このような事態を未然に防止し、購入者の利益を保護するためには、宅地建物に関する取引の公正化と工事施工の適正化を一層推進するとともに建築物の設計及び工事監理業務の適正な執行を図り、あわせて苦情処理体制を一層整備することが肝要であると思料される。
このため、宅地建物取引業者、建設業者及び建築士はこれらの事項に配慮してそれぞれの業務を適切に行う必要があると認められるので、左記について貴団体加盟の業者又は建築士に対する周知徹底及び指導を行われたい。
なお、本件に関連して、別添のとおり、各都道府県知事あて指導を依頼するとともに、別途住宅局長から各特定行政庁あて分譲共同住宅の安全の確保等について指示したので、申し添える。
第一 宅地建物取引業者等に対する措置
I 宅地建物取引業者において講ずべき措置
一 新規物件にかかる取引条件の明確化について
(一) 販売物件の事前検査等について
工事施工の適正化を図るため、施工業者から工事竣工図を受領し、工事監理者から工事監理結果報告書の提出を求める等販売物件の事前検査体制を整備するとともに、工事請負契約の締結に当たっては、施工上の瑕疵があった場合の補修の方法、費用の負担区分等に関する契約内容について十分留意すること。
(二) 重要事項説明時及び契約時において交付する書面の記載事項について
(イ) 宅地建物取引業法第三五条第一項に規定する「重要事項の説明」については、同条同項第五号の規定により、宅地建物の工事完了前売買については、工事完了時における当該宅地建物の形状、構造その他建設省令で定める事項を記載した書面を交付して説明することとされているが(昭和四六年一二月一四日計画局長通達参照)、工事完了時売買についても工事完了前売買と同様にこれらの事項について説明をするものとすること。
また、いずれの場合においても、図面その他の書面への記載に当たっては、建物の構造、設備、仕上げ等について購入者が理解しやすいように具体的に記載するものとすること。
(ロ) 同法第三七条第一項に規定する「書面の交付」については、同条同項第二号の規定により宅地建物を特定するために必要な表示を記載した書面を交付することにより行うこととされているが、建物にかかる当該事項については、前記(イ)の「重要事項の説明」の際説明した事項を表示した図書を交付することにより行うものとすること。
(ハ) 同法第三七条第一項第一一号の規定により契約時に交付する書面に記載すべき宅地建物の瑕疵担保責任の内容については、宅地建物の構造、設備、仕上げ等について具体的にその範囲、期間等を定めるものとすること。
(三) 工事竣工図の交付等について
(イ) 戸建住宅については、購入者への当該住宅の引渡後すみやかに、当該住宅にかかる工事竣工図等の関係図書(給排水、電気、ガス等の設備に関するものを含む。)を当該購入者に交付するものとすること。
(ロ) 共同住宅については、購入者への当該住宅の引渡後すみやかに、当該住宅にかかる工事竣工図等の関係図書(給排水、電気、ガス等の設備に関するものを含む。)を当該住宅の管理事務所、営業所その他の適当な場所において購入者が閲覧できるようにしておくものとすること。この場合においては、当該工事竣工図等の関係図書がこれらの場所で閲覧することができる旨を同法第三七条第一項に規定する書面等に付記しておくものとすること。
二 苦情処理体制の整備について
売買契約締結後発生した苦情を迅速かつ的確に処理するため、施工業者とあらかじめ連絡して苦情相談体制を一層整備するとともに、苦情受付窓口を契約書等に表記する等の方法によって購入者に対してこれらの事項を周知させておくものとすること。
II 事業者団体において講ずべき措置
一 苦情処理体制の整備等について
宅地建物の購入者からの苦情に対処するため、苦情処理体制を一層整備し、苦情の適切かつ早期の解決を図ることとすること。
また、これとあわせて、宅地建物の購入希望者からの取引に関する事前の相談にも応ずることができるように措置を講ずることとすること。
二 遮音、防水等の事項に関する説明の検討について
今後特に中高層共同住宅の取引に当たって遮音、防水等の事項に関する説明が必要となると予想されるので、これらの実施方法等について検討を進めることとすること。
第二 建設業者に対する措置
一 建設工事の適正施工について
(一) 施工管理について
(イ) 設計図書に基づき、工事を適正に施工するため、計画工程と実施工程との斉合を常に保つよう工程管理を厳しく行うとともに、工事目的物の強度、性能、精度等の品質を確保するよう十分な品質管理を行う等施工管理を適正に行うこと。
(ロ) 工事を下請させる場合にあっては、下請負人(再下請負人を含む。)に対する指導監督を適正に行うこと。
(二) 建築士との連絡調整
建築工事を施工するにあたっては、建築士法により建築士が行う工事監督に十分従うとともに、必要に応じ、随時、建築士と十分な連絡調整を行うこと。
二 苦情の処理について
注文者からの苦情に対しては、的確かつ迅速に処理すること。
また、購入者から苦情を受けた場合においては、宅地建物取引業者に協力し、速やかに、かつ誠実に対応すること。
第三 建築士等に対する措置
I 建築士の行う設計及び工事監理等についての措置
一 建築物の安全の確保及びその質の向上を図るため、建築士は、適正な設計及び工事監理を行うこと。特に工事監理については建築主に対しては工事監理者としての権限及び責任を明確にし、その厳正な執行を期すること。
二 建築士は、工事監理を実施するに当たって、事前に、十分な工事監理の執行体制を整え、設計図書との照合・確認、工事施工者への指導、建築主への監理報告等を励行すること。
三 建築士事務所の管理建築士は、建築物の規模、用途、構造、設備等を勘案し、業務が適正に執行されるよう所属建築士の配置及び指導を行うこと。
II 建築士関係団体において講ずべき措置
一 建築士の技術的能力等の向上について
大規模化し、複雑化する建築物と高度化する建築工法に対応した適正な設計及び工事監督業務が執行されるよう研修会等を通じて、建築士の技術的能力等の向上に一層努めること。
二 建築相談について
消費者から共同住宅等の購入に際し、建築技術面についての相談を受け付けられるよう、建築相談体制の整備について、今後、検討を進められたいこと。