宅地建物取引業法の一部を改正する法律は、昭和四六年六月一六日法律第一一〇号として公布され、同年一二月一五日から施行されることとなったが、この法律は、免許基準の整備、取引主任者の登録制度の実施、契約内容の適正化、いわゆる「青田売り」に伴う前金の保全等を主たる内容とし、購入者の利益の保護と宅地、建物の流通の円滑化とを図ることを目的としたものである。
また、これに伴い、同法施行令及び施行規則も改正され、改正法とともに施行されることとなっており、これら法令の改正の趣旨が徹底されることにより、宅地建物取引業の業務の適正化と一般消費者の保護が図られるものと考えているが、改正法令の施行に当っては、とくに左記の事項に留意して、その運用に遺憾なきよう御配慮頂きたい。
第一 宅地建物取引業者の事務所(法第三条第一項)の範囲について
施行令第一条の二(法第三条第一項の事務所)に規定する事務所の範囲については、宅地建物取引業者が、商人である場合には、その本店又は支店として登記されたもの(支店については、店舗がなく、又は支店長を欠く等支店としての実体を有しないものを除く。)商人以外の者である場合には、主たる事務所又は従たる事務所が、宅地建物取引業者の事務所となるほか、支店としての名称を附していないものについても、その場所が、継続的に業務を行なうことができる施設を有し、かつ、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限をもっている使用人が置かれている場所(常時勤務することとされている場所)であれば、宅地建物取引業法における事務所として取り扱うこと。
第二 取引主任者の登録番号について
宅地建物取引主任者資格登録簿等へ記載すべきこととされている取引主任者の登録番号については、次に掲げる例のとおり、まず、登録地の都府県名を( )内に記入し、登録の順に従って算用数字で記載すること。但し、北海道については、都府県名のところへ支庁名を記入すること。
(例) (東京)321(神奈川)3652(石狩)45
第三 重要事項の説明等について
一 説明事項の追加について
法第三五条(旧法第一四条の三)の重要事項の説明等については、これを取引主任者の職務とし、また、宅地建物の割賦販売について一定の事項を説明すべきこととしたほか、一般の宅地建物取引についても次の二つの事項を追加したので、これらの事項については左記の要領で説明するよう指導すること。
(1) 法第三五条第一項第五号
(イ) 宅地の形状、構造について
当該宅地の地積、外周の各辺の長さを記入した縮尺一〇〇分の一以上の平面図を交付させ、また、当該宅地の道路からの高さ、石垣等の擁壁、階段、排水施設及び井戸等の位置及び構造等について説明させることとし、特にこれらの施設の位置については、右記の平面図に記入させること。
(ロ) 建物の形状、構造について
当該建物の敷地内における位置、各階の床面積及び間取りを示す縮尺一〇〇分の一以上の平面図(マンション等建物の一部にあっては、敷地及び当該敷地内における建物の位置を示す平面図並びに当該物件の存する階の平面図(いずれも縮尺四〇〇分の一以上)並びに当該物件の平面図(縮尺一〇〇分の一以上)を交付させ、また、当該建物の鉄筋コンクリート造、ブロック造、木造等の別、屋根の種類、階数等を説明させること。
(ハ) 宅地に接する道路の構造及び幅員について
道路については、その位置及び幅員を(イ)の平面図に記入させ、また側溝等の排水施設、舗装の状況等について説明させること。
(ニ) 建物の主要構造部、内装及び外装の構造又は仕上げについて主要構造部(建築基準法上の主要構造部をいう。)については、それぞれの材質を、内装及び外装については、主として天井及び壁面につきその材質、塗装の状況等を説明させること。
(ホ) 建物の設備の設置及び構造について
建築基準法上の建築設備のほか、厨房設備、照明設備、備え付けの家具等当該建物に附属する設備(屋内の設備に限らず門、へい等屋外の設備をも含む。)のうち主要なものについて、その設置の有無及び概況(配置、個数、材質等)を説明させることとし、特に配置については、図面で示すことが必要かつ可能である場合には、(ロ)の平面図に記入させること。
(2) 法第三五条第一項第九号
(イ)法第四一条第一項第一号に掲げる措置か第二号に掲げる措置かの別、(ロ)第一号に掲げる措置にあっては保証を行なう機関の種類(銀行、信託会社、信用金庫、農林中央金庫、指定保証機関等の別)及び(ハ)保証又は保証保険を行なう機関の名称又は商号を説明させること。
二 法第三五条第一項第一号から第五号までに掲げる事項の説明に用いる書面(以下「物件説明書」という。)について
(1) 法第三五条第一項第五号に掲げる事項について図面を交付したときは、その図面に記載されている事項はあらためて物件説明書に記載することを要しないものと解されること。
(2) (省略)
(3) (省略)
第四 (省略)
第五 指示処分についての聴聞について
宅地建物取引業者が宅地建物取引業法の規定に違反した場合又は法第六五条第一項各号の一に該当する場合には、必要な指示をすることができることになっているが、従来、指示については事前の聴聞を経る必要がないものとされていたのを改め、今回の改正により、指示を行なうにあたっては、事前に聴聞を行なうべきことを規定し、監督処分としての性格を明確にしたので、その趣旨に沿って指示処分を行なうこと。
第六 違反容疑の通知について
建設大臣又は他の都道府県知事の免許を受けた業者が、宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為その他業法の規定に違反している疑いがあるときは、監督処分を行なうのに先立ってその旨を免許権者に連絡し、協議すること。
第七 取引主任者等に対する懲戒処分後の通知について法第六八条の規定に基づき取引主任者等に対して懲戒処分を行なったときは、すみやかに他の都道府県知事及び建設大臣に通知すること。
第八 宅地建物取引業審議会の設置について
宅地建物取引業法においては都道府県は、都道府県知事の諮問に応じて宅地建物取引業に関する重要事項を調査審議させるため宅地建物取引業審議会(以下「審議会」という。)を置くことができる旨定められているが、現在に至るまで未設置の都道府県が多い。宅地建物取引業の健全な発展と宅地建物取引業者の育成監督を図るうえで審議会は次のような役割を果すと考えるので、未設置の都道府県にあっては今後設置する方向で検討すること。
(一) 宅地建物取引業に関して都道府県が行なう行政処分の適正を確保するため必要に応じ都道府県知事の諮問に応じること。
(二) 宅地建物取引業に関する紛争の調停について公正な判断をすること。
(三) その他宅地建物取引業の改善向上に関するあらゆる事項について都道府県知事の諮問に応じること。
第九 宅地建物取引業界の育成について
宅地建物取引業者と顧客との紛争が跡を絶たない実情にかんがみ、業界の育成を図ることが一般消費者の保護につながると考えられるので、業界の組織化を推進するとともに、業界団体との連絡を密にし、また、不当景品類及び不当表示防止法に基づく宅地建物取引の表示に関する公正競争規約の設定を積極的に促進することにより業務の適正かつ能率的運営を図る等業界の自主規制を指導すること。