建設省経動発第二九号
平成二年三月二三日

各都道府県主管部長あて

建設省建設経済局不動産業課長通達


専属専任媒介契約制度の施行等について


標記については、平成二年三月二三日付け建設省経動発第二七号をもって、その基本的事項について通達されたところであるが、その具体的運用等については、なお左記の事項に留意し、遺憾なきよう万全を期せられたい。

第一 宅地建物取引業者への指導及び国民への周知について

一 宅地建物取引業者への指導

(1) 宅地建物取引業者に対しては、媒介契約を締結する際には、依頼者に専属専任媒介契約、専任媒介契約及び一般媒介契約の相違点を十分に説明し、依頼者の意思を十分確認した上で、媒介契約を締結するよう指導を行うこと。
(2) 指定流通機構への物件登録の促進を図り、不動産流通の円滑化を進めるため、指定流通機構についての周知並びに専属専任媒介契約及び専任媒介契約の適正な活用に努めるよう宅地建物取引業者に指導を行うこと。特に、今回の制度改正は、専属専任媒介契約により依頼を受けた物件について指定流通機構に対する登録を義務付けるものであるが、今回の制度創設の趣旨に鑑み、標準専任媒介契約約款においても同様の規定を置くこととしたので、専任媒介契約により依頼を受けた物件についても、指定流通機構に物件を登録するよう宅地建物取引業者を指導すること。

二 国民への周知

国民への周知については、特に次の点についてその注意を喚起すること。
(1) 通常の取引の場合は、建設省が作成した「標準媒介契約約款」を活用するのが、適当であること。なお、媒介契約書には、標準媒介契約約款に基づく契約であるか否かの別が表示されることとなっていること。
(2) 標準媒介契約約款には、専属専任媒介契約、専任媒介契約及び一般媒介契約の三種類の契約類型があり、その選択は依頼者に委ねられていること。
(3) 宅地建物取引業者が依頼物件を指定流通機構に登録した場合は、当該宅地建物取引業者から指定流通機構が発行する登録済証の交付を受けること等により、登録されたことを確認すること。
(4) 宅地建物取引業者は、媒介価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにする義務を負っているものであること。
(5) 専属専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し一週間に一回以上、専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、二週間に一回以上、業務の処理状況を報告する義務を負っているものであること。
(6) 依頼者が契約に違反したときは、違約金又は費用の償還の請求を受ける場合もあるので、契約書を良く読み理解しておくべきこと。

第二 専属専任媒介契約の法律上の規制について(宅地建物取引業法(以下「法」という。)第三四条の二第三項から第六項まで)

専属専任媒介契約は、依頼者に対する拘束が強いこと等から、法律上、規制が設けられているので、次の点に留意して運用されたい。
(1) 宅地建物取引業者の積極的努力義務

建設大臣が指定する流通機構に、媒介契約締結の日から三日以内に依頼物件を登録することとされているが、この三日には、契約締結の日及び当該宅地建物取引業者の休業日は含まれないこと。ただし、登録期限内に成約をみた場合は、業者は依頼物件を指定流通機構に登録する必要はないこと。

(2) 業務処理状況の報告

宅地建物取引業者は、一週間に一回以上業務処理状況を報告すること。

(3) その他

その他の専任媒介契約に関する規定は、専属専任媒介契約にも適用されるものであること。

第三 標準媒介契約約款

一 標準媒介契約約款の改正

標準媒介契約約款については、宅地建物取引業法施行規則第一五条の七の規定により、建設大臣が定めることとされており、これを昭和五七年に告示している(昭和五七年建設省告示第一一一〇号)が、今般、本告示を改正したところである(平成二年建設省告示第一一五号)。
これは、宅地建物取引業法において、専属専任媒介契約に関する規定が新たに設けられたことに伴い、標準専属専任媒介契約約款を新たに策定するとともに、標準専任媒介契約約款及び標準一般媒介契約約款についても必要な改正を行ったものであること。

二 標準媒介契約約款の普及

媒介契約制度の的確な運用を図るため、宅地建物取引業者間の大量取引における販売提携、販売受託等の特殊な事情のあるものを除き、引き続き改正後の標準媒介契約約款を使用するよう宅地建物取引業者を指導すること。

