建設省経振発第五四号
平成元年五月一六日

各省各庁の官房長等あて

建設経済局長通達


共同企業体運営指針について


標記については、一昨年八月の中央建設業審議会第二次答申―共同企業体の在り方―を受け、共同企業体が構成員の信頼と協調の下に円滑に運営されるよう、共同企業体の施工体制、管理体制、責任体制その他基本的な運営方法に係る指針として、今般、別添のとおり「共同企業体運営指針」を定め、建設業者団体の長あて、その活用方について依頼したところであるので、参考までに送付する。
なお、貴管下特殊法人等に対しても速やかに同指針の回付方をお願いする。



〔別添〕

共同企業体運営指針

(1) 趣旨

共同企業体は、複数の構成員が技術・資金・人材等を集結し、工事の安定的施工に共同して当たることを約して自主的に結成されるものである。社風、経営方針、技術力、経験等の異なる複数の構成員による共同企業体の効果的な活用が図られるためには、共同企業体の運営が構成員相互の信頼と協調に基づき円滑に行われることが不可欠である。
本指針は、共同企業体が構成員の信頼と協調のもとに円滑に運営されるよう、その施工体制、管理体制、責任体制その他基本的な運営のあり方を示したものであり、個別の共同企業体においてそれぞれ工事の規模・性格等その実状に合わせて策定することが期待される各種規則等の決定に当たって、準拠すべき基準として普及・活用を図ることにより、運営に係るトラブルの未然防止及び運営の円滑化に資することを目的とするものである。
なお、本指針は工事ごとに結成される特定建設工事共同企業体において活用されることを想定しているが、継続的な協業関係を保ちつつ工事を行う経常建設共同企業体についても、基本的には本指針の趣旨に沿った適正な運営が望まれるところである。

(2) 運営委員会

運営委員会は、共同企業体の運営に関する基本的かつ重要な事項を協議決定する最高意思決定機関であり、この場においては、構成員全員が十分に協議したうえで工事の完成に向けての公正妥当な意思決定が行われる必要がある。その際、代表者の独断・専行等の弊害を誘発し、共同企業体の円滑な施工を確保するうえでの前提である構成員間の信頼と協調が損なわれることのないよう、各構成員を代表する運営委員への適切な権限の付与、適正な開催時期・手続きの採用及び付議すべき事項の整理等についての合意形成が行われていなければならない。
このため、準備委員会及び運営委員会の設置等に当たっては、次のとおりその公正化・明瞭化を図り、運営委員会の適正な機能を確保することとする。
一 準備委員会の設置

準備委員会は、共同企業体の結成から運営委員会設置までの間、必要に応じて設けるものとし、原則として次に掲げる事項について協議決定する機能を有するものとする。
1) 協定書の作成
2) 工事金額の見積
3) 規則等(案)の作成
4) 工事事務所(作業所)編成(案)の作成
5) その他付議を要すると認められる事項

二 運営委員会の設置と委員のあり方

運営委員会は、工事の受注が決定した段階で遅滞なく設置するものとし、その委員については各構成員の立場を代表し得る者をもって充てることとする。また、運営委員会の構成は、権限と責任を有する運営委員、運営委員の代理となる運営委員代理及び構成員間での連絡を円滑に図るための幹事を各構成員がそれぞれ一名ずつ配置し、代表者から選任された運営委員が運営委員会の委員長となることを原則とする。ただし、対象工事の規模・性格等を勘案して必要と認められる場合にあってはこれと異なった取扱いをすることも差し支えない。

三 開催時期・手続き

運営委員会は、左記四に掲げる事項について協議する必要が生じたときに開催するものとし、工事の規模・性格等にかかわらず、受注決定後すみやかに開催するほか、少なくとも実行予算編成時、決算書(案)承認時において開催するものとする。
開催手続きは、原則として委員長が必要に応じて招集するものとするが、公平性の観点から他の委員からも招集できる制度を確立しておく必要があり、これら一切の手続きについては、運営委員会規則に明記しておくものとする。

四 付議事項

運営委員会は、施工委員会(作業所委員会)その他の専門委員会の権限を尊重しつつ、工事現場での工事の円滑な施工を図る意味から、一に掲げる事項についての案を承認するほか、共同企業体の運営に係る次に掲げる基本的かつ重要な事項をその付議事項とする必要がある。
なお、これら運営委員会の意思決定についての決裁方法については、予め運営委員会規則に定めておくものとする。
1) 組織・編成及び工事の施工の基本に関する事項

(組織、規則等の整備等施工体制の確立に係る事項を含む。)

2) 実行予算及び決算書(案)の承認に関する事項
3) 設計変更、追加工事の承認に関する事項(軽微なものを除く。)
4) 取引業者の決定及び下請契約等の決定に関する事項(軽微なものを除く。)
5) その他付議を要すると認められる事項

