宅地建物取引業法(昭和二七年法律第一七六号)の施行については、さきに建設事務次官から通牒されたところであるが、同法施行規則も昭和二七年六月二〇日建設省令第一八号をもって別紙の通り定められたので、左記事項御了知の上、同法の施行に遺憾のないよう御配慮願いたい。
一 この法律の施行に要する経費について
この法律の施行のため必要な経費の財源については、原則として登録手数料をもってこれに充てるよう取計らうこと
二 更新の登録手数料について
更新の登録手数料は、新規の登録手数料の額より一〇〇〇円乃至五〇〇円を減じた額で定めること。
三 登録の申請について
八月一日現在、宅地建物取引業を営んでいる者及びその後新たに営もうとする者については、洩れなく登録の申請をするよう周知徹底をはかること。
四 法第六条第二項の規定による登録拒否の取扱について
登録申請者のうちに第六条第二項の各号の一に該当する者がある場合には、具体的な事実を調査の上左により措置すること。
(一) この法律に違反して刑に処せられた者については、その刑の執行を終り、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しないときは、登録を拒否すること。但し、第八条又は第九条の規定に違反して処分された者については、二年を経過していなくても登録の実施をして妨げない。
(二) この法律以外の法令に違反して禁こ以上の刑に処せられた者については、その刑罰が自然犯に対する懲役刑であるとき又は不動産の取引に関連するものであるときは登録を拒否し、その他の場合には、情状によって、その登録の実施をしても差支えないこと。
五 法第一七条の報酬について
法第一七条の報酬の額は、都道府県知事が、管内の、宅地建物の需給事情、取引業者の数、一般的経済条件等を勘案して定めなければならないが、別記第一「報酬の額の算定基準」によることが望ましい。
報酬の受領については、契約成立の際半額とし、代理又は媒介の責任を完了したとき残額とするように指導すること。
業者が業務について受けることのできる報酬額は、当該業務を処理した事務所の所在地を管轄する都道府県知事の定めるところによる。従って、他の都道府県にある物件を取り扱った場合においても、その事務所の所在地の都道府県知事の定めた報酬額によるのであって、当該物件の所在地の都道府県の報酬額によるのではない。
六 法第二〇条第二項の規定による行政処分について
法第二〇条第二項の規定による行政処分については左によること。
(一) 第一号に該当する場合については、前掲四の趣旨に準じ、その軽重を勘案して業務の停止又は登録の取消を行うこと。
(二) 第二号に該当する場合については、業務の停止処分のみを行うこと。
(三) 第三号に該当する場合については、第一八条の違反行為に対しては、登録の取消その他の規定の違反行為に対しては、原則として業務の停止の処分を行うこと。但し、特に悪質なものに対しては、登録の取消を行うこと。
(四) 第四号に該当する違反事項は、本条第二項の規定による業務の停止の処分に違反する場合に限られるので、この場合には登録の取消を行うこと。
(五) 第五号に定める「著しく不当な行為」とは、故意過失を問わず、著しく不当と認められる行為をすべて包含するので、その情状によって業務の停止又は登録の取消を行うこと。
(六) 業務の停止の期間については、情状によって妥当な期間を定めること。
七 業務上の簿冊、書類の整備について
業務の監督上必要と認められる簿冊、書類等の整備については、特に業務の適正な運営による事業の合理的発展を図るため基本的な資料として必要である旨を、業者に対し指導啓発すること。
八 業者が直接相手方と契約の締結をする場合は勿論、売買、貸借等のあつ施をする場合においても、当事者間の契約を合法的且つ適正なものとするよう、業者に対し、格別の指導をすること。
九 違反事項の告発について
違反事項については、官公吏は、刑事訴訟法第二三九条第二項の規定により、告発の義務があるので、部下の職員に対し業者に対する監督の徹底を期させると共に悪質な違反事項の摘発に努めこれを必ず告発するよう指導すること。
一〇 業務監督上の報告について
登録の実施状況及び監督処分状況については、別記第二「様式第一号及び様式第二号」により、その月の分を翌月一〇日迄に住宅局長宛報告すること。
一一 次官通牒の趣旨により委員会を設ける場合、その委員会は、官公吏、業者及び学識経験者をもって構成すること。なお、この場合、業者及び学識経験者の委員の数は、それぞれ同数とすることが望ましい。
一二 この法律の運営に関し、業者、依頼者その他一般市民の理解と協力を求めるため、宅地建物取引業の運用に関する相談所のようなものを設けることが望ましい。
一三 業者の資質向上のための指導について
業者の資質向上と、業界の改善とは、共にこの法律の目的の達成に至大の関係があるので、その指導については、格別の配慮をせられたい。特に業者の組合その他団体の健全な育成に力を致し、かかる健全な組織を通じて業者の指導を図ること。これがため、組合その他の団体の存しない場合には、市又は県単位にこれを結成させるよう、勧奨すること。
一四 公益法人の設立等について
この業務の運営の適不適は、社会公共の福祉に及ぼす影響が少くないが、この法律の公布を契機として不動産の利用促進に関する事業を行うと共に業界の刷新向上をはかることを目的とする社団法人全日本不動産協会が設立されたので、この法人の支部組織を育成し、その健全な活動をできる限り援助すると共に、これと相協力して業界の改善指導その他この法律の運営の適正化を図る等特別の配慮を願いたい。
以上