各関係業界団体あて
![]() |
(別添) 媒介契約制度の施行等について
(昭和五七年五月一三日)
(計動発第六七号)
(各都道府県主管部長あて建設省計画局不動産業課長通達)
標記については、昭和五七年五月一三日付け建設省計動発第六五号をもって、その基本的事項について通達されたところであるが、その具体的運用等については、なお後記の事項に留意し、遺憾なきよう万全を期せられたい。
記
第一 宅地建物取引業者への指導の徹底及び国民への周知について
一 宅地建物取引業者への指導の徹底
宅地建物取引業者に対しては、特に、例えば「専任媒介契約しか認められないことになった」等の制度の趣旨をゆがめた広告等による顧客の誘引を行わせないよう監視及び指導を行うこと。
二 国民への周知
国民への周知については、特に次の点についてその注意を喚起すること。
(一) 通常の取引の場合は、建設省が作成した「標準媒介契約約款」を活用するのが、適当であること。なお、媒介契約書には、標準媒介契約約款に基づく契約であるか否かの別が表示されることとなっていること。
(二) 標準媒介契約約款には、専任媒介契約と一般媒介契約の二種類の契約類型があり、その選択は依頼者に委ねられていること。
(三) 専任媒介契約の場合は、宅地建物取引業者がどのような流通機構等を活用して、契約の相手方を探索するのか良く確かめること。
(四) 宅地建物取引業者は、媒介価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにする義務を負っているものであること。
(五) 専任媒介契約の場合は、宅地建物取引業者は依頼者に対し二週間に一回以上業務の処理状況を報告する義務を負っているものであること。
(六) 依頼者が契約に違反したときは、違約金又は費用の償還の請求を受ける場合もあるので、契約書を良く読み理解しておくべきこと。
第二 媒介契約の書面化について(法第三四条の二第一項)
一 書面化すべき媒介契約
書面化等の規制の対象となるのは、宅地又は建物の売買又は交換に関する媒介契約であり、貸借の媒介に関する契約は対象とならないが、売買又は交換に関するものである限り、宅地建物取引業者が行う取引を媒介する場合においても適用があること。
二 書面化の方法
法第三四条の二第一項の書面としては、必要事項を記載した契約書を作成して取り交すよう指導すること。
なお、媒介契約の締結に当たっては、依頼者の依頼意思を十分確認するよう指導すること。
三 書面に記載すべき事項
(一) 物件を特定するために必要な表示(第一号)
物件の購入又は交換に係る媒介契約において、依頼者が取得を希望する物件が具体的に決まっていない場合には、物件の種類、価額、広さ、間取り、所在地、その他の希望条件を記載することとして差し支えないこと。
(二) 標準媒介契約約款に基づく契約であるか否かの別(施行規則第一五条の七第三号)
標準媒介契約約款については、改正規則第一五条の七第三号の規定に基づいて、昭和五七年五月七日建設省告示第一一一〇号として告示されたところであるが、依頼者が一目で標準媒介契約約款であるか否か確認できるよう、契約書の右上すみに次のように表示をするよう宅地建物取引業者を指導すること。
なお、標準媒介契約約款に基づく契約とは、次のものをいう。
イ 標準媒介契約約款として定められた契約書及び契約約款をそのまま使用する契約(特約の欄で依頼者に不利とならない特約をすることは差し支えない。)
ロ 標準媒介契約約款として定められた契約書に次の範囲内の条項の追加又は変更を行い、契約書のその他の部分及び契約約款はそのままとして締結する契約(特約の欄で依頼者に不利とならない特約をすることは差し支えない。)
(イ) 宅地建物取引業者が契約の相手方を探索するために行う具体的措置(流通機構への情報登録、広告等)に関する条項の追加
(ロ) 宅地建物取引業者の業務処理状況の依頼者への報告、連絡等に関する条項の追加
(ハ) 契約が成立した場合に宅地建物取引業者が行う流通機構への報告に関する条項の追加