(3) 現場運営組織の設置

共同企業体による工事の施工が円滑かつ効率的に実施されるためには、構成員が運営委員会において十分な協議を行うことはもとより、現場においても運営委員会で決定された方針に即して全ての構成員が緊密な意思疎通を図り、協調して工事の施工に当たらなければならない。そのため、各構成員の意思を現場運営に反映することができるよう、次に掲げる事項に配慮して、適正な現場運営組織体制の整備を図ることが必要である。
一 工事事務所(作業所)の組織

工事事務所(作業所)の組織については、編成表を作成すること等により現場における指揮命令系統及び責任体制を明確にすべきことはいうまでもないが、その際、構成員間の現場における権限調整等からするポストの設置は避けるものとし、単体施工の場合における組織編成と同様、円滑かつ効率的な工事施工の観点から組織するものとする。

二 施工委員会(作業所委員会)等の設置

工事の施工を円滑に実施するため、法令によりその設置を義務付けられるもののほか、現場における工事の施工に関する全ての基本的事項を協議決定する機関として運営委員会のもとに施工委員会(作業所委員会)を設置するものとする。
なお、工事の規模・性格等によっては専門的事項を協議決定する機関として、購買委員会、技術委員会等施工委員会(作業所委員会)の機能を分化・補完する専門委員会を設ける必要も生じるが、その場合においては、運営委員会において十分協議し、少なくとも当該専門委員会の設置目的を明確にしたうえで、その設置を決定するものとする。

三 各専門委員会の委員のあり方

施工委員会(作業所委員会)等の各専門委員会は、工事現場での実務について機動的に対処し得る体制が必要とされることから、その委員は努めて各構成員から現場に派遣される職員をもって充てるものとするが、必要に応じて各構成員から現場職員以外の職員を委員として派遣することができるものとする。

四 各専門委員会規則等

各専門委員会がその役割を十分果たし、共同施工が円滑に遂行されるためには、構成員間の合意を規則等として整備し、各々の専門委員会が公正かつ合理的に運営され得る体制を確保する必要がある。
また、各専門委員会で決定された重要な事項については、適時かつ正確に運営委員会へ報告されなければならず、工事の円滑な共同施工に向けて委員会間の事務連絡、情報交換も十分行われる必要がある。
したがって、各専門委員会規則等の整備に当たっては、その目的、権限、構成、開催・議事方法及び付議事項を明確に定めるほか、各専門委員会から運営委員会及び他の専門委員会へ報告・協議すべき事項についても規定することとする。

(4) 規則等による円滑な運営の確保

共同企業体の組織が効果的に働き、円滑かつ効率的な共同施工を確保するためには、運営委員会、各専門委員会及び工事事務所(作業所)組織が整備され、各々その機能が十分に発揮されるとともに、構成員が密接な連携を保つことが必要である。
このため、公正性、効率性、協調性各々の観点から、業務の処理要領についての構成員間の合意を規則等として明文化することにより、全ての構成員が信頼と協調をもって共同施工に参画し得る体制を確保する必要がある。
以上の点から規則等の整備に当たっては、以下の事項に留意しつつ、構成員間で十分協議して決定するものとする。
一 規則等の策定方法

1) 規則等は、原案を準備委員会で作成し、運営委員会の承認をもって決定することを原則とする。
2) 運営委員会で承認された規則等は各構成員が記名捺印し、各々一通を保有する。
3) 以後に生じた改廃事項については1)、2)に準じ覚書として作成する。
4) 規則等の内容の決定に当たっては、各専門委員会の専決事項及び決裁担当部署を明確に定めておくこととする。

二 主要規則等の整備

法令に基づいて整備が義務付けられているもの及び各委員会の設置に伴うもののほか、少なくとも次に掲げる経理取扱規則、工事事務所(作業所)庶務規則及び瑕疵担保責任等に係る覚書等についてその整備を行うものとする。
1) 経理取扱規則

経理取扱規則においては、少なくとも次に掲げる事項を定めるものとする。
・経理処理担当構成員
・経理部署の所在場所
・会計期間
・会計記録の保存期間
・勘定科目及び帳票書類に関する事項
・決算及び監査に関する事項
・資金の出資方法及び時期に関する事項
・前払金等の取扱いに関する事項
・下請代金等の支払に関する事項
・工事代金の請求に関する事項
・取引金融機関に関する事項
・会計報告に関する事項
・原価算入費用及び各構成員が負担すべき費用に関する事項

2) 工事事務所(作業所)庶務規則

工事事務所(作業所)庶務規則においては、次に掲げる事項のうちから現場において必要なものを定めるものとする。
・組織に関する事項
・人事に関する事項
・就業に関する事項
・その他必要と認められる事項