三 標準媒介契約約款の運用

標準媒介契約約款については、既に建設省計画局長通達(昭和五七年五月一三日建設省計動発第六五号)及び建設省計画局不動産業課長通達(昭和五七年五月一三日建設省計動発第六七号)をもって遺憾のない施行をお願いしているところであるが、今回の標準媒介契約約款の主な改正内容は以下のとおりであり、次の点に留意して運用されたい。
(1) 宅地建物取引業者の積極的努力義務について(標準専属専任媒介契約約款第七条・標準専任媒介契約約款第七条)

イ 業務処理状況の報告

業務処理状況の報告については、専属専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者にあっては一週間に一回以上、専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者にあっては二週間に一回以上行うことが、法第三四条の二第五項において規定されているが、標準媒介契約約款においては、これを確認的に規定するとともに、報告の方法は文書によることとしていること。また、報告すべき事項は、宅地建物取引業者が契約の相手方を探索するために行った措置(指定流通機構への依頼物件の登録、広告等)、引き合いの状況等であること。

ロ 指定流通機構への依頼物件の登録

指定流通機構への依頼物件の登録については、専属専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者にあっては媒介契約締結の日から三日以内、専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者にあっては媒介契約締結の日から七日以内に行うこととしていること。なお、この日数には、契約締結の日及び当該宅地建物取引業者の休業日は含まれないこと。この日数に休業日が含まれる場合には、宅地建物取引業者は、媒介契約を締結する前に、依頼者に対しその旨を説明すること。なお、依頼物件の登録に要した費用は、依頼者に請求できないものであること。

ハ 登録済証の交付

宅地建物取引業者が依頼物件を指定流通機構に登録した場合には、当該宅地建物取引業者は、指定流通機構より発行された登録済証を遅滞なく依頼者に交付することとしていること。

(2) 報酬返還請求の理由について(標準専属専任媒介契約約款第九条・標準専任媒介契約約款第九条・標準一般媒介契約約款第九条)

改正前の標準媒介契約約款においては、売買契約等が代金についてのローン不成立を解除条件として締結されているときで、ローンの不成立が確定した場合には、宅地建物取引業者は、受領した約定報酬額の全額を遅滞なく依頼者に対して返還しなくてはならないこととされていたところであるが、改正後の標準媒介契約約款においては、売買契約等が代金についてのローンが不成立の場合に購入者に解除権が留保されている例が多いことに鑑み、この場合で、ローンの不成立が確定し、これを理由として依頼者が売買契約等を解除したときにも、宅地建物取引業者は、受領した約定報酬額を返還しなくてはならないこととしていること。
なお、このほかにも、依頼者が買換えを行うため、宅地建物取引業者に売却の媒介及び購入の媒介を依頼したときで、手持物件の売却が行われない場合の措置として、購入の媒介契約により売買契約が成立した後、売却の媒介契約による売買契約の不成立が確定したときにも、当該宅地建物取引業者は購入の売買契約の成立により受領した約定報酬の全額を依頼者に遅滞なく返還する旨の特約をし、書面に記載することが望ましいこと。

(3) 直接取引について(標準専属専任媒介契約約款第一一条・標準専任媒介契約約款第一一条・標準一般媒介契約約款第一一条)

媒介契約の有効期間終了後三年以内に、依頼者が宅地建物取引業者の紹介によって知った相手方と直接取引をした場合には、宅地建物取引業者は契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬請求権が認められていたが、この期間を媒介契約の有効期間終了後二年以内としたものであること。

第四 指定流通機構の実態の把握等

今後、専属専任媒介契約、専任媒介契約等の依頼をしようする一般の者からの指定流通機構に関する問い合わせが増えると思われるので、常時指定流通機構の実態の把握等に努めること。

第五 既に締結されている媒介契約等の取り扱いについて

法施行日前に締結されている媒介契約については、少なくとも法施行後三カ月以内に、改正後の標準媒介契約約款に基づく契約に切り替えるよう宅地建物取引業者を指導すること。

第六 図面の作成について

物件情報の交換にあたって物件情報に関する図面は重要であるが、物件情報に関する図面の作成にあたっては、財団法人不動産流通近代化センター作成の不動産情報図面作成マニュアル等を参照するよう宅地建物取引業者を指導すること。

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