(ニ) 契約書の別表(物件の表示)の軽易な変更
なお、(イ)、(ロ)、(ハ)の場合には、追加した条項をアンダーライン等で明示すること。
また、(イ)〜(ニ)に該当するか否かについては、当分の間、建設省あて照会されたい。
第三 標準媒介契約約款
一 標準媒介契約約款の普及
媒介契約制度の的確な運用を図るため、宅地建物取引業者間の大量取引における販売提携、販売受託等の特殊な事情のあるものを除き、標準媒介契約約款を使用するよう宅地建物取引業者を指導すること。
二 標準媒介契約約款の書式等
標準媒介契約約款の印刷については、次の点を宅地建物取引業者に指導すること。
(一) 活字
日本工業規格乙八三〇五に規定する八ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いること。ただし、フリガナ等は八ポイント以下でも差し支えない。
(二) フリガナ等
その他必要に応じフリガナを付するなど依頼者にとって読み易いものとすること。
三 標準媒介契約約款の運用
標準媒介契約約款には、標準専任媒介契約約款及び標準一般媒介契約約款の二類型があるが、各々について次の点に留意して運用されたい。
(一) 専任媒介契約約款関係
イ 第四条及び第五条関係
媒介価額に関する意見の根拠については第四を参照のこと。
ロ 第六条関係
有効期間は、法第三四条の二第三項の制限があり、本条はそれを確認的に規定したものであること。
ハ 第七条関係
積極的努力義務を果たすに当たっては、流通機構を通して広く契約の相手方を探索するよう宅地建物取引業者を指導すること。
なお、業務処理状況の報告については、第五―一―(三)を参照のこと。
ニ 第一〇条関係
流通機構への情報登録、通常の広告、物件の調査等のための費用は、宅地建物取引業者の負担となること。
また、宅地建物取引業者は依頼者から特別に広告の依頼や遠隔地への出張の依頼を受けたときは、あらかじめ、依頼者に本条に基づき請求する費用の見積りを説明してから実行すべきであること。また、費用の請求は明細を示して行うこと。
なお、この費用の請求は、成約の有無にかかわらず、できるものであること。
ホ 第一二条関係
違約金は、成約した場合に当該依頼者に請求しうる約定報酬額に相当する額であり、他の顧客からも報酬を受領できる見込みがあったとしても、その分を含めて請求することはできないこと。
ヘ 第一三条及び第一四条関係
依頼者が自ら発見した相手方と売買又は交換の契約をすることは禁止されておらず、これを禁止する旨の特約は、依頼者に不利な特約として、約款第一八条第二項により無効とされるため、いわゆる専属媒介契約(依頼者が自ら発見した相手方と取引をすることをも禁止する契約型式)は、標準媒介契約約款においては認められないこと。
また、宅地建物取引業者が契約の履行に要した費用(以下「履行費用」という。)を請求するに当たっては、現地調査に要する費用として、交通費、写真代、権利関係等調査に要する費用として、交通費、謄本代、販売活動に要する費用として、新聞・雑誌等の広告費、通信費、現地案内交通費、契約交渉に要する費用として、交通費、その他当該媒介契約の履行のために要した費用について明細書を作成し、領収書等で金額を立証して請求するものとすること。
ト 第一五条関係
契約の更新には、法第三四条の二第四項の規定にもあるとおり、有効期間満了の都度、依頼者から申出があることが必要であり、自動更新は許されないこと。
チ 第一七条関係
媒介契約が当事者間の信頼関係によって成立するものであることにかんがみ、宅地建物取引業者に背信行為があった場合は依頼者による解除が認められているが、特に宅地建物取引業者が宅地建物取引業に関して不正又は著しく不当な行為をしたときは、その行為の相手方が当該依頼者でなくとも解除が認められていることに注意すること。
リ 第一八条関係
依頼者に不利な特約は標準媒介契約約款による契約としては認められないものであること。
依頼者に不利な特約とは、例えば、依頼者が自ら発見した相手方と取引をすることを禁止する特約、約定報酬額を超える違約金を請求する旨の特約等である。
