となり、その請け負った建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせた後、遅滞なく行わなければならない。(規則第一四条の四第二項)
また、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が新たに下請契約を締結し下請契約の総額が1(1)の金額に達したこと等により、施工途中で再下請負通知人に該当することとなった場合において、当該該当することとなった時よりも前に記載事項又は添付書類に係る事実に変更があった時も、再下請負通知人に該当することとなった時以降の事実に基づいて再下請負通知書を作成すれば足りる。
3) 再下請通知書に添付される書類は、請負代金の額について記載された部分が抹消されているもので差し支えない。ただし、平成一三年一〇月一日以降の契約に係る公共工事については、当該部分は記載されていなければならない。
4) 一度再下請負通知を行った後、再下請負通知書に記載した事項または添付した書類(法第一九条第一項の規定による書面)について変更があったときは、遅滞なく、当該変更があった年月日を付記して、既に記載されている事項に加えて変更後の事項を記載し、又は既に添付されている書類に加えて変更後の書類を添付しなければならない。
5) 作成特定建設業者に対する再下請負通知書の提出は、注文者から交付される1(2)1)の書面や工事現場の掲示にしたがって、直接に作成特定建設業者に提出することを原則とするが、やむを得ない場合には、直接に下請契約を締結した注文者に経由を依頼して作成特定建設業者あてに提出することとしても差し支えない。
3 施工体制台帳の作成等の勧奨について
下請契約の総額が1(1)の金額を下回る場合など法第二四条の七第一項の規定により施工体制台帳の作成等を行わなければならない場合以外の場合であっても、建設工事の適正な施工を確保する観点から、規則第一四条の二から第一四条の七までの規定に準拠して施工体制台帳の作成等を行うことが望ましい。
また、より的確な建設工事の施工及び請負契約の履行を確保する観点から、規則第一四条の二等においては記載することとされていない安全衛生責任者名、雇用管理責任者名、就労予定労働者数、工事代金支払方法、受注者選定理由等の事項についても、できる限り記載することが望ましい。
なお、「施工体制台帳の整備について」(平成三年二月五日付け建設省経構発第三号)は、廃止する。