3) 瑕疵担保責任等に係る覚書等

工事の施工に伴う損害発生時の責任分担を明確にするため、少なくとも以下に掲げる事項については、工事着工前に運営委員会等で十分に協議し、損害保険等の活用を含め、その負担額の確定手順、費用の分担基準及び請求手続きを覚書等に規定しておくものとする。
・工事竣工後の瑕疵担保責任に関する事項
・火災、天災等に起因する損害に関する事項
・業務遂行に伴う損害賠償に関する事項

(5) 技術者等の適正な配置

共同企業体による工事の施工が円滑かつ効率的に実施されるためには、全ての構成員が施工しようとする工事にふさわしい技術者を適正に配置し、共同施工の体制を確保しなければならない。したがって、各構成員から派遣される技術者等の数、質及び配置等は、信頼と協調に基づく共同施工の確保という観点から、工事の規模・性格等に応じて適正に決定される必要がある。
このため、編成表の作成等現場職員の配置の決定に当たっては、次の事項に配慮するものとする。

1) 工事の規模・性格、出資比率等を勘案し、各構成員の適正な配置人数を確保すること。
2) 構成員間における対等の立場での協議を確保するため、派遣される職員はポストに応じ経験、年齢、資格等を勘案して決定すること。
3) 特定の構成員に権限が集中することのないよう配慮すること。
4) 各構成員の有する技術力が最大限に発揮されるよう配慮すること。

(6) 現場就業環境の整備

現場における労働意欲を増し、能率的に作業を進めていくためには、共同企業体としての適正な就業条件を整備するとともに、厳格に安全衛生管理を実施することが必要不可欠である。
その場合、各構成員の就業規則、安全衛生管理方針は各々異なっていることから、公平な就業条件と一元的な安全衛生管理のもとで、作業環境の快適性を保ち、構成員間の協調性、公正性が損なわれることのないよう配慮することが必要である。
このため、以下の点に留意して、運営委員会等において適正な措置を講ずるものとする。
一 公平な就業条件の確保

現場における職員の就業条件の統一化に配慮して、少なくとも、労働時間、休暇・休日及び災害補償等現場における就業に関する構成員間の取り決めを行うものとし、その場合、現場で働く各構成員の職員にとって最も適正な条件となるよう配慮して決定するものとする。

二 安全衛生管理の理解の向上

作業環境の整備を図り、職員の安全と健康を確保するため、以下の点に留意し全職員の安全衛生意識の向上に努めるものとする。
1) 安全衛生管理に係る計画等の策定に当たっては、安全衛生管理費用に対する共通の認識を確保するうえからも構成員間で十分協議するものとする。
2) 策定された安全衛生管理に係る計画等は掲示、閲覧等により全職員への周知徹底を行い、現場における安全衛生管理の理解の向上を図るものとする。

(7) 会計

会計処理の方法を異にする構成員からなる共同企業体において、損益計算、原価管理が的確に実施されるためには、その前提となる会計処理が構成員間で合意された統一的基準に基づき、迅速、明瞭かつ一元的に行われる必要がある。したがって、共同企業体で採用されるべき会計処理方法については構成員間で予め取り決めをしておかなければならない。
また、共同企業体の会計処理は公正性、明瞭性を確保する必要から共同企業体独自の会計単位を設けて行われる必要がある。
以上の点から、次に掲げる諸事項を考慮して経理取扱規則等を定めるものとする。
一 現場主義会計の必要性

構成員に対して会計処理の信頼性を担保するため、共同企業体の会計処理は努めて現場において行うこととするが、共同企業体の規模・性格等によっては効率性の観点から、代表者の本社電算システム等を適宜活用することも差し支えない。

二 会計の明瞭性の確保

全ての構成員に対して開かれた会計とするため、原則として月一回定期的に構成員に対する会計報告を実施するものとするほか、構成員からの求めに応じ、随時会計情報の開示を行うこととする。

三 前払金等の取扱い

前払金、中間金、精算金の受領、取扱い及び入出金方法等については、各々の代金の性格、共同企業体としての資金計画等を勘案のうえ定めるものとする。

四 計画的出資の確保

構成員からの資金の円滑な拠出を図るため、工事資金の出資については工程計画等を勘案のうえ事前に策定する出資計画に基づき出資の請求を行うほか、出資手続きについても定めるものとする。

(8) 適正な原価管理の確保

適正な原価管理の確保は共同企業体として不必要な費用の発生を防止し、的確な予算管理を行ううえで必要不可欠なものである。このため、実行予算の作成に当たっては協定(共通)原価の範囲の明確化による工事原価の的確な把握が行われ、その執行に当たっては実行予算書に基づいた適切な予算・実績管理が行われることが肝要であることから、次に掲げるところにより明確な基準を設定するものとする。
一 協定(共通)原価