なお、一定の期間中に目的物件の売却ができなかったときは、宅地建物取引業者が媒介価額を下回る価額で買い取る旨の特約は、売主が宅地建物取引業者に安く売ることを義務づけず、売主の希望があれば宅地建物取引業者が買い取るべきことを定めたのみであれば差し支えない。
(二) 一般媒介契約約款関係
イ 第五条及び第六条関係
(一)―イに同じ
ロ 第七条関係
一般媒介契約の有効期間については、法律上の規制はないが、実情にかんがみ専任媒介契約と同じく三ヵ月以内で定めることとしたものであること。
ハ 第一〇条関係
(一)―ニに同じ
ニ 第一二条関係
一般媒介契約の場合には、宅地建物取引業者の報酬に対する期待が専任媒介契約の場合ほど強くないため、違約金ではなく履行費用の償還にとどめることとしたものであること。
ホ 第一四条関係
(一)―トに同じ
ヘ 第一六条関係
(一)―チに同じ
ト 第一七条関係
(一)―リに同じ
なお、標準媒介契約約款における一般媒介契約は、依頼者が重ねて依頼をする他の宅地建物取引業者を明示する義務を負う明示型となっているので、その義務を負わない非明示型とする場合には、その旨特約しなければならないこと。
特約するに当っては、一般媒介契約書の「六 特約事項」の欄に「本契約では、約款第四条及び第一二条は適用せず、依頼者が当社以外の宅地建物取引業者に重ねて依頼する場合でも、その宅地建物取引業者を明示する義務を負わないものとします。」と記載し、「一 依頼する当社以外の宅地建物取引業者」の欄と「二 通知義務」の第一号の箇所を斜線で抹消する等の方法によること。
第四 媒介価額に関する意見の根拠の明示義務について(法第三四条の二第二項)
一 意見の根拠
意見の根拠としては、価格査定マニュアル(財団法人不動産流通近代化センターが作成した価格査定マニュアル又はこれに準じた価格査定マニュアル)が適当であるが、同種の取引事例等他に合理的な説明がつくものがあれば、それによってもよいこと。
なお、その他次の点にも留意すること。
(一) 依頼者に示すべき根拠は、宅地建物取引業者の意見を説明するものであるので、必ずしも依頼者の納得を得ることは必要ではないが、合理的なものでなければならないこと。
(二) 根拠の明示は、口頭でも書面を用いてもよいが、書面を用いるときは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づく不動産鑑定評価書でないことを明記するとともに、みだりに他の目的に利用することのないよう依頼者に要請すること。
(三) 根拠の明示は、法律上の義務であるので、そのために行った価額の査定等に要した費用は、依頼者に請求できないものであること。
二 取引事例の取り扱い
媒介価額の評価を行うには豊富な取引事例の収集を行い同種、類似の取引事例を使用することが必要であるが、その場合には取引事例の中に顧客の秘密等にかかわるものが含まれていることを考慮し、その収集及び管理は、次の点に留意し、特に慎重を期するよう宅地建物取引業者を指導すること。
(一) 取引事例を顧客や他の宅地建物取引業者に提示したり、その収集及び管理を行う機構に提供する行為は、宅地建物取引業者が法第三四条の二第二項の規定による義務を果たすため必要な限度において法第四五条及び第七五条の二の「正当な理由」があると解されるものであるので、その他の用途に使用することは許されないこと。
(二) 収集する情報は、価額の査定を行うために必要な成約価額、成約の時期、物件に関する情報とし、取引の当事者の氏名等の情報については、収集をしないこと。
(三) 営利を目的として取引事例の収集伝達の事業を営むこと及びこれを行う者に取引事例を漏らすことは、「正当な理由」があるとはいえないので、許されないこと。
(四) 取引事例のデータを利用できるのは宅地建物取引業者に限定すること。
(五) 宅地建物取引業者は、媒介価額に関する意見の根拠として適当な取引事例について説明する場合には、依頼者にその取引事例をみだりに口外しないよう要請すること。また、価格査定マニュアルの評定内容を書面で渡すときは、その旨を明記すること。
(六) 売り急ぎ、買い急ぎなど特殊な事情のある取引事例は、収集等の対象としないこと。
第五 専任媒介契約について
一 法律上の規制について(法第三四条の二第三項から第六項まで)
専任媒介契約は、依頼者に対する拘束が強いこと等から、法律上、規制が設けられているので、次の点に留意すること。
(一) 有効期間
三ヵ月を限度として、依頼者と宅地建物取引業者の契約により定めること。
(二) 更新手続
契約の更新には依頼者の申出が必要であるが、この申出は後日の紛争を避けるため文書によって確認するのが望ましいこと。(標準媒介契約約款では文書による申出を更新の要件としている。)
また、この更新の申出は、有効期間満了の都度行われるべきもので、あらかじめ更新することを約定することは許されないこと。
なお、依頼者の申出があっても、宅地建物取引業者が更新に同意しないときは、契約は更新されないこと。
(三) 業務処理状況の報告
宅地建物取引業者が依頼者に2週間に一回以上報告すべき事項は、1)宅地建物取引業者が契約の相手方を探索するために行った措置(流通機構への情報の登録、広告等)、2)引き合いの状況等であること。なお、必要に応じ以後の業務処理方法等の打ち合わせを行うのが望ましいこと。
二 宅地建物取引業者の積極的努力義務について
専任媒介契約の依頼を受けた場合には、成約へ向けて積極的に努力するに当たって、具体的に行う措置(流通機構への情報の登録のほか、広告、他の宅地建物取引業者との提携等)を依頼者に明示するよう宅地建物取引業者を指導すること。
第六 代理契約について(法第三四条の三)
宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約については媒介契約に関する規定が準用されるが、通常の取引の代理契約の場合は、契約の相手方、対象物件、取引価額等の諸条件が確定した後に、売買契約等の締結に係る代理権の授与を受けるよう宅地建物取引業者を指導すること。
第七 担当窓口の明示について
媒介契約等を締結するときは、依頼者等の問い合わせ、苦情又は相談に応じる窓口を、依頼者等に明示するよう、宅地建物取引業者を指導すること。
第八 流通機構の整備について
一 中小宅地建物取引業者の協業化の推進
中小宅地建物取引業者の協業化による流通機構の整備は、財団法人不動産流通近代化センターの助成等により着実に進んでいるが、未だ十分なものとはいい難い。このため、今後、特に中小宅地建物取引業者の協業化について指導助言を行うとともに、必要に応じ未加入者の加入の推進等に努めること。
二 流通機構の実態の把握等
今後、専任媒介契約の依頼をしようとする一般の者からの流通機構に関する問い合せが増えると思われるので、その実態の把握等に努めること。
三 流通機構とまぎらわしい表示について
情報量、情報伝達の広域性等の点からみて流通機構としての実態がないのにもかかわらず、「流通機構」又は「流通センター」等のまぎらわしい表示をする宅地建物取引業者が見受けられるので、そのような表示は変更するよう指導すること。
第九 既に締結されている媒介契約等の取扱いについて
法施行日前に既に締結されている媒介契約については、少なくとも法施行後三ヶ月以内に、標準媒介契約約款に基づく契約に切り替えるよう宅地建物取引業者を指導すること。
第一〇 その他
改正規則第五条の三第一項により宅地建物取引業者名簿登載事項変更届出書の様式を定めたので、これによること。
なお、変更届出書の様式についても五月二〇日から施行されることとなるが、これを一時に新様式によるとすることは無理があると考えられるので、法施行後約六ケ月程度の間は、従来の書式を活用する方向で処理することとして差し支えないこと。
|
![]() |
All Rights Reserved, Copyright (C) 2003, Ministry of Land, Infrastructure and Transport |