協定(共通)原価の基準、範囲については、運営委員会において定めておくものとするが、少なくとも次に掲げる経費のうち構成員に対して支払うものについては、その取扱いを明確に定めるものとする。
1) 事前経費
2) 見積費用
3) 人件費
4) 本社事務経費
5) 電算処理費
6) 仮設材料及び工事用機械等並びに工業所有権等の使用料

二 実行予算

実行予算作成に当たっては、仮設工事、土工事等工事種別ごとに材料費、労務費、外注費、経費等の区分で整理を行い、実行予算と実績を対比し得るように作成するものとする。
なお、工事実績と実行予算の対比について定期的に運営委員会に対して報告を行うものとし、予算と実績の間に重要な差異が予想される場合又は生じた場合は、その都度理由を明らかにし、運営委員会の承認を得るものとする。

三 決算

決算の手続きは、法令、協定書その他共同企業体の規則等に定める事項に準拠し行うほか、次に掲げる項目に沿って行うものとする。
1) 未精算勘定の整理
2) 税務計算上の必要資料の整理
3) 残余資産の処分
4) 未発生原価の見積
5) 決算書(案)の作成と対象書類等の監査
6) 決算書(案)の承認

四 監査

共同企業体の適正な業務執行及び適正な協定(共通)原価の実現を担保するため、原則として決算書(案)作成後、適切かつ公正な監査を行うこととし、運営委員会においては次の事項に留意して、少なくとも監査委員の選出及び権限、監査対象並びに監査報告の手続きを予め定めておくものとする。
1) 監査委員については、原則として全ての構成員が、当該構成員を代表し得る者を選定して充てるものとする。
2) 監査の対象は、原則として決算書(案)及び全ての業務執行に関する事項とする。
3) 監査報告書は、全ての監査委員が監査結果を確認のうえ運営委員会に提示するものとし、少なくとも次に掲げる事項を記載するものとする。

(一) 監査報告書の提出先、日付
(二) 監査方法の概要
(三) 監査委員の署名捺印
(四) 対象とした決算書(案)等が法令等に準拠し作成されているかどうかについての意見
(五) 対象とした決算書(案)等が協定書その他共同企業体の規則等に定める事項に従って作成されているかどうかについての意見

(注一) ここにいう決算書(案)は貸借対照表、損益計算書、工事原価報告書、資金収支表及び附属明細書とする。
(注二) より適正な原価を確保する観点から、共同企業体の監査は前記のとおり行われることが望ましいが、構成員間の合意に基づき簡易な監査が行われている現在の実態に鑑み、当分の間、監査の目的を達し得る範囲内において、前記手続きと異なった取扱いを定めることも差し支えない。

(9) 下請業者、資機材業者決定の適正化

構成員間の信頼と協調を前提とする共同企業体の工事施工に当たっては、単体による施工の場合と同様、円滑かつ効率的な施工の確保の観点から下請業者、資機材業者の決定が適正に行われなければならないことはいうまでもない。
しかしながら、各構成員はそれぞれ協力会社等の下請業者、資機材業者を異にすることが通例であり、このことから下請業者等の決定いかんによっては共同企業体としての効果的な活用が期待されないのみならず、工事の的確な施工の確保に支障を生ずることも考えられ、その決定は公正かつ明瞭に進められなければならない。
このため、次のとおり施工委員会(作業所委員会)等において適正な下請業者等の決定手続き等を定めるものとする。
一 下請業者決定手続きの明確化

下請業者の決定は以下の手続きにより公正かつ明瞭に行うことを原則とする。
1) 各構成員より希望工種ごとに下請業者の推薦を受けるものとする。
2) 下請業者の審査は、施工能力、雇用管理及び労働安全管理の状況、労働福祉の状況、下請との取引の状況等を総合的に勘案して行い、優良な下請の選定を図るものとする。
3) 下請業者の選定は原則として複数とし、施工委員会(作業所委員会)等において行うものとする。
4) 選定業者に対しては、遅滞なく工期、工事内容、仕様書、図面見本等を明示し、入札によるかあるいは、見積書を徴求して、その内容を施工委員会(作業所委員会)等で検討のうえ運営委員会において下請業者の決定を行うものとする。

二 適正な下請業者管理

下請業者の管理については、円滑な共同施工の確保という観点から、原則として施工委員会(作業所委員会)等が適正な指導、助言、その他の援助を行うものとするほか、以下の事項に留意して下請業者による適切な施工管理が実施されるよう指導するものとする。
1) 施工方法の協議及び技術力の確保
2) 品質管理の確保

三 資機材業者決定手続きの明確化

資材業者の決定は価格、品質、納期等を勘案し、下請業者決定の手続きに準じて行うものとする。
また、機材業者の決定に当たっては、施工工種、工法に適した機材の選定に留意するものとする。


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